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2009年6月号
海外Report

欧米SCM会議(11) 米ハドソン社

JUNE 2009  48  国際的人材紹介会社のハドソンは二〇〇四 年にサプライチェーン専門の人材紹介部門「サ プライチェーン&調達部門」を立ち上げ、転 職支援に力を入れてきた。
サプライチェーン 分野の職種は、企業によってその業務内容 が大きく異なるため、他の職種とは違った採 用ノウハウが必要になるという。
同部門のニッ キー・ブレイン副部長が解説する。
(取材・構成 横田増生) SCM人材の「二対八の法則」  ハドソンは本社をニューヨークに置く人材 紹介会社です。
従業員は約四〇〇〇人で、 米国と欧州を中心に、世界二四カ国・一四〇 都市に事務所を構えています。
直近の売上高 は約十一億ドル(一一〇〇億円)です。
当 社は「ヘッドハンティング」と「専門職派遣」、 「人事業務請負」、「人材開発」の四つのサー ビスメニューを持っており、それを五つの分 野において提供しています(図1)。
 ここ数年、欧米においてはSCMやロジス ティクス分野を転職先のキャリアとして考え る人が増えています。
それに合わせてハドソ ンでは四年前から、従来の「財務・経理」、 「情報技術(IT)」、「営業職」、「法律」の 各部門に加え、五つ目の分野として「サプラ イチェーン&調達部門」を立ち上げました。
これは従来、営業職や情報技術者として働 いてきた人々が、次の転職先としてサプライ チェーン分野を考え始めたということを意味 しています。
 人材紹介業における現在のサプライチェー ン分野のあり方は、ちょうど一九八〇年代 後半にIT分野が有望な転職先となり始め た頃の状況とよく似ています。
一言で表現 欧米SCM会議? SCM専門の人材紹介部門を設立し 採用・転職支援のノウハウを開発 米ハドソン社 図1 ハドソンの組織図 ヘッドハンティング専門職派遣人事業務請負人材開発 財務・経理 情報技術 法律 営業 SCMと調達 49  JUNE 2009 すれば、転職先としての?アイデンティティ・ クライシス?に陥っているのです。
 サプライチェーンという言葉は、定義が固 まっているとは言えません。
そのため「サプ ライチェーン担当者を募集」と表現しても、 その意味は定かではありません。
また同じサ プライチェーン担当者といっても、荷主企業 か物流企業かによって業務内容は大きく異 なります。
さらには同じ荷主企業であっても、 小売業者か製造業者かによって、求められ る資質や経験は違ってきます。
 そこで当社は、「サプライチェーン&調達」 についての求人活動を支援するときは、企 業に出向いて、その企業におけるサプライ チェーン業務の詳しい内容を聞き取ることか ら始めるようにしています。
単に業務の内 容だけにとどまらず、その企業の営業部門は、 サプライチェーン部門を全体の業務の流れの なかで重要な役割を果たしているとみなし ているのか、それとも単なる倉庫の作業部 門としてとらえているのか、などについて も事前に調査します。
 加えて欧州でサプライチェーン担当の部長 職以上を募集する場合には、複数の国のセ ンターを管轄することが多いため、語学の能 力も重要な選考基準に入ってきます。
 私自身、サプライチェーン関連の採用には、 「二対八」の法則を使っています。
一般に 人材を探す時には、その人の技術や経歴を 八〇%の割合で重視して、その人の資質が 採用予定の企業文化に合うかという部分を 二〇%の割合で勘案するとうまくいくとい われます。
しかしサプライチェーンの場合は、 その比重を反対にして技術や経歴の割合を 二〇%と低く抑え、企業文化に合うかどう かを八〇%に設定します。
そうすることで、 異なる分野から有能な人材を吸収すること ができると思うからです。
採用ミスは年収の一〇倍の損失を招く  話を採用状況全般に移しますと、今後、 企業の採用活動は難しくなる一方だといわ れています。
 図2は、先進国の労働人口がこれから減 少の一途をたどることを表しています。
三 つの折れ線グラフのうち、一番上が、女性 や今まで働いていなかった高齢者を含む「新 たに労働市場に参加した人の数」です。
一 番下が「人口全体の増減」を表しています。
最も重要なのは真ん中の折れ線で、これは上 と下を合計した実際の労働人口の推移を表 しています。
 この図によると、二〇〇八年を境にして、 労働人口は減り続けていくことがわかります。
企業が成長するためには優秀な人材の確保 が不可欠です。
しかしその基盤となる労働 人口が減少して、需要と供給のバランスが崩 れていくことで、企業の採用活動が難しく なるわけです。
 加えて、サプライチェーンのように、業務 内容が固まっておらず、進化している分野 では、求人活動は一層難しくなります。
また、 サプライチェーン分野は、荷主企業や物流企 業に加えて、コンサルティング企業なども積 極的に人材を確保しようと動いているため、 競争が一段と激しくなっています。
 企業が人材の集合体であるとするなら、 企業が成長を続けるには優秀な人材を確保 して、優秀なチームを作り上げることが不可 欠です。
最近、米国の心理学専門誌に掲載 された従業員の生産性の違いに関する調査 結果は、多くの人がこれまで経験則として知っ ていた事実を裏付けています。
 この調査では業務を、単純作業、中程度 の難易度の仕事、最も複雑な仕事──の三 分野に分けて、同一賃金の従業員たち同士 の生産性を比較しています。
それによると、 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030(年) 30 20 10 0 -10 -20 -30 -40 (万人) 図2 先進国の労働人口の推移(2000 年を0 とした場合) 新たに労働市場に参加 実際の労働人口 人口全体の増減 JUNE 2009  50 単純作業での生産性においてさえ、平均的 な従業員とトップ一〇%に入る従業員との間 には五割の差が出て、最も複雑な仕事とな ると二倍以上の開きが出るのです(図3)。
 生産性の高い人というのは、やる気のあ る従業員です。
従業員のやる気の度合を考 えるとき、私はいつも一つの小話を思い出 します。
話の舞台は中世のヨーロッパで、大 聖堂を作るために働いている石工三人に、「あ なたはどうして働いているのか」という質 問をしました。
 最初の石工はこう答えました。
「まともな 仕事で、きちんとした収入が得られるから です」。
この答えは悪くはありません。
二人 目の石工はこう答えました。
「私はこの国で 一番腕のいい石工になりたいと思って、こ の仕事に取り組んでいます」。
一人目の石工 よりはるかに見込みがあります。
 そして三人目はこう答えました。
「私は、 この大聖堂を世界で一番高い大聖堂にして、 天国の入口に届くようにしたいと思ってい ます」。
こういう従業員は、朝ベッドから飛 び起きると、自分の能力とエネルギーのすべ てを使って会社に貢献しようと考えているタ イプです。
こういう従業員を一人でも多く集 めることができれば、会社経営はうまくい きます。
 企業がどのような人材をそろえることが できるのかは、企業の入口である採用活動 にかかってきます。
採用で、どれほどうま く人を集めることができるのか。
採用には いろいろな方法があります。
履歴書の提出、 電話でのインタビュー、面接、筆記試験、心 理テスト──などです。
 採用において一〇〇% 満足することは 不可能だといわれています。
採用した人の 七〇%に満足できれば、それが最高値だと もいわれています。
生産工程の現場改善の ようにコンマ以下の数字で精度を高めていく のとはケタが違っていますが、人と人の交渉 ごとということを考えれば、七〇%という のは妥当な数字のように思えます。
従業員のやる気を引き出す人事考課  採用の満足度を七〇%に近付けるためには、 複数の方法を用いることを勧めます。
履歴 書で選別して、筆記試験、面接を行うとい うように。
また面接も、二次面接、三次面 接というように、違う人が参加することで、 より精度の高いものになります。
 企業に合わない人材をとってしまえば、大 きな損失となります。
『ハーバード・ビジネス・ レビュー』によれば、年収三万ドル(三〇〇万 円)の従業員の採用ミスは、企業にとって年 収の五倍のロスを意味し、それが専門職とな ると年収の一〇倍のロスとなる、という調査 結果があります。
 こうした採用にまつわる損失の難しいと ころは、見える形で決算数字などに現れな い点にあります。
よって、経営トップの関 心事とはなりにくいのが現状です。
それは、 手間やコストをかけて良質の人材を採用して も、それが正しく評価されないことにもつ ながります。
採用担当者は、経営トップに 対して採用の失敗が大きなロスにつながるこ とを説明する必要があります。
 採用活動は重要とはいえ、その過程には 時間も労力もかかります。
そうした採用業 務を、当社のように長年のノウハウを蓄えた 人材紹介会社に外注する企業も少なくあり ません(囲み記事参照)。
われわれが採用業 務を受注する場合、その成否は、企業側の 要望を最大限に受け入れながらも、どうやっ て実際の採用にかかる業務負担を最小限に 抑えるかにかかってきます。
 企業の入口である採用と同様に大切なのは、 いったん採用した従業員をどのように定着さ せ、さらにはどうやって動機付けを続けて いくのかという課題です。
 離職率の高い職場というのは、それ自体 が大きな問題をはらんでいます。
人事問題 の研究機関であるサラトガ研究所によれば、 従業員が一人離職して、その後任を探すと 図3 同じ賃金でも生産性はこれだけ違う 平均 100 100 100 150 185 225 単純作業中程度難易度 の仕事 複雑な仕事 トップ平均トップ平均トップ 51  JUNE 2009 するなら、それだけでその職種に当たる人 の年収の四分の一を失うことと同じことにな る、という調査結果を出しています。
 これは、採用にかかるコストと時間に加え て、新しく入ってきた社員の教育なども含 まれます。
どんなレベルであろうとも転職し てきた従業員が、会社の業務や文化になれ て力を発揮するには、六カ月が必要といわ れています。
中途採用の場合、勤め始めて 一五カ月以降になってようやく採用や教育に かかった費用を回収できるといわれています。
 離職率が三〇%を超えるような職場は、 三年強で全従業員が入れ替わることになる のですから、それだけで大きな損失を出し ていることになります。
そうした損失もま た決算数字には現れませんが、人の出入り の激しい職場で働いている人なら、だれで も実感としてわかることです。
 企業は採用活動に力を入れるのと並行して、 採用した従業員が高いレベルのやる気を持続 できる環境を整えることが必要となります。
それは必ずしも高い給与を払うことだけを意 味しません。
給与は低くても、ストック・オ プションを用意するとか、家族の生活に合わ せた勤務時間を選択できるようにするとか、 研究職ならすぐれた研究機材をはじめとし た環境を整えるとか、さまざまな方法があ ります。
企業もまた、採用した従業員一人 ひとりの個性に合った、労働環境や報酬制 度を見つける努力を続けることが求められて いるのです。
1 ド ル = 100円 で 換 算 背景と課題  英国の政府系のコンサルティング企業 A社は二〇〇五年、急速なビジネスの 成長を受けて、新たにサプライチェーン に関するコンサルティング部門を立ち上 げようと考えた。
ハドソンはA社から、 新たなSCMチームを結成するために、 レベルの異なる五人のコンサルタントを 採用する業務を受注した。
A社からは、 現在の企業文化とずれることがないこ とと、SCMの能力を持ち合わせてい ることが必要条件として提示された。
解決策  ハドソンのサプライチェーン& 調達 部門は、データベースと人脈を使って、 幅広い候補者から履歴書の提出を求め た。
その後、候補者にコンサルティング 企業の会社案内と仕事の具体的な内容 を送付した後で、電話によるインタビュー を行った。
さらにハドソンが面接を行っ た。
その後、企業による二回の面接を 経て、五人の採用が決まった。
結果  履歴書を送った候補者は二三八人 で、そこから絞り込んで電話でインタ ビューを行ったのが五八人。
ハドソン が面接したのは一六人。
その後、コ ンサルティング企業自身で一次面接を したのが十一人で、二次面接に通過 したのが七人。
そこから五人の採用 が決まった。
 一連の雇用活動にかかった時間は、 履歴書を集めるのに七週間、最後の採 用が決まったのが六六週目となる。
ハ ドソンは、採用する側と採用される側 の双方から、高い評価を受けた。
 コンサルティング企業の採用担当者か らは、採用活動の途中で次のようなメー ルを受け取っている。
「面接のための 新たな候補者を決定する時は、私の承 認を待つ必要はありません。
これまで 面接した候補者に大変満足しているし、 あなたたちの判断を信頼しています」  また就職が決まった候補者は以下の ような感想を述べている。
「私に就職の 機会を与えてくれたことに感謝します。
新しい会社は、自分にぴったり合って いるように感じており、今後の仕事を 楽しみにしています」 出典:同社ウェブサイト 英政府系コンサルティング企業A社 ──SCM関連で五人を採用 CaseStudy

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