2009年4月号
特集
特集
儲かる中国物流 独自の3PL活用と物流コスト管理
APRIL 2009 18
ノンアセット型3PLは排除
TFGLが設立後にまず着手したのは、「原単位」
に基づく物流コスト管理だった。
物流の諸活動(ア クティビティ)を細かく分け、その細分化された 個々の活動単位の基準コストを算出する。
算出の 根拠には、協力物流会社の提出した見積書だけで なく、独自の調査によって入手したデータも含ま れる。
こうして基準コストを算出することを、ト ヨタでは「原単位計算」と呼ぶ。
TFGLはこの原単位計算を導入し、物流コス トに関する基礎データを整備している。
こうした 基礎データは物流会社との料金交渉のベースとな り、また物流効率改善の基礎的管理指標の一つと して活用されている。
複数の業者を過度に競わせて料金を引き下げる ために、原単位計算を適用しているわけではない と、TFGLは強調する。
むしろ、効率的なコス ト構造を有し、合理的な料金を提示する物流会社 こそ、トヨタの中国事業とともに成長することが でき、トヨタと長期的取引関係を樹立することが 可能だと、考えている。
TFGLは物流業者に支払う料金に三%のマー ジンを足したうえで、それを荷主企業であるトヨ タの各事業体に請求する。
現状では、トヨタの各 事業体はTFGLに対して、あるいはTFGLは 協力物流会社に対して、コスト削減のための改善 係数を課してはいない。
しかし原単位計算のデー タが完備した段階では、改善係数の導入を検討す るつもりだという。
TFGLは基本的に物流アセットを持たず、す べての現業を3PL企業、物流専業者に委託して いる。
これらの委託先企業との取引関係は、ほと んどが各事業会社から引き継いだものだという。
従来から、各事業会社に派遣されたトヨタ本社の 物流エキスパートらがトヨタ流の方法で物流会社 を選定し、日常の業務執行に対して監督・指導を 行っていたため大幅な変更の必要がなかったので ある。
トヨタは日本国内と同じように、中国でも長期 安定的なパートナー関係の形成という観点に立脚 して物流会社の選定を行っている。
そのために、 三つの基準が設けられている。
一つ目はトヨタの 物流に関する考え方を理解し実行できる企業を優 先的に選ぶことである。
この基準を適用した結果として、日本ひいては グローバルでも、トヨタの物流業務を長年にわた って請け負っている豊田通商、トライネット(三 井物産の傘下にある物流専門企業)、NYKロジ スティックス、日本梱包運輸倉庫、上組などの日 本の物流企業とその関連会社が中国でも委託先と して選ばれている。
この基準を厳格に適用すれば、中国においても、 すべての委託先が日系物流企業になりかねない。
しかし実際にはTFGLの起用している協力物流 会社の中には現地系も含まれている。
それどころ か、現地系は委託先企業数で約六割を占め、委託 業務金額ベースでも約四割を担っているという。
現地系の多くは、トヨタの中国事業のパートナ ーである第一汽車(FAW)、広州汽車(GAC) の関連物流会社(例えば、陸捷、広汽商貿)で、 合弁パートナーの意向に配慮した結果と言える。
ただし、これらの現地系企業を無条件に起用して いるわけではない。
トヨタの求める業務品質を実 独自の3PL活用と物流コスト管理 中国における物流コストの「原単位」を算出。
管理指 標に位置付けると同時に支払い物流費のベースとして利用 している。
協力物流会社の選定はコンペに頼らず、独自 の基準を設けて各社の実力と経営姿勢を評価。
長期安定 的なパートナーシップを指向している。
トヨタの中国ロジスティクス戦略第3部 19 APRIL 2009 特集 現し、かつ継続的な改善がなされることを条件に 一定の業務範囲内で彼らを使っていると、TFG Lの責任者は力説していた。
二つ目の基準は、自らトラックや倉庫などを有し、 長期的な視野に立って継続的な投資を行う意思と 資金力を合わせ持つアセット型の物流企業という 条件である。
近年中国においても、ノンアセット 型の3PL企業が増えている。
日系3PL企業の 中にもトラックや倉庫などの資産を持たず、もっ ぱら現地系の物流企業に再委託することで受託物 流業務を遂行する企業が多い。
しかしトヨタは基本的にこの種のノンアセット 型3PLを起用しない。
自社保有トラックの台数 が業務遂行に必要なトラック台数の半分に満たさ ない業者には輸配送業務を委託してはならないと いう具体的な基準も設けている。
傭車に頼るだけ では必要な輸送能力や輸送品質を確保できないし、 十分な設備投資も期待できないと考えるからであ る。
実際、トヨタに起用されている物流会社はい ずれも相応のアセットを擁している。
例えば、天 津豊田物流有限公司(天津泰達、豊田通商、上組、 豊田輸送の合弁)は約一〇〇台のトラックと保管 面積約二万?の倉庫を保有している。
NYKロジ スティックスも倉庫施設はプロロジスからのリース だが、トラックはすべて日本から輸入した高性能 のウィング車である。
三つ目の基準は、トヨタの中国事業の拡大とと もに成長していく能力を有するか否かである。
こ れは経営者の能力と理念、企業の収益構造と技術 蓄積などに深く関わっている。
中国市場に参入し た物流企業には、極めて短期志向で、見込んでい た利潤が得られないと判断した場合には躊躇なく 投資を別の分野に切り替える企業や、その反対に 採算を度外視して破格な低料金を提示するなど、 過当な価格競争に突っ走る企業が少なくない。
また、取引開始の初期段階では顧客ニーズに対 応していたものの、業務が拡大するにつれて、そ れに見合うキャパシティを組織の中で形成できず、 次第にレスポンスの柔軟性もスピードも落ちてし まうというケースも多く見られる。
こうした物流 会社と長期安定的な取引関係を結び、信頼でき るパートナーシップを構築することは不可能だと、 トヨタは考える。
トヨタ流の委託先選定法 こうした基準を踏まえて、トヨタはコンペや入 札という手法を採らず、独自の手順で選定作業を 進めている。
まず、トヨタの委託先になりたいと 手を挙げた応募企業を上記の基準に照らしながら、 ふるいにかける。
そのうえで、選定チームは残さ れた企業を訪問し現場を視察する。
この際、事前に準備したチェックシートを用い て綿密に評価を行う。
チェックシートは経営者、 組織、財務、技術、オペレーション、教育訓練な ど各領域におよび、三五項目からなる包括的なも のである。
項目ごとに一〇段階評価を与え、最後 に各項目の点数を合計して総合評価となる。
最後に、総合評価で上位の候補企業に見積書な どを提出させ、それぞれのコスト構造を分析する。
必ずしも安いところを選ぶとは限らない。
前述し たように、トヨタは原単位計算をもとに料金基準 を算出するため、場合によっては物流市場の相場 を上回る料金水準で契約を結ぶこともあるという。
あくまでトヨタと一緒に長期にわたってやってい けるかどうかが最大のポイントになる。
しかし、日本のやり方を硬直的に移植しようと はしていない。
中国の物流事情や商慣行などを考 慮に入れて、環境に適応できる最良の方法を常に 模索している。
中国側の事業パートナーである第 一汽車と広州汽車に配慮しながら、物流会社を起 用したこともその一例である。
こうした場合には、 これらの現地系業者に対して日本の物流会社との 合弁を勧め、本体ではなく合弁企業を委託先とし て起用するケースが多い。
例えば、広州では広州汽車傘下の広汽商貿をそ のまま使うのではなく、同社と豊田通商の合弁企 業である広州豊田物流有限公司に業務を委託して いる。
合弁企業という形で、利害関係のバランス の調整と物流技術移転の受け皿の準備が同時に可 能となり、信頼できる長期安定的な委託先を育成 することができるという考え方である。
委託契約の形態や内容についても、工夫が凝ら されている。
日本のような複数年度におよぶ基本 契約ではなく、中国では現地の商慣行に従い、す べて一年契約としている。
その基本契約書には契 約期間中であっても、大きな問題が発生すれば取 引を停止するといった契約解除条項も盛り込まれ 日系協力物流会社が現地に導入して いる高性能トレーラー、トラック APRIL 2009 20 ている。
その一方で、契約満了時に特段の問題や異議が なければ、契約は自動更新される。
長期的取引関 係の志向を契約書にきちんと示すことによって、 協力物流会社に長期的な視点から設備投資や人材 育成に取り組むモチベーションを持たせているの である。
ミルクラン&中継地&分割進度納品 トヨタは日本国内で約三〇年前から、大興運輸 など系列下にある物流専業者と共同で中継地物流 システム、すなわち集約混載多頻度納品のシステ ムを作り上げてきた。
複数のサプライヤーの部品 を中継基地にいったん集約し、完成車メーカーの 必要な時に、必要な場所へ納入するこのシステムは、 輸送コストの削減、部品投入作業の効率化・簡便 化といったメリットがあるとされる。
かんばん方式における調達物流の効率を改善さ せるために開発したこの仕組みを、トヨタは修正 を加えた上で中国に導入した。
先に述べた通り、 中国では地域間の幹線輸送を効率化し、かつ納品 スケジュールを安定化することが、中継地物流を 導入した主たる目的である。
そのために、完成車工場から離れた部品産業の 集積地に中継基地を立地させている。
この点は、 完成車工場の近くに中継基地を設けている日本と は明らかに異なる。
日本での取り組みは部品搬入 の「整流化」に主眼が置かれている。
これに対し て、中国では長距離輸送の効率化と安定化が中継 地物流の主な狙いになっている。
また、トヨタ主導で製品部品の中継地物流シス テムを作り上げた点は同じでも、日本ではトヨタ 自身が物流の実務責任を負っているわけではない。
大興運輸などの物流会社に集荷・仕分け・混載・ 納入といった一連の業務を委託する荷主は、あく までも各部品メーカーである。
物流会社が複数の 部品メーカーから納品代行の役割を任されている わけである。
トヨタは日本国内では長い時間をかけて部品メ ーカーらとの強固な系列関係と信頼関係を構築し てきた。
そのために部品メーカーから物流業務の 責任を取り上げなくても、自ら開発した集荷納品 の仕組みに従ってもらうことができた。
しかし、 海外では事情が違 う。
トヨタが部品 メーカーに取って 代わって荷主にな らないと、中継地 物流の仕組みは機 能しない恐れがあ る。
中国の物流市場 では供給過剰が続 き、熾烈な価格競争が繰り広げられている。
高度 なサービスを提供する日系物流企業は多くの現地 系物流業者と比べて、その料金が格段に高い。
ト ヨタが日系物流業者への業務委託を勧めても、渋 る部品メーカーは少なくなかろう。
結果として、 中継地物流システムが成り立たなくなってしまう。
こういった問題を回避することが、ミルクラン集 荷方式を導入した背景である。
ミルクラン方式において、部品メーカーはかん ばん情報に基づいて部品を生産し出荷準備を行う。
トヨタの仕立てたトラック定期便が、その部品を 引き取る。
部品メーカーにとっては軒先渡しとな るため、出荷場以降の物流については責任を負わ ずに済む。
同時に物流コストは部品単価から切り離され、 トヨタによって統合的に管理される。
個々の部品 メーカーの利害を超越した全体最適が図りやすく なる。
実際、トヨタは日本ではミルクラン方式を 採用していなかったものの、米国やインドでそれ を導入し、社内に必要なノウハウを蓄積してきた。
中継地物流とミルクランの導入に伴い、中国に は中継センター内のさまざまな仕組みも日本から 天津の中継センターで使用されてい る「検収・分割カード」 図5 分割進度納入の仕組み 2 回/日 (○○オーダー/回) 4 回/日 (△△オーダー/回) 8 回/日 (□□オーダー/回) 物流センター ○○分割 進度吸収レーン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 組立ライン 例:生産計画480 台/日 20 1 / 24=20 台 情報 1 /○○+α 1 /○○ (1 オーダー分) 供給レーン … 行程の進度に合わせた分割頻度納入 大興運輸の資料より 21 APRIL 2009 特集 伝授された。
「分割進度納入」はその一つである。
図5で示しているように、分割進度納入とは、中 継センターに集められた部品を生産工程の進度に 合わせて一日数回から数十回に分割して順次ライ ンに供給する仕組みである。
中継センターでの活 動と工場の生産活動を高度に同期化させ、物流効 率を上げると同時にJITの納入を達成する効果 があるとされる。
生産部品の中継物流を請け負う協力物流会社は、 分割進度納入を始める前に、この仕組みの構造と 要素技術を習得するため、トヨタの斡旋を受けて、 中継物流のパイオニアである大興運輸の日本のセ ンターに研修生を送り込んでいる。
実践でノウハ ウを身につけた研修生は中国に戻った後に、同様 な仕組みを運用し始めている。
天津の中継センターの現場では、作業員は集荷 トラックの部品を検収するとともに、生産進度に 合わせて部品を分け、「Pレーン」と呼ばれる進 度吸収レーンに投入する。
分割された部品はPレ ーンで納入トラックに混載される。
こうした一連 の作業を効率よく行うために、検収・分割・混載 用カードを採用している。
作業員はカードに記載 される品番と納品書の品番と照合しながら、速や かに検収と分割を行うことができる。
ユニット・ロード化を推進 ミルクラン集荷や中継地輸送といった共同物流 の取り組みにはオペレーション上、一つ大きな障 害がある。
二万種類以上にのぼる自動車部品はそ れぞれの大きさ、形状、重量、丈夫さ、価値が千 差万別である。
そのために混載輸送の効率性が著 しく妨げられる。
この障害を乗り越えるには、ユ ニット・ロード化しなければならない。
すなわち、 パレットやコンテナなどの規格容器に部品を入れ た状態で、輸送、保管、荷役を行うのである。
しかし、中国の自動車産業には、ユニット・ロ ードがまだ十分に普及していない。
外資系を含め て多くのメーカーが依然として段ボール梱包の荷 姿で輸送、保管、荷役を行っている。
これに対して、トヨタは進出当初から、通い箱 の標準化・規格化を進め、輸送・荷役の効率化を 図ってきた。
具体的には、「鉄箱」、「鉄パレット(鉄 パレ)」、「EU箱」、「TP箱」と呼ばれる規格容 器を導入することで、生産部品と補修部品の物流 のユニットロード化を推進した。
このうち鉄箱と鉄パレは主に組立大物や溶接大 物部品を収容する鉄製規格容器である。
十三トン のウィングカーの荷台サイズ(一二五〇〇?×二 四〇〇?×二四〇〇?)に適合するように、一二 〇〇?×八〇〇?、二四〇〇?×一二〇〇?、一 二〇〇?×一六〇〇?の三種類の基本サイズが設 定されている。
高さも荷台の天井高(二四〇〇?) に合わせて二段積み、三段積み、四段積み用が設 定されている。
トランスミッションであれば、一二 〇〇?×八〇〇?×一一五〇?の鉄パレを二段積 みして、高さ二三〇〇?のユニットにする。
TP箱はトヨタが独自に開発した小物部品収納 用のプラスチック容器で、「トヨタ標準箱」、もしく は「トヨタプラスチック」とも呼ばれる。
小物部品 の様々な形状とサイズに対応して複数の規格があ るが、立方形もしくは長方形にまとめられ、段積 みができる。
ただし、箱のサイズが多く、段積み 効果が得にくいため、徐々に廃止する方針だ。
EU箱は、「欧州標準箱」とも呼ばれ、ヨーロッ パ基準に基づく規格容器である。
四〇〇?×三〇 〇?、四〇〇?×六〇〇?、八〇〇?×六〇〇?、 四〇〇?×一二〇〇?の四種類の標準サイズがあ り、複数のEU箱を組み合わせて長方形ユニット を作る。
荷台の天井高に合わせて、EU箱のユニ ットの段積みも高さ二・三二m以下に定められて いる。
ユニット・ロード化の導入に合わせて、トヨタは 業務を請け負う物流業者に対して、トラック積載 率の向上に欠かせない積み付けに関する技能やノ ウハウを吸収することを強く要求している。
十三 トンのウィング車の場合、車両サイズは二・四m× 二・四m×十二・五mで、七二立方メートルの容 積となるが、その五五%の積載率(約四〇立方メ ートル)を最低満載水準として定めている。
すべての車両が満載になるよう、トヨタは生産 計画、販売計画と連動して、物量の平準化を追求 すると同時に、物流現場の積み付けに関する継続 的改善を積極的に推進している。
それを積み付け 支援のソフトウェアに頼るのではなく、あくまでも 現場担当者の職人的技能の向上によって継続的に 改善し続けている点は、トヨタならではの特徴と 言える。
標準容器を導入してユニット・ ロード化を推進している
物流の諸活動(ア クティビティ)を細かく分け、その細分化された 個々の活動単位の基準コストを算出する。
算出の 根拠には、協力物流会社の提出した見積書だけで なく、独自の調査によって入手したデータも含ま れる。
こうして基準コストを算出することを、ト ヨタでは「原単位計算」と呼ぶ。
TFGLはこの原単位計算を導入し、物流コス トに関する基礎データを整備している。
こうした 基礎データは物流会社との料金交渉のベースとな り、また物流効率改善の基礎的管理指標の一つと して活用されている。
複数の業者を過度に競わせて料金を引き下げる ために、原単位計算を適用しているわけではない と、TFGLは強調する。
むしろ、効率的なコス ト構造を有し、合理的な料金を提示する物流会社 こそ、トヨタの中国事業とともに成長することが でき、トヨタと長期的取引関係を樹立することが 可能だと、考えている。
TFGLは物流業者に支払う料金に三%のマー ジンを足したうえで、それを荷主企業であるトヨ タの各事業体に請求する。
現状では、トヨタの各 事業体はTFGLに対して、あるいはTFGLは 協力物流会社に対して、コスト削減のための改善 係数を課してはいない。
しかし原単位計算のデー タが完備した段階では、改善係数の導入を検討す るつもりだという。
TFGLは基本的に物流アセットを持たず、す べての現業を3PL企業、物流専業者に委託して いる。
これらの委託先企業との取引関係は、ほと んどが各事業会社から引き継いだものだという。
従来から、各事業会社に派遣されたトヨタ本社の 物流エキスパートらがトヨタ流の方法で物流会社 を選定し、日常の業務執行に対して監督・指導を 行っていたため大幅な変更の必要がなかったので ある。
トヨタは日本国内と同じように、中国でも長期 安定的なパートナー関係の形成という観点に立脚 して物流会社の選定を行っている。
そのために、 三つの基準が設けられている。
一つ目はトヨタの 物流に関する考え方を理解し実行できる企業を優 先的に選ぶことである。
この基準を適用した結果として、日本ひいては グローバルでも、トヨタの物流業務を長年にわた って請け負っている豊田通商、トライネット(三 井物産の傘下にある物流専門企業)、NYKロジ スティックス、日本梱包運輸倉庫、上組などの日 本の物流企業とその関連会社が中国でも委託先と して選ばれている。
この基準を厳格に適用すれば、中国においても、 すべての委託先が日系物流企業になりかねない。
しかし実際にはTFGLの起用している協力物流 会社の中には現地系も含まれている。
それどころ か、現地系は委託先企業数で約六割を占め、委託 業務金額ベースでも約四割を担っているという。
現地系の多くは、トヨタの中国事業のパートナ ーである第一汽車(FAW)、広州汽車(GAC) の関連物流会社(例えば、陸捷、広汽商貿)で、 合弁パートナーの意向に配慮した結果と言える。
ただし、これらの現地系企業を無条件に起用して いるわけではない。
トヨタの求める業務品質を実 独自の3PL活用と物流コスト管理 中国における物流コストの「原単位」を算出。
管理指 標に位置付けると同時に支払い物流費のベースとして利用 している。
協力物流会社の選定はコンペに頼らず、独自 の基準を設けて各社の実力と経営姿勢を評価。
長期安定 的なパートナーシップを指向している。
トヨタの中国ロジスティクス戦略第3部 19 APRIL 2009 特集 現し、かつ継続的な改善がなされることを条件に 一定の業務範囲内で彼らを使っていると、TFG Lの責任者は力説していた。
二つ目の基準は、自らトラックや倉庫などを有し、 長期的な視野に立って継続的な投資を行う意思と 資金力を合わせ持つアセット型の物流企業という 条件である。
近年中国においても、ノンアセット 型の3PL企業が増えている。
日系3PL企業の 中にもトラックや倉庫などの資産を持たず、もっ ぱら現地系の物流企業に再委託することで受託物 流業務を遂行する企業が多い。
しかしトヨタは基本的にこの種のノンアセット 型3PLを起用しない。
自社保有トラックの台数 が業務遂行に必要なトラック台数の半分に満たさ ない業者には輸配送業務を委託してはならないと いう具体的な基準も設けている。
傭車に頼るだけ では必要な輸送能力や輸送品質を確保できないし、 十分な設備投資も期待できないと考えるからであ る。
実際、トヨタに起用されている物流会社はい ずれも相応のアセットを擁している。
例えば、天 津豊田物流有限公司(天津泰達、豊田通商、上組、 豊田輸送の合弁)は約一〇〇台のトラックと保管 面積約二万?の倉庫を保有している。
NYKロジ スティックスも倉庫施設はプロロジスからのリース だが、トラックはすべて日本から輸入した高性能 のウィング車である。
三つ目の基準は、トヨタの中国事業の拡大とと もに成長していく能力を有するか否かである。
こ れは経営者の能力と理念、企業の収益構造と技術 蓄積などに深く関わっている。
中国市場に参入し た物流企業には、極めて短期志向で、見込んでい た利潤が得られないと判断した場合には躊躇なく 投資を別の分野に切り替える企業や、その反対に 採算を度外視して破格な低料金を提示するなど、 過当な価格競争に突っ走る企業が少なくない。
また、取引開始の初期段階では顧客ニーズに対 応していたものの、業務が拡大するにつれて、そ れに見合うキャパシティを組織の中で形成できず、 次第にレスポンスの柔軟性もスピードも落ちてし まうというケースも多く見られる。
こうした物流 会社と長期安定的な取引関係を結び、信頼でき るパートナーシップを構築することは不可能だと、 トヨタは考える。
トヨタ流の委託先選定法 こうした基準を踏まえて、トヨタはコンペや入 札という手法を採らず、独自の手順で選定作業を 進めている。
まず、トヨタの委託先になりたいと 手を挙げた応募企業を上記の基準に照らしながら、 ふるいにかける。
そのうえで、選定チームは残さ れた企業を訪問し現場を視察する。
この際、事前に準備したチェックシートを用い て綿密に評価を行う。
チェックシートは経営者、 組織、財務、技術、オペレーション、教育訓練な ど各領域におよび、三五項目からなる包括的なも のである。
項目ごとに一〇段階評価を与え、最後 に各項目の点数を合計して総合評価となる。
最後に、総合評価で上位の候補企業に見積書な どを提出させ、それぞれのコスト構造を分析する。
必ずしも安いところを選ぶとは限らない。
前述し たように、トヨタは原単位計算をもとに料金基準 を算出するため、場合によっては物流市場の相場 を上回る料金水準で契約を結ぶこともあるという。
あくまでトヨタと一緒に長期にわたってやってい けるかどうかが最大のポイントになる。
しかし、日本のやり方を硬直的に移植しようと はしていない。
中国の物流事情や商慣行などを考 慮に入れて、環境に適応できる最良の方法を常に 模索している。
中国側の事業パートナーである第 一汽車と広州汽車に配慮しながら、物流会社を起 用したこともその一例である。
こうした場合には、 これらの現地系業者に対して日本の物流会社との 合弁を勧め、本体ではなく合弁企業を委託先とし て起用するケースが多い。
例えば、広州では広州汽車傘下の広汽商貿をそ のまま使うのではなく、同社と豊田通商の合弁企 業である広州豊田物流有限公司に業務を委託して いる。
合弁企業という形で、利害関係のバランス の調整と物流技術移転の受け皿の準備が同時に可 能となり、信頼できる長期安定的な委託先を育成 することができるという考え方である。
委託契約の形態や内容についても、工夫が凝ら されている。
日本のような複数年度におよぶ基本 契約ではなく、中国では現地の商慣行に従い、す べて一年契約としている。
その基本契約書には契 約期間中であっても、大きな問題が発生すれば取 引を停止するといった契約解除条項も盛り込まれ 日系協力物流会社が現地に導入して いる高性能トレーラー、トラック APRIL 2009 20 ている。
その一方で、契約満了時に特段の問題や異議が なければ、契約は自動更新される。
長期的取引関 係の志向を契約書にきちんと示すことによって、 協力物流会社に長期的な視点から設備投資や人材 育成に取り組むモチベーションを持たせているの である。
ミルクラン&中継地&分割進度納品 トヨタは日本国内で約三〇年前から、大興運輸 など系列下にある物流専業者と共同で中継地物流 システム、すなわち集約混載多頻度納品のシステ ムを作り上げてきた。
複数のサプライヤーの部品 を中継基地にいったん集約し、完成車メーカーの 必要な時に、必要な場所へ納入するこのシステムは、 輸送コストの削減、部品投入作業の効率化・簡便 化といったメリットがあるとされる。
かんばん方式における調達物流の効率を改善さ せるために開発したこの仕組みを、トヨタは修正 を加えた上で中国に導入した。
先に述べた通り、 中国では地域間の幹線輸送を効率化し、かつ納品 スケジュールを安定化することが、中継地物流を 導入した主たる目的である。
そのために、完成車工場から離れた部品産業の 集積地に中継基地を立地させている。
この点は、 完成車工場の近くに中継基地を設けている日本と は明らかに異なる。
日本での取り組みは部品搬入 の「整流化」に主眼が置かれている。
これに対し て、中国では長距離輸送の効率化と安定化が中継 地物流の主な狙いになっている。
また、トヨタ主導で製品部品の中継地物流シス テムを作り上げた点は同じでも、日本ではトヨタ 自身が物流の実務責任を負っているわけではない。
大興運輸などの物流会社に集荷・仕分け・混載・ 納入といった一連の業務を委託する荷主は、あく までも各部品メーカーである。
物流会社が複数の 部品メーカーから納品代行の役割を任されている わけである。
トヨタは日本国内では長い時間をかけて部品メ ーカーらとの強固な系列関係と信頼関係を構築し てきた。
そのために部品メーカーから物流業務の 責任を取り上げなくても、自ら開発した集荷納品 の仕組みに従ってもらうことができた。
しかし、 海外では事情が違 う。
トヨタが部品 メーカーに取って 代わって荷主にな らないと、中継地 物流の仕組みは機 能しない恐れがあ る。
中国の物流市場 では供給過剰が続 き、熾烈な価格競争が繰り広げられている。
高度 なサービスを提供する日系物流企業は多くの現地 系物流業者と比べて、その料金が格段に高い。
ト ヨタが日系物流業者への業務委託を勧めても、渋 る部品メーカーは少なくなかろう。
結果として、 中継地物流システムが成り立たなくなってしまう。
こういった問題を回避することが、ミルクラン集 荷方式を導入した背景である。
ミルクラン方式において、部品メーカーはかん ばん情報に基づいて部品を生産し出荷準備を行う。
トヨタの仕立てたトラック定期便が、その部品を 引き取る。
部品メーカーにとっては軒先渡しとな るため、出荷場以降の物流については責任を負わ ずに済む。
同時に物流コストは部品単価から切り離され、 トヨタによって統合的に管理される。
個々の部品 メーカーの利害を超越した全体最適が図りやすく なる。
実際、トヨタは日本ではミルクラン方式を 採用していなかったものの、米国やインドでそれ を導入し、社内に必要なノウハウを蓄積してきた。
中継地物流とミルクランの導入に伴い、中国に は中継センター内のさまざまな仕組みも日本から 天津の中継センターで使用されてい る「検収・分割カード」 図5 分割進度納入の仕組み 2 回/日 (○○オーダー/回) 4 回/日 (△△オーダー/回) 8 回/日 (□□オーダー/回) 物流センター ○○分割 進度吸収レーン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 組立ライン 例:生産計画480 台/日 20 1 / 24=20 台 情報 1 /○○+α 1 /○○ (1 オーダー分) 供給レーン … 行程の進度に合わせた分割頻度納入 大興運輸の資料より 21 APRIL 2009 特集 伝授された。
「分割進度納入」はその一つである。
図5で示しているように、分割進度納入とは、中 継センターに集められた部品を生産工程の進度に 合わせて一日数回から数十回に分割して順次ライ ンに供給する仕組みである。
中継センターでの活 動と工場の生産活動を高度に同期化させ、物流効 率を上げると同時にJITの納入を達成する効果 があるとされる。
生産部品の中継物流を請け負う協力物流会社は、 分割進度納入を始める前に、この仕組みの構造と 要素技術を習得するため、トヨタの斡旋を受けて、 中継物流のパイオニアである大興運輸の日本のセ ンターに研修生を送り込んでいる。
実践でノウハ ウを身につけた研修生は中国に戻った後に、同様 な仕組みを運用し始めている。
天津の中継センターの現場では、作業員は集荷 トラックの部品を検収するとともに、生産進度に 合わせて部品を分け、「Pレーン」と呼ばれる進 度吸収レーンに投入する。
分割された部品はPレ ーンで納入トラックに混載される。
こうした一連 の作業を効率よく行うために、検収・分割・混載 用カードを採用している。
作業員はカードに記載 される品番と納品書の品番と照合しながら、速や かに検収と分割を行うことができる。
ユニット・ロード化を推進 ミルクラン集荷や中継地輸送といった共同物流 の取り組みにはオペレーション上、一つ大きな障 害がある。
二万種類以上にのぼる自動車部品はそ れぞれの大きさ、形状、重量、丈夫さ、価値が千 差万別である。
そのために混載輸送の効率性が著 しく妨げられる。
この障害を乗り越えるには、ユ ニット・ロード化しなければならない。
すなわち、 パレットやコンテナなどの規格容器に部品を入れ た状態で、輸送、保管、荷役を行うのである。
しかし、中国の自動車産業には、ユニット・ロ ードがまだ十分に普及していない。
外資系を含め て多くのメーカーが依然として段ボール梱包の荷 姿で輸送、保管、荷役を行っている。
これに対して、トヨタは進出当初から、通い箱 の標準化・規格化を進め、輸送・荷役の効率化を 図ってきた。
具体的には、「鉄箱」、「鉄パレット(鉄 パレ)」、「EU箱」、「TP箱」と呼ばれる規格容 器を導入することで、生産部品と補修部品の物流 のユニットロード化を推進した。
このうち鉄箱と鉄パレは主に組立大物や溶接大 物部品を収容する鉄製規格容器である。
十三トン のウィングカーの荷台サイズ(一二五〇〇?×二 四〇〇?×二四〇〇?)に適合するように、一二 〇〇?×八〇〇?、二四〇〇?×一二〇〇?、一 二〇〇?×一六〇〇?の三種類の基本サイズが設 定されている。
高さも荷台の天井高(二四〇〇?) に合わせて二段積み、三段積み、四段積み用が設 定されている。
トランスミッションであれば、一二 〇〇?×八〇〇?×一一五〇?の鉄パレを二段積 みして、高さ二三〇〇?のユニットにする。
TP箱はトヨタが独自に開発した小物部品収納 用のプラスチック容器で、「トヨタ標準箱」、もしく は「トヨタプラスチック」とも呼ばれる。
小物部品 の様々な形状とサイズに対応して複数の規格があ るが、立方形もしくは長方形にまとめられ、段積 みができる。
ただし、箱のサイズが多く、段積み 効果が得にくいため、徐々に廃止する方針だ。
EU箱は、「欧州標準箱」とも呼ばれ、ヨーロッ パ基準に基づく規格容器である。
四〇〇?×三〇 〇?、四〇〇?×六〇〇?、八〇〇?×六〇〇?、 四〇〇?×一二〇〇?の四種類の標準サイズがあ り、複数のEU箱を組み合わせて長方形ユニット を作る。
荷台の天井高に合わせて、EU箱のユニ ットの段積みも高さ二・三二m以下に定められて いる。
ユニット・ロード化の導入に合わせて、トヨタは 業務を請け負う物流業者に対して、トラック積載 率の向上に欠かせない積み付けに関する技能やノ ウハウを吸収することを強く要求している。
十三 トンのウィング車の場合、車両サイズは二・四m× 二・四m×十二・五mで、七二立方メートルの容 積となるが、その五五%の積載率(約四〇立方メ ートル)を最低満載水準として定めている。
すべての車両が満載になるよう、トヨタは生産 計画、販売計画と連動して、物量の平準化を追求 すると同時に、物流現場の積み付けに関する継続 的改善を積極的に推進している。
それを積み付け 支援のソフトウェアに頼るのではなく、あくまでも 現場担当者の職人的技能の向上によって継続的に 改善し続けている点は、トヨタならではの特徴と 言える。
標準容器を導入してユニット・ ロード化を推進している
