2009年7月号
特集
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第3部 人件費 直接雇用&内製化
JULY 2009 24
相場──労働力確保が容易に
リクルートの資料によると、三大都市圏におけ
る製造・物流・清掃系アルバイトの募集時平均時
給は昨年九月以降、下落を続けている。
直近ピー クだった二〇〇七年十二月の九五三円が今年五 月には九一九円まで下落した。
とくに今年二月以 降の急落が目立っている。
これを受けて派遣作業 員を直接雇用のアルバイトに切り替える動きが 顕著になっている。
これまでは低賃金で重労働、安全衛生への配慮 にも欠ける物流現場には、人が集まりにくかっ た。
仕方なく割高な派遣会社を使い、労働力を確 保してきた。
ところがこの構図が一変した。
派遣 会社を使わなくとも募集すればいくらでも人が 採れるようになったのである。
ある企業では、今年のお中元業務のため、三つ の物流センターで計五〇人の募集を行った。
かけ た募集費は約四〇万円。
七〇人程度の応募を想定 していたが、なんと一〇倍の七〇〇人が殺到し た。
しかも時間当たりの賃金は、人が集まらなか った昨年よりも低かった。
日雇い派遣を直雇アルバイトに 現在の派遣法では派遣期間は原則最大一年、労 働者代表もしくは労働者の過半数を占める組合 の意見を聴取した場合で、最大三年と定められて いる。
派遣期間が限度に達する日を抵触日とい う。
抵触日を迎えた場合、派遣を直接雇用もしく は業務委託契約に切り替える必要がある。
物流派遣は一九九九年に解禁され、〇四年三月 の法改正で派遣期間を最大三年と定められた。
つ まり〇七年には抵触日ラッシュを迎えていたこ とになる。
ところが業界ではほとんど話題になら なかった。
違法行為が自覚されていなかったため だ。
そのまま継続して派遣を使い続けるなどの違 反が横行していた。
行政の監視も厳しくなってきている。
これま でのような杜撰な対応は通用しない。
しかし自 社でパートを確保できるのなら、わざわざ割高 な派遣会社を通す必要はない。
派遣会社の粗利は およそ人件費の二五%。
その分をコストダウンで きる。
ただし、この手法には大きな落とし穴がある。
それまで派遣会社任せだった現場スタッフの労 務管理を、全て自分たちで処理しなければならな い。
募集から始まり、採用、教育、勤怠集計、給 与計算、労務管理手続きといった一貫した仕組み が要る。
派遣社員の“2009 年問題”で再び業務請負が復 活すると見られていた物流現場の労働市場が思わ ぬ展開を見せている。
人手不足から一転、極端な人 余りに需給が大きく傾いたことで、直接雇用アルバ イトへのシフトや余剰正社員の物流移管が一斉に 起こっている。
人件費 直接雇用&内製化 1,000 990 980 970 960 950 940 930 920 910 900 932 923 920 920 919 953 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 (円) 出所:リクルート 三大都市圏における製造・物流・清掃系の アルバイト・パート募集時平均時給 2007年 2009年 2008年 25 JULY 2009 特 集 すぐ効くコスト削減 波動の大きい物流現場では、明日は一〇人、明 後日は五〇人といった必要な人員を、ジャストイ ンタイムで採用しなければならない。
派遣会社へ の電話一本で済ませていた担当者に、そのノウハ ウはない。
結果、波動のピークに合わせて採用す ることになるため、コストダウンどころか余剰人 員が出ている現場も珍しくないという。
直接雇用化の効果は大きいが、安易に考えるこ とはできない。
最低限、以下のステップは踏む必 要がある。
?推進責任者の任命 責任の所在が不明確にならないよう、大きな権 限を持たせる。
会社としての姿勢・危機感を周知 させる。
?人件費予算の見直し 全体としてコストをいくら削減すれば収益が 上がるのかを再度シュミレーションし、そのうえ で人件費の削減額を試算する。
?管理責任者の意識改革 労務管理の実務にあたる管理者に言い訳の機 会を与えない。
﹁達成がマストだ﹂という意識に。
?人件費削減プランの作成 ?で試算した数字を達成するための具体的な プランを管理責任者に立案させる。
また、その遂 行にも責任を持たせる。
?人件費の日時管理の推進 ?で試算した必要人件費に基づいた進捗管理 を一日単位で行う。
余剰人員を物流現場に異動する 中小の荷主の間では配送の内製化が進んでい る。
内製化のために、自社でトラックを購入する 企業まで出てきている。
実施すればコストは劇的 に下がる。
運送会社の四トン車を貸し切って月六 五万円を支払っていた業務に、給料三〇万円の正 社員を当てれば固定費は半減する。
ただし、この手法が機能するのは配送先の件数 が一〇カ所程度以内のルートに限られる。
配送先 が多くなると素人ドライバーには配りきれなく なる。
車両も四トン車が限度だ。
内製化は安全管理やコンプライアンスの面で のリスクがある。
運送会社の場合、最大一四時間 労働、実働八時間以内と規定されており、それを 順守するために運行管理者を置いている。
荷主に はその縛りがない。
朝の五時から業務をスタート して二二時に終わる。
そしてまた翌日の五時から 仕事という無茶な労務管理が横行している。
もち ろん労働基準法に違反している。
発覚すれば大問 題になる。
運用面での課題もある。
ある機械系の物流子会 社が外部倉庫を集約した。
しかし、輸入コンテナ のデバンニングなど社内スタッフは全く経験が ない。
そのため契約を打ち切った倉庫会社に三カ 月間にわたり技術料を支払ってオペレーション の指導を受けることに。
生産ラインへの部品供給 や製品の回収、いわゆるミズスマシの外部委 託を内製化するケースでも既存協力会社との引 き継ぎは必要だ。
日本ロジファクトリーの青木正一代表は﹁内製 化の業務移管は簡単な作業から始めて徐々に難 易度の高い仕事へと段階的に進めていくのが鉄 則。
ところがトップマネジメントは現場の実務を 理解していないため、すぐに切り替えられると思 っている。
トラブルのもとだ﹂と指摘する。
中堅派遣会 社のエスプー ルが直接雇用 を支援する サービスを開 始した。
雇用 管理担当者を顧客企業に派遣する。
募集、採用、 教育、勤怠集計、給与計算、労務管理手続きと いった直接雇用に必要な機能をワンストップ でサポートする。
昨秋から同ビジネスの開発を主導してきた エスプールHRFプロジェクトの栃本浩昭コ ンサルタントは「需給の繁閑調整はまさに我々 派遣会社の本業。
企業が望み、時流にも合って いる。
作業員の供給だけでなく、労務管理の分 野でもサポートできるのではと考えた」と語る。
エスプールへのフィーは削減された人件費 の三分の二。
直接雇用化によって削減された金 額が二五〇万円だった場合、一六〇万円ほどが 報酬となる。
クライアントのコスト削減額は約 九〇万円だ。
同サービスでは一貫サポートだけでなく、機 能別の支援も可能となっている。
入り口の募集 だけのサポートや、煩雑な勤怠集計や給与計算 だけでも請け負う。
一般企業だけでなく、同業 である派遣会社からの引き合いもあるという。
「同サービスは景気の悪い今が最もニーズが ある時期。
景気が回復すれば人手が足りなくな るので、本業の人材派遣が伸びてくる。
トレー ドオフの関係だ」と栃本コンサルタントはいう。
事例報告 直接雇用への切り替えを支援 ──エスプール エスプールの栃本浩昭 コンサルタント
直近ピー クだった二〇〇七年十二月の九五三円が今年五 月には九一九円まで下落した。
とくに今年二月以 降の急落が目立っている。
これを受けて派遣作業 員を直接雇用のアルバイトに切り替える動きが 顕著になっている。
これまでは低賃金で重労働、安全衛生への配慮 にも欠ける物流現場には、人が集まりにくかっ た。
仕方なく割高な派遣会社を使い、労働力を確 保してきた。
ところがこの構図が一変した。
派遣 会社を使わなくとも募集すればいくらでも人が 採れるようになったのである。
ある企業では、今年のお中元業務のため、三つ の物流センターで計五〇人の募集を行った。
かけ た募集費は約四〇万円。
七〇人程度の応募を想定 していたが、なんと一〇倍の七〇〇人が殺到し た。
しかも時間当たりの賃金は、人が集まらなか った昨年よりも低かった。
日雇い派遣を直雇アルバイトに 現在の派遣法では派遣期間は原則最大一年、労 働者代表もしくは労働者の過半数を占める組合 の意見を聴取した場合で、最大三年と定められて いる。
派遣期間が限度に達する日を抵触日とい う。
抵触日を迎えた場合、派遣を直接雇用もしく は業務委託契約に切り替える必要がある。
物流派遣は一九九九年に解禁され、〇四年三月 の法改正で派遣期間を最大三年と定められた。
つ まり〇七年には抵触日ラッシュを迎えていたこ とになる。
ところが業界ではほとんど話題になら なかった。
違法行為が自覚されていなかったため だ。
そのまま継続して派遣を使い続けるなどの違 反が横行していた。
行政の監視も厳しくなってきている。
これま でのような杜撰な対応は通用しない。
しかし自 社でパートを確保できるのなら、わざわざ割高 な派遣会社を通す必要はない。
派遣会社の粗利は およそ人件費の二五%。
その分をコストダウンで きる。
ただし、この手法には大きな落とし穴がある。
それまで派遣会社任せだった現場スタッフの労 務管理を、全て自分たちで処理しなければならな い。
募集から始まり、採用、教育、勤怠集計、給 与計算、労務管理手続きといった一貫した仕組み が要る。
派遣社員の“2009 年問題”で再び業務請負が復 活すると見られていた物流現場の労働市場が思わ ぬ展開を見せている。
人手不足から一転、極端な人 余りに需給が大きく傾いたことで、直接雇用アルバ イトへのシフトや余剰正社員の物流移管が一斉に 起こっている。
人件費 直接雇用&内製化 1,000 990 980 970 960 950 940 930 920 910 900 932 923 920 920 919 953 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 (円) 出所:リクルート 三大都市圏における製造・物流・清掃系の アルバイト・パート募集時平均時給 2007年 2009年 2008年 25 JULY 2009 特 集 すぐ効くコスト削減 波動の大きい物流現場では、明日は一〇人、明 後日は五〇人といった必要な人員を、ジャストイ ンタイムで採用しなければならない。
派遣会社へ の電話一本で済ませていた担当者に、そのノウハ ウはない。
結果、波動のピークに合わせて採用す ることになるため、コストダウンどころか余剰人 員が出ている現場も珍しくないという。
直接雇用化の効果は大きいが、安易に考えるこ とはできない。
最低限、以下のステップは踏む必 要がある。
?推進責任者の任命 責任の所在が不明確にならないよう、大きな権 限を持たせる。
会社としての姿勢・危機感を周知 させる。
?人件費予算の見直し 全体としてコストをいくら削減すれば収益が 上がるのかを再度シュミレーションし、そのうえ で人件費の削減額を試算する。
?管理責任者の意識改革 労務管理の実務にあたる管理者に言い訳の機 会を与えない。
﹁達成がマストだ﹂という意識に。
?人件費削減プランの作成 ?で試算した数字を達成するための具体的な プランを管理責任者に立案させる。
また、その遂 行にも責任を持たせる。
?人件費の日時管理の推進 ?で試算した必要人件費に基づいた進捗管理 を一日単位で行う。
余剰人員を物流現場に異動する 中小の荷主の間では配送の内製化が進んでい る。
内製化のために、自社でトラックを購入する 企業まで出てきている。
実施すればコストは劇的 に下がる。
運送会社の四トン車を貸し切って月六 五万円を支払っていた業務に、給料三〇万円の正 社員を当てれば固定費は半減する。
ただし、この手法が機能するのは配送先の件数 が一〇カ所程度以内のルートに限られる。
配送先 が多くなると素人ドライバーには配りきれなく なる。
車両も四トン車が限度だ。
内製化は安全管理やコンプライアンスの面で のリスクがある。
運送会社の場合、最大一四時間 労働、実働八時間以内と規定されており、それを 順守するために運行管理者を置いている。
荷主に はその縛りがない。
朝の五時から業務をスタート して二二時に終わる。
そしてまた翌日の五時から 仕事という無茶な労務管理が横行している。
もち ろん労働基準法に違反している。
発覚すれば大問 題になる。
運用面での課題もある。
ある機械系の物流子会 社が外部倉庫を集約した。
しかし、輸入コンテナ のデバンニングなど社内スタッフは全く経験が ない。
そのため契約を打ち切った倉庫会社に三カ 月間にわたり技術料を支払ってオペレーション の指導を受けることに。
生産ラインへの部品供給 や製品の回収、いわゆるミズスマシの外部委 託を内製化するケースでも既存協力会社との引 き継ぎは必要だ。
日本ロジファクトリーの青木正一代表は﹁内製 化の業務移管は簡単な作業から始めて徐々に難 易度の高い仕事へと段階的に進めていくのが鉄 則。
ところがトップマネジメントは現場の実務を 理解していないため、すぐに切り替えられると思 っている。
トラブルのもとだ﹂と指摘する。
中堅派遣会 社のエスプー ルが直接雇用 を支援する サービスを開 始した。
雇用 管理担当者を顧客企業に派遣する。
募集、採用、 教育、勤怠集計、給与計算、労務管理手続きと いった直接雇用に必要な機能をワンストップ でサポートする。
昨秋から同ビジネスの開発を主導してきた エスプールHRFプロジェクトの栃本浩昭コ ンサルタントは「需給の繁閑調整はまさに我々 派遣会社の本業。
企業が望み、時流にも合って いる。
作業員の供給だけでなく、労務管理の分 野でもサポートできるのではと考えた」と語る。
エスプールへのフィーは削減された人件費 の三分の二。
直接雇用化によって削減された金 額が二五〇万円だった場合、一六〇万円ほどが 報酬となる。
クライアントのコスト削減額は約 九〇万円だ。
同サービスでは一貫サポートだけでなく、機 能別の支援も可能となっている。
入り口の募集 だけのサポートや、煩雑な勤怠集計や給与計算 だけでも請け負う。
一般企業だけでなく、同業 である派遣会社からの引き合いもあるという。
「同サービスは景気の悪い今が最もニーズが ある時期。
景気が回復すれば人手が足りなくな るので、本業の人材派遣が伸びてくる。
トレー ドオフの関係だ」と栃本コンサルタントはいう。
事例報告 直接雇用への切り替えを支援 ──エスプール エスプールの栃本浩昭 コンサルタント
