2009年3月号
特集

物流不動産ファンド 日本ロジスティクスファンド

MARCH 2009  20 日本ロジスティクスファンド ──借入金比率を3 倍に引き上げ買い向かう  信用収縮で身動きのとれない他のファンドをよそに、借 入金の比率を3 倍に引き上げて優良物件の取得に動く。
無借金で出発し、その後も有利子負債比率を抑え、堅実 経営に徹してきた。
しかし、Sクラス物件の投げ売りが始 まった現在は、低リスク・高リターンを見込める絶好の買 い場だと判断している。
       (聞き手・石鍋 圭) 安定した財務基盤 ──物流不動産バブルが崩壊しました。
 「確かに一般論で言えば不動産市況全体が悪化し ている。
投資家や金融機関からの資金調達が難しく なっています。
収益の源泉である賃料も下落傾向に ある。
これは物量の急減、荷動きの鈍化によるとこ ろが大きい。
現在、開発案件を抱えていて、これか らリーシングをしなければならない事業者にとっては 非常に厳しい局面でしょう」  「翻って当社が運用している日本ロジスティクス ファンド(NLF)は二〇〇五年の上場以来、ほぼ 計画通りの成長を遂げています。
現在の資産規模は 一〇〇二億円。
保有物件数は二四で、いずれも満室 稼働を実現しています。
今期の成長予測にも変更は ありません」  「新規テナントとの賃貸借契約は基本的に長期で結 んでいます。
懸念されている賃料の下落圧力が無い わけではありませんが、オフィスや商業施設ほどの下 落率にはなりません。
また、多くのファンドは出口 戦略として物件の売却を視野に入れますが、我々は 考えない。
我々自身が『出口』だと考えています。
収益が大きく上下するよりも一定の利回りを提供し た方が投資家にも喜ばれる」 ──有利子負債比率(LTV)も他のファンドと比 べて極めて低い。
 「現在のLTVは約一〇%。
ご指摘のとおりこれ は非常に低い水準です。
借入金が少ないということ は財務基盤がそれだけ安定しているということですか ら、金融機関から融資を受けられる余力は他社に比 べて大きい。
近くLTVを三〇%程度まで引き上げ、 積極的に投資をしていくつもりです」 ──他社が身動きのとれない今こそが「買い場」と いうことでしょうか。
 「その通りです。
Sクラスと言われる優良物件が格 安の価格で数多く出回っている。
買って欲しいとい う引き合いも多い。
そして競合は身動きがとれない。
それが今の状況です。
我々にとっては大きなチャンス といえます」  「ですが、その全てを買えるほどの資金力はありま せん。
LTVを三〇%に引き上げるといっても、金 額にして残り二〇〇億円強にすぎない。
また、公募 増資で資金を調達しようにも現在の投資口価格(注: 一般企業の株価に相当)ではなかなか難しい。
取得 する物件の見極めがこれまで以上に重要になります」 ──NLFの保有している不動産資産は、鑑定評価 額ベースでは一口当たり九〇万円程度と計算できま す。
それに対して現在の市場の評価は五〇万円前後。
これは売られ過ぎですか。
 「我々は投資口価格自体の是非については言及をし ないようにしています。
投資口価格はNLFの業績 だけでなく、ダウや日経平均といった市場にリンク します。
我々としてはIRへの注力など自社で努力 すべきところはして、相場の回復を待つしかない。
継続的に公募増資をして投資するというのがREI Tの基本。
そうでなければ上場している意義が無い」 ──LTVを三〇%と言わず、他のファンドのよう に五〇%以上に引き上げるという選択肢は? 借入 金を増やし、レバレッジを効かせて積極的な投資を すればさらに利回りも上がる。
 「我々の投資家が何を望んでいるのかという問題で す。
確かにそのように考える方もいるでしょう。
です が我々に投資をして下さる方の多くは、安定した利 回りを望んでいると認識しています。
結果、投資・ 三井物産ロジスティクス・パートナーズ 辻博正 取締役投資運用部長 Interview 21  MARCH 2009 運用方法も堅くなる。
これは組成以来、一貫したス タイルです。
ハイリスク・ハイリターンを最重要視 する投資家には満足できる金融商品ではないでしょ うね。
逆説的ですが、そういった堅いスタイルを貫 いてきたからこそ、今回のような局面で打って出るだ けの経営基盤が出来ていると自負しています」 市場は熱狂していた ──上場当初は無借金でしたが、〇七年からわずか ながら融資を受け入れています。
無借金の方がより 堅いスタイルといえるのでは。
 「誤解の無いように言いますが、我々は借入金を避 けているわけではありません。
あくまでリスクバラン スの問題です。
我々にとってのリスクは大きく二つ。
一つは借入金。
もう一つはテナント数です。
居住者 がテナントとなる住宅系ファンドなどと比べると、物 流施設ファンドはテナント数が少ない。
これは退去 の際のインパクトが大きく、リスキーといえます。
テ ナントが少ない上に借入金を受け入れれば、財務と ポートフォリオの両面でリスクをとることになる。
そ のため上場当初に借入金を受け入れるという選択は できなかった。
それでも他に見劣りしない配当金を 出せていたのは、初の物流施設特化型REITとし て、優良物件を青田買い出来たことが大きい」  「資産規模の成長と共に、テナント数と物件数も 増えてきました。
現在のテナント数は約三〇社。
ま だまだ十分とはいえませんが、ポートフォリオ面のリ スクは以前に比べて軽減した。
その分、借入金を受 け入れて多少の財務リスクをとれるようになったとい うことです。
リスクの総量自体は変わっていません」 ──確かに他の大手物流施設ファンドが積極的に開 発・投資を進めてきたこの数年、NLFの動きはあ まり目立ちませんでした。
 「不動産市況の高騰ぶりは、まさに異常でした。
N LFの株価も一時一四一万円をつけた。
当時の利回 りは一・八%。
これは国債と同じ水準です。
物流不 動産は保有・運営によって得られるインカム・ゲイン に基軸を置くべきなのに、当時は売却益をとるキャピ タル・ゲイン重視の傾向が強かった。
市場は熱狂し ていました。
我々はそれを非常に冷めた目で見ていた。
一緒に踊ることはない。
このまま上がり続けるはずは ないと。
あくまで安定した成長にこだわりました」 ──今となってはその姿勢が奏功した形ですが、当 時は投資家に相当せっつかれたのでは。
 「正直言ってかなり厳しいお声をいただくこともあ りました。
もっと大きく資産を運用して利回りを上 げろと。
ところが最近の投資家回りでは反応が一変 しています。
我々の考え方は間違っていなかったと素 直に嬉しく思っています」 ──ところで一貫して高い入居率を誇っていますが、 その秘訣は。
 「重要なのは施設のスペックと立地です。
これがしっ かりニーズに合っていれば入居者は自ずと決まる。
ス ペックといっても高機能すぎる施設は避け、汎用性 の高い施設を選んでいます。
テナントとは長期の契 約が基本ですが、もし退去があっても汎用性の高い 施設であれば空室を埋めやすい。
新規開発する場合 も同様です。
物流施設の坪賃料は一〇〇円玉一枚、 二枚の攻防。
いくら高機能施設を造っても、マンショ ンのようにはコストを価格転嫁することができません」 ──今後の目標は。
 「当面は資産規模三〇〇〇億円、一〇〇物件を目 指します。
ただし極端な急成長は望みません。
ポリシー は曲げないというのが前提です」 有利子負債比率(LTV)の推移 100 80 60 40 20 0 0.0 0.0 0.0 0.0 8.2 14.1 30 第1期第2期第3期第4期第5期第6期今後 (06/1)(06/7)(07/1)(07/7)(08/1)(08/7) 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 会社概要 三井物産ロジスティクス・パートナーズ  唯一の物流施設特化型のREIT「日本ロジス ティクスファンド」の資産運用会社。
設立は 2004年。
株主構成は三井物産(51%)、中央 三井信託銀行(29 %)、ケネディクス(20 %) の3社。
運用している日本ロジスティクスファ ンドの資産規模は1002億円で、物件数は24。
上場当時の借入金はゼロ。
その後も低い借入金 比率を維持し、堅実な投資・運用を行ってきた。

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