2009年4月号
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住友倉庫

APRIL 2009  50 〇八年度通期予想を下方修正  住友倉庫の過去の業績動向を振り返ると、 営業利益は一九九八年度の四八・七億円をボ トムとして、直近の二〇〇七年度には八四・ 六億円まで回復している。
業績回復を支えた 要因としては外部環境の変化や合理化努力、 物流拠点整備による事業規模拡大もあるが、 「経営スピードの変化」を指摘できる。
 以前は事業ポートフォリオが近似している 大手財閥系倉庫会社と比べても、ともすれば 変革のスピードは十分ではなかった。
物流事 業の損益動向をみると、他社が辛うじて黒字 確保を続ける中で、九八年度、九九年度と営 業赤字に転落している。
また、全社費用を資 産按分した修正営業利益が〇四年度に黒字転 換を果たすまで長らく赤字状態が続いていた ことなどは、事業リストラへの着手の遅れを 表しているといえる。
 転機となったのは村上ファンドの台頭だ。
投 資ファンドの台頭は保有資産や開発ポテンシ ャル、本業の改善余地といった点で経営資源 の有効活用が十分ではなかったことを示して いた。
村上ファンドが筆頭株主となった〇四 年末以降、住友倉庫は中期経営計画の策定、 機関投資家/株式市場との接点強化、企業買 収へのスタンスの変化、といった対応を矢継 ぎ早に進めてきた。
 〇五年に策定した〇六年度〜二〇一〇年 度の中期経営計画「経営戦略二〇一〇」では、 「物流と不動産のソリューション・プロバイダ ー」としての価値創造を掲げている。
長年培 ってきた在庫管理能力を軸に、国内外に有す る物流インフラを有機的に活用する戦略だ。
 一〇年度の数値目標、営業利益一一〇億 円、ROE(自己資本利益率)六・二%の達 成に向けては、配送センター業務の強化、顧 客との情報システムのネットワーク化推進、中 国・東南アジアを中心とした海外ビジネスの 拡充などの重点施策を打ち出した。
現在は事 業環境の変化もあり、収益構造改革の途上に あるが、方向性としては納得度が高い。
 周知の通り、物流業界を取り巻く環境は極 めて厳しくなっている。
景気悪化を背景に荷 主企業が生産/在庫調整を進め、足元の荷動 きは急減している。
住友倉庫も〇八年度第3 四半期決算で、通期見通しを減額修正。
営業 利益予想は当初計画の八〇億円から前期比十 三%減の七三・五億円に引き下げた。
 中期的にも、生産拠点の地理的問題、物流 合理化意欲の高まり、公共投資の縮減などか ら、国内貨物量の大幅な増加は期待しづらい。
持続的成長と経営計画の達成に向けた対応施 策が求められよう。
住友倉庫  ファンドの台頭機に経営スピードを加速 財務力と事業ポートフォリオに安定感  村上ファンドが筆頭株主になった〇四年末 以降、経営姿勢は一変した。
大型拠点の整備、 遠州トラックの買収、オムロン物流子会社へ の出資など、次々と積極策を打ち出している。
サービスの独自色は薄いが財務力や事業ポー トフォリオの安定感が、今後、特に不況下で は大きな強みになりそうだ。
一柳 創 大和総研 企業調査第一部 第48回 51  APRIL 2009 遠州トラックの買収は有効な一手  まず、荷主企業の物流機能への要求の変化 は今後も続くことが予想される。
これまで同 様、物流業務のアウトソーシングのニーズは依 然として高く、荷主企業のコア事業回帰や団 塊世代の退職などを契機とした物流子会社の 再編期待も根強い。
また国内外を問わず、多 くの業種で業界再編・合従連衡が進みつつ ある。
企業規模と交渉力といった点で困難を 伴う部分はあるものの、取扱量の拡大に向け、 こうした動きへの対応が求められよう。
 その意味では、〇六年度の遠州トラックの 買収は象徴的といえる。
地理的なネットワー クの補完、輸配送ノウ ハウの蓄積、顧客基盤 の増強などのほか、将 来的な労働需給逼迫 への備えといった点か らも有効であったと捉 えている。
また、〇七 年度にはオムロンの物 流子会社に四九%を 出資した。
このような ケースを含め、スケー ルメリットの追求やシ ナジー効果の創出が 見込まれるアライアン スも、今後のあり方 の一つと考えている。
 設備能力の増強も ポイントの一つである。
物流センター業務の 受託に向け、〇七年度の浦安や横浜港南本牧、 〇八年度の大阪南港、上海など、相次いで大 型拠点を稼働させた。
一〇年度に竣工予定の 「羽生アーカイブセンター」をはじめ、利益貢 献を期待できる首都圏でのトランクルーム事 業の拡充も寄与しよう。
 海外関係では、〇九年度第1四半期にサウ ジアラビアのプロジェクトが稼働予定だ。
住友 化学とサウジ・アラムコの合弁会社、ペトロ・ ラービグの工場内・中東地域中心の物流業務 を請け負う。
当該プロジェクトは中期的な輸 送需要が高く、製品需要や価格競争力の観点 からも業績への貢献が期待される。
国際物流 の拡大に向けて着実に経営基盤を強化しつつ あり、周辺ビジネスの取り込みを含め、業容 拡大につなげていく必要がある。
 不動産事業では、大阪市での道頓堀再開発 プロジェクトを着実に推進している。
昨年八 月には同市北浜地区でのオフィスビル建設計 画も発表した。
一連の取り組みは保有資産の 最適活用、安定収益源の確保につながるだろ う。
 ただし、3PL/SCM事業、中期的に荷 動き拡大が期待されるアジア地域を中心とし た国際物流の取り込みといった方向性は、多 くの総合物流業者が標榜しているものでもあ る。
サービスの差別化や競争力の確立といっ た観点では、現状では十分な成果を確認でき るに至ってはいない。
 一方で、現在のような不況時は、資本蓄積 や事業ポートフォリオの安定感がこれまで以 上に業者間の格差として顕在化する時期でも ある。
経営スピードが変化したこと、事業基 盤の拡充に向けた諸施策を着実に進めている こと、資本蓄積/財務余力の観点で優位性を 持つことなどを勘案すれば、競争優位を確立 していくことも可能ではないだろうか。
 株価水準に目を転じれば、最近の株価は軟 調な推移となっている。
もちろん株式市場全 般の地合いも影響しているだろうが、PBR (株価純資産倍率)一倍割れ水準での推移は 保有資産の有効活用、資本政策といった点に 課題あり、と捉えられていると判断している。
 ROEは〇七年度実績が三・九%、一〇年 度中計目標が六・二%であり、水準として充 分とはいい難い。
投資その他資産(主として 有価証券)が総資産の三割を占めるなど、過 去の経緯も含めた一部株式持ち合いがバラン スシートを膨らませている側面がある。
この 数年で自社株買いを機動的に行っている点は 評価できるが、それでも非事業資産を多く有 している状況といえるだろう。
財務余力を事 業基盤の拡充に転用できるかどうか、今後の 動向に引き続き注目したい。
過去10年間の株価推移 《出来高》 (円) ひとつやなぎ・はじめ 一九九七年三月早稲田大 学理工学部土木工学科卒。
同年四月大和総研入社、 企業調査部インフラチー ムに配属。
九九年から物 流担当に。
著者プロフィール

月刊ロジスティクス・ビジネス

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