2009年3月号
SOLE

RFIDによるSCMの見える化バーコードでは不可能な活用モデル

MARCH 2009  86 SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics oriented(利用者の視点が融けこむ)、 ?Unique(個性ある活力が湧き上が る)、という四つの「U」の特質を 備えた次世代ICT社会をイメージ している。
 身近な例では、既にインターネッ ト・携帯電話では伝えたいことがす ぐに届く、コンビニエンスストアで は欲しいものがいつでも買える、宅 配便では欲しいもの・プレゼントし たいものが翌日/即日届く、などが ICTの利活用によって実現されて いる。
一気通貫の見える化が必須  RFIDの担う役割は大きいが、 そのうちの一つとしてSCMの領域 おける利活用を考察してみる。
 この領域は、物流・ロジスティク スからSCMへと進化している。
サ プライチェーンは部材を協力会社・ 外注先から調達、生産工場で最終 製品とし、倉庫・卸・配送センター などを経由して小売店で顧客に供給 するものであるが、大きく捉えれば 「調達物流・生産物流・販売物流」 となる。
別の視点からはデマンドチ ェーン、サプライチェーン、バリュ ーチェーン、ビジネス・ロジスティ クスなどと捉えられ、それぞれの観 点から改善が続けられている。
 また、活動の視点で言い換えれば、 物流管理時代は点の活動であり、保 管・荷役・運搬、調達・生産・販売 などそれぞれの部分最適の活動であ る。
ロジスティクス管理時代は点と 点を結ぶ線の活動となり、後方支援 の改善、情報システムの活用などに よる部分最適から全体最適に向けた 改善活動である。
SCMの時代は、 全体最適を見据えてインターネット、 SCP( Supply Chain Planning) /APS(Advanced Planning and Scheduling)などを利活用し、一気 通貫で改善していくものである。
 SCMの目的は、 ?部材供給者、メーカー、卸、小 売業者、消費者を結ぶモノの流れ 全体(サプライチェーン)を捉え、 これを見直し、再構築して全体の コストを削減、顧客満足度を向上 させる ?サプライチェーン全体の視点で、 情報の共有化とBPR(Business Process Reengineering)により、 キャッシュフローの効率向上を目 指した経営戦略  ?製品、サービス、情報およびキャ ッシュを「一気通貫」させ、消費 者の価値を最大化する RFIDによるSCMの見える化 バーコードでは不可能な活用モデル  一月度のフォーラムでは、上智大 学経済学部の荒木勉教授に「RFI DによるSCMの見える化」をテー マにご講演いただいた。
同教授は実 証実験を数多く行うとともに、欧米 のRFID導入状況・最新事情を 毎年、視察されている。
これらの御 経験から、SCMへのRFIDの活 用領域、導入に当たっての課題につ いて、多くの導入実例を交えながら 解説いただいた。
(SOLE日本支 部 瀬良光弘幹事) 期待集めるRFID  RFID(ICタグ)は、来る べきユビキタスネット社会で重要な 役割を果たす技術として大きな期待 を集めている。
「いつでも、どこで も、なんでも、誰でも」ネットワー クにつながるユビキタスネット社会 は、我が国の政策として進められて いるIT改革戦略のゴールである。
 我が国では二〇〇一年一月にIT 基本法が定められ、IT戦略本部 (本部長:内閣総理大臣)が設置さ れたのを皮切りに、〇三年までの 「e─Japan戦略」、〇五年まで の「e─Japan戦略?」により、 「IT基盤の整備、ITの利活用の 推進がなされた。
これらが〇六年一 月に「IT新改革戦略:u─Jap an政策」へ発展し、ユビキタスネ ット社会の実現が二〇一〇年の目標 として掲げられている。
 「u─Japan政策」の目的は、 通信・放送の融合・連結の推進でも ある。
生活の隅々にまでICT(情 報通信技術)が融けこみ、創意ある 利活用でまったく新しい価値が生み 出される価値創発(課題解決・期待 実現)の社会を実現する、というも のだ。
 「u─Japan」とは「ユビキ タスネット・ジャパン」であり、? Ubiquitous( あらゆる人やものが 結びつく)、?Universal( 人に優 しい心と心の触れ合い)、?User87   MARCH 2009 すぐに二次元シンボルのデータ入力 につなげ、納品完了商品の即時見 える化に成功。
当日または翌日の売 り場への投入が可能になった。
これ までは納入検収の翌日システム入力、 翌々日売り場投入だったのが、売り 場への投入にかかる時間を一〜二日 短縮し、大幅な改善を実現した。
 大手コンビニエンスストアは、ど のような(性別、年齢)顧客が何を 何個、何時に買ったかに加え、天候、 季節、地域のイベントなどからPO Sから得られるデータで売れ筋を分 析し、地域、季節、時間帯別の商 品揃えを実現した。
 しかしながら、大手コンビニエン スストアの事例は売れ筋トップを追 求するものであり、二番手、三番 手の潜在需要がわからない。
コンビ ニエンスストアのビジネスモデルと しては良いが、品揃えの多いGMS ( General Merchandise Store:総 合スーパー)では潜在需要情報が重 要になってくる。
そこで考えられるのが、RFID の活用だ。
見える化が実現できなけ れば、ブルウィップ効果(デマンド 情報が小売店から卸、工場の生産計 画へとさかのぼるにつれて増幅して しまうこと)を抑制できない。
現在、 SCP、APSを含めたSCMソフ トウエアとしては、i2テクノロジ というものである。
 SCMの全体最適では「一気通 貫」が重要であるが、サプライチェ ーンのビジネスプロセス上にはボト ルネックになり得る「壁」が、いろ ポイントである。
ここでRFIDな どの自動認識技術の活用が期待され ている。
バーコードでは得られない効果  見える化の成功事例として最もよ く知られているのは、トヨタ自動車 である。
見える化を改善活動に発 展させ、生産性の向上、コスト削減、 利益率向上に成功した。
同社はかん ばん方式によるJIT(ジャストイ ンタイム)の導入など、サプライチ ェーン全体に創意工夫を施している。
現場の「あんどん」導入は、関係者 全員が現状を共有化するための、わ かり易い見える化だ。
 流通業界では一九七八年のJA N制定後にシステム構築が進み、二 一世紀に入ってバーコードによるデ ータ入力が飛躍的に普及した。
典 型的な例はコンビニエンスストアの POSによるバーコード活用であり、 「消費者行動の把握:見える化」の 成功例といえる。
二次元シンボルに よるデータ入力は、携帯電話による QRコードの普及に伴って、近年は 特に拡大。
これによる現状の見える 化も順調に進んでいる。
 大手百貨店は、二次元シンボルの 包含データ量の大きさを活かし、納 入伝票の情報すべてを伝票上に二 次元シンボルで印刷し、納入検収後、 いろな「高さ」と「幅」で存在する (図1)。
このため、「一気通貫」の 全体最適に取り組んでも、ブラック ボックス化していることが意外に多 い。
例えば工場内の半製品、仕掛り 品、自動化倉庫内などのモノの数量 をデータベース上で管理していても、 工場、流通センター、倉庫内のモノ の実際の所在はわからない。
バーコ ードリーダーで入荷検品、出荷検品 を行っていても、バーコードリーダ ー間の移動(入荷検品から出荷検品) の状況や滞留品は分からない。
PO Sデータで売れ筋は分かっても、店 頭商品の二番手、三番手は分からな い。
 こうした問題を解決するため、サ プライチェーン上での顕在化・「見え る化」が重要になってくる。
製品寿 命の短いパソコン、テレビなどの家 電製品では、製品がサプライチェー ン上に滞留しリードタイムが長くな れば、他社の新製品に遅れをとるこ とになる。
加工食品では消費期限が 浪費され、「作りたてが一番おいし い」という消費者の声に反すること になる。
アパレルでは流行が変わっ てしまい、販売機会を逃してしまう。
 SCMの「一気通貫の全体最適」 には、今(リアルタイムに)、何が、 どこに、どれだけ存在するかを知る こと(見える化・顕在化)が重要な 図1 サプライチェーン上のボトルネック ※上智大学荒木勉研究室資料より作成(以下、すべて同じ) 生産計画 製造工程 在庫管理 荷役作業 梱包 出荷 ・ 積込 配送 ・ 輸送 荷卸 ・ 入荷 入庫 検品 ピッキ ング 出荷 ・ 積込配送 荷卸 ・ 入荷検品 工場流通センター小売店 MARCH 2009  88 グラフで横軸を製造ラ イン、縦軸を時間とし、 全製品のラインアウト時 間をプロットすることで、 製造ライン十一本の標 準時間に対する実績を一 目瞭然としている。
こ れに基づき、標準時間 を超過した事例に対し て改善を実施し、また、 グラフで縦軸に入荷日 時、横軸に出荷日時を プロットすることにより、 FIFO(先入れ、先 出し)状況の「みえる 化」も実現している。
 メトロはRFIDを 試験運用する「Future Store」のスマートフリ ーザーに二八八個のアン テナを装着して商品を 管理し、肉パック容器 にICタグをインレット のまま貼り付けてコスト を抑えている。
グループ の百貨店チェーン「ガレ リア・カウフホフ」では、 紳士服売り場で約三万 点の商品にRFIDを 貼付。
スマートシェルフ では手に取った商品の関 連情報がディスプレイに 次元シンボルのように価格が一円以 下というのはあり得ない。
 しかし、RFIDは繰り返し使用 すれば、採算が合うことが十分考え られる。
さらに、RFIDは単なる バーコード、二次元シンボルの代替 技術ではない。
サプライチェーンの さまざまな場面で使い分け、RFI Dによって新しいビジネスモデルを 創造しながら、一気通貫の全体最適 化を実現することが重要だ。
 RFIDは次世代バーコードであ る、という捉え方は誤解である。
バ ーコードはこちらから読みに行かな ければならないが、RFIDは自ら 情報を発信するという大きな違いが ある。
世界大手が運用するRFID  こうした考え方を踏まえ、荒木教 授は国内外の大手小売業、製造業、 物流業などの多くの事例を解説され た。
誌面が限られているので、数例 のみ紹介する。
 ヒューレット・パッカードのブラ ジル・サンパウロ工場では、プリン ター(年産二〇〇万台)の製造ライ ン十一本と最終組み立てのオペレー ションにRFIDを活用し、見える 化を実現している。
 製造ラインに六五台以上のリーダ ーを配置し、生産進捗データを収集。
ーズの「RHYTHM」、マニュジ スティックスの「5j」、ロジリティ の「Logility Value Chain Solution」 やSAP、オラクルなどのソフトが 利用されているが、RFIDの活用、 組み込みによる、さらなる「一気通 貫の見える化」が期待されている。
 RFIDの導入効果として、 ?リアルタイムに在庫把握(欠品、 不良在庫の見える化) ?一気通貫の確認(SCMの完成度 の見える化) ?潜在需要の顕在化(市場の見える 化) ?自動計数(数の見える化) ?人件費の削減 ?少子化・高齢化対策 ?安全・安心の確保(トレーサビリ ティ、生産履歴の見える化) ?新しいビジネスモデルの創造 などさまざまなものが挙げられる。
 これに対して、RFIDをバーコ ード、二次元シンボルの代わりに活 用するには、RFIDのコストがバ ーコード、二次元シンボルに近くな らなければ困難との見方がある。
確 かに、マイクロプロッセッサーと集 積回路、アンテナからなるインレッ トの製造コスト、およびタグへの加 工費用があるため、バーコードや二 図2 資産管理&トレーサビリティ GRAI パレット 紐付け情報 製品番号 ロット番号 (消費期限) 製品番号 ロット番号 (消費期限) GRAI GRAI GRAI GRAI 混載 カゴ車 カートラック 折コン、クレート 89  MARCH 2009 表示される。
スマートドレッシング ルーム(試着室)では、試着室の壁 面に設置したリーダーにより、顧客 の持ち込んだ商品のタグが読み取ら れ、商品情報がディスプレイに表示 される。
色・サイズ違いの在庫検索 も可能だ。
 オランダの大手書店チェーン、セ レクシューズ( Selexyz)では書籍 すべてにアイテムタギングしている。
注文書籍はスマートシェルフで管理。
棚二〇段にアンテナ三台が設置され、 顧客の引取り時に即対応できるよう になっている。
繰り返し使えば高くない  RFIDに対する大きな懸念とし て、タグのコストが指摘される。
上 述のように採算をとるためには繰り 返し使うことが必要だが、このため の工夫も欠かせない。
ユニフォーム 管理向けの洗濯に耐えるRFIDの 開発、RFIDを組み込んだリライ タブル商品タグなどのように、タグ そのものの工夫はもちろんだが、ビ ジネスモデルの創造の視点が重要で ある。
 例えばトレー、クレート、折り畳 みコンテナ、通い箱、パレット、カ ートラック、カゴ車にタグを付けれ ば、資産管理、在庫管理、トレー サビリティと、複数の目的の実現を 図ることができる(図2)。
GRA I(資産管理番号)、SSCC(出 荷伝票番号)、パレット上の製品番 号・ロット番号・消費期限の情報を 紐付ければ、個品管理・サプライチ ェーンの一気通貫の見える化に発展 する。
 また、段ボール・ゼロを目指して、 T 11 型による一貫パレチゼーション、 小型コンテナや折り畳みコンテナの 活用によるユニットロード・システ ムの構築への活用も考えられる。
こ れらの物流容器にタグを付け、自動 課金・回収管理を行なえば、環境 対応型ロジスティクスを推進できる と同時に、コスト削減という効果も 得られる(図3)。
終わりに RFIDは確実に主流になる  RFIDが普及し、利用率が バーコードを上回るのはいつで あろうか。
五年後かもしれない し、一〇年後かもしれない。
た だ一ついえることは、今後はバ ーコード、二次元シンボル、R F I Dが併せて活用され、バ ーコードの代替としてではなく、 RFIDを活用した新しいビジ ネスモテルが構築されていくと いうことだ。
早まるか、遅くな るかは、導入のプロセス次第で ある。
 そこではRFIDの価格その ものよりも、消費者の理解が カギになる。
消費者のコンセン サスが得られるような導入手順 であることが重要だ。
このため、 ベンダーの利権争いは減速要因 として働くだろう。
重要なのは 価格よりも品質の向上である。
 導入分野はトレーサビリティ からSCM、そしてユビキタス に発展し、リユース型(資産管 理など)に加えて使い捨て型も 発展すると考えられる。
 RFIDから収集される情報 は膨大なため、データの即時活 用には柔軟なデータベースの構 築も重要になる。
また、S C Mは多くの企業・業界の連携で 成り立つことから、標準化の促 進も要になる。
R F I Dでは VHS or βを繰り返すべ きではない。
あるいはUNIX、 Windows、MACが混在して も、同一のeメールが使えるよ うな、そんな世界を目指すべき である。
 今後は標準化されたRFID を活用した新しいビジネスモデ ルが創造されながら、企業・業 界を横断したSCMの「一気通 貫の全体最適化」が進化してい くであろう。
図3 段ボールから折りコン循環活用へ IC タグの貼付 書き換え自由なラベルと IC タグのHybrid IC タグで資産管理 段ボール・ゼロ化の実現 合成イメージ図 次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは3月11日(水)「現場見 学会 ファンケル北関東物流センター」を予 定している。
このフォーラムは年間計画に基 づいて運営しているが、単月のみの参加も 可能。
1回の参加費は6,000円。
ご希望の 方は事務局( sole-j-offi ce@cpost.plala. or.jp)までお問い合わせください。

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