2009年4月号
海外Report
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米レガット&プラット
APRIL 2009 58
大手家具部品メーカーの米レガット&プ
ラット( Leggett & Platt)がサプライチェー
ンの全体最適に取り組んだ。
それまで工場 ごとに行っていた調達を一本化。
新たに国 際調達子会社のレガット&プラット・グロー バル・サービシーズ(LPGS)を設立し、 グローバル・ロジスティクスの効率化にも乗 り出した。
LPGSの社長を務めるウォー リー・クレイ氏が一連の取り組みを解説する。
(取材・編集 横田増生) 小口配送をDHLに一本化 米国ミズーリ州に本社を置くレガット&プ ラットは創業が一八八三年という老舗企業で あり、かつ「フォーチュン五〇〇」に入る製 造業者です。
ニューヨーク証券取引所に上場 したのは一九七〇年代のことで、二〇〇七 年の売上高は四三億ドル(四二二〇億円) です。
米国とカナダを中心に二二カ所の製造 拠点を構え、従業員二万四〇〇〇人を擁し ています。
当社は創業時に手がけたベッドのスプリン グの製造を足掛かりにして、ほかの分野に も手を広げていきました。
現在は以下の四 つの製造部門から成り立っています。
住居 用設備部門(ベッドやカーテンなど)、小売 り用備品部門(店頭で使うディスプレイ用の 製品)、産業用資材部門(鉄鋼ワイヤーや溶 接済みの管類など)、特殊製造機械部門(ベッ ドや自動車のサスペンションを製造する機械 など)──です。
ほかに〇八年上期までは、 ダイキャストを製造するアルミニウム製造部 門がありましたが、業務見直しの結果、売 却しました。
当社は従来、各製造部門に属する工場に 大きな権限を与え、各工場を独立採算部門 とみなす体制をとってきました。
そのため、 たとえ自動車の部品工場とワイヤー工場が地 理的に近くにあったとしても、お互いに何を しているのか気にかけないという社風がで き上がっていました。
しかし、製造業において、工場や生産部 門ごとの部分最適から、サプライチェーンの 全体最適を目指すことで経営効率を高めよ うという流れが次第に強まるにつれて、当 社もその動きに無関心ではいられなくなって きました。
当社がSCMの全体最適に向けて本格的 に動き始めたのは〇一年のことです。
製造 業者の中では、決して早い取り組みである とは言えませんでした。
それまでの三〇年 以上にわたって、当社の売上高の年平均成 長率(CAGR)が一五%前後あったことが、 欧米SCM会議? 製造四部門の調達を一元管理 可視性を高め輸入業務を効率化 会社略歴 会社名 レガット&プラット(Leggett & Platt) 創業 1883年 本社 ミズーリ州カセージ 上場 ニューヨーク証券取引所(1979年) 社長兼CEO デービッド・へフナー 主業 住居用設備などの製造 売上高 43億600万ドル(4219億8800万円) 従業員数 約2万4000人 2007年の年次報告書より 米レガット&プラット 59 APRIL 2009 その背景になっています。
(企業買収による 売上高増を含む) 当社が〇一年に最初に取り組んだのは、ネッ トを使って全社の調達を一本化することでし た。
外部の調査会社を使って試算したところ、 年間二〇億ドル(一九六〇億円)の調達費 のうち八割が、一本化によってボリュームディ スカウントの対象になり得るという結果が出 ました。
それを受けて、全社横断的な調達部門を 設立し、調達の一本化に乗り出しました。
当初の課題は、全社の調達実績の正確なデー タを集めることでした。
当時、既に全社的 な調達の仕組みとしてi2テクノロジーズの アプリケーションソフトウエアを使っていま したが、会計処理については各工場や各支 社がそれぞれ独自に選んだERP(統合基 幹業務システム)を使っていたため、統一し たやり方で全社のデータを集めることには困 難を伴いました。
新設した調達部門では、ERPのデータ や、注文書・売掛金の送り状の山と向き合い、 それまでばらばらに購入していた部品の個 数や履歴、部品番号、サプライヤー、購入価 格などを調べることから始めなければなり ませんでした。
そうやってデータベースができあがって初 めて、価格のばらつきのある部材を見つけ 出すことができるようになり、その結果と して調達費用を抑えることができるように なりました。
最初に契約の一本化を実施したのは、米 国の国内外に発送する小口配送でした。
〇二年に発送業務をDHL(当時のエアボー ン・エクスプレス)一社に集約するという契 約を結んだことで、小口配送コストを大幅に 削減することができました。
独立採算の国際調達子会社を設立 データの収集と並行して、調達部門は〇二 年から次の六つのプロセスを通して、全社的 な調達の一本化を進めてきました。
まず取り組んだのは、全社的に調達を統 合することの効果を現場に周知させる担当 者を、各工場に置くことでした。
一定のルー ルに従って調達を進めることが、どれほど全 社的なコスト削減と利益の確保につながるの かということを、工場の同僚たちに説くの が彼らの役回りです。
二つ目は、顧客の要求をリストアップして、 それを調達のルールに反映させることです。
コスト削減を図りながらも顧客満足度を落と さないように努めました。
三つ目は、「国連標準製品およびサービス コード( united nations standard products and services codes)」に則って全社的な実 績データを集め、その部材の調達を一本化す べきかどうかを判断することでした。
四つ目は、調達を効果的にするSCM戦略 を立てることでした。
調達する部材の特性に 合わせて、サプライヤーから工場、エンドユー ザーに至る無理のない流れを作りました。
五つ目は、横断的なチームを編成すること でした。
チームに参加するのはロジスティク ス部門や調達部門、製造部門、品質管理部門、 法律部門などの代表者で、チームの中で各 部門の責任と役割を明確にしました。
六つ目は、サプライヤーとロジスティクス 企業の選択です。
サプライヤーに関しては、 技術支援の優劣や欠陥製品の比率などで評 価を行いました。
ロジスティクス企業はオン タイム配送率や誤配率などで評価して選別を 行いました。
〇三年に入って、海外からの調達を専門 に行う部門を立ち上げました。
それが現在、 私が社長を務めるグローバル・サービシーズ ( Leggett & Platt Global Services=LPG S)です(図1)。
LPGSはまず、業務プロセスのトップに コンプライアンス(法令順守)を据えること にしました。
そして調達業 務を中軸に置 いて全体の仕 組みを考える ようにしまし た。
一般に製 造業者は会計 を中心に業務 プロセスを組み 立てることが 多いのですが、 当社は調達の 図1 LPGS の役割 LPGS ●一元的な顧客管理 ●ロジスティクス業務 ●品質管理 ●説明責任 ●データ収集 ●コミュニケーション・ ツールの開発 ●法令順守 ●一括発注による 価格交渉 ●倫理基準の適用 要求 対応 各工場・支店 サプライヤー 要求 対応 APRIL 2009 60 周辺業務として、会計、輸送、在庫管理な どのプロセスを位置付けました。
ERPには オラクルの「ピープルソフト」を選びました。
LPGSは、顧客である各工場に専属の 担当者を置き、そのロジスティクス業務から、 部材の品質管理、データの収集、一括発注 による値段交渉など、幅広い業務を請け負 います。
部材や調達の過程で問題が生じれば、 進んで説明責任を果たすことも役割に含ま れています。
海上輸送のステータスを可視化 またコンプライアンス面では、海外のサプ ライヤーが従業員に対して現地の法律に従っ た賃金を支払っているか、法律で労働が禁 止されているような未成年者は働いていな いのかなどの点まで目を配っています。
ご存知の通り、米国の輸入管理は〇一年 に起こった9・ 11 事件以降、大きく変わり ました。
治安維持を目的として、輸入業者 には今まで以上にコンプライアンスの姿勢が 求められるようになっています。
実際、輸 入した製品の個数が送り状より多かった場合 には必ずといっていいほど税関当局から説明 を求められます。
余分に送られてきた物の 内容や個数、その理由などです。
LPGSを設立する以前の当社の輸入業 務のやり方は、国内業務と同様、工場ごと にばらばらでした。
各工場は国内の調達の 延長線上に輸入業務を位置付け、その管理 や業務プロセスの改善は、フォワーダーやロ ジスティクス企業の守備範囲だと見なしてい ました。
コア・コンピタンス以外の業務をアウトソー シングしていたといえば聞こえはいいのです が、実際には、当社に輸入業務の内容や業 務プロセスの善し悪しを判断する能力が欠け ていたために、問題があっても改善するこ ともままならず、コスト削減に向けた力学も 働かない状況にありました。
さらには、全 社的な情報共有も確立しておらず、既存の ERPは使い物になっていませんでした。
そこで、新設したLPGSが、全社の海 外からの調達を全面的に請け負って、その 支払業務までを代行することになりました。
LPGSは、コストセンターとしてではなく、 ほかの工場と同じようにプロフィットセンター として位置付けられています。
各工場はL PGSにサービスに応じた料金を支払います。
これはシェアードサービスのようにコストセ ンターとするのではなく、プロフィットセン ターとした方が、お互いにコスト意識をもっ て業務に取り組むことができるという考え方 に基づいています。
レガット&プラットの売上高全体に占める LPGSの売上高は二・五%前後で推移して います。
これはLPGSが提供しているサー ビスレベルを考えると、非常に低コストであ ると自負しています。
LPGSの業務フローは、図2の通りです。
「関連法に沿った発注書(PO)の発行」→「発 地における混載業務」→「ロジスティクス業 務の統括管理」→「輸入通関と決済の管理」 ──という大きな流れになります。
まず我々が取り組んだのは、輸入貨物の「可 視性(Visibility)」を高めることでした。
当 社が取り扱う輸入貨物の大半は海上輸送で 運ばれてきます。
年間二万五〇〇〇.三万 TEU(二〇フィートコンテナ換算)の貨物が、 約一〇〇〇本のルートを通って、北米各地の 工場に運び込まれます。
利用しているキャリアは主なものだけでも 一〇社ありました。
LPGSが発足するま では、表計算ソフトを使ってキャリアごとに コンテナの運航状況を把握しているという状 態でした。
新たに海上コンテナ専門の運航管 理ソフトを導入したことで、可視性を大きく 高めることができました。
ソフトを導入する以前に、正確にトラッキ 図2 輸入業務のプロセス 発地における 混載業務 法律に従った 発注書の発行 基盤となるデータベースの確立 輸入業務の可視性を高めることで諸問題を解決 ロジスティクス 業務の統括 通関と出入金 の管理 LPGS 61 APRIL 2009 ングできていた海上貨物はせいぜい全体の四 分の一程度でしたが、今ではほとんどすべ ての貨物をリアルタイムで、コンピュータ上 で追跡できるようになりました。
どの工場 の担当者も、もはや我々に電話することなく、 二四時間、コンピュータ上で貨物追跡を行え るようになったため、LPGSと工場とも に大幅な業務の効率化を図ることができま した。
また、それまでは貨物情報を正確に把 握することができなかったために、一〇. 一五%の割合で、サプライヤーに対する支払 いの過不足が発生していました。
それを清 算するために、多くの人手と時間がかかっ ていました。
そうした作業も必要なくなり ました。
サプライヤーのグローバル化も支援 レガット&プラットの本社はミズーリ州に ありますが、LPGSの本社はイリノイ州シ カゴに置きました。
本社のほかに、中国に 二カ所、台湾、ベトナム、インド、メキシコ、 ルーマニアに支社を置いています。
LPGSの本社と支社が窓口になり、オ ラクルのソフトを使うことで、サプライヤー からフォワーダー、キャリア、通関までの全 業務を掌握する仕組みができ上がりました。
その仕組みの中でLPGSは、複数の工場と、 多数のサプライヤーをつなぐ、結び目のよう な役割を果たしています(図3)。
LPSGはまた、各工場が海外のサプライ ヤーと新たな取引を始めることを積極的に支 援しています。
それまで海外との取引経験 の少なかった工場に対して、コストの面でど れだけ有利になるか、品質やリードタイムは どうなっているのかといった情報を提供する ことで、調達費用の一層の削減を図ってい ます。
現在、東南アジアやインド、ブラジルなど のBRICs諸国をはじめとする約一〇〇 カ国にあるサプライヤーとの取引があります。
新たな取引を開始する際には、LPGSが 工場に代わってRFQ(見積依頼書)を提 出したり、あるいはサプライヤーの過去の実 績や調達能力を調査するなどして、工場と 一緒になってサプライヤーの選別を行ってい ます。
サプライヤーとの契約には、部材の品質や 価格、納期などはもちろんのこと、知的所有 権や年少者労働に違反してないか、各国の環 境基準はクリアしているのかといった項目も 含まれています。
こうした取引情報は、i2 テクノロジーズのソフトを介してデータベース に蓄積します。
それによって海外のサプライ ヤー情報の精度を高めることに努めています。
最近では、親会社の工場支援だけにとど まらず、サプライヤーの支援にも乗り出して います。
親会社と取引のあるベッド関連のサ プライヤーがマレーシアに工場を建てようと した際には、工場のロケーション選びから工 場のデザインまで、LPGSが助言をしまし た。
そのようにサプライヤーが競争力を高め ることは、我々にとってもプラスになると考 えています。
1ドル=98円で換算 (編集部注)本講演は、〇八年十一月に米国のフロ リダ州で行われた?Supply Chain & Logistics 2008 in North America?にて行われた。
会議の運営会社 であるワールドトレードの許可を得て本誌が講演を 抄訳した。
図3 輸入業務のソリューション サプライヤーのマスターデータ 発注書 データの検査結果 ASN フォワーダーの送り状 LPGS 製品のマスターデータ 手作業で注文書をASNに 事前出荷情報通知データ(ASN) サプライヤーコンプライアンス チーム キャリアの システム 輸送業務の 管理者 フォワーダーの システム 米国の税関 オラクルピープルソフト 倉庫 請求書 ネット上での情報閲覧 船荷証券(B/L) 輸送指示 輸送支持への対応 荷物情報 税関の登録 船荷証券(B/L)情報 メールによる 警告やレポート フォワーダーの送り状 全輸入業務 サプライヤーとの 交渉窓口 国際ビジネスの知識
それまで工場 ごとに行っていた調達を一本化。
新たに国 際調達子会社のレガット&プラット・グロー バル・サービシーズ(LPGS)を設立し、 グローバル・ロジスティクスの効率化にも乗 り出した。
LPGSの社長を務めるウォー リー・クレイ氏が一連の取り組みを解説する。
(取材・編集 横田増生) 小口配送をDHLに一本化 米国ミズーリ州に本社を置くレガット&プ ラットは創業が一八八三年という老舗企業で あり、かつ「フォーチュン五〇〇」に入る製 造業者です。
ニューヨーク証券取引所に上場 したのは一九七〇年代のことで、二〇〇七 年の売上高は四三億ドル(四二二〇億円) です。
米国とカナダを中心に二二カ所の製造 拠点を構え、従業員二万四〇〇〇人を擁し ています。
当社は創業時に手がけたベッドのスプリン グの製造を足掛かりにして、ほかの分野に も手を広げていきました。
現在は以下の四 つの製造部門から成り立っています。
住居 用設備部門(ベッドやカーテンなど)、小売 り用備品部門(店頭で使うディスプレイ用の 製品)、産業用資材部門(鉄鋼ワイヤーや溶 接済みの管類など)、特殊製造機械部門(ベッ ドや自動車のサスペンションを製造する機械 など)──です。
ほかに〇八年上期までは、 ダイキャストを製造するアルミニウム製造部 門がありましたが、業務見直しの結果、売 却しました。
当社は従来、各製造部門に属する工場に 大きな権限を与え、各工場を独立採算部門 とみなす体制をとってきました。
そのため、 たとえ自動車の部品工場とワイヤー工場が地 理的に近くにあったとしても、お互いに何を しているのか気にかけないという社風がで き上がっていました。
しかし、製造業において、工場や生産部 門ごとの部分最適から、サプライチェーンの 全体最適を目指すことで経営効率を高めよ うという流れが次第に強まるにつれて、当 社もその動きに無関心ではいられなくなって きました。
当社がSCMの全体最適に向けて本格的 に動き始めたのは〇一年のことです。
製造 業者の中では、決して早い取り組みである とは言えませんでした。
それまでの三〇年 以上にわたって、当社の売上高の年平均成 長率(CAGR)が一五%前後あったことが、 欧米SCM会議? 製造四部門の調達を一元管理 可視性を高め輸入業務を効率化 会社略歴 会社名 レガット&プラット(Leggett & Platt) 創業 1883年 本社 ミズーリ州カセージ 上場 ニューヨーク証券取引所(1979年) 社長兼CEO デービッド・へフナー 主業 住居用設備などの製造 売上高 43億600万ドル(4219億8800万円) 従業員数 約2万4000人 2007年の年次報告書より 米レガット&プラット 59 APRIL 2009 その背景になっています。
(企業買収による 売上高増を含む) 当社が〇一年に最初に取り組んだのは、ネッ トを使って全社の調達を一本化することでし た。
外部の調査会社を使って試算したところ、 年間二〇億ドル(一九六〇億円)の調達費 のうち八割が、一本化によってボリュームディ スカウントの対象になり得るという結果が出 ました。
それを受けて、全社横断的な調達部門を 設立し、調達の一本化に乗り出しました。
当初の課題は、全社の調達実績の正確なデー タを集めることでした。
当時、既に全社的 な調達の仕組みとしてi2テクノロジーズの アプリケーションソフトウエアを使っていま したが、会計処理については各工場や各支 社がそれぞれ独自に選んだERP(統合基 幹業務システム)を使っていたため、統一し たやり方で全社のデータを集めることには困 難を伴いました。
新設した調達部門では、ERPのデータ や、注文書・売掛金の送り状の山と向き合い、 それまでばらばらに購入していた部品の個 数や履歴、部品番号、サプライヤー、購入価 格などを調べることから始めなければなり ませんでした。
そうやってデータベースができあがって初 めて、価格のばらつきのある部材を見つけ 出すことができるようになり、その結果と して調達費用を抑えることができるように なりました。
最初に契約の一本化を実施したのは、米 国の国内外に発送する小口配送でした。
〇二年に発送業務をDHL(当時のエアボー ン・エクスプレス)一社に集約するという契 約を結んだことで、小口配送コストを大幅に 削減することができました。
独立採算の国際調達子会社を設立 データの収集と並行して、調達部門は〇二 年から次の六つのプロセスを通して、全社的 な調達の一本化を進めてきました。
まず取り組んだのは、全社的に調達を統 合することの効果を現場に周知させる担当 者を、各工場に置くことでした。
一定のルー ルに従って調達を進めることが、どれほど全 社的なコスト削減と利益の確保につながるの かということを、工場の同僚たちに説くの が彼らの役回りです。
二つ目は、顧客の要求をリストアップして、 それを調達のルールに反映させることです。
コスト削減を図りながらも顧客満足度を落と さないように努めました。
三つ目は、「国連標準製品およびサービス コード( united nations standard products and services codes)」に則って全社的な実 績データを集め、その部材の調達を一本化す べきかどうかを判断することでした。
四つ目は、調達を効果的にするSCM戦略 を立てることでした。
調達する部材の特性に 合わせて、サプライヤーから工場、エンドユー ザーに至る無理のない流れを作りました。
五つ目は、横断的なチームを編成すること でした。
チームに参加するのはロジスティク ス部門や調達部門、製造部門、品質管理部門、 法律部門などの代表者で、チームの中で各 部門の責任と役割を明確にしました。
六つ目は、サプライヤーとロジスティクス 企業の選択です。
サプライヤーに関しては、 技術支援の優劣や欠陥製品の比率などで評 価を行いました。
ロジスティクス企業はオン タイム配送率や誤配率などで評価して選別を 行いました。
〇三年に入って、海外からの調達を専門 に行う部門を立ち上げました。
それが現在、 私が社長を務めるグローバル・サービシーズ ( Leggett & Platt Global Services=LPG S)です(図1)。
LPGSはまず、業務プロセスのトップに コンプライアンス(法令順守)を据えること にしました。
そして調達業 務を中軸に置 いて全体の仕 組みを考える ようにしまし た。
一般に製 造業者は会計 を中心に業務 プロセスを組み 立てることが 多いのですが、 当社は調達の 図1 LPGS の役割 LPGS ●一元的な顧客管理 ●ロジスティクス業務 ●品質管理 ●説明責任 ●データ収集 ●コミュニケーション・ ツールの開発 ●法令順守 ●一括発注による 価格交渉 ●倫理基準の適用 要求 対応 各工場・支店 サプライヤー 要求 対応 APRIL 2009 60 周辺業務として、会計、輸送、在庫管理な どのプロセスを位置付けました。
ERPには オラクルの「ピープルソフト」を選びました。
LPGSは、顧客である各工場に専属の 担当者を置き、そのロジスティクス業務から、 部材の品質管理、データの収集、一括発注 による値段交渉など、幅広い業務を請け負 います。
部材や調達の過程で問題が生じれば、 進んで説明責任を果たすことも役割に含ま れています。
海上輸送のステータスを可視化 またコンプライアンス面では、海外のサプ ライヤーが従業員に対して現地の法律に従っ た賃金を支払っているか、法律で労働が禁 止されているような未成年者は働いていな いのかなどの点まで目を配っています。
ご存知の通り、米国の輸入管理は〇一年 に起こった9・ 11 事件以降、大きく変わり ました。
治安維持を目的として、輸入業者 には今まで以上にコンプライアンスの姿勢が 求められるようになっています。
実際、輸 入した製品の個数が送り状より多かった場合 には必ずといっていいほど税関当局から説明 を求められます。
余分に送られてきた物の 内容や個数、その理由などです。
LPGSを設立する以前の当社の輸入業 務のやり方は、国内業務と同様、工場ごと にばらばらでした。
各工場は国内の調達の 延長線上に輸入業務を位置付け、その管理 や業務プロセスの改善は、フォワーダーやロ ジスティクス企業の守備範囲だと見なしてい ました。
コア・コンピタンス以外の業務をアウトソー シングしていたといえば聞こえはいいのです が、実際には、当社に輸入業務の内容や業 務プロセスの善し悪しを判断する能力が欠け ていたために、問題があっても改善するこ ともままならず、コスト削減に向けた力学も 働かない状況にありました。
さらには、全 社的な情報共有も確立しておらず、既存の ERPは使い物になっていませんでした。
そこで、新設したLPGSが、全社の海 外からの調達を全面的に請け負って、その 支払業務までを代行することになりました。
LPGSは、コストセンターとしてではなく、 ほかの工場と同じようにプロフィットセンター として位置付けられています。
各工場はL PGSにサービスに応じた料金を支払います。
これはシェアードサービスのようにコストセ ンターとするのではなく、プロフィットセン ターとした方が、お互いにコスト意識をもっ て業務に取り組むことができるという考え方 に基づいています。
レガット&プラットの売上高全体に占める LPGSの売上高は二・五%前後で推移して います。
これはLPGSが提供しているサー ビスレベルを考えると、非常に低コストであ ると自負しています。
LPGSの業務フローは、図2の通りです。
「関連法に沿った発注書(PO)の発行」→「発 地における混載業務」→「ロジスティクス業 務の統括管理」→「輸入通関と決済の管理」 ──という大きな流れになります。
まず我々が取り組んだのは、輸入貨物の「可 視性(Visibility)」を高めることでした。
当 社が取り扱う輸入貨物の大半は海上輸送で 運ばれてきます。
年間二万五〇〇〇.三万 TEU(二〇フィートコンテナ換算)の貨物が、 約一〇〇〇本のルートを通って、北米各地の 工場に運び込まれます。
利用しているキャリアは主なものだけでも 一〇社ありました。
LPGSが発足するま では、表計算ソフトを使ってキャリアごとに コンテナの運航状況を把握しているという状 態でした。
新たに海上コンテナ専門の運航管 理ソフトを導入したことで、可視性を大きく 高めることができました。
ソフトを導入する以前に、正確にトラッキ 図2 輸入業務のプロセス 発地における 混載業務 法律に従った 発注書の発行 基盤となるデータベースの確立 輸入業務の可視性を高めることで諸問題を解決 ロジスティクス 業務の統括 通関と出入金 の管理 LPGS 61 APRIL 2009 ングできていた海上貨物はせいぜい全体の四 分の一程度でしたが、今ではほとんどすべ ての貨物をリアルタイムで、コンピュータ上 で追跡できるようになりました。
どの工場 の担当者も、もはや我々に電話することなく、 二四時間、コンピュータ上で貨物追跡を行え るようになったため、LPGSと工場とも に大幅な業務の効率化を図ることができま した。
また、それまでは貨物情報を正確に把 握することができなかったために、一〇. 一五%の割合で、サプライヤーに対する支払 いの過不足が発生していました。
それを清 算するために、多くの人手と時間がかかっ ていました。
そうした作業も必要なくなり ました。
サプライヤーのグローバル化も支援 レガット&プラットの本社はミズーリ州に ありますが、LPGSの本社はイリノイ州シ カゴに置きました。
本社のほかに、中国に 二カ所、台湾、ベトナム、インド、メキシコ、 ルーマニアに支社を置いています。
LPGSの本社と支社が窓口になり、オ ラクルのソフトを使うことで、サプライヤー からフォワーダー、キャリア、通関までの全 業務を掌握する仕組みができ上がりました。
その仕組みの中でLPGSは、複数の工場と、 多数のサプライヤーをつなぐ、結び目のよう な役割を果たしています(図3)。
LPSGはまた、各工場が海外のサプライ ヤーと新たな取引を始めることを積極的に支 援しています。
それまで海外との取引経験 の少なかった工場に対して、コストの面でど れだけ有利になるか、品質やリードタイムは どうなっているのかといった情報を提供する ことで、調達費用の一層の削減を図ってい ます。
現在、東南アジアやインド、ブラジルなど のBRICs諸国をはじめとする約一〇〇 カ国にあるサプライヤーとの取引があります。
新たな取引を開始する際には、LPGSが 工場に代わってRFQ(見積依頼書)を提 出したり、あるいはサプライヤーの過去の実 績や調達能力を調査するなどして、工場と 一緒になってサプライヤーの選別を行ってい ます。
サプライヤーとの契約には、部材の品質や 価格、納期などはもちろんのこと、知的所有 権や年少者労働に違反してないか、各国の環 境基準はクリアしているのかといった項目も 含まれています。
こうした取引情報は、i2 テクノロジーズのソフトを介してデータベース に蓄積します。
それによって海外のサプライ ヤー情報の精度を高めることに努めています。
最近では、親会社の工場支援だけにとど まらず、サプライヤーの支援にも乗り出して います。
親会社と取引のあるベッド関連のサ プライヤーがマレーシアに工場を建てようと した際には、工場のロケーション選びから工 場のデザインまで、LPGSが助言をしまし た。
そのようにサプライヤーが競争力を高め ることは、我々にとってもプラスになると考 えています。
1ドル=98円で換算 (編集部注)本講演は、〇八年十一月に米国のフロ リダ州で行われた?Supply Chain & Logistics 2008 in North America?にて行われた。
会議の運営会社 であるワールドトレードの許可を得て本誌が講演を 抄訳した。
図3 輸入業務のソリューション サプライヤーのマスターデータ 発注書 データの検査結果 ASN フォワーダーの送り状 LPGS 製品のマスターデータ 手作業で注文書をASNに 事前出荷情報通知データ(ASN) サプライヤーコンプライアンス チーム キャリアの システム 輸送業務の 管理者 フォワーダーの システム 米国の税関 オラクルピープルソフト 倉庫 請求書 ネット上での情報閲覧 船荷証券(B/L) 輸送指示 輸送支持への対応 荷物情報 税関の登録 船荷証券(B/L)情報 メールによる 警告やレポート フォワーダーの送り状 全輸入業務 サプライヤーとの 交渉窓口 国際ビジネスの知識
