2009年7月号
ケース

ジョンソン・エンド・ジョンソン 3PL

JULY 2009  36 3PL ジョンソン・エンド・ジョンソン ヤマトロジスティクスをパートナーに 全国12カ所の倉庫を2拠点に集約  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
配送コストを前年比十二%削減  米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) の日本法人は、三つの社内カンパニーによる 分権制を敷いている。
バンドエイドなどを扱 う「コンシューマーカンパニー」、使い捨てコ ンタクトレンズを扱う「ビジョンケアカンパニ ー」、そして病院向けの医療機器や関連製品を 扱う「メディカルカンパニー」である。
各カン パニーの経営はほぼ独立しており、物流管理 も完全に分かれている。
 日本法人の二〇〇八年度の総売上高は二二 四〇億円。
このうち約三分の二が「メディカ ルカンパニー」の扱いだ。
本稿では、同カン パニーが近年進めてきた3PLパートナーの見 直しと拠点集約について取り上げる。
 J&Jグループは世界五七カ国に二五〇以 上のグループ企業を有している。
米国ではブ ランド別に独立した企業体で扱っている複数 の事業を、日本では前述した三つのカンパニ ーに括って管理している。
〇八年度のグロー バル売上高は六三七億ドル(一ドル九六円換 算で六・一二兆円)。
一九三二年以来、実に 七六期連続で増収を続けている。
 この業績を下支えしているのが、四三年か ら受け継がれてきた「我が信条(Our Credo)」 と呼ばれる社訓だ。
ここには同社が依拠すべ き企業理念・倫理規定がおよそ二〇カ条にわ たって綴られている。
企業の社会的責任など を明文化した中には、「顧客からの注文には、 迅速、かつ正確に応えなければならない」と、 まるで物流サービスの高度化を命じたかのよ うな文言まで含まれている。
 日本法人の「メディカルカンパニー」(以下、 単にJ&Jと略記)の売上高もここ数年、成 長を続けている。
これに伴い出荷件数も伸び た。
しかし〇七年に物流体制を大きく見直し、 ヤマトロジスティクスを3PLパートナーとす る拠点集約と配送業務の集中化をスタートし たことで、〇八年には、売上高の拡大にも関 わらず、出荷件数を前期比九六%に抑制する ことに成功した。
 〇七年三月と〇八年三月の単月の配送コス トを比較すると十二%減っている。
J&Jの 業務推進本部SCM部で一連の効率化を牽引 してきた藤後宏朗シニア・マネジャーは、「新 体制への移行時に発生する一時的なコストを含 めても、経費率は落ちている。
予定していた 以上にコストを削減できた」と満足げに語る。
 六一年に日本で事業活動をスタートした J&Jは、福島県須賀川市で国内生産も行っ ている。
東京ドーム三個分程度の須賀川事業 所の敷地内には、工場だけでなく製品の修理 2007年に全国12カ所あった物流拠点を11年まで に2カ所に減らす。
緊急品の在庫拠点として既に稼 働させた羽田空港近郊のセンターでは、航空便とト ラックを使って15〜18時間のリードタイムで全国の 顧客に納品している。
出荷精度はミス率2万分の1以 内。
ヤマトロジスティクスをパートナーに選び、難易 度の高いプロジェクトに取り組んだ。
SCM部デピュー・ロジスティ クスグループの藤後宏朗シニ ア・マネジャー 37  JULY 2009 施設や研究、流通加工・物流のための施設な どがある。
ただし、ここで作っているのはご く一部の製品に限られ、一万以上ある取扱品 目の九割方は海外で製造している。
 海外の生産拠点から航空便で輸入した製品 を、須賀川事業所などの流通加工拠点に搬入。
医療機器の承認番号を印字した法定ラベルの 貼付や、製品の取扱説明書を日本語版に差し 替えるといった作業を施す。
その上で全国の 在庫拠点に横持ちし、保管・出荷業務を行う というのが基本的なフローである。
緊急品を国内一カ所に集約  かつては物流業務をすべて自前でこなして いた。
中核拠点である須賀川事業所では九一 年に自動倉庫を導入するなどの効率化に取り 組み、今でも現場運営まで自ら手掛けている。
しかし、九七年に兵庫県西宮に在庫拠点を新 設したときから外部委託をスタートした。
 その後、主力製品を地域別にカバーするネ ットワークや、特定の製品群に対応した配送 網の整備を推進。
そこにグローバルレベルの M&Aで吸収した製品群が次々に加わった結 果、〇七年には国内の物流拠点数が十二カ所 まで増えてしまった。
しかも拠点ごとに複数 の配送業者と契約していたため、全国ではか なりの数の配送業者を使っていた。
 このことが顧客に対する物流サービスの低下 を招いた。
J&Jは全国各地の卸売業者(代 理店)などを通じて医療機関に製品を納入し ている。
分散した在庫拠点から製品を発送す ることで、「同じ卸さんに対して、別の拠点か ら、複数の配送業者が一日何回も納品すると いったケースが結構あった」とSCM部物流 管理グループの関根誠二リーダーはいう。
 卸側の荷受け作業が煩雑になるばかりか、配 送効率の悪化にもつながり、〇五年からその 対応策を検討しはじめた。
J&Jの中で全事 業を横断的に管理しているSCM部のサプラ イチェーン・プランニング(SCP)担当グル ープが、まずは方針を模索した。
 かつて同グループに所属していた藤後氏は、 「SCPグループは実務部隊ではない。
まずは 完全な理想形を描いた」とこの段階での作業 を説明する。
このとき策定したプランが、全 国の物流拠点を二カ所(須賀川事業および他 一カ所)に集約するというものだった。
 須賀川事業所は、施設の特性を考慮して大 型の医療機械や重量物、緊急を要さない医薬 品などの在庫拠点とする。
そして、もう一カ 所の拠点に、緊急度の高い製品の在庫をすべ て集約する。
これによって業務効率の向上と コスト削減を図るというプランである。
 同社の取扱製品には、手術日の間近に注文 の入る緊急オーダーが少なくない。
このため 従来から、北海道や九州、中四国などの遠隔 地については国内配送にも航空便を利用して きた。
こうした製品の在庫を一カ所に集約す るとなると、現実的には羽田空港の付近しか 選択肢はなかった。
 この計画が〇六年一〇月頃に経営レベルで 承認されたことから、集約拠点の運営を任せ る物流パートナーを選ぶ段階へと移行した。
R FP(提案依頼書)を作成し、羽田から一時 間程度の立地に約一万平米の施設を用意でき ること、医療機器に特有の高品質な作業をこ なせること、新しい倉庫管理システム(WM S)を手当てできること──などを条件に入 札企業を募ることになった。
 既存の協力事業者を中心に声を掛けた。
も っとも約一年後の稼働に向けて、首都圏で一 万平米の物件を用意するだけでも容易ではな い。
この条件だけで降りてしまった企業もあ った。
そんな中で、従来はほとんど取引のな かったヤマトグループに声を掛けたのは「総合 力に期待した」からだ。
ただし「宅急便」の ヤマト運輸ではなく、企業物流を専門とする ヤマトロジスティクスに相談した。
 結果として五社の物流事業者が入札に応じ 160 140 120 100 80 60 40 (売上高および経費率) (出荷件数・万件) 主力製品の売上高・出荷件数・経費率の推移 50 45 40 35 《売上高と経費率は04 年を100としたときの推移》 ※経費率は「配送費+倉庫費」で算出 ‘04 ‘05 ‘06 ‘07 ‘08 出荷件数 売上高 経費率 JULY 2009  38 た。
これを品質面やコストから評価して二社 に絞り込み、この二社の提案を精査していっ た。
提示された物件に足を運び、J&Jの内 規で定められているスプリンクラーの設置状況 や空調の有無などをチェック。
追加投資の必 要性などを指摘した。
 ちょうど当時のヤマトロジは、〇六年に入 って社内に「メディカルロジスティクスカンパ ニー」を発足させたばかり。
その首都圏の中 核拠点として、物流不動産大手プロロジスの 「プロロジスパーク東京?」(東京都江東区)へ の入居を決めており、必要な装備の整ったこ の施設で入札してきた。
また〇六年十一月に は、医療機器に特化した品質管理の国際規格 「ISO13485」の認証も取得していた。
 情報システムの評価も高かった。
J&Jは それまで、物流事業者に運営を委託している 拠点や須賀川事業所のすべてで自社開発のW MSを使っていた。
だが、このシステムはす でに老朽化し、ワールドワイドで定められた基 準に沿った刷新を必要としていた。
このため 須賀川事業所への導入まで視野に入れて提案 内容をチェックした。
を捨て、新たに実現すべき理想的なプロセス を追求していった。
 従来、航空便を使った配送については、在 庫拠点から出荷してからいったん配送業者の 空港営業所に搬入し、ここで航空コンテナに積 み込むという手順をとっていた。
これを、あ らかじめMDCに空の航空コンテナを持ち込 んでもらうように変更。
MDCから直接、羽 田空港へ搬入するようにプロセスを短縮して、 出荷の締め時間を延長した。
 トラック便についても業務プロセスを見直 した。
こちらも従来は在庫拠点からの出荷後 に、配送業者の集荷拠点で地区別仕分けを施 し、それから路線便で運ぶという手順になっ ていた。
これをMDCで地区別・顧客別仕分 けまで済ませるように変更。
さらに大口顧客  「ヤマトロジスティクスさんは、すでに数百 件の導入実績を持つ自社システムを持ってい た。
しかも開発や改修をグループ内で容易に 行うことができる。
これは大きなポイントだ った。
このシステムにわれわれが培ってきた 医療機器を扱うノウハウを移植すれば、短期 間で条件を満たす仕組みができると考えた」と 関根リーダーは振り返る。
 配送面でも、ヤマトグループの航空部門(現 ヤマトグローバルエキスプレス)による全面的 なバックアップに手応えを感じた。
J&Jの既 存拠点に対応して営業所を新設するばかりか、 各地の主要拠点に専門の担当者を配置してく れるという。
こうして体制を整備することで、 従来は複数拠点から発送することで達成して いた「全国二〇時間デリバリー」というサー ビスを維持、向上できる。
 多岐にわたる条件を評価したうえで、〇七 年四月にヤマトロジを新たなパートナーとする ことを正式に決めた。
翌五月にはJ&Jの社 内に「拠点集約プロジェクト」を発足。
「プロ ロジスパーク東京?」の中に「メディカルディ ストリビューションセンター(MDC)」を新 設し、ここを中核とする新体制に移行するた めの作業をスタートした。
業務プロセスの見直しを推進  〇七年十一月のMDCの稼働に向けて、や るべきことは山積していた。
拠点集約プロジ ェクトのメンバーは既存のやり方へのこだわり SCM部物流管理グループの 関根誠二リーダー 庫内は自動化より柔軟性重視 カゴ車と航空コンテナを多用 J&Jの「メディカル ディストリビューション センター」 出荷検品を経て梱包エリアへ 1日にコンテナ約20台を出荷 39  JULY 2009 例会で改善テーマを決め、結果をデータでチェ ックするという改善作業を繰り返した。
 ヤマトロジの林マネージャーは、「この一年 で品質は劇的に高まった。
現在では求められ る品質レベルを達成できている。
J&Jさん の物流の品質基準は非常に厳しい。
ここでの 経験は私自身にとっても非常に勉強になった し、当社としても成長につながった。
すでに メディカルロジスティクスカンパニーの中でノ ウハウを水平展開している」という。
配送もヤマトグループに  今年三月には、ヤマトロジがMDCのため に開発した情報システムを須賀川事業所にも 導入した。
これによって両拠点の作業の連動 性を高めると同時に、災害時のバックアップ機 能を充実させることができた。
 すでにJ&Jの 物流拠点は五カ所 まで減った。
まだ 拠点集約の途上 だが、納品する際 に荷分かれして顧 客を手間取らせる ような事態は回避 できるようになっ た。
配送業者の集 約も進んだ。
〇七 年三月に五% に すぎなかったヤマ トグループへの配送委託比率は、〇九年三月 には八一%へと跳ね上がっている。
 現在、MDCからは一日に約二〇台の航空 コンテナが出荷されている。
これまで須賀川 事業所から緊急品を出荷するときは、主に福 島・仙台空港を使っていた。
西日本では関西 空港や伊丹空港を活用していた。
それがMD Cでは、羽田発の最終便に乗せさえすれば翌 朝には顧客に届けられる。
 このことが受注締め時間の延長や、ピッキ ング作業時間の確保につながっている。
また 便数が少なく、状況次第で運行機種の変更な どがなされやすい地方空港と違って、羽田か らの出荷は輸送サービスを安定させた。
想定 外の減便への対応力も増している。
 拠点集約プロジェクトは、一一年一月まで に二拠点体制を完成する計画だ。
ヤマトロジ が「プロロジスパーク東京?」で確保している 約一万平米のスペースのうち、現段階でJ& Jが活用しているのは約七六〇〇平米。
予定 通り移管作業が進めば、二年後にはほぼJ& Jの専用拠点として使うことになる。
 思惑画通りに製品在庫を収容できなければ、 新たな拠点を手当てしなければならない。
そ れでもJ&Jの藤後氏は、「計画通りのスペー スを使えれば対応できるはず。
万一、ここ一 カ所に入りきれないのであれば、また引っ越 してもいい」と、積み上げてきた協業関係へ の信頼を示している。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 向けの貨物をあらかじめMDCで専用のカゴ 車に積むことで、誤仕分けや破損リスクを軽 減できるようにした。
 プロセス改善に取り組む一方で、MDCの 庫内設計や、新たな物流システムの構築など をヤマトロジの担当者と連絡をとりあいなが ら進めた。
J&Jは「五〇PPM」(ミス率二 万分の一以内)」という出荷精度の品質基準 を設けている。
自動倉庫を使わずに、これを 順守できる設計をヤマトロジに求めた。
 こうした要請に応えるため、ヤマトロジか らプロジェクトに参加した同社BIZ─ロジグ ループ・メディカルロジスティクスカンパニー の林昌弘マネージャーは、約三カ月にわたって J&Jの須賀川事業所に駐在。
実際の現場作 業や製品ごとの物流特性などを見極めながら、 東京サイドの担当者と一緒に庫内レイアウトな どを練り上げていった。
 並行してシステム開発も進めた。
MDCで は折りコンを使ってピッキング作業を行ってい る。
一つの折りコンに納める製品の合計容量 をあらかじめシステムで計算して、決められ た容積率になるようにピッキングすることで 作業の効率化を図った。
折りコンごとの総重 量も計算し、航空便で運ぶときにデータとし て活用できるようにした。
 多くの作業を経て、〇七年十一月にMDC が稼働した。
稼働からしばらくは五〇PPM という品質基準をクリアするのは容易ではな かった。
J&Jとヤマトロジの関係者が集う月 配送業務の81%をヤマトグループに集約した A 社 33% A 社 3% C社 7% C社 7% D 航空 18% E 社 5% B 航空 9% B 航空 32% ヤマト グループ ヤマトグループ 81% 09 年 3月度 配送会社 集約状況 07 年 3月度 5% 取引割合 07 年3 月度対比:12%配送費用削減  

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