2009年4月号
ケース

環境対策 国分

APRIL 2009  38 環境対策 国 分 排出量取引まで想定しデータ精度を向上 荷主間の情報共有システム構築にも意欲 データの取得方法に知恵絞る  改正省エネ法では年間三〇〇〇万トンキロ 以上の貨物輸送量がある荷主に、CO2排出 量の報告を義務付けている。
この法律の施行 に向けて国分はどこよりも早く動いた。
二〇 〇五年八月に法律が成立する三カ月も前から、 報告に必要なデータの取得方法などについて 検討を開始している。
 同社は一九九九年に環境マネジメントシス テム「ISO14001」の認証を取得して いる。
しかし、運送会社に委託している製品 輸送は、認証の対象には取り込んでこなかっ た。
この分野で具体的な数値目標を定め、認 証取得に必要な精度で実証を行うのは著しく 困難だからだ。
このことは国分に限らずIS Oを取得したほとんどの企業に共通している。
 改正省エネ法はその輸送に関して、荷主に 環境負荷数値を把握し改善のために努力する ことを課した。
従来の環境活動の基準から考 えるとハードルは極めて高いといわざるを得 ない。
だが国分では改正省エネ法に対応した 環境負荷数値の把握を、それまでの環境活動 の延長線上に位置付けた。
 同社の認証取得活動で人事総務部環境担 当課長として中心的役割を果たし、改正省エ ネ法が施行されて以降は物流統括部課長も兼 務する山田英夫氏は、「いずれISOの(認 証に絡んだ)取り組みでも物流プロセスの認 証取得が必要になるはず。
きちんと数値目標 を設定して達成をめざすことは企業の社会的 責務。
やる以上は徹底してやろうと思った」 とこの時の意気込みを語る。
 「徹底してやる」という言葉には、精度の 高いデータの収集をめざすという意味が込め られている。
ISOのみならず将来、物流分 野で排出量取引が実施されることまで想定し、 その基礎データとして承認される水準を目標 に置いて、段階的に精度を上げていこうとい う方針で取り組みをスタートした。
 同社の輸送には大きく拠点間輸送と拠点か らユーザーに向けた配送があり、配送車だけで も毎日三〇〇〇台以上の車両を使用している。
同社の輸配送に携わる運送事業者の数は再委 託先まで含めると優に一〇〇社を超える。
 改正省エネ法のガイドラインでは、トラッ ク輸送のCO2排出量算定方法として「燃料 法」「燃費法」「改良トンキロ法」の三つの方 法が認められている。
同社はこの三つのなか で、データの精度がより高いと考えられる「燃 料法」または「燃費法」をユーザー向け配送 の算定方法として採用することにした。
その ために、すべての事業者から国分の貨物の輸 改正省エネ法の実施に先行して、CO2排出量の 算定に必要な基礎データを運送事業者から取得す るためのさまざまな仕組みを開発・運用してきた。
現在は将来の排出量取引まで想定したデータ精度 の向上に取り組んでいる。
ほかの荷主企業と情報 を共有して、CO2排出量を大幅に削減するための 仕組みづくりにも意欲を燃やす。
国分の山田英夫人事総務部 環境担当課長兼物流統括部 課長 39  APRIL 2009 送距離と燃料使用量についての情報を提供し てもらおうと考えた。
 事業者によってはデジタルタコグラフを使っ て運行管理データを自動的に収集していると ころもある。
このケースでは距離や燃料使用 量のデータを提供してもらうのは比較的容易 だ。
だが末端の配送業務を担う運送事業者の 大半は、これらの情報をドライバーの運転日 報をもとに紙ベースで管理しているのが実態 だ。
集計に手間がかかりミスも起こりやすい。
また排出量取引までを想定した場合、紙ベー スで取得したデータは電子データと比べて不 利になる。
 そこで同社は、こうした事業者からも電子 データで提供してもらうための仕組みを構築 することにした。
運送事業者に投資負担をか けないことに重点を置き、携帯電話を使い低 コストで簡単にデータを収集できるシステム を、運送会社やITコンサルタント会社と共 同で開発した。
ドライバーが携帯電話の画面 で運行開始時から終了時までの走行距離と給 油量を入力し、インターネット経由でサーバー に収集するシステムだ。
 サーバーでは収集したデータから車両別走 行距離や給油量の管理を行う。
荷主側はこの 情報を上位システムに吸い上げることで、環 境負荷数値の算定や納品実績の管理が可能に なる。
運送事業者側も、収集したデータを省 エネ運転や安全運転の管理に活かすことがで きる。
 サーバーにはこのほかにも配車管理や配送 コース管理、GPSによる貨物追跡管理、車 両整備管理、請求管理、勤怠・給与管理など、 運送会社の業務管理に必要なソフトを搭載し た。
運送会社が携帯電話の機能を段階的に追 加することにより、さらに高度活用を進めて 業務を効率化し、CO2を削減できるように と考えたのだ。
携帯電話システムの普及は断念  このシステムの検証を行うため、法の施行 を半年後に控えた〇五年一〇月から十二月ま での三カ月間、国分が配送業務を委託する運 送会社の四カ所の拠点でドライバーに携帯電 話を配布して、運用テストを実施した。
使い 勝手や入力方法の良し悪しを確認した。
 同時に、収集したデータをもとに改善を進 めることで、エコ運転・安全運転にどんな効 果が見られるかも検証した。
そのために省エ ネ・安全運転管理のマニュアルを作成し、専 門機関に委託してドライバーへの教育も行っ た。
その結果、テスト期間中にこの運送会社 では四拠点の配送車の燃費が平均一〇%以上 改善するという成果が上がった。
 この成果を踏まえ国分は、業務委託先の運 送会社に対する説明会を全国一〇カ所で順次 開催し、実運用をめざした。
だが思惑通り には進まなかった。
携帯電話を利用したシス テムは、初期投資の負担が小さいというメリ ットはあるものの、運用には通信費がかかる。
それが中小規模の運送会社にとっては重荷と なり、燃費向上などの効果は認めても導入に は二の足を踏むところが多かった。
 このため別の方法で運転日報の情報を電子 データ化することにし、ドライバーの運転日 報から同社に必要な数値だけを、運行管理者 荷主の閲覧可能なデータは環境負荷数値関連のみとなります。
図1 システム概要図 荷主上位システム 配送指示/納品実績 IT-Truckサーバー 運行管理者が 入力を行う 運行管理者は 確認を行う 運行管理者は 確認を行う パソコンより入力 荷主へ公開する情報については事前に別途契約が必要 (運送事業者の同意がないとデータ閲覧不可) 改良トンキロ法で捉えたデータを CSVデータで一括アップロードする 全コースおよび荷主別に管理日 報をもとに毎日(荷主ごとに入力) 路線便業者特例 レベル1 レベル2 レベル3 デジタル運行機器と連携 携帯電話より入力 日付車番運転手名コース 開始メーター終了メーター使用燃料量 荷主 レベルアップ 荷主 GPS・ 荷物追跡 管理 整備管理 コース傭車管理 管理 給与管理コンテナ 温度管理 配車管理 社員管理請求管理 車両管理引越管理 求貨求車 人材派遣 管理 受注管理 日報管理遠隔管理  は荷主共有データ グループ ウェア 配送依頼 管理 IT-Truck 物流情報 管理システム APRIL 2009  40 にパソコンで入力してもらうシステムを新たに 開発した。
車両マスターや拠点マスターなど を同社が事前に整備し、短時間で容易に入力 できるよう工夫した。
 これ以外にも同社は、データ収集のために 運送会社の事情に配慮したさまざまなシステ ムを開発した。
車載端末でデータを収集して サーバーに吸い上げるシステムや、既存のデジ タル運行機器を使って収集したデータを国分 の指定するデータフォーマットに変換するシス テムなど、各運送会社のニーズに応じた仕組 みを用意した。
 一方、主に路線業者に委託している拠点間 輸送については、「改良トンキロ法」で算定を 行うことにした。
「改良トンキロ法」による算 定には輸送距離のほか、重量、車種、燃料の 種類、積載率のデータがいる。
これらのデー タを収集するために、同社の出荷依頼情報を 電子データで路線業者に送り、このデータに 対して距離や車種などの情報を付与してサー バーに返してもらうシステムを開発した。
運送会社によりデータ精度に格差  こうして整備した仕組みを使って、法律が 施行された〇六年四月にデータの収集を開始 した。
そして一年後に検証を行った。
運送会 社から提供されたデータが、CO2排出量を算 定する根拠としてどれだけの信頼性を担保で きるのかを確認した。
 データの取り方は運送会社によってまちま 田課長は「それでは物流分野でいつまでたっ てもCO2の削減効果を明確に実証すること ができず、排出量取引からも取り残されてし まう」と懸念する。
 そこで同社では現在、運送会社が荷主に提 ちだった。
とくに「改良トンキロ法」を採用 した拠点間輸送のデータには運送会社ごとの 違いが目立った。
輸送距離を市販の距離計測 ソフトを使って算出しているところもあれば、 県庁所在地間の距離だけで計算しているとこ ろもある。
車種についても運行ごとにデータ を取って入力しているケースもあれば、配車 する頻度の最も高い車種をみなし値として入 力するケースもあった。
当然、精度には格差 が生じる。
 燃料使用量を使って算定するため最も精度 が高いとされる燃料法にも、落とし穴のある ことがわかった。
ある運送会社から、燃料価 格の上昇を運賃に反映させるためサーチャー ジ制度の導入についての申し入れがあり、サ ーチャージ額を算出するため運送会社から給 油量などのデータを提供してもらうことにな った。
その際に給油量のデータとガソリンスタ ンドからの請求を一件ずつ照合して、給油量 データに間違いがないか確認したところ、漏 れやダブり、桁違いなどのミスがいくつか見 つかった。
その運送会社はデジタル運行機器 で燃費などの管理をきちんと行っている事業 者だが、それでも手入力の部分でミスが発生 したり、再委託先の運送会社の給油データが 漏れたりしていたのだ。
 このケースに限らず、運送会社から提供さ れるデータは、必ずしも実態を正確に反映し ているとは限らない。
しかし、それを?誤差? として目をつぶらざるを得ないのが現状だ。
山 図2 新システム構想図 IT-Truck 社員管理請求・支払 管理 決済管理 拠点管理 拠点別 水道・ガス・電気 日報管理環境管理 環境価値 集計 荷物管理 荷主業者側ASPサーバー 荷物情報 /その他 荷主基幹システム (荷物情報がある場合) インターネットインターネット 消費エネルギー関連の決済管理機能を充実させる IT-Truck ガソリンスタンド 車両ごとの請求データ(給油データ) 電気、ガス、水道、通信請求情報 勤怠管理社員管理コース管理環境管理車両管理GPS荷物 追跡管理 発注管理受注管理日報管理配車管理 傭車管理売上管理整備管理 決済 管理 請求・支払 管理 運送事業者側ASPサーバー 実走行距離 /その他 運行日報 車両管理 (一部情報) 燃料法測定値 燃費法測定値 改良トンキロ法 測定値 請求データ 41  APRIL 2009 プリント(CFP)制度」への対応が新たな 関心事となっている。
CFPとは原材料調達 から製造・販売・廃棄・リサイクルに至るま でのライフサイクル全般を通じて排出される 温室効果ガスの量をCO2に換算して商品に表 示する制度のこと。
制度を通じて企業に排出 量削減への努力を促し、消費者には環境負荷 の少ない商品の購買を促すことを狙っている。
自主参加を前提としているが、企業はCFP 表示を行うことで環境負荷低減に向けた姿勢 を消費者にアピールすることができる。
 二〇一一年春までにISOによってCPF の国際規格も策定される見通しで、日本でも 昨年、制度化が決定した。
これを受けて経済 産業省はCFP制度の実用化・普及推進のた めの研究会を発足させ、CO2排出量の算定 方法や表示方法について検討を開始している。
当面は消費財から導入を進める方針だ。
 昨年十二月には食品・日用品メーカーや小 売業が試行的に、独自の算定方法で自社製品 やプライベートブランド(PB)商品にCFP を表示した展示会が催され、今年に入って一 部の商品の試験販売も行われた。
〇九年度か らは制度の導入に向けた実証実験が始まる予 定だ。
カーボンフットプリントへの対応も  経産省が今年三月に発表したCFP制度の 指針では、各プロセスの算定には関係する事 業者が責任を負うとされている。
商品一個当 たりのライフサイクル全体での絶対値を表示 するのが原則だが、各プロセスを担う事業者 の削減努力を促すためにプロセス別表示など も認めている。
どのプロセスで環境への負荷 が高いかが一目でわかる。
 商品の流通過程を受け持つ卸にとってとく に気がかりなのは、表示方法によっては競合 商品で、卸の物流網を活用したナショナルブ ランドと、小売業が中間流通を通さず自社物 流網を使って調達したPBとの環境負荷数値 の比較が可能になることだ。
実際に大手小売 業のなかには、価格面だけでなく環境への負 荷低減の側面からも自社物流網の優位性を実 証するため、PB商品のCFP表示に積極的 に取り組んでいるところもある。
 「CO2排出量を正確に把握し、物流効率化 を進めて着実に排出量削減の成果を上げてい かないと、卸は存在意義を失うことになる」 と山田課長は危機感を抱く。
 同社は今後のCFP制度への対応も含め、 取得する数値の精度向上と排出量削減に業界 を挙げて取り組むことをめざして、日本加工 食品卸協会を通じ食品卸などに共同でのシス テム構築を働きかけていく考えだ。
「同じ問題 意識のもとでシステム構築に賛同してくれる 荷主や運送会社といっしょにルールを決めて、 仕組みづくりを進めたい。
業界レベルでデー タを収集できれば、大きな財産になる」と山 田課長は確信している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 出する請求書の輸送実績や、運送会社に対す るガソリンスタンドの請求書など、決済に基づ いたデータを取得する方法を検討している。
再 委託先の分も含め請求書の中身を電子データ で送ってもらう。
これを燃料使用量や改良ト ンキロ法で取得したデータとリンクさせて数値 の信頼性を担保すれば、将来の排出量取引や ISOの認定取得にも対応できると見ている。
 さらには、取得したデータをCO2の排出量 削減に活用するための仕組みづくりも狙って いる。
そのために運送会社やほかの荷主企業 に働きかけて、排出量の削減につながるさま ざまなデータを共有できるシステムを共同で 構築することをめざしている。
 例えば、改良トンキロ法に則って荷主が取 得する「いつどの方面にどんな車種で貨物を どれだけ運んだ」という情報を共有する。
こ の情報をもとに同じ方面の輸送を共同化して 積載率を上げるなどのアクションを起こすこ とも可能だ。
 また近年、国分のような酒類・加工食品卸 の配送車は、ビールなどの空瓶の回収が減っ てワンウェイ化が進んだため、実車率が著し く落ちている。
このシステムにGPS(全地 球測位システム)の位置管理機能を搭載すれ ば、求貨求車システムを利用できるようにな り、実車率の向上につながるなどアイデアを 練っている。
 CO2排出量の把握に関連して食品卸業界 では、改正省エネ法に続き「カーボンフット

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