2009年3月号
特集
特集
物流不動産ファンド ラサールインベストメントマネジメント
MARCH 2009 22
ラサールインベストメントマネジメント
──今後3 年で3600 億円規模の投資
昨年夏に3年で3600億円という強気の投資計画を
表明。
金融ショックの影響で遅れが予想されるものの、 積極姿勢は変わらない。
「市場に供給されている大型・ 高機能な物流施設はわずか3%」と判断し、そこに 事業機会を見出している。
(聞き手・石鍋 圭) 未成熟で不透明な市場 ──物流不動産市場の現在の局面をどう見ますか。
「停滞しています。
やはりキャピタルマーケットの 影響が大きい。
資金の流動性が著しく鈍化しています。
ただ、需要側のファンダメンタルは悪くない。
物流 施設はオフィスや商業施設に比べて、テナント波動 が小さく、安定しています。
この局面でも、その性 格はしっかり担保されている」 ──昨年までと打って変わり、新規開発案件の話を ほとんど聞かなくなった。
やはり各社、資金調達に 苦労しているようです。
「特にデッドの部分に関してはどこもそうでしょう。
物流施設はオフィスや商業施設、住宅といった不動 産の中で、一番最後に投資対象になった。
マーケッ トの歴史は浅く、未成熟です。
レンダーからすれば、 透明性に欠ける融資しにくいマーケットということに なる。
金融環境が良好な時なら問題ありませんが、 こういう局面ではやはり資金調達は相対的に難しく なる」 ──物流不動産市場が成熟するためには何が必要で しょうか。
「オフィスや商業施設であれば賃料や物件のデータ ベースがある程度揃っていますが、物流施設に関し てはまだまだ少ない。
また、仲介業者やプロパティ マネジメント(PM)業者も不足しています。
こう した情報やインフラの整備が不可欠。
この部分がク リアになってくれば、マーケットの透明度も増し、 レンダーからの信頼も高くなる」 「そうなれば究極的には我々もリーシングやPM業 務をやる必要が無くなります。
資産運用者として財 務面、不動産の目利きという本来的な業務に集中し ていくはず。
それが物流不動産市場では進んでいな い。
結果、我々がそれらの業務を全て行っています。
逆に言えば、それが全て出来る方々が今の物流不動 産市場のプレーヤーとして残っている。
極めて参入 障壁の高いマーケットといえます」 ──そのプレーヤーが提供してきた大型高機能施設 は供給過剰という声が上がっていますが。
「確かに短期的には空室率が上がっています。
ただ、 物流企業が欲しがっている大型で高機能な物流施設 は市場全体のわずか三%にすぎない。
著しく不足し ています。
現状と潜在的な需要の間に大きなミスマッ チがある。
今後は三%という数字が順次置き換えら れていくプロセスが進むでしょう。
テナントニーズは 確実に大型で高機能な施設へとシフトしているので すから」 ──置き換えがある程度完了するまでに、どれくら いの期間を要すると考えていますか。
「それはわかりません。
一〇年かもしれないし、二 〇年かかるかも知れない。
ただ、はっきり言えるのは、 『ニーズは振れながら発展していく』ということです。
これはコンピューターシステムの中央集権型と分散型 の関係に似ている。
大きなセントラルサーバーに各P Cがぶら下がっている中央集権型システムと、各P Cに権限を与えて処理をしていく分散型システムは、 一〇年くらいの周期で主流が交代してきました。
そ の変遷を辿る中で、それぞれのシステムが進化して いく。
高機能化していく。
物流施設に関しても同じ です。
今は中央集権型の時代、つまり高機能施設の 時代ですが、過去には小型の倉庫が主流の時代があっ た。
ヤマト運輸が小さなデポをたくさん広めたことも ある。
今後、そういった流れが来る可能性はある。
ただ、基幹センターはいつの時代も高機能であり続 中嶋康雄 代表取締役兼CEO Interview 23 MARCH 2009 ける宿命を負わされているし、さらに進化していくこ とが求められるのです」 ──大型案件の開発に適した用地がそんなに潤沢に あるとは思えません。
「そうでしょうか。
物流施設の建設用地の供給元は 製造業者の工場跡地がメーンです。
現在は折からの 不況で製造業が生産調整に入っている。
工場の新規 建設などもストップしている案件がある。
早晩、閉 鎖する工場なども少なからず出てくる可能性は高い。
そのなかから物流施設に適した用地も出てくるので はないのでしょうか」 土地代が下がれば設計も変わる ──昨年夏に、今後三年間で物流不動産に三六〇〇 億円の投資をすると表明しました。
「ラサール日本ロジスティクスファンド1号、2号 を〇四年と〇七年に組成しました。
1号については 約一八〇〇億円の投資がすでに完了しています。
今 後の案件については順次2号に組み入れていく予定 です」 「金融恐慌があったので時間軸は多少ずれるかもし れませんが、積極的に投資をしていく方針に変更は ありません。
先ほども申し上げたように、物流企業 の高機能施設へのニーズは拡大しています。
そして、 その数は三%という数字が示すように著しく少ない。
そこに我々の事業機会が存在するのです」 ──今は土地代が下がっている、テナントニーズもあ る、用地もある。
開発するには悪くない時期という ことでしょうか? 「はい。
ローコストで質の高い施設を提供しやすい タイミングだと思います。
これはユーザーから見ても 非常に良いこと。
物流施設は本来的には低層のほう が使いやすい。
ただ、これまでは土地代が高かった ため高層の施設を造らざるを得なかった。
土地代の 負担を薄めるためには、容積率いっぱいに建物をた てなければいけなかった。
今後、土地代のクッション が出てくれば、ユーザーにとってさらに使いやすい施 設を提供することができます。
例えば同じ賃料でも 五階建ての施設ではなく、二階建ての施設でオペレー ションをできる時代がくるかもしれない」 ──三六〇〇億円の投資が完了すれば物流施設の資 産規模は六〇〇〇億円に迫ります。
「資産規模はあまり重要視していません。
ただ、自 然に投資していけば適正に拡大していきます。
先ほ ど言ったように我々は既に参入障壁の高いマーケッ トに入っている。
開発もリーシングもPMもできる。
マーケットのニーズに応え続けていけば、健全な成長 を続けることができるでしょう」 ──他のプレーヤーと比較して、御社の強みはどこ にあるのでしょうか。
「社名にあるとおりインベストメント・マネジメン トの部分。
我々は投資家にとって、最も合理性の高 い投資スキルを持ったパートナーです。
投資効率を 上げることに関しては絶対の自信がある。
先ほどか ら開発の話がメーンになっていますが、我々にとって 開発は一つの手段でしかありません。
他にも倉庫の リニューアルやセールス&リースバックなど様々な投 資ノウハウがある。
また、開発一つとってもいろいろ な手法がある。
例えば、冷蔵・冷凍倉庫であれば、 設備の部分はリース会社の資金を使い、建物は投資 ファンドの資金を用いる。
そこに借り入れをブレンド したり、と。
資金にもいろいろ種類があるので、そ れをうまく運用し、産業界の各ニーズとマッチングす るのが我々の役割です」 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 会社概要 ラサールインベストメントマネジメント 世界最大規模の不動産サービスグループ、ジョーンズラングラサー ル傘下の不動産投資顧問会社。
本社は米国シカゴ。
主に機関投資 家の資金を世界の物流施設、商業施設、オフィス、住宅などの不 動産に投資し、複数のファンドで運用している。
2008年9月末現 在の運用総資産額は496億ドル(約4兆5000億円)。
日本法人は 01年の設立。
物流分野においては03年、江東区若洲の土地を取得し、 物流施設の開発プロジェクトに着手した。
04年と07年に「ラサー ル日本ロジスティクスファンド1号・2号」を組成。
1号に関しては 1800億円の投資を完了している。
昨年、物流施設を対象に、3年 間で3600億円を投資すると表明した。
金融ショックの影響で遅れが予想されるものの、 積極姿勢は変わらない。
「市場に供給されている大型・ 高機能な物流施設はわずか3%」と判断し、そこに 事業機会を見出している。
(聞き手・石鍋 圭) 未成熟で不透明な市場 ──物流不動産市場の現在の局面をどう見ますか。
「停滞しています。
やはりキャピタルマーケットの 影響が大きい。
資金の流動性が著しく鈍化しています。
ただ、需要側のファンダメンタルは悪くない。
物流 施設はオフィスや商業施設に比べて、テナント波動 が小さく、安定しています。
この局面でも、その性 格はしっかり担保されている」 ──昨年までと打って変わり、新規開発案件の話を ほとんど聞かなくなった。
やはり各社、資金調達に 苦労しているようです。
「特にデッドの部分に関してはどこもそうでしょう。
物流施設はオフィスや商業施設、住宅といった不動 産の中で、一番最後に投資対象になった。
マーケッ トの歴史は浅く、未成熟です。
レンダーからすれば、 透明性に欠ける融資しにくいマーケットということに なる。
金融環境が良好な時なら問題ありませんが、 こういう局面ではやはり資金調達は相対的に難しく なる」 ──物流不動産市場が成熟するためには何が必要で しょうか。
「オフィスや商業施設であれば賃料や物件のデータ ベースがある程度揃っていますが、物流施設に関し てはまだまだ少ない。
また、仲介業者やプロパティ マネジメント(PM)業者も不足しています。
こう した情報やインフラの整備が不可欠。
この部分がク リアになってくれば、マーケットの透明度も増し、 レンダーからの信頼も高くなる」 「そうなれば究極的には我々もリーシングやPM業 務をやる必要が無くなります。
資産運用者として財 務面、不動産の目利きという本来的な業務に集中し ていくはず。
それが物流不動産市場では進んでいな い。
結果、我々がそれらの業務を全て行っています。
逆に言えば、それが全て出来る方々が今の物流不動 産市場のプレーヤーとして残っている。
極めて参入 障壁の高いマーケットといえます」 ──そのプレーヤーが提供してきた大型高機能施設 は供給過剰という声が上がっていますが。
「確かに短期的には空室率が上がっています。
ただ、 物流企業が欲しがっている大型で高機能な物流施設 は市場全体のわずか三%にすぎない。
著しく不足し ています。
現状と潜在的な需要の間に大きなミスマッ チがある。
今後は三%という数字が順次置き換えら れていくプロセスが進むでしょう。
テナントニーズは 確実に大型で高機能な施設へとシフトしているので すから」 ──置き換えがある程度完了するまでに、どれくら いの期間を要すると考えていますか。
「それはわかりません。
一〇年かもしれないし、二 〇年かかるかも知れない。
ただ、はっきり言えるのは、 『ニーズは振れながら発展していく』ということです。
これはコンピューターシステムの中央集権型と分散型 の関係に似ている。
大きなセントラルサーバーに各P Cがぶら下がっている中央集権型システムと、各P Cに権限を与えて処理をしていく分散型システムは、 一〇年くらいの周期で主流が交代してきました。
そ の変遷を辿る中で、それぞれのシステムが進化して いく。
高機能化していく。
物流施設に関しても同じ です。
今は中央集権型の時代、つまり高機能施設の 時代ですが、過去には小型の倉庫が主流の時代があっ た。
ヤマト運輸が小さなデポをたくさん広めたことも ある。
今後、そういった流れが来る可能性はある。
ただ、基幹センターはいつの時代も高機能であり続 中嶋康雄 代表取締役兼CEO Interview 23 MARCH 2009 ける宿命を負わされているし、さらに進化していくこ とが求められるのです」 ──大型案件の開発に適した用地がそんなに潤沢に あるとは思えません。
「そうでしょうか。
物流施設の建設用地の供給元は 製造業者の工場跡地がメーンです。
現在は折からの 不況で製造業が生産調整に入っている。
工場の新規 建設などもストップしている案件がある。
早晩、閉 鎖する工場なども少なからず出てくる可能性は高い。
そのなかから物流施設に適した用地も出てくるので はないのでしょうか」 土地代が下がれば設計も変わる ──昨年夏に、今後三年間で物流不動産に三六〇〇 億円の投資をすると表明しました。
「ラサール日本ロジスティクスファンド1号、2号 を〇四年と〇七年に組成しました。
1号については 約一八〇〇億円の投資がすでに完了しています。
今 後の案件については順次2号に組み入れていく予定 です」 「金融恐慌があったので時間軸は多少ずれるかもし れませんが、積極的に投資をしていく方針に変更は ありません。
先ほども申し上げたように、物流企業 の高機能施設へのニーズは拡大しています。
そして、 その数は三%という数字が示すように著しく少ない。
そこに我々の事業機会が存在するのです」 ──今は土地代が下がっている、テナントニーズもあ る、用地もある。
開発するには悪くない時期という ことでしょうか? 「はい。
ローコストで質の高い施設を提供しやすい タイミングだと思います。
これはユーザーから見ても 非常に良いこと。
物流施設は本来的には低層のほう が使いやすい。
ただ、これまでは土地代が高かった ため高層の施設を造らざるを得なかった。
土地代の 負担を薄めるためには、容積率いっぱいに建物をた てなければいけなかった。
今後、土地代のクッション が出てくれば、ユーザーにとってさらに使いやすい施 設を提供することができます。
例えば同じ賃料でも 五階建ての施設ではなく、二階建ての施設でオペレー ションをできる時代がくるかもしれない」 ──三六〇〇億円の投資が完了すれば物流施設の資 産規模は六〇〇〇億円に迫ります。
「資産規模はあまり重要視していません。
ただ、自 然に投資していけば適正に拡大していきます。
先ほ ど言ったように我々は既に参入障壁の高いマーケッ トに入っている。
開発もリーシングもPMもできる。
マーケットのニーズに応え続けていけば、健全な成長 を続けることができるでしょう」 ──他のプレーヤーと比較して、御社の強みはどこ にあるのでしょうか。
「社名にあるとおりインベストメント・マネジメン トの部分。
我々は投資家にとって、最も合理性の高 い投資スキルを持ったパートナーです。
投資効率を 上げることに関しては絶対の自信がある。
先ほどか ら開発の話がメーンになっていますが、我々にとって 開発は一つの手段でしかありません。
他にも倉庫の リニューアルやセールス&リースバックなど様々な投 資ノウハウがある。
また、開発一つとってもいろいろ な手法がある。
例えば、冷蔵・冷凍倉庫であれば、 設備の部分はリース会社の資金を使い、建物は投資 ファンドの資金を用いる。
そこに借り入れをブレンド したり、と。
資金にもいろいろ種類があるので、そ れをうまく運用し、産業界の各ニーズとマッチングす るのが我々の役割です」 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 会社概要 ラサールインベストメントマネジメント 世界最大規模の不動産サービスグループ、ジョーンズラングラサー ル傘下の不動産投資顧問会社。
本社は米国シカゴ。
主に機関投資 家の資金を世界の物流施設、商業施設、オフィス、住宅などの不 動産に投資し、複数のファンドで運用している。
2008年9月末現 在の運用総資産額は496億ドル(約4兆5000億円)。
日本法人は 01年の設立。
物流分野においては03年、江東区若洲の土地を取得し、 物流施設の開発プロジェクトに着手した。
04年と07年に「ラサー ル日本ロジスティクスファンド1号・2号」を組成。
1号に関しては 1800億円の投資を完了している。
昨年、物流施設を対象に、3年 間で3600億円を投資すると表明した。
