2009年4月号
物流IT解剖
物流IT解剖
アイ・ロジスティクス
APRIL 2009 54
〇一年に三社が経営統合 システムと組織を再構築
伊藤忠グループのアイ・ロジスティ
クスは、二〇〇一年に伊藤忠商事系
列の物流会社三社が合併して誕生し
た。
国内の倉庫業を中心に展開して いた伊藤忠倉庫、航空フォワーディン グのニュージャパンエアサービス、海 上貨物の伊藤忠エクスプレスという、 異なる三つの領域を手掛ける会社が 経営を統合。
国際総合物流業者とし て再スタートを切った。
合併に当たって情報システムの本 格的な統合には手を付けなかった。
各 社の事業領域の違いを考慮して、あ えて別々のシステムのままスタート し、その後もドラスティックな見直し は避けた。
アイロジでCIO(最高 情報責任者)を務める宇於崎進一郎 執行役員はこう説明する。
「新たに統合システムを開発すると なるとスタートまでに非常に時間が かかってしまう。
このため当初は旧 三社のシステムをそのまま使うこと にした。
その後、伊藤忠倉庫が使っ ていたSAPに会計システムを統一 するとか、フォワーディングはニュー ジャパンの仕組みが一番充実してい たからこれをベースに作り直すなど、 若干の統合と?片寄せ?をして現在 に至っている」 アイロジの情報システム部門が担 当している業務領域は大きく四つか らなる。
?WMS(倉庫管理システ ム)などの倉庫系システム、?航空 フォワーディングや海上貨物などの 取扱系システム、?会計や人事など 管理系システム、そして?電子メー ルなど全社共通の情報インフラ── である。
このうち?倉庫系は伊藤忠倉庫の システムをベースにして、合併前から 長らく取引関係にあった富士通ビジ ネスシステムと共にハードを集約。
社 内で「フェーズ?」と呼ぶシステムを 構築した。
ここでは富士通の「プラ イマジー」という汎用コンピュータを 利用している。
一方、「フェーズ?」 と呼ぶ?取扱系のハードには、IB Mのオフィスコンピュータ「AS/4 00」を採用した。
あえてホスト系のマシンを選択した 理由は、システムの安定性を重視し たからだ。
まだ〇二年当時は、ビジ ネスの基盤としてオープンなインター ネットを使うことが一般的ではなか ったという事情もあった。
しかしそ の後、時代は変わった。
アイロジに とってもネット活用は欠かせないも のになった。
現在では同社もウィンドウズ上で 動くシステムを積極的に展開してい る。
倉庫系ではウエブベースで動く基 幹システム「Wings21」を新たに開 発した。
宇於崎執行役員は、「もう 『フェーズ?』に投資するつもりはな い。
新しい案件には『Wings21』で 対応し、二〇一〇年までにすべての 3社合併後に4割近くITコストを改善 伊藤忠商事の物流事業を強力にサポート アイ・ロジスティクス 伊藤忠グループの物流会社3社が2001年に合併して誕生した。
発足直 後は各社のシステムが乱立し、売上高に対するITコスト比率は2.1 %に 達していた。
その後、段階的にシステムを統合。
コスト比率を約1.3 % まで低減した。
親会社の商流機能とシステム対応力を活かして、VMI 事業や国際物流事業を積極的に展開している。
経営企画本部に所属しCIO を務める宇於崎進一郎執行 役員 三社合併 第25 回 ◆本社組織 本社の情報システム部に15人が所属し ており、このうち社員は10人。
別途、上部組織である経 営企画本部に情報システム担当のCIOを設置している。
◆情報関連会社 直系の子会社はない。
伊藤忠グルー プには伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)という有力な ITベンダーがあるが、通信ネットワークなどのインフラ系と 人事・会計などの管理系を除けば、他の協力ITベンダー を使ってシステムを構築している。
《概要》 2001年4 月、伊藤忠系列の物流会社3 社が合併して誕生。
旧3 社が 倉庫、航空貨物、海上貨物とそれぞれに得意分野を持っていたことから、合併 後の組織やシステムの融合にはかなり時間をかけた。
富士通の「PRIMERGY」(記述言語COBOL) やIBM の「AS/400」(同RPG) など、業務システムは近年もホスト系で構成してきた。
ただWMS についてはマ イクロソフト.NET で構築した次期システムに徐々に移行中。
合併直後に単体売上高比で2.1%に上っていたIT コストは、今年度は1.3 % まで減る見込み。
過去の経験から「1.4%程度が適正」と考えているため、さら にコストを削減する必要性は感じていない。
55 APRIL 2009 直すという考え方をとってきた。
こ のため〇一年の三社合併後、システム の融合にメドをつけたのは、本社を 東京都港区に移して、それまで別々 のオフィスに分散していた旧三社が 物理的に集結した〇四年頃になって からだったという。
二年前に開発実務を止め パッケージ利用も本格化 アイロジの情報システム部は三つの 課から構成されている。
うち「シス テム第一課」は取扱系や人事・会計 システムなどを手掛け、「システム第 二課」は倉庫系システムを担当。
そ して三つ目の「IT企画課」が情報 インフラの整備や運用、日々の庶務 などを担っている。
〇七年まで同社の情報システム部 は、「システム開発課」と「システム 運用課」という機能別の二つの課に 分かれていた。
だが合併から約五年 経っても、それぞれの課内には合併 前の影響が色濃く残っていた。
同じ 「開発課」に所属する社員でも、出身 企業のシステム以外は十分に使いこ なせない状態がつづいていた。
このため組織の名称とは裏腹に、 「実態としては、伊藤忠倉庫出身の人 材が多く所属していた『運用課』が ?倉庫アプリケーション課?で、『開発 課』は?取扱系システム課?となっ てしまっていた。
そこで組織名も実 態に合わせて改めることにした」と 宇於崎執行役員は説明する。
同じようなタイミングで、情報シ ステム部門が社内で手掛けるべき業 務領域も見直した。
以前は社員が基 幹システムのプログラミングまでこな していた。
しかし、物流事業におけ るITの重要性が高まってきたのに 伴い、社内でシステム部門に求めら れる業務内容も変わり、新規システ ムを立ち上げるスピードなどを厳しく 問われるようになっている。
総勢一 五人の情報システム部にできること には限りがあった。
そこで、プログラミングなどの開 発実務はすべて外注するように方針 を改めた。
以後、社内ではシステム の要件定義までしか手掛けていない。
そこから先の工程については、既存 システムのちょっとした修正について も外注している。
パッケージソフトの活用も積極化 した。
次世代の倉庫系システムとし て展開している「Wings21」は、実 は富士通ビジネスシステムズのWM Sパッケージ「WebAS」をベースに 作り込んだものだ。
現行システムで ある「フェーズ?」と同じITベン ダーを使いつづけることで、蓄積し てきたノウハウを継承しつつシステム 開発の負担を軽減している。
中国物流を中心に「菱通WMS」と 呼ぶパッケージも採用している。
これ は「Wings21」と比べて小規模なWM Sで、上海に本拠をおく中国系IT ベンダーの菱通が作っている。
同社の 日本法人は伊藤忠グループと資本関 係がある。
アイロジとしては今後、倉 庫系システムについては「Wings21」 か「菱通WMS」のいずれかを使っ ていく考えだ。
単体売上高比二・一%が 現在一・三%まで低減 こうしてシステム構成を見直して きた成果はITコストの変化に着実 にあらわれている。
三社が統合した 〇一年度のアイロジのITコストは、 ハードの償却費や人件費などすべて を含めて単体売上高比で約二・一% だった。
これが〇九年三月期には約 一・三%まで減る見込みだ。
過去の経験から年間のITコスト は「単体売上高の一・四%程度が適 正」(宇於崎執行役員)と考えてい る同社にとって、〇一年度の二%超 という数値はかなり高い水準だった。
この数値には異なる三つの会社が一 つになるための?産みの苦しみ?が 端的に示されている。
倉庫系システムを置き換えていきた い」と今後の方針を語る。
業務内容が比較的シンプルで、シ ステムが陳腐化しにくい取扱系の仕 組みについては、当面「フェーズ?」 を使いつづける。
だが二、三年後に ハードをリニューアルするときには改 めて方向性を検討する。
この頃には 「Wings21」への移行にもメドがつい ている予定で、IT部門の負担も分 散できると考えている。
このようにアイロジのIT活用は、 急激な変化を避け、アプリケーション 自体もハードの更改期に合わせて見 開発方針 ITコスト アイ・ロジスティクスが利用しているシステムの構成 海外システム 中国 東南 アジア 北米 欧州 商物一体型ビジネス 支援システム e-PRON 国際FWDG ステータス 管理システム ProServe 倉庫系業務システム取扱系基幹システム 会計システム 倉庫個別システムフェーズ? 情報共有インフラ 衛材調達 システム メール BXN Earth Communication イントラホームページ www.ilogi.co.jp アパレル システム 食品冷蔵 システム 医薬品 システム 機械部品調達 システム 社内基幹ネットワーク IP-VPN 網 新WMSプロジェクトWings21 人事・勤怠管理システム フェーズ? 債権債務管理システム APRIL 2009 56 アイロジが発足した当初、経営陣 は合併によるシナジーを早く出そう として組織を大幅にシャッフルした。
たとえば旧伊藤忠倉庫で国際貨物を 手掛けていた部門と、旧伊藤忠エク スプレスの海上貨物部門を統合する といった組織変更が実施された。
経 営上、当然の措置ではあっても、現 場はこの動きについていくことがで きなかった。
統合の対象となった各部署は、別 会社だったときにはまったく異なる システムを使っていた。
ITを活用 する考え方も違っていた。
それが突 然一つの課となり、土地勘のないシ ステムを互いに使いこなすことを求 められた。
それ以前にもグループ企 業として一緒に仕事をすることはあ ったが、そのときはあくまでも会社 同士の関係だった。
「別会社だったときは互いに?社外 取引?をしていた。
それが合併で一 つの組織になったことで、いきなり ?社内取引?に変わった。
一つの課の 中で多くの社内取引が発生してしま い、一時はその手間ばかりかかると いう状況すら生まれてしまった」と 情報システム部の楠田隆志部長は振 り返る。
こうした混乱が積み重なっ て、統合効果を出すどころか逆にI Tコストを押し上げてしまった。
現在は「フェーズ?」として一元 化されている取扱系の仕組みについ ても、かつては旧三社ごとに独自シ ステムを使っていた。
その中で航空 貨物を主業としていたニュージャパン だけが、成田空港や関西空港の施設 での現場オペレーションの仕組みを持 っていた。
この比較的、重たいシス テムをゼロから開発し直すのは現実 的ではないという判断から、ニュー ジャパンのシステムをベースに「フェ ーズ?」を構築した。
ただし、ニュージャパンの旧システ ムは、NECの汎用コンピュータを使 っていた。
これをIBMの「AS/ 400」に置き換えることになった ため、結果的にはシステムを全面的 に作り直すのに等しい労力と時間が かかったという。
システムの変更に伴い、社内には 軋轢も生まれた。
とりわけ苦労した のは、それぞれの業務を会計処理と つなぐ部分だった。
旧三社が活用し ていた会計システムは、処理の考え 方そのものが違った。
しかし一つの 会社になった以上、会計システムの 統一は避けられない課題だった。
そこで旧伊藤忠倉庫が使っていた SAPに会計システムを集約するこ とにした。
ただERPパッケージの 導入は単なるシステムの変更では済ま されない。
パッケージの仕組みに合 わせて業務プロセスを整理すること が不可欠になる。
その際に従来のや り方を否定された人たちからは、そ の後、数年間にわたって不満の声が 漏れ聞こえてきたという。
それでも苦労の甲斐あって、IT コストは年を追うごとに目指す水準 へと近づいてきた。
今年度の見込み 値である売上高の一・三%という水 準は、「むしろ切り詰めすぎ」と言 うほどのレベルまで至っている。
「今 後は内部統制の充実なども見据えて、 徐々に増えていくのではないか」と 宇於崎執行役員は見ている。
商流絡むVMIを展開 国際物流の可視化も実現 アイロジの営業担当者とIT部門 が、案件を受注する前の提案段階か ら一緒に活動するケースも増えてい る。
センター運営を伴う案件では、も はやシステムの活用は必須。
総合商 社系の物流事業者として手掛けるこ との多い流通の再構築が絡む案件で は、システム対応力がとりわけ重要 な要素になる。
VMI(Vender Managed Inventory) 型のセンター運営は、その典型だ。
同 社は現在、大手日用品メーカーが工 場で使う資材を調達するためのVM 商物一体化 情報システム部の楠田隆志 部長 日用品メーカーに提供している「資材VMIシステム」の概要 サプライヤー 在庫情報 在庫シミュレーション情報 入庫予定入力機能 入出庫・納入実績情報 在庫補充警告(連絡)情報 各種情報の出力機能 情報共有 Web 入庫予定・BCラベル出力 荷受・検品 在庫チェック・棚卸 送り状作成・出力 納品(ストア格納等) 出庫検品・積込 ピッキング 入庫予定入力機能 入庫予定実績照会機能 保管ロケーション管理機能 長期滞留在庫照会機能 在庫補充警告機能 残在庫数量表示機能 出庫予定入力機能 出庫検品機能 アイ・ロジスティクス 資材VMIシステム ピッキングリスト出力 57 APRIL 2009 供している。
こうした案件では現場 のオペレーションとシステム対応をア イロジが担っている。
伊藤忠商事の物流部門は、こうし たビジネスを展開するためのインフラ を独自に構築するより、現場管理と ワンセットでアイロジに委託したほう が競争力が高まると判断。
アイロジ に「Wings21」と整合性のあるVM Iシステムの構築を依頼した。
アイロジが「i-GLAS」と呼ぶシス テムも、伊藤忠商事と共同で物流事 業を展開する中から生まれたものだ。
複数の輸送モードとプレイヤーで構 成される国際物流を、ウエブ上です べて可視化するためのシステムであ る。
このシステムにウエブ経由で顧客 がデータを入力すれば、簡単な物流 管理もできる。
国際物流を可視化するだけなら、ア イロジや伊藤忠商事の既存システム でも対応は可能だった。
実際、両社 は当初、それぞれの既存システムを統 合することを検討した。
しかし、思 いのほか統合にコストと時間のかか ることが判明。
新たにアイロジが伊 藤忠グループの共通プラットフォーム として「i-GLAS」を開発することに なった。
「i-GLAS」は〇八年末に完成した。
香港で事業を展開している日系企業 が、現地と日本で情報を共有するた めのツールとしてすでに導入してい る。
他にも興味を示している荷主が 複数おり、これから利用企業を増や していく方針だという。
伊藤忠商事が進める 株式の公開買付け 今年二月二四日、伊藤忠商事はア イロジの株式の公開買付けをスター トした。
もともと四七・二%の株式 を握る持分法適用関連会社だったが、 ほぼ全株式を取得することで完全子 会社化しようとしている。
四月九日 まで実施して、予定数を超えれば公 開買付けが成立。
アイロジは上場を 廃止することなる。
公開買付けに踏み切った理由につ いて伊藤忠商事は、「伊藤忠グループ の物流事業において分散していた経 営資源を集約して規模の利益を確保 する」とともに、「商社の本源的業 務である国内物流・国際物流の機能 強化」すると説明している。
本稿を書いている段階では、まだ 公開買付けの帰趨は明らかではない。
しかし、仮に実現したとすれば、ア イロジのIT戦略も影響を受けるこ とになる。
短期的には、伊藤忠商事 が使っているネットワーク回線を、ア イロジも利用できるようになるとい ったメリットが見込める。
しかし、中長期的にどのような変 化があるかは、まだ見えていない。
伊 藤忠商事の物流部門は、上海で手掛 けている案件で米マンハッタンのWM Sを採用している。
同社がいずれアイ ロジのIT活用にも自社との整合性 を求めるようになれば、「Wings21」 と「菱通WMS」を使っていくとい う方針は転換を迫られることになる かもしれない。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) I倉庫を運営している。
この案件で は現場オペレーションに加えて、「資 材VMIシステム」と呼ぶ仕組みも アイロジが提供している。
一般的なセンター運営では、実際 に荷役料や保管料を負担する荷主に だけ、物流データを提供すれば済む。
これに対してVMI倉庫では、納品 先の着荷主にも必要なデータを提供 する必要がある。
ところがWMSパ ッケージには、昨今の内部統制の強 化に伴うアクセス権の制限などもあっ て、こうした機能が実装されていな いことが少なくない。
そこでアイロ ジが「Wings21」をVMI向けにカ スタマイズした。
宇於崎執行役員は「この日用品メ ーカーさんからは、国内でのVMI 倉庫の運営実績を高く評価してもら っている。
今後、同様の取り組みを 中国の生産工場でも実施していくに あたって、物流管理とシステムをワン セットで中国に持ち込んでくれるよ う依頼されている」という。
親会社の伊藤忠商事に対してもサ ポートしている。
伊藤忠商事の物流 部門では機械メーカーなどを対象と して、調達先サプライヤーから伊藤忠 商事がいったん物品を買い取り、こ れをVMI倉庫に保管。
必要に応じ て納品するというソリューションを提 「i-GLAS」で国際物流を可視化(中国から輸入するケース) 中国現地 ベンダー 国内輸送 保税申告 アイロジ 深圳倉庫 通関・ 船積手配航海中輸入通関 国内配送 日本側 倉庫 Web システム“i-GLAS” 各ベンダーASN 情報 アイロジ 深圳 輸送・通関 進捗情報 入荷 情報 在庫 情報 出荷 情報 アイロジ 香港 通関・船積 進捗情報 アイロジ日本 フォワーディングシステム 海上輸送 進捗情報 通関・配送 進捗情報 WEB 画面で入力or データのアップロード 伊藤忠グループ 物流網 サプライチェーン上の 全ての情報を横串で 見える化 インターネット 経営戦略
国内の倉庫業を中心に展開して いた伊藤忠倉庫、航空フォワーディン グのニュージャパンエアサービス、海 上貨物の伊藤忠エクスプレスという、 異なる三つの領域を手掛ける会社が 経営を統合。
国際総合物流業者とし て再スタートを切った。
合併に当たって情報システムの本 格的な統合には手を付けなかった。
各 社の事業領域の違いを考慮して、あ えて別々のシステムのままスタート し、その後もドラスティックな見直し は避けた。
アイロジでCIO(最高 情報責任者)を務める宇於崎進一郎 執行役員はこう説明する。
「新たに統合システムを開発すると なるとスタートまでに非常に時間が かかってしまう。
このため当初は旧 三社のシステムをそのまま使うこと にした。
その後、伊藤忠倉庫が使っ ていたSAPに会計システムを統一 するとか、フォワーディングはニュー ジャパンの仕組みが一番充実してい たからこれをベースに作り直すなど、 若干の統合と?片寄せ?をして現在 に至っている」 アイロジの情報システム部門が担 当している業務領域は大きく四つか らなる。
?WMS(倉庫管理システ ム)などの倉庫系システム、?航空 フォワーディングや海上貨物などの 取扱系システム、?会計や人事など 管理系システム、そして?電子メー ルなど全社共通の情報インフラ── である。
このうち?倉庫系は伊藤忠倉庫の システムをベースにして、合併前から 長らく取引関係にあった富士通ビジ ネスシステムと共にハードを集約。
社 内で「フェーズ?」と呼ぶシステムを 構築した。
ここでは富士通の「プラ イマジー」という汎用コンピュータを 利用している。
一方、「フェーズ?」 と呼ぶ?取扱系のハードには、IB Mのオフィスコンピュータ「AS/4 00」を採用した。
あえてホスト系のマシンを選択した 理由は、システムの安定性を重視し たからだ。
まだ〇二年当時は、ビジ ネスの基盤としてオープンなインター ネットを使うことが一般的ではなか ったという事情もあった。
しかしそ の後、時代は変わった。
アイロジに とってもネット活用は欠かせないも のになった。
現在では同社もウィンドウズ上で 動くシステムを積極的に展開してい る。
倉庫系ではウエブベースで動く基 幹システム「Wings21」を新たに開 発した。
宇於崎執行役員は、「もう 『フェーズ?』に投資するつもりはな い。
新しい案件には『Wings21』で 対応し、二〇一〇年までにすべての 3社合併後に4割近くITコストを改善 伊藤忠商事の物流事業を強力にサポート アイ・ロジスティクス 伊藤忠グループの物流会社3社が2001年に合併して誕生した。
発足直 後は各社のシステムが乱立し、売上高に対するITコスト比率は2.1 %に 達していた。
その後、段階的にシステムを統合。
コスト比率を約1.3 % まで低減した。
親会社の商流機能とシステム対応力を活かして、VMI 事業や国際物流事業を積極的に展開している。
経営企画本部に所属しCIO を務める宇於崎進一郎執行 役員 三社合併 第25 回 ◆本社組織 本社の情報システム部に15人が所属し ており、このうち社員は10人。
別途、上部組織である経 営企画本部に情報システム担当のCIOを設置している。
◆情報関連会社 直系の子会社はない。
伊藤忠グルー プには伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)という有力な ITベンダーがあるが、通信ネットワークなどのインフラ系と 人事・会計などの管理系を除けば、他の協力ITベンダー を使ってシステムを構築している。
《概要》 2001年4 月、伊藤忠系列の物流会社3 社が合併して誕生。
旧3 社が 倉庫、航空貨物、海上貨物とそれぞれに得意分野を持っていたことから、合併 後の組織やシステムの融合にはかなり時間をかけた。
富士通の「PRIMERGY」(記述言語COBOL) やIBM の「AS/400」(同RPG) など、業務システムは近年もホスト系で構成してきた。
ただWMS についてはマ イクロソフト.NET で構築した次期システムに徐々に移行中。
合併直後に単体売上高比で2.1%に上っていたIT コストは、今年度は1.3 % まで減る見込み。
過去の経験から「1.4%程度が適正」と考えているため、さら にコストを削減する必要性は感じていない。
55 APRIL 2009 直すという考え方をとってきた。
こ のため〇一年の三社合併後、システム の融合にメドをつけたのは、本社を 東京都港区に移して、それまで別々 のオフィスに分散していた旧三社が 物理的に集結した〇四年頃になって からだったという。
二年前に開発実務を止め パッケージ利用も本格化 アイロジの情報システム部は三つの 課から構成されている。
うち「シス テム第一課」は取扱系や人事・会計 システムなどを手掛け、「システム第 二課」は倉庫系システムを担当。
そ して三つ目の「IT企画課」が情報 インフラの整備や運用、日々の庶務 などを担っている。
〇七年まで同社の情報システム部 は、「システム開発課」と「システム 運用課」という機能別の二つの課に 分かれていた。
だが合併から約五年 経っても、それぞれの課内には合併 前の影響が色濃く残っていた。
同じ 「開発課」に所属する社員でも、出身 企業のシステム以外は十分に使いこ なせない状態がつづいていた。
このため組織の名称とは裏腹に、 「実態としては、伊藤忠倉庫出身の人 材が多く所属していた『運用課』が ?倉庫アプリケーション課?で、『開発 課』は?取扱系システム課?となっ てしまっていた。
そこで組織名も実 態に合わせて改めることにした」と 宇於崎執行役員は説明する。
同じようなタイミングで、情報シ ステム部門が社内で手掛けるべき業 務領域も見直した。
以前は社員が基 幹システムのプログラミングまでこな していた。
しかし、物流事業におけ るITの重要性が高まってきたのに 伴い、社内でシステム部門に求めら れる業務内容も変わり、新規システ ムを立ち上げるスピードなどを厳しく 問われるようになっている。
総勢一 五人の情報システム部にできること には限りがあった。
そこで、プログラミングなどの開 発実務はすべて外注するように方針 を改めた。
以後、社内ではシステム の要件定義までしか手掛けていない。
そこから先の工程については、既存 システムのちょっとした修正について も外注している。
パッケージソフトの活用も積極化 した。
次世代の倉庫系システムとし て展開している「Wings21」は、実 は富士通ビジネスシステムズのWM Sパッケージ「WebAS」をベースに 作り込んだものだ。
現行システムで ある「フェーズ?」と同じITベン ダーを使いつづけることで、蓄積し てきたノウハウを継承しつつシステム 開発の負担を軽減している。
中国物流を中心に「菱通WMS」と 呼ぶパッケージも採用している。
これ は「Wings21」と比べて小規模なWM Sで、上海に本拠をおく中国系IT ベンダーの菱通が作っている。
同社の 日本法人は伊藤忠グループと資本関 係がある。
アイロジとしては今後、倉 庫系システムについては「Wings21」 か「菱通WMS」のいずれかを使っ ていく考えだ。
単体売上高比二・一%が 現在一・三%まで低減 こうしてシステム構成を見直して きた成果はITコストの変化に着実 にあらわれている。
三社が統合した 〇一年度のアイロジのITコストは、 ハードの償却費や人件費などすべて を含めて単体売上高比で約二・一% だった。
これが〇九年三月期には約 一・三%まで減る見込みだ。
過去の経験から年間のITコスト は「単体売上高の一・四%程度が適 正」(宇於崎執行役員)と考えてい る同社にとって、〇一年度の二%超 という数値はかなり高い水準だった。
この数値には異なる三つの会社が一 つになるための?産みの苦しみ?が 端的に示されている。
倉庫系システムを置き換えていきた い」と今後の方針を語る。
業務内容が比較的シンプルで、シ ステムが陳腐化しにくい取扱系の仕 組みについては、当面「フェーズ?」 を使いつづける。
だが二、三年後に ハードをリニューアルするときには改 めて方向性を検討する。
この頃には 「Wings21」への移行にもメドがつい ている予定で、IT部門の負担も分 散できると考えている。
このようにアイロジのIT活用は、 急激な変化を避け、アプリケーション 自体もハードの更改期に合わせて見 開発方針 ITコスト アイ・ロジスティクスが利用しているシステムの構成 海外システム 中国 東南 アジア 北米 欧州 商物一体型ビジネス 支援システム e-PRON 国際FWDG ステータス 管理システム ProServe 倉庫系業務システム取扱系基幹システム 会計システム 倉庫個別システムフェーズ? 情報共有インフラ 衛材調達 システム メール BXN Earth Communication イントラホームページ www.ilogi.co.jp アパレル システム 食品冷蔵 システム 医薬品 システム 機械部品調達 システム 社内基幹ネットワーク IP-VPN 網 新WMSプロジェクトWings21 人事・勤怠管理システム フェーズ? 債権債務管理システム APRIL 2009 56 アイロジが発足した当初、経営陣 は合併によるシナジーを早く出そう として組織を大幅にシャッフルした。
たとえば旧伊藤忠倉庫で国際貨物を 手掛けていた部門と、旧伊藤忠エク スプレスの海上貨物部門を統合する といった組織変更が実施された。
経 営上、当然の措置ではあっても、現 場はこの動きについていくことがで きなかった。
統合の対象となった各部署は、別 会社だったときにはまったく異なる システムを使っていた。
ITを活用 する考え方も違っていた。
それが突 然一つの課となり、土地勘のないシ ステムを互いに使いこなすことを求 められた。
それ以前にもグループ企 業として一緒に仕事をすることはあ ったが、そのときはあくまでも会社 同士の関係だった。
「別会社だったときは互いに?社外 取引?をしていた。
それが合併で一 つの組織になったことで、いきなり ?社内取引?に変わった。
一つの課の 中で多くの社内取引が発生してしま い、一時はその手間ばかりかかると いう状況すら生まれてしまった」と 情報システム部の楠田隆志部長は振 り返る。
こうした混乱が積み重なっ て、統合効果を出すどころか逆にI Tコストを押し上げてしまった。
現在は「フェーズ?」として一元 化されている取扱系の仕組みについ ても、かつては旧三社ごとに独自シ ステムを使っていた。
その中で航空 貨物を主業としていたニュージャパン だけが、成田空港や関西空港の施設 での現場オペレーションの仕組みを持 っていた。
この比較的、重たいシス テムをゼロから開発し直すのは現実 的ではないという判断から、ニュー ジャパンのシステムをベースに「フェ ーズ?」を構築した。
ただし、ニュージャパンの旧システ ムは、NECの汎用コンピュータを使 っていた。
これをIBMの「AS/ 400」に置き換えることになった ため、結果的にはシステムを全面的 に作り直すのに等しい労力と時間が かかったという。
システムの変更に伴い、社内には 軋轢も生まれた。
とりわけ苦労した のは、それぞれの業務を会計処理と つなぐ部分だった。
旧三社が活用し ていた会計システムは、処理の考え 方そのものが違った。
しかし一つの 会社になった以上、会計システムの 統一は避けられない課題だった。
そこで旧伊藤忠倉庫が使っていた SAPに会計システムを集約するこ とにした。
ただERPパッケージの 導入は単なるシステムの変更では済ま されない。
パッケージの仕組みに合 わせて業務プロセスを整理すること が不可欠になる。
その際に従来のや り方を否定された人たちからは、そ の後、数年間にわたって不満の声が 漏れ聞こえてきたという。
それでも苦労の甲斐あって、IT コストは年を追うごとに目指す水準 へと近づいてきた。
今年度の見込み 値である売上高の一・三%という水 準は、「むしろ切り詰めすぎ」と言 うほどのレベルまで至っている。
「今 後は内部統制の充実なども見据えて、 徐々に増えていくのではないか」と 宇於崎執行役員は見ている。
商流絡むVMIを展開 国際物流の可視化も実現 アイロジの営業担当者とIT部門 が、案件を受注する前の提案段階か ら一緒に活動するケースも増えてい る。
センター運営を伴う案件では、も はやシステムの活用は必須。
総合商 社系の物流事業者として手掛けるこ との多い流通の再構築が絡む案件で は、システム対応力がとりわけ重要 な要素になる。
VMI(Vender Managed Inventory) 型のセンター運営は、その典型だ。
同 社は現在、大手日用品メーカーが工 場で使う資材を調達するためのVM 商物一体化 情報システム部の楠田隆志 部長 日用品メーカーに提供している「資材VMIシステム」の概要 サプライヤー 在庫情報 在庫シミュレーション情報 入庫予定入力機能 入出庫・納入実績情報 在庫補充警告(連絡)情報 各種情報の出力機能 情報共有 Web 入庫予定・BCラベル出力 荷受・検品 在庫チェック・棚卸 送り状作成・出力 納品(ストア格納等) 出庫検品・積込 ピッキング 入庫予定入力機能 入庫予定実績照会機能 保管ロケーション管理機能 長期滞留在庫照会機能 在庫補充警告機能 残在庫数量表示機能 出庫予定入力機能 出庫検品機能 アイ・ロジスティクス 資材VMIシステム ピッキングリスト出力 57 APRIL 2009 供している。
こうした案件では現場 のオペレーションとシステム対応をア イロジが担っている。
伊藤忠商事の物流部門は、こうし たビジネスを展開するためのインフラ を独自に構築するより、現場管理と ワンセットでアイロジに委託したほう が競争力が高まると判断。
アイロジ に「Wings21」と整合性のあるVM Iシステムの構築を依頼した。
アイロジが「i-GLAS」と呼ぶシス テムも、伊藤忠商事と共同で物流事 業を展開する中から生まれたものだ。
複数の輸送モードとプレイヤーで構 成される国際物流を、ウエブ上です べて可視化するためのシステムであ る。
このシステムにウエブ経由で顧客 がデータを入力すれば、簡単な物流 管理もできる。
国際物流を可視化するだけなら、ア イロジや伊藤忠商事の既存システム でも対応は可能だった。
実際、両社 は当初、それぞれの既存システムを統 合することを検討した。
しかし、思 いのほか統合にコストと時間のかか ることが判明。
新たにアイロジが伊 藤忠グループの共通プラットフォーム として「i-GLAS」を開発することに なった。
「i-GLAS」は〇八年末に完成した。
香港で事業を展開している日系企業 が、現地と日本で情報を共有するた めのツールとしてすでに導入してい る。
他にも興味を示している荷主が 複数おり、これから利用企業を増や していく方針だという。
伊藤忠商事が進める 株式の公開買付け 今年二月二四日、伊藤忠商事はア イロジの株式の公開買付けをスター トした。
もともと四七・二%の株式 を握る持分法適用関連会社だったが、 ほぼ全株式を取得することで完全子 会社化しようとしている。
四月九日 まで実施して、予定数を超えれば公 開買付けが成立。
アイロジは上場を 廃止することなる。
公開買付けに踏み切った理由につ いて伊藤忠商事は、「伊藤忠グループ の物流事業において分散していた経 営資源を集約して規模の利益を確保 する」とともに、「商社の本源的業 務である国内物流・国際物流の機能 強化」すると説明している。
本稿を書いている段階では、まだ 公開買付けの帰趨は明らかではない。
しかし、仮に実現したとすれば、ア イロジのIT戦略も影響を受けるこ とになる。
短期的には、伊藤忠商事 が使っているネットワーク回線を、ア イロジも利用できるようになるとい ったメリットが見込める。
しかし、中長期的にどのような変 化があるかは、まだ見えていない。
伊 藤忠商事の物流部門は、上海で手掛 けている案件で米マンハッタンのWM Sを採用している。
同社がいずれアイ ロジのIT活用にも自社との整合性 を求めるようになれば、「Wings21」 と「菱通WMS」を使っていくとい う方針は転換を迫られることになる かもしれない。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) I倉庫を運営している。
この案件で は現場オペレーションに加えて、「資 材VMIシステム」と呼ぶ仕組みも アイロジが提供している。
一般的なセンター運営では、実際 に荷役料や保管料を負担する荷主に だけ、物流データを提供すれば済む。
これに対してVMI倉庫では、納品 先の着荷主にも必要なデータを提供 する必要がある。
ところがWMSパ ッケージには、昨今の内部統制の強 化に伴うアクセス権の制限などもあっ て、こうした機能が実装されていな いことが少なくない。
そこでアイロ ジが「Wings21」をVMI向けにカ スタマイズした。
宇於崎執行役員は「この日用品メ ーカーさんからは、国内でのVMI 倉庫の運営実績を高く評価してもら っている。
今後、同様の取り組みを 中国の生産工場でも実施していくに あたって、物流管理とシステムをワン セットで中国に持ち込んでくれるよ う依頼されている」という。
親会社の伊藤忠商事に対してもサ ポートしている。
伊藤忠商事の物流 部門では機械メーカーなどを対象と して、調達先サプライヤーから伊藤忠 商事がいったん物品を買い取り、こ れをVMI倉庫に保管。
必要に応じ て納品するというソリューションを提 「i-GLAS」で国際物流を可視化(中国から輸入するケース) 中国現地 ベンダー 国内輸送 保税申告 アイロジ 深圳倉庫 通関・ 船積手配航海中輸入通関 国内配送 日本側 倉庫 Web システム“i-GLAS” 各ベンダーASN 情報 アイロジ 深圳 輸送・通関 進捗情報 入荷 情報 在庫 情報 出荷 情報 アイロジ 香港 通関・船積 進捗情報 アイロジ日本 フォワーディングシステム 海上輸送 進捗情報 通関・配送 進捗情報 WEB 画面で入力or データのアップロード 伊藤忠グループ 物流網 サプライチェーン上の 全ての情報を横串で 見える化 インターネット 経営戦略
