2009年5月号
SOLE

町工場からロジスティクスを再構築

MAY 2009  86 SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics ト(製品・サービス)を効率的に提 供することである。
 企業が事業価値の向上を図るため には、顧客×プロダクトの組み合わ せを再考し、プロダクトの作り方・ 届け方を改善していくことが必要で ある。
顧客が求めるプロダクトを顧 客に成り代わって提供する。
すなわ ち、顧客の機能・働きを代行するこ とによって顧客の事業を支えていく のである。
例えば、消費財の小売 業は地域生活者の仕入代行者であり、 その小売業の購入代行者は卸売業者 といえる。
 ここで行われる製品物流とは、メ ーカー、卸、小売業者から製品を預 かり注文に応じて製品を動かし、「モ ノをカネ」に変える業務である。
さ まざまな事業において、それぞれに 関わるステークホルダー(関係者)が ネットワーク上で連携し、プロダク トをユーザーに届けている。
 事業はこのような業務代行ネット ワーク上で実現するのであり、この 業務代行ネットワークがロジスティ クス・ネットワークなのである。
顧客の事業再構築につながる 改善・改革がロジスティクス  なぜ、顧客は自社(協力者)にプ ロダクトの提供を依頼するのだろう か。
顧客は自らの働きに専念したい、 本業以外の仕事を自分よりも上手に こなしてくれる外部者に委託したい と考えるためである。
すなわち、業 務代行は委託者(顧客)と受託者 (自社)の選択と合意で成り立って いる。
 中でも特に、業務代行の裾野が広 いのが機械、自動車産業だ。
にもか かわらず、モノ作り大国・日本で完 成品メーカーや一部の一次部品メー カーからみた部品調達、製造組み立 て、製品供給が論じられても、それ らを支える二次、三次の中小部品製 造業の業務代行ネットワークが論議 されることは少ない。
 完成品メーカーが大規模かつ急激 な減産を進めている今こそ、町工場 から完成品メーカーまでを含めた業 務代行ネットワークの再構築が問わ れている。
 町工場の部品加工工程から最終ユ ーザーの使用に至る業務代行ネット ワークがロジスティクス・ネットワ ークであり、製造工程から顧客まで 連鎖していくプロダクトのネットワ ークとそれを運用する情報ネットワ ークから成り立っている。
物流がモ ノを動かした結果を扱うのに対して、 ロジスティクスは情報がモノ・サー ビスを扱うといえる。
従ってロジス ティクス活動とは、顧客の事業再構 築そのものにつながる改善・改革業 RAMS研究会報告 町工場からロジスティクスを再構築  今号では「RAMS研究会」の 研究内容を報告する。
製造業が顧客 の選択と指示通りにモノ作りを行う 時代は終わった。
特に中小部品メー カーは顧客の部品製造活動を積極的 に支援していくことが求められてい る。
そのためには自ら業務プロセス を作り込み、最も効率的な業務代行 ネットワーク(ネットワーク業務プ ロセス)を構築し、顧客にとって有 効な製品・サービスを提供しなけれ ばならない。
そこではグローバルな 視点で顧客と業務プロセスを連携し、 産直(産地直送)化を推進すること がポイントとなる。
(システム化研究 所・曽我部旭弘所長)  RAMSとはReliability(信頼 性)、Availability(即応性)、Main tainability(保全性)、Supportabili ty(支援性)などシステムの持つ要 件を指す。
RAMS研究会はSO LE日本支部の毎月のフォーラムに 合わせて開催し、会員が自主的な話 題・テーマを持ち寄り、運用してい る。
 二〇〇七年は有名なロジステ ィクス技術書である「Logistics Engineering & Management, Six th Edition」(バージニア工科大学ベ ンジャミン・S・ブランチャード教 授著)の翻訳に主に取り組み、研究 基礎資料として完成させた。
昨年 からは「原子力発電の保全業務革 新」、「ロジスティクス・ネットワー ク変革」などをテーマに研究活動を 進めている。
 現在、種々な産業でグローバル化、 ネットワークの簡素化・高度化、産 直化が起こっている。
以下、その方 向性と事業革新(事業再構築)の一 端を紹介したい。
事業は業務代行 ネットワーク上で実現する  事業とは、顧客に有効なプロダク 87  MAY 2009 客の側に立って業務プロセスを組み 立て直して初めて、顧客に活用され る優れたモノ作りができたことにな る。
 例えば東海バネ工業は、フルオー ダーメードの完全受注生産で極小個 数のバネを生産している。
同社は インターネットを通じて自社のバネ 作りのノウハウを公開し、一〇〇〇 社以上の顧客を開拓した。
ユニクロ (ファーストリテイリング)、ハニー ズなどの衣料品のSPA(製造小売 業)やしまむらは多品種の衣料品を 扱い、製造開発から店舗投入まで短 サイクルで売れる(売りたい)量の み調達し、ほぼ売り切っている。
優 れたビジネス・プロセスモデルを開 発し、事業を実現している企業が成 長できるのである。
 部品製造の中小企業も、自らの仕 事を点検し自らが部品製造コーディ ネーターとして顧客のプロダクトの 業務代行を拡充していく必要がある。
そのポイントは、常にグローバルな 視点で顧客と業務プロセスを連携し、 産直化を推進することである。
顧客のプロダクトの更新支援に 参加し事業開拓  企業はいくつかの事業から成り立 っており、各々の事業で顧客ごとの プロダクトの業務代行を担っている。
務である(図1)。
グローバル化と産直化で 事業価値を向上する  周知の通り、我が国は部品大国で ある。
産業構造としては自動車、電 機、機械設備、プラントなどの輸出 が中心になっているが、現地生産の 増加が続いても部品生産の優位性を 場をアジア市場、さらには世界中に 展開していくということである。
 これには規格量産品のみならず、 多品種多仕様な改良を伴う部品を 小ロットで(必要とする量のみ)確 実に作り届けることが必要だが、自 らの持てる技能・技術能力を活かし たプロダクトを改良しながら市場を 拡大することになる。
まず、既存 の部品・製品・サ ービスを改良しなが ら顧客に認められる P(製品・多仕様)、 Q(品質)、C(コス ト)、D(納期)を 業務プロセスに作り 込み、人材組織能 力を養成し続けるこ とができれば、事業 の再構築につなげる ことができる(図2)。
 部品メーカーは一 言でいえば顧客の部 品製造活動を積極 的に支援する「部 品製造プロデューサ ー」への変革が求め られているのである。
もはや顧客の選択と 指示通りにモノ(部 品・製品)作りを行 う時代ではない。
顧 維持することは可能である。
三次下 請け↓二次下請け↓一次下請け・ 元請化とラインアップし、完成品メ ーカーの部品製造代行の範囲を拡大 してゆくことになるだろう。
 また、卓越した高性能部品はア ジアの顧客へ産直化してゆけばよい。
商物を分離して世界中どこでも求め られる場所に製品を直送し、国内市 図1 パフォーマンスの高い業務プロセス 在庫削減・省資源 キャッシュフロー PL(パフォーマンスが低い) PH (パフォーマンスが高い) 安く(コスト) 早い(スピード) 供給( サプライ) 活動 需要( デマント) 活動 調達生産物流製品・ サービスの 仕様・ 更新 営業 サービス ロジスティクス(整える) リードタイム 短縮 協力企業 ( パートナー) ベンダー (取引先) 市場競合 顧客 (得意先) 図2 事業再構築の取り組み (V)=(X)×(Y)×(Z) 顧客業務代行 競争優位/外部化 (パートナー) 顧客協力者 事業価値の向上(V) 顧客価値と自社× 協力者の利便 事業の再編成・開拓(X) 相性のよい事業組み合わせ 効率的なプロセス構築(Y) 賢い仕事の仕組み 人材・組織能力の拡充(Z) 後継者と従業員 MAY 2009  88 ットワーク業務プロセス(業務代行 ネットワーク)を作り込んでゆけば よいということだ。
プロダクトにも ライフサイクルがあり、業務プロセ スにもライフサイクルがある。
プロ ダクトの変遷に合わせてプロセスの ライフサイクルコストが最も低くな るようにプロセスを変えていくこと になる。
※SOLE( The International Society of Logistics)は一九六〇年代に設立されたロ ジスティクス団体。
米国に本部を置き、会 員は五一カ国・三〇〇〇〜三五〇〇人に及 ぶ。
日本支部では毎月「フォーラム」を開 催し、講演、研究発表、現場見学などを通 じてロジスティクス・マネジメントに関する 活発な意見交換、議論を行っている。
  発・改良に参加でき、同時に通常の プロダクト提供が誰よりも上手にで きなければならないということであ る(図3)。
 一方で、自社が得意とする技能・ 技術を活かした部品・製品・サービ スおよび既存顧客のプロダクトを基 に、在庫レスで必要個数のみ工程順 序加工を可能にし、究極の製造原価 を実現できるように作り方を磨いて おく。
これにより、現行顧客×プロ ダクトのモデルを活かし、顧客拡大 につなげてゆくことができる。
ロジスティクス・エンジニアリ ング&マネジメントとは  事業は業務代行ネットワークを通 して実現できると考えると、物流・ ロジスティクスの捉え方も変わって くる。
ロジスティクスは事業価値を 向上するための考え方であり、方策 である。
 顧客に提供する有効なプロダクト が、最も効率的なネットワークを創 造(企画・準備し)、それを顧客× 自社+協力者で実現・実践してい く。
今あるネットワークやステーク ホルダーにこだわらず、最も効率的 なネットワークと業務プロセスを考 案し、実施・実現していくのである。
 要は顧客に有効な製品・サービス を提供するために、最も効率的なネ ロダクト提供を同時に実現しなけれ ばならない。
顧客のプロダクトの開 業務代行を担っている以上、顧客 のプロダクトの更新支援と通常のプ 次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは5月19日(火) 「RAMS研究会 2008年度活動ま とめ」を予定している。
このフォーラ ムは年間計画に基づいて運営してい るが、単月のみの参加も可能。
1回の 参加費は6,000円。
ご希望の方は事 務局( sole-j-offi ce@cpost.plala. or.jp)までお問い合わせください。
事業計画 図3 小規模事業の顧客業務連携 製品企画 基本設計/開発 詳細設計設備開発/準備 企画開発段階 生産調達段階 運用・支援・廃棄段階 調達 試作 仕様確認 生産仕上げ 生産準備 道具(治具・工具) 製作提供者 製造輸配送 配置 生産計画受注/販売 需要計画 運用廃棄 PDM 製品統合 データベース 企画開発段階 生産調達段階 ミニPDM 生産技術 データベース 実績 データベース 受注生産計画 会計財務 会計入力 発注 輸配送 加工協力者 製造調達 発注 生産準備 詳細設計・試作仕様 引き合い/企画見積り 事業計画 顧客(完成品メーカー) 自己(小集団・中小企業) 購買品提供者 材料提供者

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