2009年3月号
特集
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物流不動産ファンド ババを引いたのは誰だ
ババを引いたのは誰だ
突如として弾けた物流不動産バブル。
その水面下で は、いったい何が起こっていたのか。
不動産の証券化 は物流市場に何をもたらしたのか。
今後は誰が物流不 動産を所有することになるのか。
物流不動産業界の深 層を知る関係者たちが本音をぶつけ合った。
物流用地高騰のロジック 司会(本誌編集部) 物流不動産ファンドの乱立は結 局、バブルだったのだろうか。
A(倉庫会社幹部) 金融の視点に立つか、物流の視 点に立つのかでその答えは変わってくる。
金融面か ら見ればバブルだろう。
しかし、物流面から見れば、 ファンドが建設した大規模施設は、サプライチェーン の効率化に明らかに貢献する。
多少賃料が割高でも その価値はある。
B(不動産会社幹部) それでも需要を無視して増え 過ぎたことは否定できない。
実際、今は倉庫の空き を埋めるのにどこも四苦八苦している。
C(物流コンサルタント) オフィスや商業施設しか 知らない物流の素人が作った大規模施設はとくにそ うだ。
本当にフル稼働したら周辺の道路が渋滞でパ ンクするような施設がいくつもある。
司会 一九九〇年代に土地神話が崩壊して以降、日 本の不動産価格も収益還元法で決まるようになった ため、二度と土地バブルは起きないと一般には言わ れていた。
ところが、物流ファンドが付けた価格は 最初から高過ぎたように思う。
二〇〇四年の初めに、 AMBブラックパイン(現在のAMBプロパティジャ パン)が成田で約四万坪の土地を買収して一六五億 円を投じて物流施設を作ると聞いた時には、それで 採算が取れるのか疑問に感じた。
B 確かにその時点で大手フォワーダーは既に自前の 施設を成田に手当てしていた。
具体的に誰が使うの かという問題はあった。
それでも当時のAMBの値 付けには、それなりに裏付けはあった。
長期的に見 れば成田の航空貨物が増えることも間違いなかった。
司会 これもAMBだったが東京都が競売に出した 大田区の土地に坪一八〇万円という値段を付けたこ ともあった。
A 我々倉庫会社の常識だと倉庫用地の上限はせい ぜい五〇万円。
なぜ一八〇万円なんていう値段が付 くのか当時は全く理解できなかった。
しかし、後から 詳しい人間に解説してもらったところ、その土地は容 積率が四〇〇%あって多層階の施設が建つ。
一八〇万 を四で割れば四五万円だから計算が合う。
C そのためのランプウェーだ。
ランプウェーを付け れば上層階でも一階と同じ家賃がとれる。
司会 しかし、一八〇万は土地の価格であって建物 の価格は入っていない。
多層階となれば建築費も高 くなる。
普通の倉庫の建築費が坪二〇万程度だとし ても、その倍近くかかるはず。
C いやそうでもない。
一棟だけ建てる場合にはそ の値段でも、大型施設を大量に建設するとなれば、 あるいはプロが建てれば実際の建築費は素人が考え るよりもずっと安くなる。
司会 ということは金融的に見ても物流不動産はバ ブルではなかった? B プロの開発会社が土地を仕入れてテナントを集め る段階ではバブルではなかった。
ただし開発会社がテ ナント付きの物件をファンドに売却する時には、あり 得ないマージンを乗せていた。
その値段で買ってもフ ァンドは、それを証券化すれば買い手が付いたので 結局、自分の懐は痛まない。
最終的には個人も含め た投資家が高値で物件を掴まされたことになる。
A なかには物件をファンドに売るために、大手企 業と結託して一時的にテナントに入ってもらうケース もあるとか。
ファンド側でもそれを分かっているのだ けれど、それで投資家に証券が売れるなら構わない。
そこまで行けば詐欺行為だ。
MARCH 2009 24 覆面座談会 緊急企画 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 司会 そんなファンドに対して格付け会社がAプラス などの格付けをした。
C しかし、最大の戦犯を上げれば「貯蓄から投資 へ」と、大キャンペーンを張った政府やマスコミだ。
銀行金利はゼロ。
一方で不動産ファンドは悪くても 四%の利回りが付く。
しかも、ミドルリスク・ミドル リターンで株式よりずっと安全だと宣伝したわけだか ら、みんなが手を出した。
政府の口車に乗せられて 退職金をファンドに投じた団塊世代たちが結局、ババ を引かされた。
A 本当を言えば、今こそ投資なんだけどね。
B 今は完全に“買い”。
しかも、オフィスに比べれ ば物流不動産はやはり賃料相場のぶれ幅が小さい。
価 格もバブルというのは少し大げさかも知れない。
とこ ろが今は個人投資家だけでなく、機関投資家や銀行 が不動産と聞いただけで耳を閉じてしまう。
統計以上に実態は深刻 司会 倉庫の空き室率は、〇八年に急速に悪化して いる。
現状で一五%程度。
これはオフィスよりもず っと悪い。
C 実際はもっと空いている。
地方などスカスカ。
そ もそも住居と違って倉庫の空き室率や賃料相場の統 計など全く当てにならない。
満庫といっても人によ って基準はバラバラ。
坪単価だって、何を床面積にと っているのか分からない。
我々が当てにしているの は今でも倉庫の営業マンの情報だ。
司会 賃料についても? 統計上は横ばいだが。
B 少し立地が落ちると坪二〇〇〇円以下でもいい という倉庫が今ではたくさんある。
ただし、ファン ド系の施設の賃料は表立ってはなかなか下げられな い。
他のテナントの目もあるし、相場を崩してしまう から。
それでも、実際には賃料以外の部分で実質的 な値下げをしている。
C フリーレントや契約期間の短縮だ。
半年間賃料 をタダにする。
プラス契約期間も昔は一〇年以上が当 たり前だったのに今だと三年でも二年でもOK。
借 りるスペースにしても当初は一万坪からと言っていた ところが今は五〇〇〇坪でも三〇〇〇坪でも、もう 何でもいいという世界になっている。
。
A 使ったスペース分だけ賃料を払ってくれればいい というところまで出てきている。
俗にいう“アコー ディオン方式”というやつ。
司会 物件の価格自体は? A 動いていない。
買う人がいない。
一年前には坪 一八〇万円でも買いたいといっていた会社が、今は 一三〇万円で話を持って行っても、しばらく様子を みたいという。
C 資金繰りに困って、売りに出る物件は増えてい る。
これからもっと増える。
司会 ファンドの経営層に話を聞くと、誰もが今は 買い場で、これから打って出ると口を揃える。
C 相場観はそうでも、実際には資金がない。
それ どころか裏では資金繰りに困って売りに回っている。
チャンスは物流会社に回ってきている。
物流会社は今 こそ買いに回るべきだ。
あるいは、空いているファ ンドの施設を上手く使うだけでも事業を拡大できる。
A その通りだ。
拠点集約は今後も進んでいく。
一〇〇〇坪の倉庫が五つあったとして、それを単 純に一つに集約するだけでも費用は削れる。
延べ床 一〇〇〇坪の倉庫と言っても、実際の床面積に対し て三割以上は通路や垂直搬送機などにとられている。
しかし大規模倉庫であれば、そうしたデッドスペース を一.二割に抑えられる。
在庫量は同じでも三〇〇〇 25 MARCH 2009 AMB成田エアカーゴセンターB棟 04年にAMBは総額165億円を投じて成田に延べ床約5万坪の 賃貸施設を建設すると発表した。
現在も4棟目となるD棟の建 設が続いている AMB大田ディストリビューションセンター 東京都が所有する土地を04年に公開入札で落札した。
坪単価が 180万にも上ったことで話題を呼んだ MARCH 2009 26 日立物流など日本の大手物流会社が彼らのメーンの テナントということになっているが、実際には、荷 主企業の物流セクションに直接アプローチして、プレ ーヤーはコンペで選びましょうといったスタイルで営 業している。
司会 しかし、金融畑の人間にそんな芸当ができる とは思えない。
B もちろん、昔から物流関係を渡り歩いてきた人 でないとそんなことはできない。
そのため、そうし た人材が会社から離れてしまえば営業力もなくなる。
A 今の不況で、そうした人材がどんどんファンドか ら流出している。
そのためファンドはリーシングがで きてなくなっている。
C プロロジスがパナソニックや資生堂に対して、物 流資産をバルクで買い取ってオフバランス化したよう なやりかたも当面はどこもできない。
景気の悪化でオ フバランス化したいというメーカーの数は飛躍的に伸 びていて、ファンドに持ち込まれる案件も増えている けれど、ファンド側ではしばらく身動きがとれない。
A 今、実際に買いに入っているのはシンガポール系 の資本でしょう。
金主として表に名前は出てこない けれど、裏ではかなり動いている。
底値で買いあさ っている。
C 地方の倉庫会社で資金に余裕のあるところも、 密かに買いに入っている。
背景にあるのは事業承継 だ。
地方の倉庫会社の多くは昔からの地主で、その まま事業を承継すれば莫大な相続税を払わなくては ならない。
そこで税金対策として借金をしてファンド の持っている物件を底値で買う。
財務状況がいいか ら今のような環境でも借金はできる。
で、そうやっ て買った瞬間に財務諸表が悪化する。
その結果、非 課税で事業承継して、いずれ相場が反転するのを待 坪.四〇〇〇坪で入ってしまう。
C 作業効率も向上する。
垂直搬送機やエレベータ ーで荷物を上げ下げすると、順番待ちで結構な時間 がとられてしまう。
ランプウェー付きなら、その必要 もない。
多少賃料の坪単価は上がっても十分にペイ できる。
B 大型施設の空き室率は長い目で見ればそれほど 心配する必要はない。
オフィスや商業施設と比べれ ばずっと切り返しが早そうだ。
密かに底値買いが進行 司会 物件ごとに特定目的会社を作って、ノンリコ ースローンでレバレッジをかけるという手法はもう使 えないのでは。
C レバレッジはダメでも証券化という手法自体が悪 いわけではない。
とりわけ物流不動産は一般の商業 用地に比べれば相場も安定している。
要は目利きの 問題だ。
B スキームとしてはオフィスでもロジスティクスで も同じだからポートフォリオを分散させる狙いもあっ て、兼業ファンドも次々に物流不動産に参入してき た。
ところが現状では物流不動産専業でないと生き 残れなくなっている。
なぜ専業が強いかと言えば、彼 らには荷物を持ってくる力があるから。
彼らの直接 の顧客は大手物流会社や3PLでも、彼らの実際の 営業先は大手メーカーだ。
荷主と拠点さえ用意でき れば、物流会社は後付けでいい。
放っておいても手 を挙げる物流会社がある。
物流専業以外のファンド にはそれができない。
司会 そこまでの力が本当にファンドにあるのか。
B 少なくともプロロジスはそれができている。
ファ ンドの資料を見れば、国際インテグレーターや日通、 東京 横浜 新潟 仙台 福島 名古屋 大阪 神戸京都 広島 北九州 福岡 札幌 盛岡 稚内 旭川 釧路 函館 青森 宇都宮長野金沢 松江 熊本 鹿児島 秋田 盛岡 扇町 富谷 郡山? 草加 浦安 湘南 滋賀 奈良 泉佐野 札幌 摂津 門真 福岡 筑紫野 安芸高田 広島 ●敷地面積:33万1800 ? ●延べ床面積:41万4600 ? プロロジスは07年に松下ロジスティクスから プロロジスと日立物流が組んで資生堂の物流子会社を買収した17棟を850億円で一括取得した 物流アウトソーシングのスキーム ※新会社:日立物流コラボ ネクスト 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 27 MARCH 2009 一〇〇年に一度のチャンス C ただし、非公開の物流会社は別。
そうした会社 では資本効率の問題よりもむしろ、コンプライアンス 規制が強化されてきたことで、現在の仕事が単純な 坪貸しなのか、ちゃんとした倉庫事業なのかという 問題を問われることになる。
現状ではグレーゾーンに なっていて都合の良いように処理しているが、厳密 には単なる場所貸しであれば事業所税は免除されな い。
それで摘発されたケースも既に出ている。
A コンプライアンスで言えば、路線会社だというこ とで市街化調整区域にターミナルを建てたのに、実際 には路線などほとんど扱っていないというケースもか なり見かける。
あれも問題になりそうだ。
B 〇九年三月期からは、長期契約で途中解約がで きない場合の施設はファイナンシャルリースとみなさ れる。
賃料を損金で落とすことはできてもバランスシ ートには残るため、単純なセールス・アンド・リース バックではオフバランス化が難しくなってくる。
そも そも、これだけ経営環境が変化する時代に荷主企業 が自分で物流施設を長期賃借するというのはあまり にリスクが大きい。
それだけに、3PLが物流アセッ ト改革を主導する余地はこれから増えてくる。
A 物流と不動産金融の両方を分かっている人間は少 ない。
そうした人材にとって、今はそれこそ一〇〇 年に一度のチャンスだと言ってもいい。
物流会社が真 剣に不動産と金融の知識を身に付ければ大きな飛躍 が期待できる。
司会 これまで日本の物流企業や荷主企業は、物流 アセットについて、経営者の個人的な嗜好で動くばか りで、確固とした戦略を持っていなかった。
しかし、 それが許されなくなることは確かなのだろう。
つという狙いだ。
司会 物流企業が“買い”に回れば、物流資産の所 有と利用の分化が、再び後戻りすることになる。
世 界の物流市場の動きとは逆行する。
上場している大 手物流会社でも、倉庫代はタダでいいから輸配送を くれという営業をしているところがある。
常識では 理解できない。
A 3PLの多くは、案件別の収益を評価する時に、 自社資産については減価償却と税金以外、費用計上 していない。
坪当たり四〇〇〇円も払って新たに物 件を賃貸しなければならないノンアセットの3PLで は、とても太刀打ちできない。
C 一時は日本の物流企業も資本効率を気にしてノ ンアセットを志向したが、また戻ってしまった。
B その点はこれから変わっていくはずだ。
昨年、会 計基準が変更されて二〇一〇年四月から、賃貸用不 動産や遊休不動産の時価を決算書に表記しなければ ならないことになった。
大昔にタダ同然で取得した 施設を持っている倉庫会社や物流会社が、どれだけ 資本効率の悪い経営を行ってきたのかがあからさま になる。
効率の悪い資産はどんどん手放すという流 れはもはや後戻りしない。
司会 資産をたっぷり持っている老舗の路線会社や 倉庫会社にはそうとう影響が出そうだ。
B ヤマトや佐川のようにインフラとして巨大なネッ トワークを必要としていて、それだけの物量を持っ ている会社は今後も自分で資産を所有していけるだ ろう。
しかしそれ以外の会社、つまりほとんどの路 線会社はそれこそプロロジスのような物流不動産の専 門会社に資産を丸ごと売却してしまったほうがいい。
バブルが崩壊しても物流不動産ファンドが日本からな くなるわけではない。
その水面下で は、いったい何が起こっていたのか。
不動産の証券化 は物流市場に何をもたらしたのか。
今後は誰が物流不 動産を所有することになるのか。
物流不動産業界の深 層を知る関係者たちが本音をぶつけ合った。
物流用地高騰のロジック 司会(本誌編集部) 物流不動産ファンドの乱立は結 局、バブルだったのだろうか。
A(倉庫会社幹部) 金融の視点に立つか、物流の視 点に立つのかでその答えは変わってくる。
金融面か ら見ればバブルだろう。
しかし、物流面から見れば、 ファンドが建設した大規模施設は、サプライチェーン の効率化に明らかに貢献する。
多少賃料が割高でも その価値はある。
B(不動産会社幹部) それでも需要を無視して増え 過ぎたことは否定できない。
実際、今は倉庫の空き を埋めるのにどこも四苦八苦している。
C(物流コンサルタント) オフィスや商業施設しか 知らない物流の素人が作った大規模施設はとくにそ うだ。
本当にフル稼働したら周辺の道路が渋滞でパ ンクするような施設がいくつもある。
司会 一九九〇年代に土地神話が崩壊して以降、日 本の不動産価格も収益還元法で決まるようになった ため、二度と土地バブルは起きないと一般には言わ れていた。
ところが、物流ファンドが付けた価格は 最初から高過ぎたように思う。
二〇〇四年の初めに、 AMBブラックパイン(現在のAMBプロパティジャ パン)が成田で約四万坪の土地を買収して一六五億 円を投じて物流施設を作ると聞いた時には、それで 採算が取れるのか疑問に感じた。
B 確かにその時点で大手フォワーダーは既に自前の 施設を成田に手当てしていた。
具体的に誰が使うの かという問題はあった。
それでも当時のAMBの値 付けには、それなりに裏付けはあった。
長期的に見 れば成田の航空貨物が増えることも間違いなかった。
司会 これもAMBだったが東京都が競売に出した 大田区の土地に坪一八〇万円という値段を付けたこ ともあった。
A 我々倉庫会社の常識だと倉庫用地の上限はせい ぜい五〇万円。
なぜ一八〇万円なんていう値段が付 くのか当時は全く理解できなかった。
しかし、後から 詳しい人間に解説してもらったところ、その土地は容 積率が四〇〇%あって多層階の施設が建つ。
一八〇万 を四で割れば四五万円だから計算が合う。
C そのためのランプウェーだ。
ランプウェーを付け れば上層階でも一階と同じ家賃がとれる。
司会 しかし、一八〇万は土地の価格であって建物 の価格は入っていない。
多層階となれば建築費も高 くなる。
普通の倉庫の建築費が坪二〇万程度だとし ても、その倍近くかかるはず。
C いやそうでもない。
一棟だけ建てる場合にはそ の値段でも、大型施設を大量に建設するとなれば、 あるいはプロが建てれば実際の建築費は素人が考え るよりもずっと安くなる。
司会 ということは金融的に見ても物流不動産はバ ブルではなかった? B プロの開発会社が土地を仕入れてテナントを集め る段階ではバブルではなかった。
ただし開発会社がテ ナント付きの物件をファンドに売却する時には、あり 得ないマージンを乗せていた。
その値段で買ってもフ ァンドは、それを証券化すれば買い手が付いたので 結局、自分の懐は痛まない。
最終的には個人も含め た投資家が高値で物件を掴まされたことになる。
A なかには物件をファンドに売るために、大手企 業と結託して一時的にテナントに入ってもらうケース もあるとか。
ファンド側でもそれを分かっているのだ けれど、それで投資家に証券が売れるなら構わない。
そこまで行けば詐欺行為だ。
MARCH 2009 24 覆面座談会 緊急企画 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 司会 そんなファンドに対して格付け会社がAプラス などの格付けをした。
C しかし、最大の戦犯を上げれば「貯蓄から投資 へ」と、大キャンペーンを張った政府やマスコミだ。
銀行金利はゼロ。
一方で不動産ファンドは悪くても 四%の利回りが付く。
しかも、ミドルリスク・ミドル リターンで株式よりずっと安全だと宣伝したわけだか ら、みんなが手を出した。
政府の口車に乗せられて 退職金をファンドに投じた団塊世代たちが結局、ババ を引かされた。
A 本当を言えば、今こそ投資なんだけどね。
B 今は完全に“買い”。
しかも、オフィスに比べれ ば物流不動産はやはり賃料相場のぶれ幅が小さい。
価 格もバブルというのは少し大げさかも知れない。
とこ ろが今は個人投資家だけでなく、機関投資家や銀行 が不動産と聞いただけで耳を閉じてしまう。
統計以上に実態は深刻 司会 倉庫の空き室率は、〇八年に急速に悪化して いる。
現状で一五%程度。
これはオフィスよりもず っと悪い。
C 実際はもっと空いている。
地方などスカスカ。
そ もそも住居と違って倉庫の空き室率や賃料相場の統 計など全く当てにならない。
満庫といっても人によ って基準はバラバラ。
坪単価だって、何を床面積にと っているのか分からない。
我々が当てにしているの は今でも倉庫の営業マンの情報だ。
司会 賃料についても? 統計上は横ばいだが。
B 少し立地が落ちると坪二〇〇〇円以下でもいい という倉庫が今ではたくさんある。
ただし、ファン ド系の施設の賃料は表立ってはなかなか下げられな い。
他のテナントの目もあるし、相場を崩してしまう から。
それでも、実際には賃料以外の部分で実質的 な値下げをしている。
C フリーレントや契約期間の短縮だ。
半年間賃料 をタダにする。
プラス契約期間も昔は一〇年以上が当 たり前だったのに今だと三年でも二年でもOK。
借 りるスペースにしても当初は一万坪からと言っていた ところが今は五〇〇〇坪でも三〇〇〇坪でも、もう 何でもいいという世界になっている。
。
A 使ったスペース分だけ賃料を払ってくれればいい というところまで出てきている。
俗にいう“アコー ディオン方式”というやつ。
司会 物件の価格自体は? A 動いていない。
買う人がいない。
一年前には坪 一八〇万円でも買いたいといっていた会社が、今は 一三〇万円で話を持って行っても、しばらく様子を みたいという。
C 資金繰りに困って、売りに出る物件は増えてい る。
これからもっと増える。
司会 ファンドの経営層に話を聞くと、誰もが今は 買い場で、これから打って出ると口を揃える。
C 相場観はそうでも、実際には資金がない。
それ どころか裏では資金繰りに困って売りに回っている。
チャンスは物流会社に回ってきている。
物流会社は今 こそ買いに回るべきだ。
あるいは、空いているファ ンドの施設を上手く使うだけでも事業を拡大できる。
A その通りだ。
拠点集約は今後も進んでいく。
一〇〇〇坪の倉庫が五つあったとして、それを単 純に一つに集約するだけでも費用は削れる。
延べ床 一〇〇〇坪の倉庫と言っても、実際の床面積に対し て三割以上は通路や垂直搬送機などにとられている。
しかし大規模倉庫であれば、そうしたデッドスペース を一.二割に抑えられる。
在庫量は同じでも三〇〇〇 25 MARCH 2009 AMB成田エアカーゴセンターB棟 04年にAMBは総額165億円を投じて成田に延べ床約5万坪の 賃貸施設を建設すると発表した。
現在も4棟目となるD棟の建 設が続いている AMB大田ディストリビューションセンター 東京都が所有する土地を04年に公開入札で落札した。
坪単価が 180万にも上ったことで話題を呼んだ MARCH 2009 26 日立物流など日本の大手物流会社が彼らのメーンの テナントということになっているが、実際には、荷 主企業の物流セクションに直接アプローチして、プレ ーヤーはコンペで選びましょうといったスタイルで営 業している。
司会 しかし、金融畑の人間にそんな芸当ができる とは思えない。
B もちろん、昔から物流関係を渡り歩いてきた人 でないとそんなことはできない。
そのため、そうし た人材が会社から離れてしまえば営業力もなくなる。
A 今の不況で、そうした人材がどんどんファンドか ら流出している。
そのためファンドはリーシングがで きてなくなっている。
C プロロジスがパナソニックや資生堂に対して、物 流資産をバルクで買い取ってオフバランス化したよう なやりかたも当面はどこもできない。
景気の悪化でオ フバランス化したいというメーカーの数は飛躍的に伸 びていて、ファンドに持ち込まれる案件も増えている けれど、ファンド側ではしばらく身動きがとれない。
A 今、実際に買いに入っているのはシンガポール系 の資本でしょう。
金主として表に名前は出てこない けれど、裏ではかなり動いている。
底値で買いあさ っている。
C 地方の倉庫会社で資金に余裕のあるところも、 密かに買いに入っている。
背景にあるのは事業承継 だ。
地方の倉庫会社の多くは昔からの地主で、その まま事業を承継すれば莫大な相続税を払わなくては ならない。
そこで税金対策として借金をしてファンド の持っている物件を底値で買う。
財務状況がいいか ら今のような環境でも借金はできる。
で、そうやっ て買った瞬間に財務諸表が悪化する。
その結果、非 課税で事業承継して、いずれ相場が反転するのを待 坪.四〇〇〇坪で入ってしまう。
C 作業効率も向上する。
垂直搬送機やエレベータ ーで荷物を上げ下げすると、順番待ちで結構な時間 がとられてしまう。
ランプウェー付きなら、その必要 もない。
多少賃料の坪単価は上がっても十分にペイ できる。
B 大型施設の空き室率は長い目で見ればそれほど 心配する必要はない。
オフィスや商業施設と比べれ ばずっと切り返しが早そうだ。
密かに底値買いが進行 司会 物件ごとに特定目的会社を作って、ノンリコ ースローンでレバレッジをかけるという手法はもう使 えないのでは。
C レバレッジはダメでも証券化という手法自体が悪 いわけではない。
とりわけ物流不動産は一般の商業 用地に比べれば相場も安定している。
要は目利きの 問題だ。
B スキームとしてはオフィスでもロジスティクスで も同じだからポートフォリオを分散させる狙いもあっ て、兼業ファンドも次々に物流不動産に参入してき た。
ところが現状では物流不動産専業でないと生き 残れなくなっている。
なぜ専業が強いかと言えば、彼 らには荷物を持ってくる力があるから。
彼らの直接 の顧客は大手物流会社や3PLでも、彼らの実際の 営業先は大手メーカーだ。
荷主と拠点さえ用意でき れば、物流会社は後付けでいい。
放っておいても手 を挙げる物流会社がある。
物流専業以外のファンド にはそれができない。
司会 そこまでの力が本当にファンドにあるのか。
B 少なくともプロロジスはそれができている。
ファ ンドの資料を見れば、国際インテグレーターや日通、 東京 横浜 新潟 仙台 福島 名古屋 大阪 神戸京都 広島 北九州 福岡 札幌 盛岡 稚内 旭川 釧路 函館 青森 宇都宮長野金沢 松江 熊本 鹿児島 秋田 盛岡 扇町 富谷 郡山? 草加 浦安 湘南 滋賀 奈良 泉佐野 札幌 摂津 門真 福岡 筑紫野 安芸高田 広島 ●敷地面積:33万1800 ? ●延べ床面積:41万4600 ? プロロジスは07年に松下ロジスティクスから プロロジスと日立物流が組んで資生堂の物流子会社を買収した17棟を850億円で一括取得した 物流アウトソーシングのスキーム ※新会社:日立物流コラボ ネクスト 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 27 MARCH 2009 一〇〇年に一度のチャンス C ただし、非公開の物流会社は別。
そうした会社 では資本効率の問題よりもむしろ、コンプライアンス 規制が強化されてきたことで、現在の仕事が単純な 坪貸しなのか、ちゃんとした倉庫事業なのかという 問題を問われることになる。
現状ではグレーゾーンに なっていて都合の良いように処理しているが、厳密 には単なる場所貸しであれば事業所税は免除されな い。
それで摘発されたケースも既に出ている。
A コンプライアンスで言えば、路線会社だというこ とで市街化調整区域にターミナルを建てたのに、実際 には路線などほとんど扱っていないというケースもか なり見かける。
あれも問題になりそうだ。
B 〇九年三月期からは、長期契約で途中解約がで きない場合の施設はファイナンシャルリースとみなさ れる。
賃料を損金で落とすことはできてもバランスシ ートには残るため、単純なセールス・アンド・リース バックではオフバランス化が難しくなってくる。
そも そも、これだけ経営環境が変化する時代に荷主企業 が自分で物流施設を長期賃借するというのはあまり にリスクが大きい。
それだけに、3PLが物流アセッ ト改革を主導する余地はこれから増えてくる。
A 物流と不動産金融の両方を分かっている人間は少 ない。
そうした人材にとって、今はそれこそ一〇〇 年に一度のチャンスだと言ってもいい。
物流会社が真 剣に不動産と金融の知識を身に付ければ大きな飛躍 が期待できる。
司会 これまで日本の物流企業や荷主企業は、物流 アセットについて、経営者の個人的な嗜好で動くばか りで、確固とした戦略を持っていなかった。
しかし、 それが許されなくなることは確かなのだろう。
つという狙いだ。
司会 物流企業が“買い”に回れば、物流資産の所 有と利用の分化が、再び後戻りすることになる。
世 界の物流市場の動きとは逆行する。
上場している大 手物流会社でも、倉庫代はタダでいいから輸配送を くれという営業をしているところがある。
常識では 理解できない。
A 3PLの多くは、案件別の収益を評価する時に、 自社資産については減価償却と税金以外、費用計上 していない。
坪当たり四〇〇〇円も払って新たに物 件を賃貸しなければならないノンアセットの3PLで は、とても太刀打ちできない。
C 一時は日本の物流企業も資本効率を気にしてノ ンアセットを志向したが、また戻ってしまった。
B その点はこれから変わっていくはずだ。
昨年、会 計基準が変更されて二〇一〇年四月から、賃貸用不 動産や遊休不動産の時価を決算書に表記しなければ ならないことになった。
大昔にタダ同然で取得した 施設を持っている倉庫会社や物流会社が、どれだけ 資本効率の悪い経営を行ってきたのかがあからさま になる。
効率の悪い資産はどんどん手放すという流 れはもはや後戻りしない。
司会 資産をたっぷり持っている老舗の路線会社や 倉庫会社にはそうとう影響が出そうだ。
B ヤマトや佐川のようにインフラとして巨大なネッ トワークを必要としていて、それだけの物量を持っ ている会社は今後も自分で資産を所有していけるだ ろう。
しかしそれ以外の会社、つまりほとんどの路 線会社はそれこそプロロジスのような物流不動産の専 門会社に資産を丸ごと売却してしまったほうがいい。
バブルが崩壊しても物流不動産ファンドが日本からな くなるわけではない。
