{literal} {/literal}

2009年8月号
物流業のリスクマネジメント

第7回 国際貨物保険のマネジメント

AUGUST 2009  72 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント 物流業のリスクマネジメント 貨物保険と輸送約款の基礎知識  「貨物代金(Cost)」、 「保険(Insurance)」、 「国際輸送運賃(Freight)」は貿易取引にお ける三大要素(CIF)とされる。
仮に荷主 側の保険付与に不備があり、無保険状態で物 損事故が発生した場合に、当事者間でその損 害がどう処理されるのか、読者の皆さんは説明 できるだろうか。
その答えは次の通りである。
●荷主(売主/買主) 賠償請求を起こすことができる。
しかし、求 償できたとしても、その金額は事故責任当事 者が運送人(実運送人、契約運送人を問わず) である場合には、貨物代金に達しない、つま り損害リスクをカバーできない可能性が高い。
●物流会社(船会社/航空会社/フォワーダー) 荷主が無保険状態で事故が発生したら、荷 主と直接交渉することになる。
 荷主は貨物海上保険の付保ミスを適正に管 理することにより事故が起きた場合のリスクを 低減できる。
一方、物流会社は運送約款が整 備されていて、運送事業者賠償責任保険が適 正に手配されていれば、交渉や賠償を保険会社 に任せることができる。
 このように荷主と物流会社のいずれの立場で あっても輸送事故処理の担当者は、貨物海上 保険と国際貨物輸送約款における運送人の免 責事項および責任限度額の枠組みを正確に理解 し、要点を整理しておく必要がある。
 右記のケースを例にとって、そこで必要とな る国際貨物保険の知識と処理スキルを整理する と以下のようになる。
 まず、貨物海上保険契約とは、国際貨物輸 送約款で定められた制約を超えて、荷主が貨物 損害の補償を受けられるようにするものである。
保険を掛けると、事故が発生した場合、荷主は 運送人と直接交渉することなく、保険金を満額 受けられる。
保険会社は荷主から代位求償権を 得て、事故現認者、運送人に求償を行う。
こ れに対して、運送人もまた保険会社(荷主代位) の求償権行使に対応するために、通常は賠償責 任保険(運送業者貨物賠償責任保険)を付保 している。
 荷主である売主や買主が、何らかの原因で、 保険契約を締結していないか付保していない状 態で事故が発生した場合には、運送人に対して 直接賠償を求めなければならない。
しかし、運 送人の免責事項と責任限度額は国際貨物輸送 約款で規定されているので、その範囲内で賠償 を求めるしかない。
さらには保険で補償されな い免責事項もある。
従って荷主は自らの保険の 担保リスクの範囲に十分注意を払う必要がある。
 荷主が付保する貨物海上保険は、FOB (Free On Board:本船積み込み渡し条件)契 約の場合は買主側に付保責任がある。
しかしF OBだから売主は保険を気にする必要がないと 考えるのは早計だ。
FOBでは、貨物が船舶も しくは航空機に搭載された時から保険の適用が 開始される。
輸出地で船積み前に事故が起きた 《第7回》 国際貨物保険のマネジメント  荷主や物流会社のオフィスには国際物流における未処理 のクレーム案件が山積みとなっている。
誰もが嫌がる日陰 仕事であるため処理が後回しにされがちで、専門知識を持 った人材も不足している。
まずは国際貨物保険のマネジメ ントシステムを確立する必要がある。
宇野 修(うのおさむ) 1946 年生まれ。
青山学院大学卒。
英国航空、フライングタイガー航空、 エア・カナダ、ジャパン・シェンカー、 エクセル・ジャパンを経て、2008 年にロジスティクスバンクを設立、 代表に就任。
現在に至る。
http://www.e-logisticsbank.com/、 e-mail:uno-osamu@e-logistics bank.com 73  AUGUST 2009 場合には、買主手配の保険では求償が出来ない。
そのため売主は別途FOB用の特約保険等を手 当しておかねばならない。
 貨物海上保険の契約約款と国際貨物輸送約 款のリスク担保範囲の要点をまとめると、それ ぞれ表1のようになる。
 ちなみに国際貨物輸送約款における運送人の 賠償責任限度額は、海上輸送の場合、九万八 〇〇〇円(六六六・六七SDR)、または総重 量×二九四円(二SDR)/?のいずれか高い 方となっている。
航空輸送の場合は二四九九円 (一七SDR)/?、または実価額を超えない 申告価額である。
また、運送人の過失に因らな い、火災・天災・不可抗力・戦争危険等に因 る貨物損害は免責である。
※SDR(Special Drawing Rights:特別引出 権)現在のレートは一SDR=一四七円  また海上フォワーダーやNVOCC(非船舶 運航業者)、航空貨物フォワーダーが介在して 国際輸送サービスを提供する場合に、荷主は実 運送人である船会社や航空会社ではなく、フォ ワーダーを契約運送人にすることとなる。
契約 運送人が発行する運送状は、その約款において、 実運送人としての船会社や航空会社の運送状 約款を下敷きにしたものが多く、前述の契約条 件を踏まえているのが通常である。
損害の発生から解決までのプロセス  保険求償の手続きは以下の通りである。
?事故発生・発見と損害拡大防止・軽減義務 ?貨物海上保険約款のリスク担保範囲  前提:All Risks+War & SRCC  (オールリスク約款条件+戦争騒擾約款条件) →商業過失(含む堪航責任) →航海過失 →船舶火災 →天災・不可抗力 →戦争・騒擾危険 (騒擾:ストライキと暴動) ?国際輸送約款のリスク担保範囲(海上輸送)  Bill of Lading(B / L: 船荷証券: Negotiable)  B / L 約款に基づく:各国適用の国際物品運送法   ・COGSA=International Carriage of Goods by Sea Act: Japan ratified the Hague Visby Rule in 1993  船荷証券統一条約(ヘーグ・ルール)、改定ヘーグ議定書(ヘーグ・ ヴィスビー・ルール)準拠 →責任範囲:貨物受領から引渡しまで →責任原則:原則として過失責任主義(損害の発生について故意・ 過失がある場合に限り賠償責任を負う)。
商業過失と堪航責任に 限定。
但し、下記免責事由に起因した損害であることを立証した 場合は無責。
→責任範囲:商業過失は貨物の積込み、荷揚げ、取扱い、輸送、 保管、管理についての責任で、堪航責任は当該航海に運航可 能な状態の船舶であることを約する責任を負い、貨物の損害に対 して損害賠償責任を負うが、責任限度額を規定している。
→免責事由:  ●航海過失 ●火災 ●天災 ●不可抗力・ ●戦争 ●ストライキ、暴動等   →責任限度額:1 梱包または1 単位当たり666.67SDR または 2SDR / kg のいずれか高い方 ?国際輸送約款のリスク担保範囲(航空輸送)  Airway Bill( AWB:航空貨物運送状 : Non Negotiable)  AWB 約款に基づく:各国適用の国際物品運送法/ワルシャワ条約 およびモントリオール条約第四議定書準拠 →責任範囲:航空輸送中に生じた物的損害および延着から生じた 物的損害。
(航空機搭載以前および航空機積降ろし以後の事故 は不担保: FOB 保険/貨物海上保険航空輸送特約が担保) ※実運送人である航空会社は、航空機の運航者であるので、航空 会社の航空貨物運送状は、IATA(International Air Transport Association)制定の約款に準じており、基本部分は、「空港から 空港まで」(Airport to Airport)の原則を採用している。
これは、「貨 物受領から引渡しまで」の原則に立つ海上輸送と責任範囲の構成 が大きくことなる。
従ってAirport to Airport の両端を補完するAir Freight Forwarder が提供する「ドアからドアまで」(Door to Door) のようなサービスは、その約款において責任範囲が拡大している。
→責任原則:原則として無過失責任主義(損害の発生について故 意・過失がなくても賠償責任を負う)。
但し、下記免責事由に起 因した損害である場合は無責。
→責任範囲:出発地または到着地の双方が二国間航空協定締結 国である場合、もしくは出発地および到着地が 単一の締結国 にあり予定寄港地が他国にある場合。
→免責事由:  ●貨物固有の瑕疵、性質による物的損害 ●梱包の不完全による物的損害 ●貨物の輸出入または通過に関してとられた公的機関の措置(税 関による貨物の処分) ●天災 ●不可抗力・ ●戦争(行為または武力衝突) ●ストライキ、暴動等   →責任限度額:17SDR / kgまたは、実価額を超えない申告価額 ?国際輸送約款のリスク担保範囲(複合一貫輸送/契約運送人によ る輸送): Multimodal Transport Document( MTB / L)(複合一 貫運送状約款に基づく:各国適用の国際物品運送法)  ■輸送モードの組合せと運送責任体制のネットワーク・ライアビリテイ 方式とユニフォーム・ライアビリテイ方式の2引受方式により構成される。
(通常はFIATA / JIFFA フォーマットに準拠) →責任範囲:運送状約款に基づく →責任原則:運送状約款に基づく →責任範囲:運送状約款に基づく →免責事由:運送状約款に基づく →責任限度額:運送状約款に基づく 表1 国際貨物のリスク担保範囲 AUGUST 2009  74 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント  貨物に損害が発生した場合には、荷主も運 送人も、まず必要な最善の処置(救助、乾燥、 水洗い、手入れ等)をとり、貨物の損害がさら に拡大しないように、防止および軽減する義務 がある。
保険が適切に付保されていれば、そう した防止および軽減のために生じた費用を保険 会社に求償することもできる。
?事故報告  荷主も運送人も、貨物に損害が判明した時点 で速やかに、自らの契約保険会社に事故の概要 の一報を電話等で伝達する義務がある。
?事故時の現場での対応  荷主、運送人および双方の代理人は、あらゆ る物流の現場において、貨物受領時や事故発生 時に外装異常を発見した場合、損害状況を、そ れに付帯する貨物受領書やB/L(船荷証券) のコピーその他の関連書類に、事故摘要(リマ ークス) として注記 しなければならない。
コンテナ貨物の受け 入れの場合には、コ ンテナシールの異常の 有無や、シール記載 の記号・パッキング リスト上の表示数と 同一かどうかの確認 が必要で、不足数が あれば、それもリマ ークスとして注記する。
?事故の通知  コンテナをデバン ニングした後に貨物数のチェックをせずに、相 当な期間を経て、発見され通知された不足損害 は、貨物海上保険の求償対象外となる。
日本 において適用される輸送モード別の事故の通知 期限および損害賠償請求期限は表2の通りであ る。
この期限を守らないと保険を付保していて も求償できなくなる。
 荷主、運送人および双方の代理人は、受入 貨物に損害が発見された場合には、その送付 元に対して期間内に事故通知を書面(Notice of Claim)で送達する義務がある。
「Notice of Claim」が損害賠償請求権留保通知の機能を果 たしている。
?事故状況の確認  保険会社は、事故の報告を受け次第、事故 状況に応じて検査員による事故現場の立会調査 を手配。
荷主および運送人が各々保険を手配し ている場合には、それぞれの保険会社から派遣 された検査員が現場検証に立ち会うことになる。
 検査員は、現場検証後、立会調査結果報告 を依頼元に提出する。
このサーベイヤーに係る 費用については、保険契約条件に含まれている 場合と含まれていない場合がある。
含まれてい ない場合には依頼者が負担することになる。
ま た無保険状態で求償を求める場合も依頼者が検 査費用を自己負担することになる。
?支払保険金額の確定  保険会社は支払保険金額確定のために、被 保険者である荷主および運送人に対して、検査 報告書およびその他の確証書類の提出を求める。
保険金請求に必要な書類は表3の通りである。
自ら請求権を行使する場合も、出来る限り客観 的確証を揃えることが重要だ。
?保険金請求書の提出  支払保険金額が確定したら、被保険者は、 保険金請求に必要な書類を取揃えて請求書を 保険会社に提出する。
これを通常フォーマル・ クレーム(損害賠償請求書)と言う。
自ら請 求権を行使する場合は、直接対象者に請求書 を配達証明付きで送達する。
?保険金の支払い  保険金請求書に基づき、保険会社は、保険 金を請求者に支払う。
自ら請求権を行使する場 合で、請求先との話し合いが決着していない場 合は、訴訟になる。
訴訟のための弁護士は費用 も勝訴するまで自己負担となる。
?代位求償  保険金を保険会社が被保険者に支払うことに より、その損害賠償請求権は、保険会社に移り、 保険会社が代位求償権者として、事故責任当 事者へ損害賠償を請求する。
これを代位請求権 (Subrogation Right)という。
保険会社が代位 請求により損害賠償金を回収することが出来た 場合には、その回収額が損害率計算に反映され ることになっている。
なぜクレームは減らないのか  次頁の図1は筆者の経験に基づいて作成した、 日本における国際航空貨物の損害処理のプロセ スだ。
これに対応した各種の損害保険を図2に 示したので参考にして欲しい。
 実際には荷主やフォワーダーの事務所には未 海上輸送 陸上輸送 鉄道輸送 航空輸送 通知期限 (Damage) 表2 日本における通知・請求期限 損害賠償請求期限 (Time Bar) 3 日 14 日 14 日 14 日 1年 1年 1年 2年 仕向港での荷降日起算 仕向空港での到着日起算 ※毀損事故(Damage)は14 日以内。
延着事故(Delay)は21 日以 内。
滅失事故(Loss)はAWB 発行日から120 日以内 ※ 75  AUGUST 2009 処理、未解決のクレームが山積みとなっている。
荷主で言えば、協力物流会社に対してクレーム を提出していない案件、提出自体を諦めてしま った案件、クレームは提出したが協力物流会社 あるいは損害保険会社から回答がない案件など 数多ある。
 クレーム処理に関する明確なプロセスは、い まだ確立されていない。
ましてや、国際物流 におけるクレームの発生リスクを予防すること に主眼を置いたマネジメントシステムとなると、 ほとんど手もつけられていないというのが現状 である。
その原因は次のように整理できる。
?クレーム処理という仕事に経営者および従業 員が無関心であり、事後的に時間をかけて処 理しても問題にされない。
クレーム処理プロ セスに存在する非効率(ムダ)および膨大な コストに気付いていない。
?クレーム処理の仕事が、誰もが嫌がる日陰仕 事になっている。
そのためクレーム処理プロ セスを改善しようという?気づき?が生まれ てこない。
?クレーム処理で必要になる法律(国際条約、 国内法、運送約款)、リスク管理、サプライ チェーン・プロセス、保険などの専門的知識 に習熟した人材が不足している。
?そもそも社内にリスクマネジメントに対する 認識がない。
そのため損害事故の予防システ ムの導入も遅れている。
? 空港から空港まで、あるいは港から港まで 無事に運べば責任を全うしたと考えてしまう。
表3 保険金請求に必要な書類 保険金請求には、下記の書類が必要になる ■必ず必要な書類 輸送手段 保険金請求書 保険証券 INVOICE PACKING LIST NOTICE OF CLAIM BILL OF LADING CARGO BOAT NOTE 入庫報告書又は LANDING REPORT BILL OF LADING EQUIPMENT RECEIPT  DEVANNING REPORT  AIR WAYBILL (i) MASTER AIR WAYBILL (ii) HOUSE AIR WAYBILL DELIVERY ORDER 損害状況報告書(事故現認書) SURVEY REPORT SURVEY FEE 請求書 損害額立証書類 写真 輸入(納税)申告書 REPLY LETTER 廃棄処理証明書 内容点検確認書 受損重量・受損価格 証明書 各保険会社によってフォームが異なる 該当する保険証券または引受書 商業送り状(売買契約の積荷の明細および価格を通知するための書類) 貨物の梱包数、内容等を記載した明細書 船会社/ 航空会社に損害があったことを通知する書面 船会社が発行する書類で、輸送の内容を示す書類。
事故内容によっては、オリジナルまたは表・裏両面のコピー が必要 本船から貨物を岸壁または、はしけに荷降ろしする際に本船側と荷主側との貨物の受け渡しを証する書類。
本船から の荷揚げ時に貨物に異常があればREMARKSが記載される 倉庫搬入時の貨物の状態を記載した受領書で、貨物に異常があればREMARKSが記載される。
本船または、はしけ から貨物を岸壁に荷降ろしする際の貨物の数量・状態を記載した書類貨物に異常があればREMARKSが記載される 上記参照 船会社がCY搬出入時にコンテナの状態を示すために発行する書類 コンテナから出される貨物の数量や状態を記録した書類で、貨物に異常がある場合にはREMARKSが記載される 実際の輸送を行う航空会社(Actual Carrier)が混載業者(NVO)に対し発行する書類 混載業者(NVO)が荷主に対し発行する書類 航空貨物引取り時に混載業者が航空会社に提出する書類 貨物に異常がある場合にはREMARKS(摘要)が記載される サーベイを実施しない場合に損害状況・程度・数量・修理の可否等を記入する書類 第三者であるサーベイヤーが損害の原因・発生時点および、損害の数量・程度を調査確認のうえ作成した損害立 証書類 検査機関の検査費用に関する請求書 損害貨物を修理、手直しした場合にはその費用の明細書(請求書・領収書) 梱包毎の不着の場合を除き、梱包および損害品の写真 関税についても保険を付けられている場合 NOTICE OF CLAIMに対する船会社/航空会社からの返事 貨物を廃棄した場合 通関業者(荷主の代理人)からの依頼で実施される内容点検の結果報告書 損害を受けた重量および価格を証明する書類 書類名 書類の内容及び説明 航空輸送 航空輸送 コンテナ輸送 在来船 共通 共通 ■事故の内容によって必要な書類 ■その他必要書類 輸送手段 書類名 書類の内容及び説明 損害の内容に応じ上記以外の書類が必要な場合があり、保険会社より請求がある。
時効が近い場合(3カ月程度)、時効延長状等。
複合輸送B / Lでは、時効が貨物引渡後9カ月の場合もある。
AUGUST 2009  76 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント ?到着地空港上屋(JALTOS、 IACT)で損害(損傷、ロス)の 確認  損傷の種類:A- 軽微、B-や や重い、Z-重い:搬出時にチェッ クマニフェストに記入する。
荷 抜き、重い損傷は内容点検。
?荷受人にて、損傷を確認し、フォ ワーダーに通知する 損害事故の発生の確認: Step 1 フォワーダーまたは通関代理店が【NOTICE OF CLAIM】を書面で2 部作成し、到着航空会社に 提出し、受取印(Validation Stamp)をもらい、 一部返却してもらい、ファイルする。
【NOTICE OF CLAIM】は「損害賠償請求権留保通知」の ことで、後日損害賠償請求(正式クレーム)をする 可能性があるという「事前通知書」である。
「事前通知書」の提出期限は; 損傷:貨物受領から14日以内 遅延:貨物廃棄処理から21日以内 ロス(紛失):航空運送状発効日から120日以内 以上は航空運送状(Conditions of Contract) の裏面約款12 条に掲載されている。
【NOTICE OF CLAIM】の提出: Step 2 フォワーダーから航空会社またはフォワーダーの保 険会社にクレーム書類を提出: (A)航空会社へ提出 航空会社の損害賠償責任を追及するもの (B) 保険会社へ提出 フォワーダーの損害賠償を追及するもの フォワーダーと保険会社の契約に基づく: 免責金額以下のものはフォワーダーが支払う。
【クレーム書類】の提出 Step 4 (A)航空会社でクレームの審査・査定 ?サーベイ・レポートが必要な場合 ?サーベイ・レポートが必要でない場合 (B) 保険会社でクレームの審査・査定 ?サーベイ・レポートが必要な場合 ?サーベイ・レポートが必要でない場合 【クレームの審査・査定】 Step 5 (A)フォワーダーが航空会社へ賠償金額の確認 報告・振込依頼 (B)フォワーダーが保険会社へ賠償金額の確 認・振込依頼 【賠償金額の確認・振込依頼】 Step 7 (A)航空会社からフォワーダーへ振込 (B) 保険会社からフォワーダーへ振込 【賠償金額の振込】 Step 8 荷受人へ報告・振込、クレーム処理の終了 【クレーム処理の終了】 Step 9 (A) 航空会社からフォワーダーへ審査結果・賠償金額の報告 (B) 保険会社からフォワーダーへ審査結果・賠償金額の報告 【審査結果・賠償金額の報告】 Step 6 損害賠償請求手続き(正式クレーム) 荷受人がフォワーダーに提出する書類; ?Letter of Claim(フォーマル・クレーム) ?品質確認報告書 ?HAWBのコピー(フォワーダーの送り状:運送約款) ?MAWBのコピー(航空会社の送り状:運送約款) ?コマーシャル・インボイスのコピー ?パッキング・リストのコピー ?損傷を証明する写真 ?受損重量証明書 ?廃棄処理証明書 ?サーベイ・レポート(損害見込額が30 万円以上の場合) ?事故報告書、事故証明書、内容点検書 ?修理証明書、Subrogation Receipt(権利移転証)、委任状、滅却 証明、原産地証明、輸出・輸入承認書、保険契約書(写) ※フォワーダーは上記の書類に【NOTICE OF CLAIM】のコピーおよび正式ク レーム(フォーマル・クレーム)を添付し、航空会社または保険会社に提出する) ※航空会社への提出は事態の発生日から2年以内に行う(ワルシャワ条約第29条) 【正式クレーム(Formal Claim)】書類の準備 Step 3 保険 生命保険(Life) 非生命保険 (Non−life) マリーン保険 船舶保険 貨物保険 物保険 賠償責任保険 利益 人 傷害保険 労災保険 施設など 生産物 自動車 動産総合保険 自動車保険 火災保険(建物、家財、機械設備、商品など) 運送業者損害賠償責任保険 輸出FOA(Free On Aircraft:航空機積込まで) 国内運送保険 (陸上) 海上貨物保険 運送保険 外航(貨物海上保険) 内航(国内) 内航(例:神戸ー横浜) 輸出FOB(輸出本船に船積するまで) ノンマリーン保険 【在庫額対象:3─4カ月保管して、輸送が1 回】 【輸送額対象:輸送が頻繁で、1日保管】 図2 保険の種類 図1 国際航空貨物損害の発見から損害賠償解決までのプロセス 77  AUGUST 2009 協働システムの構築が待たれる  現状では次のような具体的課題がある。
● 事故がおきるとクレーム手続に時間とコス トがかかる。
とりわけ「Notice of Claim」、 「Formal Claim」の作成プロセスに時間がか かりすぎている。
●キャリアの審査・査定の矛盾、損害賠償代 金の支払いについても不都合が多々ある。
●国際運送法、損害賠償法、貨物保険、クレ ーム・プロセス(解決法)に関する知識を 持った人材が不足している。
 上述した非効率を改善するには、サプライ チェーン全体を網羅する損害チェックシステム を、サプライチェーンに参画するプレーヤー全 員が協働で構築する必要がある。
「端から端まで」 のサプライチェーン全体を網羅するチェックリ ストを導入し、損害事故の原因が明確なものと 不明確なものに分ける。
原因が明確な案件はル ールに従って即座に処理する。
原因は不明確な 案件だけに既存の解決プロセスを適用する。
さ らには事故の監視だけでなく、回避・防止のた めの警告機能を持った、革新的なシステムの構 築が待ち望まれている。
約運送人)が問われることになる。
輸入航空会 社上屋で発見された損傷は本当は、出発地のフ ォワーダーの倉庫や到着地の航空会社上屋で仕 分けの時に起こったのかもしれない。
あるいは リリースした後の国内トラック輸送中に起こっ た可能性もある。
 しかし、その事実を確認することは、現状の プロセスでは不可能である。
そのため事実が証 明されないまま、発生した損害に対して、事後 的に荷主企業は「Notice of Claim」、「Formal Claim」を提出し、損害賠償を請求しているの が現状である。
 予防的に損害発生のリスク源を予測し、それ を防止するリスク管理システムを作り、損害賠 償コストおよび貨物保険コストを削減し、サプ ライチェーンのスループット(生産性)を向上 するという考え方自体が根付いていないのだ。
 もちろん現状でも、出発地の荷送人から出発 地航空会社の上屋までの間において、貨物の配 達時点で外装のチェックを行い、搬入をしたト ラック運送会社と貨物を受けた航空会社との間 でも「クリーン・レシート」(数量、重量、梱 包問題なし)を交わしている。
 しかし、これはサプライチェーンにおける一 つの節点における責任を果たしたに過ぎない。
荷受人に貨物が届くまでの責任を視野に入れて いるとは言い難い。
実際、航空会社などは「空 港から空港」間において損害事故の起こった ことが確実であると推測できる場合であっても、 免責条項を盾にして損害賠償を受付けないこと がしばしである。
そのためサプライチェーン全体を見渡して貨 物損害の「危険源」を追求し、改善しよう としない。
 こうした理由から事故の発生原因、そして責 任の所在を明確にできない。
その結果、未処理 のクレーム案件が事務所に山積みになってしま うのである。
 出発地の荷送人から到着地の荷受人に至る サプライチェーンの長い工程の中で、国際航空 貨物の損害が明確に判定できるのは、出発地で 損害が発見される場合(まれである)を除いて、 以下の二つが考えられる。
 一つは、到着地の航空会社の上屋でパレッ トをばらし、貨物の仕分けをする時、あるい は通関が終わった貨物を通関業者、貨物代理 店、フォワーダーに引き渡す、リリース時である。
もう一つは、引き渡した貨物が、協力トラック 運送会社の手で荷受人の指定した倉庫などの届 け先に保管され、それを開梱し内装と製品の状 態を検査した時である。
 いずれのケースにおいても、損害の「事故源」 (損害を起こしたポイント・責任のあるサプラ イヤー)および事故の原因を明確にすることは、 ほとんど困難である。
その理由は荷送人から到 着空港航空会社上屋まで、さらには貨物をリリ ースしてから荷受人に届けるまでのサプライチ ェーンを一貫して管理する、損害マネジメント システムが存在していないからである。
 そのため損害が発生した場合に、その責任は 航空会社(実運送人)もしくはフォワーダー(契 参考文献 ■「貨物海上保険と国際貨物輸送」に関するレポート:ミ クロコスモス、二〇〇八年 ■「航空貨物損害賠償の実務」大野和雄著、成山堂書店、 一九九一年 ■ 損害保険会社のパンフレット(東京海上他)

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから