2009年8月号
物流IT解剖
物流IT解剖
第29回 第一貨物
AUGUST 2009 54
六一〇〇台の端末を刷新 GPSも活用し効率向上
第一貨物は今年三月、輸送事業の
基幹システムで使うハードを刷新し
た。
通信ネットワークをMCA無線 から携帯電話(KDDI)に切り替 え、同時に集配業務などで使う約六 一〇〇台のハンディ端末もリニュー アル。
これらをブルートゥースで連携 させて、現場から六分おきにデータ を送信し、ほぼリアルタイムで貨物 情報を更新できるようにした。
幹線輸送に携わる大型車では、携 帯電話に付いているGPS機能を活 用しはじめた。
GPSで取得した車 両の位置情報を、日本道路交通情報 センターのVICSサービスと組み合 わせることで、輸送業務の効率化や サービスレベルの向上を図る。
同社の経営企画室で情報システム を担当している古澤直義次長は、「G PSを使えば、運行便がダイヤ通りに 動いているか、ターミナルには何時頃 の到着予定なのかといったことがわか る。
中継業務を委託している会社に こうした情報を提供すれば待機時間 を減らせる。
将来的には気象状況や 事故による到着の遅れを、事前にお 客さんに連絡できる仕組みづくりも 可能になるだろう」と期待している。
このGPS機能に対する社内の期 待は大きい。
同社の営業本部営業第 二部でサードパーティ・ロジスティク ス(3PL)事業を担当している庄 司啓司部長は次のように語る。
「GPSによって、社内の運行便の 効率化を図れる可能性がある。
たと えば名古屋から東京に向かう運行便 に積みきれなかった荷物を、大阪か ら東京に走行中のトラックが途中で ピックアップするといったことを実現 できるかもしれない。
乗務員の運行 規定などがあるため簡単ではないが、 可能性はある。
仮にそうなれば、チ ャーター便のコストなどを大幅に削減 できるはずだ」 携帯電話は、集配業務を担う小型 車にも配備されている。
しかし、こ ちらは現時点ではGPS機能は使っ ていない。
今後、あらためて検討し ていく方針だ。
第一貨物は今回のシステムの見直 しに約七億円を投じた。
トータル の運用コストは従来と変わらないが、 ハードを刷新することによって大幅 な機能の向上を実現した。
同社は今回強化した基幹システム をPOSと呼び、輸送業務の中核に 据えている。
荷物を集荷してから届 けるまでの全オペレーションを処理す るほか、荷主への請求、車両の管理、 ドライバーへの給料の支払いなどの業 務をすべてカバーしている。
P O Sは一般にはポイント・オ ブ・セールス(販売時点管理)の略語 として使われることが多い。
しかし一 九八九年に「第二次オンラインシステ ム」を稼働させたとき、同社はこれ GPS機能付き携帯を車両に配備し アセット生かす3PL事業を支援 第一貨物 東北地方を地盤とする中堅特積み業者。
90年代後半に本格化した 3PL事業では、IT活用をテコにヤマダ電機や住友スリーエムなどの業 務を受託。
いまや売上高の約2割を3PL事業が占めている。
今年3月に はドライバーや作業スタッフが使うハンディ端末と通信インフラを刷新。
コストを抑制しながらIT活用を高度化することに成功した。
経営企画室の古澤直義次長 システム刷新 第29 回 ◆本社組織……経営企画室に所属する21 人が情報システムを担当。
ただし、同部門 が携わっているのは特積み関連業務のみ。
3PL事業のシステムについては、専門の営 業部隊である営業第二部が別に担当 ◆情報関連会社……日本アバカス、1984 年設立、資本金5000万円。
株主は第一 貨物と太平興業、売上高25.1億(09年3 月期)、外販比率8割、従業員約70人 《概要》トップダウンでIT 活用をつづけてきた。
特積み事業のための情報シ ステム部門を一部分離するかたちで、90 年代に3PL 事業に参入。
この部門 が97 年に3PL 専門の営業部隊となり、システムまで担っている。
IBM の汎用機をベースとする自社開発がシステム開発の基本。
とくに特積 み事業では、システムの開発実務から保守・運用までを内製化している。
3PL 事業も自社開発が基本だが、開発実務はグループ会社に外注。
WMSやTMS などの中核システムは自社開発するが、営業支援などでは パッケージも採用している。
年間IT コストは単体売上高の約1.5%。
売上高 の変動によって比率は変わり、近年は1.2 〜 1.6%で推移している。
55 AUGUST 2009 粧品メーカーのノエビアや、家電量 販店のヤマダ電機などから、3PL 事業の中核となる業務を相次いで受 託している。
その後も順調に取り扱 いを拡大しつづけ、二〇〇九年三月 期の3PL事業の売上高は一三五億 円(前期比七・一%増)。
全売上高 の約二割を占めるまでに成長した。
営業第二部に所属している社員 にとってITスキルの習得は必須だ。
同部に配属された新人は、まずシ ステム開発から業務をスタートする。
荷主の意向を受けてシステムの要件 定義などを手掛けるのは当たり前で、 簡単なWMSであれば自分たちでプ ログラミングまでこなす。
事実上、IT部門の別動隊のよう な位置づけになっている。
ただし、特 積み事業を担当している経営企画室 の情報システム部門と、3PL事業 を担っている営業第二部では、システ ム開発の手法が異なる。
自社開発を 基本としている点は同じだが、開発 実務の担い手がまったく違っている。
営業第二部はシステム開発の実務 を、もっぱらグループのIT会社で ある日本アバカスにアウトソーシング している。
IBMの山形県内の特約 店として八四年に活動しはじめた同 社は、発足当初は第一貨物向けの仕 事を中心にこなしていた。
だが徐々 に地元の有力企業との取引を拡大。
現在では売上高二五億円(〇九年三 月期)のうち、グループ企業以外へ の売上構成比が八割を超すまでにな った。
このように有力なITパートナーを 傘下に抱えていることが、第一貨物 の3PL事業にとっても強みにもな っている。
庄司部長は「アバカスに は安くやってもらっている。
われわ れもIT部門にいたからシステム開発 のコストはだいたいわかるが、他社 より二、三割は安いはずだ」という。
一方、特積み事業のシステム開発 は徹底した内製主義をとっている。
第一貨物の情報システム部門には現 在、古澤次長も含めて計二一人が所 属しているが、システム開発から保 守・運用までを社内でこなしている。
GPSで使う地図情報システムのよ うな特殊なケースを除けば、情報処 理業務のほぼすべてを社内で手掛け ている。
今年一月に汎用機を更新 従来方針の継続を決断 こうした管理のあり方は、第一貨 物が汎用機を使いつづけていること と無縁ではない。
同社は今年一月に もIBMの汎用機を更新した。
「東北 地方でIBMの汎用機を使っている企 業は、もはや東北電力と当社ぐらい しかない」(古澤次長)という状況下 での選択だった。
今後も少なくとも五 年間は汎用機中心の体制をつづける。
最近のコンピュータの処理能力を考 えれば、第一貨物の業務量は汎用機 でなくともこなせる。
場合によって は、IBMのiシリーズなどにダウン サイジングする選択肢もあった。
にもかかわらず、汎用機を使いつ づけると決めた最大の理由は、蓄積 された過去のノウハウがあるためだ。
「汎用機の中にあるシステム資産を有 効活用するために使いつづけている のが実態」と古澤次長は説明する。
を?パーセル・オンライン・システム? の略とした。
第一貨物の造語である。
このシステムは、すべての貨物に バーコードを貼付して管理する点で、 特積み業界で初めてのものだった。
「送り状」と貨物が一対一でヒモ付け られている宅配事業では目新しいも のではなかったが、同じ荷主から出 される複数口の荷物を一枚の「送り 状」で管理していた特積み業界にあ っては、過去にない仕組みだった。
IT部門から分離した 3PL営業部隊と分業 第一貨物はトップダウンでIT活 用の高度化を図ってきた。
二〇〇三 年にハンディ端末をリニューアルした ときには、「送り状登録」と呼ぶ仕組 みで、ターミナルでの積み替え作業を 無線LANでチェックできるように した。
こうした積極的なIT活用が 3PL事業の成功にもつながった。
同社で3PL事業を担っている営 業第二部は、情報システム部門から分 離・独立したものだ。
庄司部長も元は IT部門の出身。
情報システム部門に 所属していた約一〇人が、ITスキル を営業に生かすために九二年に営業部 門へと移籍。
この一〇人を中心に九七 年に営業第二部が発足した。
ちょうどこの頃、第一貨物は、化 組 織 汎用機 情報システムに関わる組織 情報システム(次長) 管理者 2 人 システム開発 10 人 システム運用 8 人 計 21 人 合計 21 人(次長以下) 合計 21 人(部長以下) 担当役員 経営企画室室長 企画 東京 次長 管理者 2 人 一般 9 人 計 11 人 管理者 1 人 一般 4 人 計 5 人 管理者 1 人 一般 1 人 計 2 人 山形 ─ 担当役員 営業第二部長 前橋分室 次長 社長 総計 42 人 AUGUST 2009 56 もちろんコスト面の理由もあった。
同社も一〇年ほど前に、ダウンサイ ジングのための見積もりをとったこ とがある。
しかし、過去のシステム 資産を新たな仕組みに移行するため には、予想以上に多額の投資が必要 なことがわかって断念した。
一昔前とは違って、いまや汎用機 でもウエブへの対応など多くのことが 可能になっているという環境の変化 も大きい。
しかもハードの更改期に IBMが代替機として提示してくる マシンは、着実にコストパフォーマン スが向上している。
将来的には、新 たに構築するウエブ系のシステムなど と、既存のシステム資産を連携させ る仕組みも作っていくことを前提に、 汎用機の継続利用を決めた。
特殊なスキルを身につけた人材を 生かしたいという事情もあった。
第 一貨物のシステム部門はIBMの汎 用機に特有の「PL/?」(ピーエル ワン)という開発言語に慣れ親しん できた。
現在、この言語を使いこな せる人材は急速に少なくなっている。
既存の人材を生かしながら、ローコ ストでシステムを運営していくには汎 用機のほうが有利だった。
今回の決断を大規模投資の先送り と見ることもできるだろう。
だが一 方では、数少ない汎用機ユーザーで ある第一貨物は、IBMと密接な関 係を確保している。
今回の汎用機の 更新にあたっても、IBMの懇切丁 寧な指導を受けながら方針を練った。
緻密な現状分析に加えて、向こう 三年間で直面するはずの課題を抽出。
これを乗り越えていくためのロードマ ップも作成した。
こうしたコンサルテ ィングを無償で受けられるのは汎用 機ユーザーの特権といえる。
今後は 策定した計画に基づいて、システム 基盤の整備を進めていく方針だ。
パッケージ利用は断念し 案件別の自社開発に活路 3PL事業で活用する業務システ ムに話を戻そう。
前述したように、 営業第二部が業務システムを開発す るときにはグループ会社の日本アバカ スを使って自社開発している。
この 開発体制がコスト競争力を発揮でき るのには、いくつかの理由がある。
アバカスは、IBMの特約店とし て日頃から先端技術に接することの できる環境にある。
八割に達する高 い外販比率によって、第一貨物向け 業務の繁閑差や固定費の負担を軽減 できるメリットも有する。
そして、コ スト競争力を高めるうえで何よりも 有効なのが、過去の案件で扱ったシ ステム資産を持っていることだ。
WMS 新POS(パーセル・オンライン・システム)の概要 発顧客 1個目 集荷荷降、荷札による 検収と仕分 集荷 GPS 2個目 Bluetooth 着顧客 他社中継 Bluetooth シーフリーキット Bluetooth 貨物情報登録 自動送信 ○○運送のシステムによる 貨物追跡情報収集 配達スキャン、 委託後スキャン 配達前 スキャン Bluetooth Bluetooth 1個目 2個目 発店 発送到着 ホーム 着店配達前(委託) 配達(委託後配達) 自社配達地区 事務所での各種照会と集配指示 貨物追跡照会対応 他社中継地区 無線 LAN 無線 LAN ホーム 運行車 シーフリーキット 集配車 運行車 帰着 登録 発送スキャン 誤積チェック 到着スキャン 誤降チェック 集配車 着顧客 ○○運送配達前(委託) ホーム 運行車 集配車 運行車 (乗務員が携帯) 委託会社 (乗務員が携帯) ○○運送 貨物追跡データベース 一般通信回線 広域イーサーネット 集配実績 Xephion 明細 (HDT 情報から送り状作成) 貨物追跡システムデータベース 運行車位置情報システム 送り状データベース 各種サーバー 配達完了情報 配達完了情報 貨物追跡情報 TTTサーバー 送付書 実績明細 委託実績 明細 顧客出荷 明細 送り状 明細 GPS 機能に よりMAPを見 ながら運行車 の到着時刻 の自動予測 Lモード、FAX、インターネット、iモードなど で利用者からの貨物追跡照会に対応 Dネット 通信ネットワーク インフラ KDDIビジネスメッセンジャー で集配指示連絡 ○○運送 ○○運送 ○○運送 57 AUGUST 2009 タイムを守るために作業の順番を変 えるといった機能は、第一貨物が導 入しようとしたWMSパッケージの標 準機能にはついていなかった。
荷主 の事情に応じたラベルの工夫や、そ こに入れるべき情報の選択肢も満足 できるものではなかった。
顧客ごとに最適なシステムを構築 することを求められる3PL事業で は、その顧客に特有の作業が発生す ることが少なくない。
このため、同 社の3PL事業では、案件ごと、ク ライアントごとに、すべて異なるシス テムを自社開発している。
これを低 コストで実現してきた。
さらに「当社のロジスティクス事業 の特徴は、一部の例外はあるが、特 積み業務と一緒に手掛けている点に ある。
あえてそういうお客様をターゲ ットにしている。
その意味では、今 後も営業ターゲットの業種などを絞り 込むつもりはないし、何でもやるこ とこそが我々の強みだと考えている」 と庄司部長。
WMSをはじめとする 業務システムの自社開発は今後も堅 持していく考えだ。
SFAや計画分析業務には 外部のパッケージも採用 パッケージソフトの活用を全面的 に否定しているわけでない。
営業管 理や業務分析といった業務について は既製品も採用している。
現に特積みの営業を担う営業第一 部では今年、営業マンの活動や顧客 管理をするためのSFA(セールス・ フォース・オートメーション=営業 支援システム)を、約三〇〇〇万円 を投じて導入している。
カスタマイ ズが欠かせなかったWMSとは違い、 パッケージに標準装備された機能だ けで十分に使えると判断した。
物流センターの作業分析やシミュ レーションに活用するパッケージソフ トも導入している。
現場のレイアウ ト変更や作業手順の見直しなどを三 次元画面で可視化するソフトで、荷 主の物流部門以外の人たちにプレゼ ンテーションをする場合や、社内で 現場改善のシミュレーションを実施 する際に使っている。
経験と勘に頼 っていた業務を可視化できるツール として用途を拡大していく考えだ。
ただし、パッケージの利用は、自 社開発では対応できない特殊なソフト に限られている。
たとえば同社が現 在、汎用機上で動かしている人事シ ステムや会計システムは八〇年代に自 社開発したものだ。
法改正などに応 じて微調整しながら使いつづけてい るが、特に困ることもないという。
ERPの導入を検討したこともあっ た。
だが未上場の第一貨物にとっては、 国際会計基準への対応など差し迫った 理由もない。
大枚をはたいてシステム を刷新する誘因は小さかった。
しかし、こうした方針をつづける 限り、3PL事業の規模が大きくな るのに比例してシステム開発や運用の 負担は増大してしまう。
汎用機の使 用という制約を受けながら、優秀な IT人材を確保しつづけることは容 易ではないはずだ。
第一貨物の現在の年間ITコスト は単体売上高の一・五%程度という 水準にある。
「基幹システムの刷新な どに伴う償却費は毎年、同じレベル で発生するようにしているが、売り 上げの変動に伴ってITコストの比率 は変わる。
近年はだいたい一・三% から一・六%の間で推移している」 と古澤次長は説明する。
現時点でのIT投資のコストパフ ォーマンスにはおおむね満足している という。
しかし今後、より積極的に ITを活用していくためには、優秀 な人材の確保と、全社的なITリテ ラシーの底上げが欠かせない。
すで にeラーニングなどによるIT教育の 拡充にも取り組んでいる。
人材育成 こそが同社の競争力を左右する課題 といえそうだ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 「たとえ新規の3PL案件でも、過 去の案件で作ったシステムを転用する といったことが簡単にできる。
実際、 われわれが具体的に指定して、過去 のこの案件で開発したシステムをこ う直せとか、ここをモディファイして 使えといったことまで指示している。
だからこそ開発コストを安くできる」 と庄司部長は強調する。
過去には第一貨物も、外部のIT ベンダーが提供するWMSパッケー ジを導入しようと試みたことがある。
ところが上手くいかず、利用を断念 してしまった。
「とにかく融通がきか なかった。
何かやろうとすると、す ぐに新規だとか別途だといって新た なコストが発生した。
パッケージを使 うために、ムダな作業ばかりが増え てしまった」という。
入出荷や在庫管理などの一般的な 機能についてはパッケージでも対応で きた。
しかし、センターで荷揃えを したあとに複数の運送会社が集荷に 訪れることへの対応や、納品リード 人材育成 営業本部営業第二部の庄司 啓司部長
通信ネットワークをMCA無線 から携帯電話(KDDI)に切り替 え、同時に集配業務などで使う約六 一〇〇台のハンディ端末もリニュー アル。
これらをブルートゥースで連携 させて、現場から六分おきにデータ を送信し、ほぼリアルタイムで貨物 情報を更新できるようにした。
幹線輸送に携わる大型車では、携 帯電話に付いているGPS機能を活 用しはじめた。
GPSで取得した車 両の位置情報を、日本道路交通情報 センターのVICSサービスと組み合 わせることで、輸送業務の効率化や サービスレベルの向上を図る。
同社の経営企画室で情報システム を担当している古澤直義次長は、「G PSを使えば、運行便がダイヤ通りに 動いているか、ターミナルには何時頃 の到着予定なのかといったことがわか る。
中継業務を委託している会社に こうした情報を提供すれば待機時間 を減らせる。
将来的には気象状況や 事故による到着の遅れを、事前にお 客さんに連絡できる仕組みづくりも 可能になるだろう」と期待している。
このGPS機能に対する社内の期 待は大きい。
同社の営業本部営業第 二部でサードパーティ・ロジスティク ス(3PL)事業を担当している庄 司啓司部長は次のように語る。
「GPSによって、社内の運行便の 効率化を図れる可能性がある。
たと えば名古屋から東京に向かう運行便 に積みきれなかった荷物を、大阪か ら東京に走行中のトラックが途中で ピックアップするといったことを実現 できるかもしれない。
乗務員の運行 規定などがあるため簡単ではないが、 可能性はある。
仮にそうなれば、チ ャーター便のコストなどを大幅に削減 できるはずだ」 携帯電話は、集配業務を担う小型 車にも配備されている。
しかし、こ ちらは現時点ではGPS機能は使っ ていない。
今後、あらためて検討し ていく方針だ。
第一貨物は今回のシステムの見直 しに約七億円を投じた。
トータル の運用コストは従来と変わらないが、 ハードを刷新することによって大幅 な機能の向上を実現した。
同社は今回強化した基幹システム をPOSと呼び、輸送業務の中核に 据えている。
荷物を集荷してから届 けるまでの全オペレーションを処理す るほか、荷主への請求、車両の管理、 ドライバーへの給料の支払いなどの業 務をすべてカバーしている。
P O Sは一般にはポイント・オ ブ・セールス(販売時点管理)の略語 として使われることが多い。
しかし一 九八九年に「第二次オンラインシステ ム」を稼働させたとき、同社はこれ GPS機能付き携帯を車両に配備し アセット生かす3PL事業を支援 第一貨物 東北地方を地盤とする中堅特積み業者。
90年代後半に本格化した 3PL事業では、IT活用をテコにヤマダ電機や住友スリーエムなどの業 務を受託。
いまや売上高の約2割を3PL事業が占めている。
今年3月に はドライバーや作業スタッフが使うハンディ端末と通信インフラを刷新。
コストを抑制しながらIT活用を高度化することに成功した。
経営企画室の古澤直義次長 システム刷新 第29 回 ◆本社組織……経営企画室に所属する21 人が情報システムを担当。
ただし、同部門 が携わっているのは特積み関連業務のみ。
3PL事業のシステムについては、専門の営 業部隊である営業第二部が別に担当 ◆情報関連会社……日本アバカス、1984 年設立、資本金5000万円。
株主は第一 貨物と太平興業、売上高25.1億(09年3 月期)、外販比率8割、従業員約70人 《概要》トップダウンでIT 活用をつづけてきた。
特積み事業のための情報シ ステム部門を一部分離するかたちで、90 年代に3PL 事業に参入。
この部門 が97 年に3PL 専門の営業部隊となり、システムまで担っている。
IBM の汎用機をベースとする自社開発がシステム開発の基本。
とくに特積 み事業では、システムの開発実務から保守・運用までを内製化している。
3PL 事業も自社開発が基本だが、開発実務はグループ会社に外注。
WMSやTMS などの中核システムは自社開発するが、営業支援などでは パッケージも採用している。
年間IT コストは単体売上高の約1.5%。
売上高 の変動によって比率は変わり、近年は1.2 〜 1.6%で推移している。
55 AUGUST 2009 粧品メーカーのノエビアや、家電量 販店のヤマダ電機などから、3PL 事業の中核となる業務を相次いで受 託している。
その後も順調に取り扱 いを拡大しつづけ、二〇〇九年三月 期の3PL事業の売上高は一三五億 円(前期比七・一%増)。
全売上高 の約二割を占めるまでに成長した。
営業第二部に所属している社員 にとってITスキルの習得は必須だ。
同部に配属された新人は、まずシ ステム開発から業務をスタートする。
荷主の意向を受けてシステムの要件 定義などを手掛けるのは当たり前で、 簡単なWMSであれば自分たちでプ ログラミングまでこなす。
事実上、IT部門の別動隊のよう な位置づけになっている。
ただし、特 積み事業を担当している経営企画室 の情報システム部門と、3PL事業 を担っている営業第二部では、システ ム開発の手法が異なる。
自社開発を 基本としている点は同じだが、開発 実務の担い手がまったく違っている。
営業第二部はシステム開発の実務 を、もっぱらグループのIT会社で ある日本アバカスにアウトソーシング している。
IBMの山形県内の特約 店として八四年に活動しはじめた同 社は、発足当初は第一貨物向けの仕 事を中心にこなしていた。
だが徐々 に地元の有力企業との取引を拡大。
現在では売上高二五億円(〇九年三 月期)のうち、グループ企業以外へ の売上構成比が八割を超すまでにな った。
このように有力なITパートナーを 傘下に抱えていることが、第一貨物 の3PL事業にとっても強みにもな っている。
庄司部長は「アバカスに は安くやってもらっている。
われわ れもIT部門にいたからシステム開発 のコストはだいたいわかるが、他社 より二、三割は安いはずだ」という。
一方、特積み事業のシステム開発 は徹底した内製主義をとっている。
第一貨物の情報システム部門には現 在、古澤次長も含めて計二一人が所 属しているが、システム開発から保 守・運用までを社内でこなしている。
GPSで使う地図情報システムのよ うな特殊なケースを除けば、情報処 理業務のほぼすべてを社内で手掛け ている。
今年一月に汎用機を更新 従来方針の継続を決断 こうした管理のあり方は、第一貨 物が汎用機を使いつづけていること と無縁ではない。
同社は今年一月に もIBMの汎用機を更新した。
「東北 地方でIBMの汎用機を使っている企 業は、もはや東北電力と当社ぐらい しかない」(古澤次長)という状況下 での選択だった。
今後も少なくとも五 年間は汎用機中心の体制をつづける。
最近のコンピュータの処理能力を考 えれば、第一貨物の業務量は汎用機 でなくともこなせる。
場合によって は、IBMのiシリーズなどにダウン サイジングする選択肢もあった。
にもかかわらず、汎用機を使いつ づけると決めた最大の理由は、蓄積 された過去のノウハウがあるためだ。
「汎用機の中にあるシステム資産を有 効活用するために使いつづけている のが実態」と古澤次長は説明する。
を?パーセル・オンライン・システム? の略とした。
第一貨物の造語である。
このシステムは、すべての貨物に バーコードを貼付して管理する点で、 特積み業界で初めてのものだった。
「送り状」と貨物が一対一でヒモ付け られている宅配事業では目新しいも のではなかったが、同じ荷主から出 される複数口の荷物を一枚の「送り 状」で管理していた特積み業界にあ っては、過去にない仕組みだった。
IT部門から分離した 3PL営業部隊と分業 第一貨物はトップダウンでIT活 用の高度化を図ってきた。
二〇〇三 年にハンディ端末をリニューアルした ときには、「送り状登録」と呼ぶ仕組 みで、ターミナルでの積み替え作業を 無線LANでチェックできるように した。
こうした積極的なIT活用が 3PL事業の成功にもつながった。
同社で3PL事業を担っている営 業第二部は、情報システム部門から分 離・独立したものだ。
庄司部長も元は IT部門の出身。
情報システム部門に 所属していた約一〇人が、ITスキル を営業に生かすために九二年に営業部 門へと移籍。
この一〇人を中心に九七 年に営業第二部が発足した。
ちょうどこの頃、第一貨物は、化 組 織 汎用機 情報システムに関わる組織 情報システム(次長) 管理者 2 人 システム開発 10 人 システム運用 8 人 計 21 人 合計 21 人(次長以下) 合計 21 人(部長以下) 担当役員 経営企画室室長 企画 東京 次長 管理者 2 人 一般 9 人 計 11 人 管理者 1 人 一般 4 人 計 5 人 管理者 1 人 一般 1 人 計 2 人 山形 ─ 担当役員 営業第二部長 前橋分室 次長 社長 総計 42 人 AUGUST 2009 56 もちろんコスト面の理由もあった。
同社も一〇年ほど前に、ダウンサイ ジングのための見積もりをとったこ とがある。
しかし、過去のシステム 資産を新たな仕組みに移行するため には、予想以上に多額の投資が必要 なことがわかって断念した。
一昔前とは違って、いまや汎用機 でもウエブへの対応など多くのことが 可能になっているという環境の変化 も大きい。
しかもハードの更改期に IBMが代替機として提示してくる マシンは、着実にコストパフォーマン スが向上している。
将来的には、新 たに構築するウエブ系のシステムなど と、既存のシステム資産を連携させ る仕組みも作っていくことを前提に、 汎用機の継続利用を決めた。
特殊なスキルを身につけた人材を 生かしたいという事情もあった。
第 一貨物のシステム部門はIBMの汎 用機に特有の「PL/?」(ピーエル ワン)という開発言語に慣れ親しん できた。
現在、この言語を使いこな せる人材は急速に少なくなっている。
既存の人材を生かしながら、ローコ ストでシステムを運営していくには汎 用機のほうが有利だった。
今回の決断を大規模投資の先送り と見ることもできるだろう。
だが一 方では、数少ない汎用機ユーザーで ある第一貨物は、IBMと密接な関 係を確保している。
今回の汎用機の 更新にあたっても、IBMの懇切丁 寧な指導を受けながら方針を練った。
緻密な現状分析に加えて、向こう 三年間で直面するはずの課題を抽出。
これを乗り越えていくためのロードマ ップも作成した。
こうしたコンサルテ ィングを無償で受けられるのは汎用 機ユーザーの特権といえる。
今後は 策定した計画に基づいて、システム 基盤の整備を進めていく方針だ。
パッケージ利用は断念し 案件別の自社開発に活路 3PL事業で活用する業務システ ムに話を戻そう。
前述したように、 営業第二部が業務システムを開発す るときにはグループ会社の日本アバカ スを使って自社開発している。
この 開発体制がコスト競争力を発揮でき るのには、いくつかの理由がある。
アバカスは、IBMの特約店とし て日頃から先端技術に接することの できる環境にある。
八割に達する高 い外販比率によって、第一貨物向け 業務の繁閑差や固定費の負担を軽減 できるメリットも有する。
そして、コ スト競争力を高めるうえで何よりも 有効なのが、過去の案件で扱ったシ ステム資産を持っていることだ。
WMS 新POS(パーセル・オンライン・システム)の概要 発顧客 1個目 集荷荷降、荷札による 検収と仕分 集荷 GPS 2個目 Bluetooth 着顧客 他社中継 Bluetooth シーフリーキット Bluetooth 貨物情報登録 自動送信 ○○運送のシステムによる 貨物追跡情報収集 配達スキャン、 委託後スキャン 配達前 スキャン Bluetooth Bluetooth 1個目 2個目 発店 発送到着 ホーム 着店配達前(委託) 配達(委託後配達) 自社配達地区 事務所での各種照会と集配指示 貨物追跡照会対応 他社中継地区 無線 LAN 無線 LAN ホーム 運行車 シーフリーキット 集配車 運行車 帰着 登録 発送スキャン 誤積チェック 到着スキャン 誤降チェック 集配車 着顧客 ○○運送配達前(委託) ホーム 運行車 集配車 運行車 (乗務員が携帯) 委託会社 (乗務員が携帯) ○○運送 貨物追跡データベース 一般通信回線 広域イーサーネット 集配実績 Xephion 明細 (HDT 情報から送り状作成) 貨物追跡システムデータベース 運行車位置情報システム 送り状データベース 各種サーバー 配達完了情報 配達完了情報 貨物追跡情報 TTTサーバー 送付書 実績明細 委託実績 明細 顧客出荷 明細 送り状 明細 GPS 機能に よりMAPを見 ながら運行車 の到着時刻 の自動予測 Lモード、FAX、インターネット、iモードなど で利用者からの貨物追跡照会に対応 Dネット 通信ネットワーク インフラ KDDIビジネスメッセンジャー で集配指示連絡 ○○運送 ○○運送 ○○運送 57 AUGUST 2009 タイムを守るために作業の順番を変 えるといった機能は、第一貨物が導 入しようとしたWMSパッケージの標 準機能にはついていなかった。
荷主 の事情に応じたラベルの工夫や、そ こに入れるべき情報の選択肢も満足 できるものではなかった。
顧客ごとに最適なシステムを構築 することを求められる3PL事業で は、その顧客に特有の作業が発生す ることが少なくない。
このため、同 社の3PL事業では、案件ごと、ク ライアントごとに、すべて異なるシス テムを自社開発している。
これを低 コストで実現してきた。
さらに「当社のロジスティクス事業 の特徴は、一部の例外はあるが、特 積み業務と一緒に手掛けている点に ある。
あえてそういうお客様をターゲ ットにしている。
その意味では、今 後も営業ターゲットの業種などを絞り 込むつもりはないし、何でもやるこ とこそが我々の強みだと考えている」 と庄司部長。
WMSをはじめとする 業務システムの自社開発は今後も堅 持していく考えだ。
SFAや計画分析業務には 外部のパッケージも採用 パッケージソフトの活用を全面的 に否定しているわけでない。
営業管 理や業務分析といった業務について は既製品も採用している。
現に特積みの営業を担う営業第一 部では今年、営業マンの活動や顧客 管理をするためのSFA(セールス・ フォース・オートメーション=営業 支援システム)を、約三〇〇〇万円 を投じて導入している。
カスタマイ ズが欠かせなかったWMSとは違い、 パッケージに標準装備された機能だ けで十分に使えると判断した。
物流センターの作業分析やシミュ レーションに活用するパッケージソフ トも導入している。
現場のレイアウ ト変更や作業手順の見直しなどを三 次元画面で可視化するソフトで、荷 主の物流部門以外の人たちにプレゼ ンテーションをする場合や、社内で 現場改善のシミュレーションを実施 する際に使っている。
経験と勘に頼 っていた業務を可視化できるツール として用途を拡大していく考えだ。
ただし、パッケージの利用は、自 社開発では対応できない特殊なソフト に限られている。
たとえば同社が現 在、汎用機上で動かしている人事シ ステムや会計システムは八〇年代に自 社開発したものだ。
法改正などに応 じて微調整しながら使いつづけてい るが、特に困ることもないという。
ERPの導入を検討したこともあっ た。
だが未上場の第一貨物にとっては、 国際会計基準への対応など差し迫った 理由もない。
大枚をはたいてシステム を刷新する誘因は小さかった。
しかし、こうした方針をつづける 限り、3PL事業の規模が大きくな るのに比例してシステム開発や運用の 負担は増大してしまう。
汎用機の使 用という制約を受けながら、優秀な IT人材を確保しつづけることは容 易ではないはずだ。
第一貨物の現在の年間ITコスト は単体売上高の一・五%程度という 水準にある。
「基幹システムの刷新な どに伴う償却費は毎年、同じレベル で発生するようにしているが、売り 上げの変動に伴ってITコストの比率 は変わる。
近年はだいたい一・三% から一・六%の間で推移している」 と古澤次長は説明する。
現時点でのIT投資のコストパフ ォーマンスにはおおむね満足している という。
しかし今後、より積極的に ITを活用していくためには、優秀 な人材の確保と、全社的なITリテ ラシーの底上げが欠かせない。
すで にeラーニングなどによるIT教育の 拡充にも取り組んでいる。
人材育成 こそが同社の競争力を左右する課題 といえそうだ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 「たとえ新規の3PL案件でも、過 去の案件で作ったシステムを転用する といったことが簡単にできる。
実際、 われわれが具体的に指定して、過去 のこの案件で開発したシステムをこ う直せとか、ここをモディファイして 使えといったことまで指示している。
だからこそ開発コストを安くできる」 と庄司部長は強調する。
過去には第一貨物も、外部のIT ベンダーが提供するWMSパッケー ジを導入しようと試みたことがある。
ところが上手くいかず、利用を断念 してしまった。
「とにかく融通がきか なかった。
何かやろうとすると、す ぐに新規だとか別途だといって新た なコストが発生した。
パッケージを使 うために、ムダな作業ばかりが増え てしまった」という。
入出荷や在庫管理などの一般的な 機能についてはパッケージでも対応で きた。
しかし、センターで荷揃えを したあとに複数の運送会社が集荷に 訪れることへの対応や、納品リード 人材育成 営業本部営業第二部の庄司 啓司部長
