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2009年6月号
現場改善

第76回 不況下に受注を伸ばす中小物流会社

71  JUNE 2009 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 第77 回  中小物流会社の経営が正念場を迎えている。
前年比三割減、五割 減は当たり前。
七割減という話さえ、今や珍しくはなくなっている。
倒産も急増している。
ところが、その影響から思わぬ追い風を受け る会社も出てきている。
生き残りをかけた戦いに、もがき苦しみな がら一筋の光明を見出した二社の取り組みを紹介する。
不況下に受注を伸ばす中小物流会社 スポット中心の展開が裏目に  年商五億円、車両三七台を保有する中小物 流会社M社。
ご多分に漏れず昨年九月一五日 のリーマンショックで大打撃を受けた。
今年一 月、二月の売上高は前年同月比で約三〇%の ダウンである。
期末の三月には若干回復した ものの、四月に新年度入りすると再び低迷し 始めた。
 M社は首都圏を地盤に、重量物の輸配送を 得意としている。
我々日本ロジファクトリー (NLF)との付き合いは既に一〇年近くに及 ぶが、これまでは至って健全な経営を維持し てきた。
重量物という比較的競争の緩やかな 荷物を対象として、しかもスポット需要をメー ンに据えるという明確な差別化戦略で、値崩 れを上手く避けてきた。
 M社のK社長は弱冠三〇才で先代から事業 を引き継いだ。
大変な勉強家である。
私の知 る限り、外部セミナーへの参加や読書などに、 普通の経営者の二倍くらいの時間と労力をか けている。
その経営スタイルは若さに似合わ ず保守的で、大きな冒険は避け、無借金経営 を貫いてきた。
内部留保も厚かった。
 ところが、この状況が一変したのである。
ス ポット中心の展開が仇となった。
物量が大き く減少したことで、これまでスポットで受託し てきた業務を荷主が内製化、あるいは一次元 請けが自分で処理するようになってしまった。
スポット仕事は、料金面で無理な条件をのま されることが少ない反面、物量が安定しない。
そのリスクがまともに顕在化してしまった。
 冒険をせずに堅実経営を貫いていてきたと いう美徳も、今のような状況下では、将来に 向けた種まきをこれまで行なってこなかった という欠点に変わってしまう。
すべてが裏目 に出た結果、M社が一〇年以上をかけてコツ コツと積み上げてきた内部留保は見る見るう ちに減少し、わずか六カ月で消滅してしまっ たのであった。
 K社長から連絡を受けて、私が改めてM社 を訪れたのはリーマンショックから間もない昨 年十一月のことだった。
物量の急減は既に数 字に表れていた。
日頃から笑顔を絶やさず誰 からも好かれるK社長も、さすがに人相が変 JUNE 2009  72 わっていた。
社長に就任して以来、初めて深 刻な経営危機に直面し、心も身体も憔悴して しまっているようだった。
 しかし、K社長の逆襲はここから始まった。
わずかに残った気力を振り絞って、この状況 をいかに打開するか、我々は徹底して話し合 った。
まずは減車、借庫の解約、週休三日制 の導入、役員報酬カット、給与カット、さら には従業員の解雇に至るまで、考え得る限り の聖域なきコストダウンを年内中にすべて実行 に移した。
 そして年が明けてからは、本格的に営業開 拓に乗り出した。
M社がこれまでの業務を通 じて培ったツテを辿って、あるいは過去に交 換した名刺を頼りに、K社長が自ら各社を訪 問して回った。
我々からも大手3PLを紹介 するなどしたが、時節柄かなりの苦戦が予想 された。
実際、営業活動の開始から一カ月経 っても、ほとんど何の手応えもなかった。
 それでもK社長は気力を振り絞って顧客訪 問を続けた。
それから一カ月ほど過ぎたある 日、K社長からメールが入った。
新規荷主と 結ぶ取引契約書の内容を確認して欲しいとい うものであった。
私はメールを開くやいなや、 返信もせずにK社長に直接電話を入れた。
 聞けば、地道な営業活動の甲斐あって、下 請け仕事ながらも、ようやく仕事が獲れたと いう。
しかも月間一五〇〇万円強の売り上げ が見込めるとのこと。
M社にとっては大型受 注であった。
運賃こそ厳しいが、M社に残っ た社員を食べさせて行くには十分な仕事量で ある。
信じられないような吉報に、私も思わ ず声をあげた。
 さらに詳細に話を聞くと、その荷主は大手 機械メーカーの輸送を一元管理している物流 会社で、以前にスポットの仕事を発注してく れたことがあったため、とくに材料もないま ま訪問したのだという。
その席でK社長は先 方から「今、Aエリアの輸送を依頼している 物流会社(傭車先)の経営が危ない。
いざと いう時には、替わりの会社を探さなければな らない」という話を聞きつけた。
 今回の大不況でM社は確かに深刻な打撃を 被った。
しかし、前年比三割減という数字は、 市場全体が総崩れとなっている現状では、ま だ軽症と言えるかもしれない。
実際、三割減 どころか五割減、自動車関連の荷物では七割 減という話さえ出ている。
当然、倒産や廃業 も急増している。
その仕事が生き残った会社 に回ってきたのである。
 今を何とか食い繋ぐことができれば、先に 周りが弱って手を上げる。
しかも皮肉なこと に、そうして舞い込んだ案件には中身の良い 仕事がかなり含まれている。
ただし、幸運は 待っているだけではやってこない。
M社の場 合は、K社長が地道な営業活動を続け、アン テナを張り続けたことで、起死回生の案件を 呼び寄せることができたのである。
値下げ要請を断り主要荷主から撤退  もう一社、紹介しよう。
年商約三億五〇〇 〇万円、車両約二〇台という規模で、中国・ 四国地方を中心に、住宅設備機器の輸配送と 保管、そしてドライバー派遣などを行っている S社である。
 S社はドライバー経験者を採用しない方針 を採っている。
他社でドライバー経験がある と、「ドライバーの仕事とはこんなものだ」と いう思い込みと癖がついてしまう。
その結果、 納品先での挨拶もままならなくなる。
そこで、 素人を採用して、S社のカラーに合ったドライ バーに一から育て上げることで、他社と差別 化しようという考えだ。
 我々NLFが提唱する?物流業はサービス 業である?というメッセージは、S社のT社 長の信念でもある。
事実、ドライバー教育に は力を注ぎ、高いレベルの顧客満足度によっ て荷主を維持してきた。
 ところが先述のM社と同様に昨年九月以降 は、経営環境が大きく変わってしまった。
そ の前から姉歯事件をきっかけに国内の住宅着 工数が低迷していたところを、世界同時不況 に見舞われ、M社がメーンの荷物とする住設 機器の荷動きがピタリと止まってしまった。
 まずは大幅な減車である。
それまで車両台 数二〇台のうち一四台を住設関連に充ててい たが、荷主三社から計七台の台数削減を迫ら れた。
そのうえで残る車両に対して、五%〜 一〇%の幅で値下げを要請された。
 いずれもS社を育ててくれた長年の荷主で はあったが、唐突で、あまりに過酷な要請に、 いつもは冷静なT社長も感情的にならざるを 得なかった。
うち一〇%の値下げを要請して きた荷主に対しては全面撤退を申し出たので あった。
 さらに惨事は続く。
ドライバー派遣先の八 73  JUNE 2009 社のうち五社が契約の打ち切りを通達してき たのである。
荷主、物流企業ともヒトが余り 出したためである。
S社が派遣事業を開始し てから五年目を迎え、ようやく軌道に乗りか けたところであった。
この派遣事業は我々N LFがS社に提案したものであり、契約の打 ち切りは我々にとっても大きな衝撃であった。
 しかし、T社長は決して慌てることはなか った。
派遣事業と共に展開していたフィールド サービス事業、そして路線会社の下請けとし て運営している傭車仕事が思ったほど減らな かったことが、冷静を保つうえでの支えとな っていた。
 一口に物量減少といっても、その詳細をよ く観察すると、荷動きが完全に止まってしま った会社と、比較的堅調な会社でハッキリと市 場は二分されてきている。
営業力と実績を兼 ね備えた3PLや大手路線会社の物量は、減 ったといってもせいぜい一割〜二割減。
大幅 に落ち込んだわけではない。
 中小の物流会社でも食品スーパーや医療品 関係をメーンにしているところの物量は減っ ていない。
さらには同じ業界の物流でも、ど の会社の業務を受託しているかということが 非常に重要になってきている。
つまり勝ち負 けがハッキリしてきたのである。
 その点でS社にはまだ希望があった。
それ まで売上高の約五〇%を占めていた住設関連 の物流は大幅に縮小した。
しかし、それまで 売り上げ全体の一〇%ほどしかなかった大手 路線会社の傭車仕事が急速に増えたのだ。
そ の結果、売上高に占める比率が住設関連と逆 転してしまった。
路線会社の下請け仕事が急増  大手路線会社からの荷物が増えたのは次の ような理由だった。
現在、物量は確保できて いる路線会社であっても、運賃単価の下落か ら逃れられているわけではない。
荷主からの 値下げ要請は厳しく、自社で走れば採算の取 れない荷物が増えている。
その結果、傭車に 頼ることになる。
 しかし、個建て運賃で、物量の変動に対応 できる下請けは限られている。
現在の相場レ ベルでも踏ん張れる下請け、ドライバーを維持 できる運送会社は重宝される。
それがS社で あった。
今まで住設関連に割り当てていた車 両を路線業務に振り替えたが、それでも車両 が足らず、さらに二台を増車するほど、急に 荷物が集まった。
 運賃水準はもちろん厳しい。
しかし、個建 て運賃であるため、物量が増えるほど収益性 は改善する。
それを若手中心の二〇代ドライ バーが回す。
その若さを武器に車両を一日に 三回転以上させることもある。
未経験者を採 用し、地道にドライバーを育ててきたことが功 を奏した格好だ。
 しかしT社長は、傭車の売上比率が増加す ることを望ましいとは考えていない。
「これも 食べていくための一時的な対応だと思っていま す」とあくまで冷静である。
とりあえず、今 日を生き伸びる。
現在のような非常時には、そ れも正攻法と言えるのかもしれない。
あおき・しょういち  1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89 年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp 《顧客管理シート》 M 社では荷主ごとに「カスタマーカード」を手作りしていた。
これが営業活動に役立った 【表】【裏】 代表者名 所在地 TEL・FAX 資本金 年商(過去3年) 従業員数 業種 取引銀行 経営状況 担当窓口 荷物の種類 発送頻度 月間取引額 月間発送個数 1個当たり運賃 配車台数 発送地 競合乗り入れ会社 物流ニーズ(要望) 当社担当者 企業名 特記事項 月日 (契約変更・更新・提案内容など) 弊社担当

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