2009年3月号
物流IT解剖
物流IT解剖
リコーロジスティクス
MARCH 2009 56
肥大化する運用コスト 半減めざし組織改革
二〇〇七年の春、リコーロジスティ
クスは情報システム部門の体制を一
新した。
それ以前は管理系と事業系 の二つのチームがあり、それぞれに システムの開発から運用までを担っ ていた。
これを新たに開発チームと 保守・運用チームに再編。
作る行為 と、運用する行為を、異なるチーム が手掛けるように改めた。
従来の体制には、運用コストが肥 大化してしまうという欠点があった。
開発と運用を同じチームで担ってい ると、目の前の荷主の要望にフィッ トしたシステムを作ろうとする意識 が先に立ち、機能の重複したシステ ムが林立してしまっていた。
保守運用の手間はシステムの数に 比例する。
しかも、リコーロジは原 則としてIT活用を内製化している ため、システムが増えるたびに担当 者を増やす必要があった。
実際、二 年前まで同社のIT部門には、協力 ITベンダーの常駐者も含めると約 一二〇人が所属。
売上高五〇〇億円 余りの物流事業者としては、目立っ て大きな組織を抱えていた。
この状態を是正して運用コストの 適正化を図ることが、IT部門の体 制を見直した最大の理由だった。
関 係者の意識を変えるために?縦割り? だったIT部門を、機能別の?横割 り?に組み替えたのである。
同社I TS本部の原田茂樹副本部長は、こ のときの組織変更を次のように説明 する。
「従来は開発に熱心なあまり、運用 をないがしろにする傾向があったこ とを否めない。
だが自分以外の人間 が作ったシステムを運用するとなる と、相互に仕事を牽制しあうように なる。
結果として品質が底上げされ、 運用の手間も削減できる。
二年前の 時点を出発点として、将来的にはシ ステムの運用コストを五〇%削減し ていく目標を掲げた」 現在、IT部門には約八〇人が 所属している。
このうち社員の数は、 毎年の新規採用でむしろ増える傾向 にある。
だが協力ITベンダーの常 駐者が大幅に少なくなったことから、 総数は三割余り減っている。
三年後の完成をめざして システム刷新を進行中 もっとも人員を減らすだけでは、運 用コストの半減という目標は達成で きない。
コストが肥大化したそもそ もの原因は、似たような機能を持っ たシステムの林立だ。
そこにメスを入 れるため、現在、新しい基幹システ ムの構築に取り組んでいる。
そのための組織として二年前のI T部門の再編時に、「システム・イノ ベーション・グループ」を新設してい る。
同グループが担っている役割は、 グローバル展開を強く意識した標準 売上高の3 %強をシステムに投資 作業管理に900台のPDAを導入 リコーロジスティクス グローバル化に対応できる標準化された基幹システムの開発を進めて いる。
これを武器に親会社の国際物流を取り込んでいく計画だ。
売上 高の3 %強という積極的なIT投資を実施して、PDA(携帯端末)を使 った作業管理システムや国際通い箱などを導入し、差別化を図ろうと している。
ITS本部の原田茂樹副本部長 組織改革 基幹システム 第24 回 ◆本社組織 本社のITS本部に約80人が所属。
この うち約35人が社員で、残りは協力ITベンダーの常駐 者。
ITS本部内の「システム開発室」に開発グループ、 運用グループ、新基幹システム開発グループがある。
◆情報子会社 直系の子会社はない。
リコーグルー プの中にはリコーテクノシステムズがあるが、リコーロジ にとっては協力ITベンダーの1社という認識。
《概要》 2007 年春にIT部門を改組した。
その際に部内に「システム・イノベー ション・グループ」を新設し、基幹システムの刷新に着手。
現在、「貿易」「生産関係」 「販売」「一般顧客向け」の4 領域で開発を進めている。
これまでは国内を中心に事業を展開してきたが、近年は国際物流にも注力。
開発中の基幹システムでもグローバル標準を強く意識している。
一部はすでに 稼働しており、システム全体の導入は2010 年度中の予定。
年間IT 投資は売上高の3% 強で、同業他社に比べるとかなり高水準。
だが削 減に取り組んでいる運用コストは順調に減っている。
今はコスト削減より、むし ろ新システムの開発などによるIT 力の強化に注力している。
57 MARCH 2009 領域を国際物流に拡大しようとして いるリコーロジの事業戦略とも合致 している。
いま同社が手掛けて いるリコーグループ向けの国際 業務は、日本からの輸出や中国 関連などごく一部だけだ。
進行 中の中期経営計画の中でも、親 会社のグローバル展開をコスト 競争力のある物流管理で支援 し、それによって自らの売上規 模も拡大することが大きなテー マになっている。
開発を進めている新たな基幹 システムは、主に四つの領域か らなる。
国内外の販売物流を まかなう「販売システム」、世 界規模の物品の動きを支える 「貿易システム」、工場回りの物 流を担う「生産関係システム」、 そしてリコーグループ以外の荷 主の業務を担う「一般向けシス テム」である。
いずれも高度に 標準化した仕組みを、グローバ ルに展開していくことを念頭に 置いている。
原田副本部長は、「グローバ ル化に対応していくためのキー ワードの一つが標準化だと理解 している。
実際、グローバルな 事業活動にはシステム運用時 の時差の影響が避けられない。
世界各地に分散した業務を処理する には、標準化された仕組みが必須に なる。
これは運用コストをスリム化し ていくという当社の方針にも沿うも のだ」と説明する。
「販売システム」も、リコーが国内 の販売管理の仕組みをリニューアル するタイミングに合わせて約二年前 に開発をスタートした。
親会社のシ ステムに新しい機能が盛り込まれれ ば、リコーロジのシステムも修正する 必要が生じる。
この機に販売物流の 基幹システムを刷新することを決め た。
二〇一〇年度をメドに新システ ムに置き換えていく方針だ。
同社が独自の判断でリニューアル を進めている「貿易」と「生産関係」 のシステムについても、〇九年度を メドに新システムを投入する。
一部 はすでに稼働しており、残りは業務 を受託しながら展開していく。
リコーロジはこれまで、グループ企 業の生産・販売活動に比べて国際展 開で遅れをとってきた。
しかし近年 は、中国で生産関係の物流業務を手 掛けているのに加え、北米で業務を 受託する準備も進めている。
直近の ターゲットは、リコーが今年九月に新 工場の稼働を予定しているタイでの 受託だ。
この案件でリコーロジは、初めて 海外工場が稼働する前の段階からプ ロジェクトに参画した。
グループの一 員といえども、国際物流の実績に乏 しい同社の立場は協力物流事業者の 一社にすぎない。
それでも計画段階 から入り込むことで、物流子会社と しての優位性を発揮できる可能性は 高まる。
すでに親会社は全世界の工場を共 通のシステムで管理している。
リコ ーロジがグローバル標準を意識しなが ら構築している「生産関係システム」 をタイの新工場に導入し、効果を実 証できれば、他地域での受託にも弾 みがつくはずだ。
その意味でタイで の活動は、リコーロジの今後の国際 展開を左右する試金石となる。
グループ経営強化で 外販拡大路線を修正 四番目の「一般向け」については、 上記三つの新システムを活用しなが ら、荷主の個別ニーズに対応できる 仕組みを構築していく考えだ。
ただ し、これによって外販比率の拡大を 狙っているわけではない。
一九九〇年代のリコーロジは、株 式の上場をめざして、必要条件の一 つとされていた外販比率三〇%を経 営目標の一つに置いていた。
しかし 連結会計の強化などによって、リコ 的な新・基幹システムの構築だ。
このシステム開発の動きは、業務 グループ戦略 基幹物流システムの概要図 依頼情報 営業・管理プロセス 購買情報 売上情報 業務プロセス 一気通貫(SCM) 進捗予実績管理システム 納品・集荷 入庫・出庫 包装情報 調達 物流 生産 物流 販売 物流 回収 リサイクル 物流 EDI 各種情報送受信照会 運送システム ■コントロール機能 ・配車支援 ・指定納品書発行 ・運送業者とのEDI ・環境負荷情報収集/報告 ■運転手サポート機能 ・運送PDA ・配送予定時間お知らせ ・配送検品、実績報告 ・リサイクル品回収 運送PDA 画面 リサイクル機─WMS ・RFリサイクル管理 ・RFエコラック管理 包装材購買 システム 受注プロセス 配車地域配送 運送プロセス倉庫・保管プロセス包装プロセス 幹線輸送設置/荷卸集荷・回収在庫管理ピッキング工場内作業設計発注・購買在庫管理 確定情報 売上・購買 売上・購買 予定情報 売上情報見積情報 販売品-WMS ・RFデジタル確認 ・梱包設計 ・自動仕分 生産品-WMS ・完成品管理(固体管理) ・リターナブル品管理 部品、部材─WMS(VMI 含む) MARCH 2009 58 ーグループの経営方針は大きく変わ った。
リコーロジにも、親会社に対 する貢献を第一としながら、独立し た事業体としても収益性を高めてい くという難しい舵取りが求められる ことになった。
現在のリコーロジは外販比率の拡 大に向けた数値目標を設定していな い。
外販案件は一つひとつ厳しく収 益性が吟味される。
こうした事情か ら、近年の外販比率は二〇%強のま ま横ばいで推移している。
外販案件で一定の収益を確保する には、得意分野への業務の絞り込み や、これに対応した仕組みの構築が 欠かせない。
そのためには物流業務 そのものの標準化や、業務内容に応 じたシステムの切り分けが必要だ。
リ コーロジの社内では、こうした活動 を「LT」(ロジスティクス・テクノ ロジー)と呼ばれるセクションが担っ ている。
技術革新本部LT推進室の 宮澤聡室長は、こう強調する。
「我が社が一般事業に注力しはじめ てから、すでに数多くの案件を手掛 けてきた。
ノウハウもかなり貯まっ ている。
今は主に通販事業、量販店 向け納品、半導体事業の三つの領域 で活動しているが、まずはそうした 切り口から業務やシステムのパッケー ジ化を図っていく。
〇九年度中に具 体化していきたい。
簡単ではないが、 十分に手応えはある」 リコーロジにとってLTとITは、 物流事業者として独自の強みを発揮 していくための?両輪?だ。
この二 つを武器に、荷主にソリューションを 提供していこうとしている。
新シス テムを有効なツールに育て上げるこ とができるかどうかも、両部門の活 動にかかっている。
事業システムは自前主義 管理系はパッケージも リコーグループには、リコーテクノ システムズ(RTS)という有力な ITベンダーが存在する。
しかしリ コーロジにとって、RTSは協力I Tベンダーの一社にすぎない。
リコー の国際展開においてリコーロジが協 力物流事業者の一つでしかないのと 同様のビジネスライクな関係にある。
もちろんグループで相乗効果を発 揮できるインフラやネットワークにつ いては、RTSを活用している。
し かし、それ以外のシステム開発につ いては取引関係にある中堅ITベン ダーを活用するケースが多い。
ITS部門に常駐している五〇人 弱の「パートナー従業員」も、ほと んどがこうした中堅ベンダーの社員 たちだ。
パートナー従業員は開発や 運用の実務の多くを担っており、社 員が手掛ける業務と内容的にもかな りクロスオーバーしている。
「当社は毎週月曜に開催している会 議で、検討対象に上っているシステ ムを実際に開発するかどうか判断し ている。
この会議の出席者は七割が パートナーさんで、当社の社員は三 割。
皆が同じ立場で出席する。
パー トナーさんの大部分はシステムエンジ ニアで、場合によっては自分で構想 したシステムのプレゼンも行う」(原 田副本部長)という。
以前は運用を担うパートナー従業 員が年々増加する傾向にあったが、前 述したとおり最近二年間で、その総 数を減らしてきた。
その一方で、I Tに精通した社員の育成は積極的に すすめている。
毎年二、三人の社員をIT部門に 新たに配属して、ITの素養を持っ た物流マンとして育てている。
IT 部門で一定のスキルを身につけると、 営業や現業部門と人材をローテーシ ョンさせる。
その結果としてIT部 門に所属する社員の数は、現状では 三五人程度で落ち着いている。
事業で使うシステム開発の基本は ?自前主義?だ。
プログラミングなど の実務を外注することはあっても、概 要設計や要件定義は原則としてすべ て社内でまかなっている。
LT推進 室が現場から吸い上げてきたニーズ を、ITS本部が仕組みとして具現 化するケースも少なくない。
実際、国内の事業系の仕組みにつ いては、すべて自分たちが主導して 構築したものを使っている。
海外で は一部の拠点でWMSパッケージも 採用しているが、これは現場での運 用を考慮した例外にすぎない。
荷主 開発方針 技術革新本部LT推進室の 宮澤聡室長 PDA を活用した作業管理 59 MARCH 2009 え方を採っている。
人事や給与計算 などではリコーグループの共通システ ムを採用しており、ここではパッケ ージの利用もいとわない。
また、勘 定科目の違いなどからグループで共 通化していない会計システムについ てもパッケージを導入している。
車載端末から通い箱まで 多彩なシステムを展開 リコーロジは現在、単体売上高五 四六億円(〇七年度)の三%強を ITに投じている。
ここにはインフ ラの維持コストからネットワーク費 用、人件費などすべてが含まれてい る。
競合他社とは計上方法などが異 なる面もあり単純な比較はできない が、一般的な物流事業者の年間IT 投資に比べるとかなり高い水準にあ る。
運用コストだけを見れば、五年前に 比べると二億円ほど減っている。
し かし、IT投資の絶対額そのものは、 売上高に応じて増加傾向にある。
そ して、この伸びを無理に抑制しよう とは考えていない。
むしろ積極的に 多彩なシステムを展開している。
最近では一億円余りを投じてPD A(携帯端末)を利用した作業管理 システムを開発した。
同社は九〇年 代に、衛星を使った動態管理システ ムをいち早く導入した実績を持つが、 このシステムでは車両の管理までし かできなかった。
これを一歩進めて、 配送車両のドライバーや作業者の業 務そのものを「見える化」し、効率 化につなげていく狙いだ。
〇七年四月に、まずリコーグループ のサプライ事業(OA機器のトナーな どを顧客に供給する事業)の運送業 務に導入した。
さらに昨年四月には、 同じく親会社のマシン事業(複写機な どの製造・販売事業)に適用。
徐々 に端末数を増やして、今ではリコーロ ジが運用している約一〇〇〇台の車 両のうち九割への配備を終えた。
同様の携帯端末の活用は、ヤマト 運輸や佐川急便などの宅配事業者で あれば目新しさはない。
しかし、リ コーロジのようにB to Bを手掛ける 事業者が全面的に導入するのは珍し い。
宮澤室長は、「PDAには宅配 事業者が実現しているのとほぼ同様 の機能を持たせている。
しかも、よ り業務内容に特化した使い方をして いる。
この点が当社の強みにもなっ ている」と説明する。
一般顧客向け案件に導入している 「AQUARIUM」というシステム では、物流センターの作業内容も「見 える化」した。
このように同社のI T活用は強く可視化にこだわってい る。
現場の動きをリアルタイムで把握 できるツールを管理・監督者が活用 し、業務の効率化などを図っていく ことがその目的だ。
PDAの導入に当たっても、導入 効果を期待できる業務をピックアッ プして、事前にコスト効率を検証し た。
稼働後のレビューでも、目標値 に対してほぼ一〇〇%に近い成果を 得ている。
作業ミスの低減などを金 額換算した目標値に対して、明らか な成果を確認できたという。
さらに昨年からは、循環型の回収 箱(通い箱)を管理する事業にも着 手し、そのための専用システムを今年 二月に稼働した。
この取り組みを国 内のみならず日本・中国間や中国・ フランス間などで実施しようとして いる。
「海外でやるとなると通関の話 が絡んでくる。
『貿易システム』とも 上手く連携させながら進めていく必 要がある」と原田副本部長。
このように多くのシステムを積極 的に展開していることが、同社のI T投資を競合他社に比べて高い水準 に押し上げている。
しかし今後三年 間で新たな基幹システムの導入が進 めば、目標として掲げた「運用コス トの半減にもつながるはず」と同社 はみている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) のニーズにきめ細かく応えていくに は、自らシステムを開発するのが一 番と考えている。
ただし管理系については異なる考 IT投資 循環型ロジスティクスを網羅するシステム群 循環型 ロジスティクス 回 収 調 達 受 注 輸配送 保管荷役 量販店受注代行(電器、カメラ、大手スーパー) 受注コールセンター(Rサプライ) 調達:ターミナル型S 調達:保管型S GWMS(部品供給) GS-CADIS 循環箱 リターナブル化 N−WAIS (消費期限、ABCD 補管動管 共同在庫 他) ミキシング(OPS、梱包設計) 機能アップ コンポーネント管理(部品メーカー工場向け) 工場向け帳票発行(EIAJ伝票 他) 画像系製品 在庫管理システム(WAIS-W/H MP) クロスドッキング 量販店納品向けクロスドック 折コン(無梱包)納品 支店/販社/販店一括お届け エコラック納品&状態管理S アセット管理S 物流センター可視化S(AQUARIUM) インストアラベル発行貼付 指定伝、専用伝発行 店舗別自動ソーター(OPAS) 量販店向け特殊作業 OEM キッティング・インストール 大型機マシン直送 中小型機マシン直送 8モーニング配送 1P帳票発行 現金代引納品 全国サプライ半日配送(オフィス通販共配) N−TRIS(配車、貨物追跡、WEB化) 運送PDA 届先での誤納品防止S 受領書電子データ管理S 国際物流:ARCADIAサービス 新貿易S(ARIEL) グリーン同時回収 RFID:エコラック管理S 修理品回収・返却S 流通加工 設 備 ・自動仕分け ・自動搬送 その他 ・自動認識技術 ・リペアサービス ・倉庫移転 ・大型機搬入出
それ以前は管理系と事業系 の二つのチームがあり、それぞれに システムの開発から運用までを担っ ていた。
これを新たに開発チームと 保守・運用チームに再編。
作る行為 と、運用する行為を、異なるチーム が手掛けるように改めた。
従来の体制には、運用コストが肥 大化してしまうという欠点があった。
開発と運用を同じチームで担ってい ると、目の前の荷主の要望にフィッ トしたシステムを作ろうとする意識 が先に立ち、機能の重複したシステ ムが林立してしまっていた。
保守運用の手間はシステムの数に 比例する。
しかも、リコーロジは原 則としてIT活用を内製化している ため、システムが増えるたびに担当 者を増やす必要があった。
実際、二 年前まで同社のIT部門には、協力 ITベンダーの常駐者も含めると約 一二〇人が所属。
売上高五〇〇億円 余りの物流事業者としては、目立っ て大きな組織を抱えていた。
この状態を是正して運用コストの 適正化を図ることが、IT部門の体 制を見直した最大の理由だった。
関 係者の意識を変えるために?縦割り? だったIT部門を、機能別の?横割 り?に組み替えたのである。
同社I TS本部の原田茂樹副本部長は、こ のときの組織変更を次のように説明 する。
「従来は開発に熱心なあまり、運用 をないがしろにする傾向があったこ とを否めない。
だが自分以外の人間 が作ったシステムを運用するとなる と、相互に仕事を牽制しあうように なる。
結果として品質が底上げされ、 運用の手間も削減できる。
二年前の 時点を出発点として、将来的にはシ ステムの運用コストを五〇%削減し ていく目標を掲げた」 現在、IT部門には約八〇人が 所属している。
このうち社員の数は、 毎年の新規採用でむしろ増える傾向 にある。
だが協力ITベンダーの常 駐者が大幅に少なくなったことから、 総数は三割余り減っている。
三年後の完成をめざして システム刷新を進行中 もっとも人員を減らすだけでは、運 用コストの半減という目標は達成で きない。
コストが肥大化したそもそ もの原因は、似たような機能を持っ たシステムの林立だ。
そこにメスを入 れるため、現在、新しい基幹システ ムの構築に取り組んでいる。
そのための組織として二年前のI T部門の再編時に、「システム・イノ ベーション・グループ」を新設してい る。
同グループが担っている役割は、 グローバル展開を強く意識した標準 売上高の3 %強をシステムに投資 作業管理に900台のPDAを導入 リコーロジスティクス グローバル化に対応できる標準化された基幹システムの開発を進めて いる。
これを武器に親会社の国際物流を取り込んでいく計画だ。
売上 高の3 %強という積極的なIT投資を実施して、PDA(携帯端末)を使 った作業管理システムや国際通い箱などを導入し、差別化を図ろうと している。
ITS本部の原田茂樹副本部長 組織改革 基幹システム 第24 回 ◆本社組織 本社のITS本部に約80人が所属。
この うち約35人が社員で、残りは協力ITベンダーの常駐 者。
ITS本部内の「システム開発室」に開発グループ、 運用グループ、新基幹システム開発グループがある。
◆情報子会社 直系の子会社はない。
リコーグルー プの中にはリコーテクノシステムズがあるが、リコーロジ にとっては協力ITベンダーの1社という認識。
《概要》 2007 年春にIT部門を改組した。
その際に部内に「システム・イノベー ション・グループ」を新設し、基幹システムの刷新に着手。
現在、「貿易」「生産関係」 「販売」「一般顧客向け」の4 領域で開発を進めている。
これまでは国内を中心に事業を展開してきたが、近年は国際物流にも注力。
開発中の基幹システムでもグローバル標準を強く意識している。
一部はすでに 稼働しており、システム全体の導入は2010 年度中の予定。
年間IT 投資は売上高の3% 強で、同業他社に比べるとかなり高水準。
だが削 減に取り組んでいる運用コストは順調に減っている。
今はコスト削減より、むし ろ新システムの開発などによるIT 力の強化に注力している。
57 MARCH 2009 領域を国際物流に拡大しようとして いるリコーロジの事業戦略とも合致 している。
いま同社が手掛けて いるリコーグループ向けの国際 業務は、日本からの輸出や中国 関連などごく一部だけだ。
進行 中の中期経営計画の中でも、親 会社のグローバル展開をコスト 競争力のある物流管理で支援 し、それによって自らの売上規 模も拡大することが大きなテー マになっている。
開発を進めている新たな基幹 システムは、主に四つの領域か らなる。
国内外の販売物流を まかなう「販売システム」、世 界規模の物品の動きを支える 「貿易システム」、工場回りの物 流を担う「生産関係システム」、 そしてリコーグループ以外の荷 主の業務を担う「一般向けシス テム」である。
いずれも高度に 標準化した仕組みを、グローバ ルに展開していくことを念頭に 置いている。
原田副本部長は、「グローバ ル化に対応していくためのキー ワードの一つが標準化だと理解 している。
実際、グローバルな 事業活動にはシステム運用時 の時差の影響が避けられない。
世界各地に分散した業務を処理する には、標準化された仕組みが必須に なる。
これは運用コストをスリム化し ていくという当社の方針にも沿うも のだ」と説明する。
「販売システム」も、リコーが国内 の販売管理の仕組みをリニューアル するタイミングに合わせて約二年前 に開発をスタートした。
親会社のシ ステムに新しい機能が盛り込まれれ ば、リコーロジのシステムも修正する 必要が生じる。
この機に販売物流の 基幹システムを刷新することを決め た。
二〇一〇年度をメドに新システ ムに置き換えていく方針だ。
同社が独自の判断でリニューアル を進めている「貿易」と「生産関係」 のシステムについても、〇九年度を メドに新システムを投入する。
一部 はすでに稼働しており、残りは業務 を受託しながら展開していく。
リコーロジはこれまで、グループ企 業の生産・販売活動に比べて国際展 開で遅れをとってきた。
しかし近年 は、中国で生産関係の物流業務を手 掛けているのに加え、北米で業務を 受託する準備も進めている。
直近の ターゲットは、リコーが今年九月に新 工場の稼働を予定しているタイでの 受託だ。
この案件でリコーロジは、初めて 海外工場が稼働する前の段階からプ ロジェクトに参画した。
グループの一 員といえども、国際物流の実績に乏 しい同社の立場は協力物流事業者の 一社にすぎない。
それでも計画段階 から入り込むことで、物流子会社と しての優位性を発揮できる可能性は 高まる。
すでに親会社は全世界の工場を共 通のシステムで管理している。
リコ ーロジがグローバル標準を意識しなが ら構築している「生産関係システム」 をタイの新工場に導入し、効果を実 証できれば、他地域での受託にも弾 みがつくはずだ。
その意味でタイで の活動は、リコーロジの今後の国際 展開を左右する試金石となる。
グループ経営強化で 外販拡大路線を修正 四番目の「一般向け」については、 上記三つの新システムを活用しなが ら、荷主の個別ニーズに対応できる 仕組みを構築していく考えだ。
ただ し、これによって外販比率の拡大を 狙っているわけではない。
一九九〇年代のリコーロジは、株 式の上場をめざして、必要条件の一 つとされていた外販比率三〇%を経 営目標の一つに置いていた。
しかし 連結会計の強化などによって、リコ 的な新・基幹システムの構築だ。
このシステム開発の動きは、業務 グループ戦略 基幹物流システムの概要図 依頼情報 営業・管理プロセス 購買情報 売上情報 業務プロセス 一気通貫(SCM) 進捗予実績管理システム 納品・集荷 入庫・出庫 包装情報 調達 物流 生産 物流 販売 物流 回収 リサイクル 物流 EDI 各種情報送受信照会 運送システム ■コントロール機能 ・配車支援 ・指定納品書発行 ・運送業者とのEDI ・環境負荷情報収集/報告 ■運転手サポート機能 ・運送PDA ・配送予定時間お知らせ ・配送検品、実績報告 ・リサイクル品回収 運送PDA 画面 リサイクル機─WMS ・RFリサイクル管理 ・RFエコラック管理 包装材購買 システム 受注プロセス 配車地域配送 運送プロセス倉庫・保管プロセス包装プロセス 幹線輸送設置/荷卸集荷・回収在庫管理ピッキング工場内作業設計発注・購買在庫管理 確定情報 売上・購買 売上・購買 予定情報 売上情報見積情報 販売品-WMS ・RFデジタル確認 ・梱包設計 ・自動仕分 生産品-WMS ・完成品管理(固体管理) ・リターナブル品管理 部品、部材─WMS(VMI 含む) MARCH 2009 58 ーグループの経営方針は大きく変わ った。
リコーロジにも、親会社に対 する貢献を第一としながら、独立し た事業体としても収益性を高めてい くという難しい舵取りが求められる ことになった。
現在のリコーロジは外販比率の拡 大に向けた数値目標を設定していな い。
外販案件は一つひとつ厳しく収 益性が吟味される。
こうした事情か ら、近年の外販比率は二〇%強のま ま横ばいで推移している。
外販案件で一定の収益を確保する には、得意分野への業務の絞り込み や、これに対応した仕組みの構築が 欠かせない。
そのためには物流業務 そのものの標準化や、業務内容に応 じたシステムの切り分けが必要だ。
リ コーロジの社内では、こうした活動 を「LT」(ロジスティクス・テクノ ロジー)と呼ばれるセクションが担っ ている。
技術革新本部LT推進室の 宮澤聡室長は、こう強調する。
「我が社が一般事業に注力しはじめ てから、すでに数多くの案件を手掛 けてきた。
ノウハウもかなり貯まっ ている。
今は主に通販事業、量販店 向け納品、半導体事業の三つの領域 で活動しているが、まずはそうした 切り口から業務やシステムのパッケー ジ化を図っていく。
〇九年度中に具 体化していきたい。
簡単ではないが、 十分に手応えはある」 リコーロジにとってLTとITは、 物流事業者として独自の強みを発揮 していくための?両輪?だ。
この二 つを武器に、荷主にソリューションを 提供していこうとしている。
新シス テムを有効なツールに育て上げるこ とができるかどうかも、両部門の活 動にかかっている。
事業システムは自前主義 管理系はパッケージも リコーグループには、リコーテクノ システムズ(RTS)という有力な ITベンダーが存在する。
しかしリ コーロジにとって、RTSは協力I Tベンダーの一社にすぎない。
リコー の国際展開においてリコーロジが協 力物流事業者の一つでしかないのと 同様のビジネスライクな関係にある。
もちろんグループで相乗効果を発 揮できるインフラやネットワークにつ いては、RTSを活用している。
し かし、それ以外のシステム開発につ いては取引関係にある中堅ITベン ダーを活用するケースが多い。
ITS部門に常駐している五〇人 弱の「パートナー従業員」も、ほと んどがこうした中堅ベンダーの社員 たちだ。
パートナー従業員は開発や 運用の実務の多くを担っており、社 員が手掛ける業務と内容的にもかな りクロスオーバーしている。
「当社は毎週月曜に開催している会 議で、検討対象に上っているシステ ムを実際に開発するかどうか判断し ている。
この会議の出席者は七割が パートナーさんで、当社の社員は三 割。
皆が同じ立場で出席する。
パー トナーさんの大部分はシステムエンジ ニアで、場合によっては自分で構想 したシステムのプレゼンも行う」(原 田副本部長)という。
以前は運用を担うパートナー従業 員が年々増加する傾向にあったが、前 述したとおり最近二年間で、その総 数を減らしてきた。
その一方で、I Tに精通した社員の育成は積極的に すすめている。
毎年二、三人の社員をIT部門に 新たに配属して、ITの素養を持っ た物流マンとして育てている。
IT 部門で一定のスキルを身につけると、 営業や現業部門と人材をローテーシ ョンさせる。
その結果としてIT部 門に所属する社員の数は、現状では 三五人程度で落ち着いている。
事業で使うシステム開発の基本は ?自前主義?だ。
プログラミングなど の実務を外注することはあっても、概 要設計や要件定義は原則としてすべ て社内でまかなっている。
LT推進 室が現場から吸い上げてきたニーズ を、ITS本部が仕組みとして具現 化するケースも少なくない。
実際、国内の事業系の仕組みにつ いては、すべて自分たちが主導して 構築したものを使っている。
海外で は一部の拠点でWMSパッケージも 採用しているが、これは現場での運 用を考慮した例外にすぎない。
荷主 開発方針 技術革新本部LT推進室の 宮澤聡室長 PDA を活用した作業管理 59 MARCH 2009 え方を採っている。
人事や給与計算 などではリコーグループの共通システ ムを採用しており、ここではパッケ ージの利用もいとわない。
また、勘 定科目の違いなどからグループで共 通化していない会計システムについ てもパッケージを導入している。
車載端末から通い箱まで 多彩なシステムを展開 リコーロジは現在、単体売上高五 四六億円(〇七年度)の三%強を ITに投じている。
ここにはインフ ラの維持コストからネットワーク費 用、人件費などすべてが含まれてい る。
競合他社とは計上方法などが異 なる面もあり単純な比較はできない が、一般的な物流事業者の年間IT 投資に比べるとかなり高い水準にあ る。
運用コストだけを見れば、五年前に 比べると二億円ほど減っている。
し かし、IT投資の絶対額そのものは、 売上高に応じて増加傾向にある。
そ して、この伸びを無理に抑制しよう とは考えていない。
むしろ積極的に 多彩なシステムを展開している。
最近では一億円余りを投じてPD A(携帯端末)を利用した作業管理 システムを開発した。
同社は九〇年 代に、衛星を使った動態管理システ ムをいち早く導入した実績を持つが、 このシステムでは車両の管理までし かできなかった。
これを一歩進めて、 配送車両のドライバーや作業者の業 務そのものを「見える化」し、効率 化につなげていく狙いだ。
〇七年四月に、まずリコーグループ のサプライ事業(OA機器のトナーな どを顧客に供給する事業)の運送業 務に導入した。
さらに昨年四月には、 同じく親会社のマシン事業(複写機な どの製造・販売事業)に適用。
徐々 に端末数を増やして、今ではリコーロ ジが運用している約一〇〇〇台の車 両のうち九割への配備を終えた。
同様の携帯端末の活用は、ヤマト 運輸や佐川急便などの宅配事業者で あれば目新しさはない。
しかし、リ コーロジのようにB to Bを手掛ける 事業者が全面的に導入するのは珍し い。
宮澤室長は、「PDAには宅配 事業者が実現しているのとほぼ同様 の機能を持たせている。
しかも、よ り業務内容に特化した使い方をして いる。
この点が当社の強みにもなっ ている」と説明する。
一般顧客向け案件に導入している 「AQUARIUM」というシステム では、物流センターの作業内容も「見 える化」した。
このように同社のI T活用は強く可視化にこだわってい る。
現場の動きをリアルタイムで把握 できるツールを管理・監督者が活用 し、業務の効率化などを図っていく ことがその目的だ。
PDAの導入に当たっても、導入 効果を期待できる業務をピックアッ プして、事前にコスト効率を検証し た。
稼働後のレビューでも、目標値 に対してほぼ一〇〇%に近い成果を 得ている。
作業ミスの低減などを金 額換算した目標値に対して、明らか な成果を確認できたという。
さらに昨年からは、循環型の回収 箱(通い箱)を管理する事業にも着 手し、そのための専用システムを今年 二月に稼働した。
この取り組みを国 内のみならず日本・中国間や中国・ フランス間などで実施しようとして いる。
「海外でやるとなると通関の話 が絡んでくる。
『貿易システム』とも 上手く連携させながら進めていく必 要がある」と原田副本部長。
このように多くのシステムを積極 的に展開していることが、同社のI T投資を競合他社に比べて高い水準 に押し上げている。
しかし今後三年 間で新たな基幹システムの導入が進 めば、目標として掲げた「運用コス トの半減にもつながるはず」と同社 はみている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) のニーズにきめ細かく応えていくに は、自らシステムを開発するのが一 番と考えている。
ただし管理系については異なる考 IT投資 循環型ロジスティクスを網羅するシステム群 循環型 ロジスティクス 回 収 調 達 受 注 輸配送 保管荷役 量販店受注代行(電器、カメラ、大手スーパー) 受注コールセンター(Rサプライ) 調達:ターミナル型S 調達:保管型S GWMS(部品供給) GS-CADIS 循環箱 リターナブル化 N−WAIS (消費期限、ABCD 補管動管 共同在庫 他) ミキシング(OPS、梱包設計) 機能アップ コンポーネント管理(部品メーカー工場向け) 工場向け帳票発行(EIAJ伝票 他) 画像系製品 在庫管理システム(WAIS-W/H MP) クロスドッキング 量販店納品向けクロスドック 折コン(無梱包)納品 支店/販社/販店一括お届け エコラック納品&状態管理S アセット管理S 物流センター可視化S(AQUARIUM) インストアラベル発行貼付 指定伝、専用伝発行 店舗別自動ソーター(OPAS) 量販店向け特殊作業 OEM キッティング・インストール 大型機マシン直送 中小型機マシン直送 8モーニング配送 1P帳票発行 現金代引納品 全国サプライ半日配送(オフィス通販共配) N−TRIS(配車、貨物追跡、WEB化) 運送PDA 届先での誤納品防止S 受領書電子データ管理S 国際物流:ARCADIAサービス 新貿易S(ARIEL) グリーン同時回収 RFID:エコラック管理S 修理品回収・返却S 流通加工 設 備 ・自動仕分け ・自動搬送 その他 ・自動認識技術 ・リペアサービス ・倉庫移転 ・大型機搬入出
