2009年7月号
特集

第1部 トラック運賃 多段階構造にメス

JULY 2009  12   相場──運賃叩きは限界に  運賃の値下げ圧力は強まっている。
それも例年 のような数%の幅ではなく、従来運賃の三割引か ら五割引といった極端な値下げを求める荷主まで 出てきている。
昨年夏までの燃料サーチャージ制 度を導入しようという機運は今や雲散霧消した。
既にサーチャージを容認した荷主は、その撤回を 迫っている。
 しかし、サーチャージ分を除けば運賃相場はほ とんど動いていない。
これまでも採算ギリギリで やり繰りしてきた物流企業にとって、これ以上の 単価下落は廃業を意味する。
経営を継続するため、 “不採算荷主は切る”という方針を固めた物流企業 がここにきて増えている。
支払いサイトの延長な どの動きも見られない。
物流企業が覚悟を決めて しまえば、下請法に訴えられる恐れがある。
荷主 も強くは出られない。
 ただし、荷主がアウトソーシングしていた運送 業務を内製化し、自社スタッフに車両を運転させ るという流れが本格化していることは、需給に大 きく影響している。
内製化の場合は運賃の改定交 渉自体が行われないため、相場は変動しないが、 物流企業からみれば需要自体が“蒸発”してしま った格好だ。
 元請け飛ばしで実運送会社と契約  ロジスティクス・コンセプトの大橋進代表は「運 送業の多段階構造にメスを入れろ」と指摘する。
元請けと実運送会社を残して中間を可能な限りカ ットする。
そのために、まず自社の荷物がどのよ うな物流業者によって運ばれ、間にどのような業 者が何社入っているかを調べる。
 直接契約を結んでいる元請け業者への支払い運 賃しか把握していないという荷主が多い。
それで 安直に下げろと迫っても、突っぱねられれば打つ 手はない。
運賃の値下げを要求するなら相応の理 論武装が必要だ。
運送業の下請け構造を詳細に把 握することがその第一歩となる。
 具体的には、内部統制の強化を錦の御旗にして 元請けと下請けの契約書を確認する。
孫請けやひ 孫請けがいるのなら、その契約書も開示させる。
 運賃を下げなくても費用は抑制できる。
経済環境 の悪化は、過剰な物流サービスや合理性を欠いた商 習慣、運送業の非効率な多段階構造など、これまで タブー視されてきた制約条件にメスを入れる格好の 口実になる。
不況に便乗して突破口を開け。
運賃を値下げされた場合の具体的な扱い(複数回答) 景気後退後の運賃値下がり率 その他8.3% 0 10 20 30 40 50 値上げした運賃を 元の水準に戻された 燃料サーチャージ制度 が廃止された さらに値下げさせられた 燃料サーチャージの 価格帯が下がった 46.3% 28.1% 19.8% 19.0% 運賃を下げられた 22.6% 運賃値上げ交渉 が中断した 21.5% 変わらない 43.8% 無回答 12.1% 景気後退後の 運賃・燃料サーチャージの扱い 景気後退の影響── (%)0 N=111 1%未満1-2%未満2-3%未満3-4%未満4-5%未満5-6%未満6-10%未満10%以上 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 7.2 7.2 9.9 18.9 4.5 25.2 7.2 19.8 全日本トラック協会「軽油価格の影響と運賃転嫁に関する調査」 2001 年3月調査結果より トラック運賃 多段階構造にメス 13  JULY 2009 特 集 コスト削減 そうすることで元請けに支払った運賃がどう流れ ているのか、実配送の原価がいくらなのかを把握 することができる。
この数字が運賃交渉で大いに 役立つ。
 実態調査によって、全国で一〇〇社の実運送会 社がいたと判明した場合には、これを半分の五〇 社まで絞ることを前提に元請けと交渉を進める。
多段階構造を解消することで、元請けの支払い運 賃を下げるのだ。
 さらに船井総研ロジの赤峰誠司常務は「元請け を残すのはコンプライアンス上の問題。
大手荷主 は与信力の低い中小零細の物流企業と直接契約で きない社内ルールになっていることが多い。
ただ し、下請けに業務を丸投げしているだけの元請け では意味がない」という。
 与信のリスクを押して元請けごと切ってしまう 手もある。
その下請けで実際に荷物を運んでいた 運送会社との直接契約に切り替える。
元請けが収 受していた手数料分をカットすることができる。
 東京・大阪間の一〇トン車を八万円で委託して いた元請けが、下 請けに七万二〇 〇〇円で配送を 投げていた場合 は、一配送当たり 八〇〇〇円のコ ストダウンにな る。
新たに元請け に昇格する下請 けにとっては従 来通りの料金な ので品質面での 問題は生じない。
即効性があるうえ、五%から一 〇%程度のコスト削減を見込むことができる。
 ただし、従来の元請けが担っていた配送管理能 力は期待できなくなる。
ルート選定や配車などを、 荷主が自ら行わなければならない。
それを実現で きる人材やノウハウが備わっているかがポイント となる。
また、それまで使用していたシステムも 使えなくなるので、荷物状況の把握などサービス レベルにも影響が出てくる。
 配送便数を二割下げる「SaaS」  荷主企業が物流子会社や元請けを飛び越えて、 下請けの実運送会社の現場に入っていくためのI Tサービスの運用が今春から本格的にスタートし た。
移動体通信システムを利用した運送情報提供 サービス「商用車テレマティクス(Telematics)」 の一つで「モバイル・アセット・マネジメント・ サービス(MAMS)」と呼ばれる。
米国のテラー ゴ(TELARGO)社が開発した。
 納品の待ち時間がどこでどれだけ発生している か。
物量に対して車両台数は適正か。
積載率が低 すぎることはないか。
配送車両の状況を把握する ことで、納品条件やルート設計を改善する。
運行 速度やブレーキ使用などの詳細な運転情報までリ アルタイムで把握できるため、輸送品質の改善や 環境負荷低減にも利用できる。
 導入コストは車 両一台当たり月一 万円〜二万円。
パ ッケージソフトを 購入するのでなく、 「SaaS(Software as ロジスティクス・コン セプトの大橋進代表 船井総研ロジの 赤峰誠司常務 素材型産業平均 食品産業平均 加工型産業平均 流通業平均 物流業平均 全体平均 今年度 前年度比 前年度 今年度 前年度比 前年度 今年度 前年度比 前年度 東京→大阪 片道大阪→東京 片道東京〜大阪 往復 \84,016 102.5% \81,958 \80,055 103.1% \77,660 \149,861 103.5% \144,803 \79,738 103.2% \77,283 \80,736 103.8% \77,790 \144,250 101.1% \142,750 \89,900 98.5% \91,308 \90,792 99.6% \91,136 \152,843 101.9% \149,988 \87,889 102.9% \85,400 \83,600 101.2% \82,600 \126,667 102.7% \123,333 \79,937 103.4% \77,312 \81,287 103.2% \78,793 \151,640 105.2% \144,097 \82,932 102.4% \81,015 \82,196 102.7% \80,060 \149,126 103.7% \143,810 業種 素材型産業平均 食品産業平均 加工型産業平均 流通業平均 物流業平均 全体平均 今年度 前年度比 前年度 今年度 前年度比 前年度 今年度 前年度比 前年度 東京地区名古屋地区大阪地区 \32,091 100.3% \31,999 \38,889 112.4% \34,597 \40,310 122.5% \32,898 \27,818 100.6% \27,650 \33,386 100.6% \33,200 \24,500 100.0% \24,500 \33,619 98.9% \33,996 \30,369 103.5% \29,333 \30,965 101.4% \30,546 \32,238 101.7% \31,688 \29,820 102.2% \29,175 \33,188 101.7% \32,625 \31,618 104.6% \30,223 \29,112 103.5% \28,131 \31,218 104.3% \29,920 \31,723 101.9% \31,126 \31,238 104.2% \29,969 \32,099 106.0% \30,290 業種 4t 車・時間制運賃(1 日8 時間換算) 10t 車・距離制運賃 貸切トラックの実勢運賃──本誌08 年9月号「トラック運賃急騰」より PwCC の木村弘美 ディレクター JULY 2009  14 タイヤの価格が欧米に比べて安く、また、燃費へ の影響や安全性、耐久性に課題があるとして、こ れまでなかなか広まってこなかった。
しかし、タ イヤメーカーが昨年、新品タイヤの価格を引き上 げたことや、技術的な向上で課題がクリアされつ つあること、そして何より、経営環境の悪化を受 けてコストダウンを望む声が強くなってきたこと により、その価値が見直され始めている。
この流 れを受け、ブリヂストンをはじめとする日本のタ イヤメーカーもリトレッドタイヤ事業に力を注ぎ 始めている。
 リトレッドタイヤを導入するには新規で購入す るか、または現在使用しているタイヤのトレッド を張り替えることになる。
いずれの場合も、タイヤ の寿命がくるまで繰り返し張り替えて使用するこ とができる。
ただし、安全面への配慮から、張り 替える回数は二回から三回程度が平均だという。
 価格は購入ロットなどによって大きく異なる が、新品に比べて三割から四割ほど安くなるケー スもある。
トラックの新品タイヤの価格が一本当 たり三万円から四万円程度だとすれば、約一万円 のコストカットにつながる。
トラック台数を多く 抱えており、年に一回〜二回新品タイヤに履き替 えている事業者にとっては決して小さな金額では ない。
なかには運賃減額を要求する荷主が、コス ト削減の一手法として物流企業にリトレッドタイ ヤの使用を義務づけていることもあるという。
 貸切や路線を共配に変える   ロジスティクス・サポート&パートナーズの中 根治専務は「従来から貸切を路線便に変更すると いうコスト削減は一般的だったが、現在は路線便 たのをこの目で見て衝撃を受けた。
これが広がれ ば物流業界の構造が変わる。
実運送を下請けに投 げ、他に付加価値を持たない物流子会社や元請け は存在意義を失ってしまう。
物流の多段階構造が 崩れ、情報武装した3PLと実運送会社に集約さ れる」と予測する。
 テラーゴの資料によると米国の事例では、車両 台数二六%削減、配送便数三三%削減、燃料費・ 燃料使用率一四〜二六%削減、実車率・稼働率二 四〜三五%改善、運転手と運行管理者の生産性二 六%改善、顧客サービス九五%改善などの成果が 上がっているという。
 「運行三費」にまで口を出す  荷主のコスト意識は、燃料・修繕費・タイヤの 運行三費にまで及んでいる。
「デジタコを導入す れば、平均で五%から一〇%燃費は改善される。
燃料を共同購入して経費を削減する動きも一般化 されている。
「なかでも、最近注目を集めているの はリトレッドタイヤ(更生タイヤ)だ」とイーソ ーコ総合研究所の花房陵主席コンサルタントはい う。
 リトレッドタイヤとは摩耗したタイヤの表面 (トレッド)とサイドウォールを張り替えたもの。
欧米ではトラックをはじめとする商用車を中心 に広く普及している。
新品タイヤに比べてコスト が安く、廃棄し ないため環境に も良いことなど が評価されてい る。
 日本では新品 a Service)」形式で使用した期間だけ料金を支払 う。
実態調査をし終えたら利用を止めてもいい。
 「これまでの動態管理システムとは違って、初期 費用は車載端末を取り付ける加工賃ぐらいなので 気軽に導入できる」とプライスウォーターハウス クーパースコンサルタント(PwCC:旧ベリン グポイントを今年四月に社名変更)の木村弘美デ ィレクターは評価する。
 日本ではテラーゴ社とマスタープロバイダー契 約を結んだ伊藤忠テクノソリューションズ(CT C)がサーバーを運用している。
それを3PLが利 用して荷主企業の配送管理を効率化するというス キームだ。
同社とは別に3PLとして三井物産ロ ジスティクスマネジメントもテラーゴ社と提携、 荷主企業への提案を開始している。
 CTCでは今回のサービスの本格運用に先立 ち、外食チェーンのプロントコーポレーション、日 本サブウェイ、ミュープランニングアンドオペレ ーターズ、外食産 業支援のエイチ・ ビー・アイ、そして 定温物流の南日本 運輸倉庫と共同で シミュレーション を実施している。
 PwCCの木村 ディレクターは 「MAMSの話は 前から聞いていた が、今年春のパイ ロットで配送便数 が二〇%程度減っ イーソーコ総合研究所 の花房陵主席コンサル タント テラーゴの「MAMS」の管理画面 15  JULY 2009 特 集 コスト削減 なるが、小売り の自社センタ ーと店舗間な どグループ内 であればすぐ にも実施でき る。
調達物流に関しても納品条件を改善すること で仕入れ価格自体を下げるといった施策が実施 されている。
 顧客相手のサービス条件変更も簡単に実現でき ることがある。
ある食品メーカーは全国展開する GMSから一六時から一八時という時間指定を受 けていた。
メーカーの頭にはサービス条件は変更 できないという固定概念があったため、長年苦労 して守ってきた。
しかし経営環境の悪化を受けて、 玉砕覚悟で納品先全店に指定時間の緩和を頼み込 んでみた。
 すると「少し早くてもかまわない」という声が 意外に多くあった。
一八時を超えてもらっては困 るが、一六時でなく一四時からの納品でもよいと いう。
これによって配車の調整ができるようにな り、三〇台必要だったエリアが二五台で済むよう になった。
 日本能率協会コンサルティングの広瀬卓也生産 マネジメント革新本部ロジスティクス・ソリュー ション・センター・チーフコンサルタントは「納 品時間などの取り決めは、実務担当者ではなく営 業・バイヤー間で決定され、長年の慣習化によっ て必ずしも必要のないサービスレベルが堅持され ていることが多い」と指摘する。
納品先にとって 本当に必要なサービスレベルなのか、一度確認し てみるのも手だろう。
迎えるのは年に何日もない。
そのために平時の稼 働率が低くなっている。
 実際に満車で走っているのは特積会社の幹線輸 送くらいだ。
ルート配送車両の積載率は特に低 い。
それには二つの理由がある。
一つは時間指定。
納品時間を優先しなければならないので、非効率 な配送を強いられる。
二つめは帰りに回収品を乗 せてこないといけない等のルールがある場合。
車 両の荷台にパレットやカゴを乗せる空間を確保し ておく必要がある。
 路線便ではこうした条件に対応できないため、 積載率が低くてもこれまでは貸切を使うしかなか った。
しかしパッケージ化された大手の共配サー ビスではなく、地場の運送会社が荷主二〜三社の 荷物を積み合わせる小規模な地域共配であれば、 特殊な納品条件も個建てで対応できる。
 ただし、回収などの付帯サービスには配送費と は別途費用が発生する。
貸切はオールインの料金 だ。
細かなサービスへの対応や物量の少ない日は 早上がりさせる代わりに、ピーク時には追加料金 なしで業務を延長してくれるなどの融通も利く。
月当たりのチャーター料金を個数で割ってみたら 個建てのほうが高かったという話は多い。
自社の 仕事に熟練した専属車両を安易に切ってしまえ ば、再び貸切に戻そうとしても良い顔はされない。
共配に切り替える前に配送の実態をよく把握して おく必要がある。
 サービス水準の切り下げ  最小注文ロットの引き上げ、納品頻度の削減な ど、物流サービス水準の切り下げに乗り出す企業 も増えている。
顧客相手の納品では交渉が必要に や自社配送を共同配送に変更する動きが活発にな っている。
その結果、路線便では不採算路線が増 えている。
翌日配送できない地域も広がってきて いる」という。
 汎用的な路線便と違って同業種による共配は納 品先が同一のためコスト削減効果も大きい。
直近 ではニチレイフーズ・味の素冷凍食品・日本水産 の三社が中国地方で、エプソン販売とキヤノンマ ーケティングジャパンが北海道での共配を発表し ている。
互いのライバル意識や情報漏洩などが問 題となってこれまで進展してこなかったが、今般 の荒波を乗り切るために共配に踏み切る企業はこ れから多く出てきそうだ。
 共配への切り替えは、サービス条件を改善する チャンスでもある。
サービスレベルを見直すこと で物流コストは大きく下がる。
毎日配送をしてい たものを二日に一回にすれば、配送費は半分にな る。
ただし、これには納品先の合意が必要になる。
了承を得るのは容易ではない。
そこで一社ではな く同業者が集まり、共同配送を条件に納品先企業 と交渉するケースが増えている。
複数の取引先が 相手なら納品先企業も耳を傾ける。
納品条件のハ ードルは下がりやすくなる。
 稼働率、積載率の低い貸切を個建てに切り替え るのは配送費削減の基本といえる。
貸切中心で回 している荷主の多くは、運び切れなくなることを 恐れるあまり、 物量の波動が高 いときに合わせ て車両を投入し ている。
しかし、 物量がピークを ロジスティクス・サポ ート&パートナーズ の中根治専務 日本能率協会コンサル ティングの広瀬卓也チ ーフ・コンサルタント

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