2009年8月号
SOLE
SOLE
SCMを経営戦略に活かせるかコンセプトと方法論の進化を解説
SOLE 日本支部フォーラムの報告
The International Society of Logistics
AUGUST 2009 82
Response〉、ECR【☞注2】や戦略
同盟)の流れもある。
これら「同期 化」や「一貫化思考」を高めて「S CMを経営戦略」へと進化・発展で きないか。
高度情報化や経営システムの進化は、 商品管理、生産管理、SCMに大き な影響を与え、SCMのオペレーショ ン・システム(QR、MRP【☞注3】、 APS【☞注4】→TQM【☞注5】、M RP?【☞注6】、CIM【☞注7】→E RP〈Enterprise Resource Planning〉、 SCM)を進化・発展させ経営に近付 けている(図1)。
SCMへの系譜でも、バリューチ ェーンに沿うように、ビジネスプロ セス系の流れ( B P R〈Business Process Reengineering〉、ERP)、 流通・ロジスティクス系の流れ(QR、 ECR、CRP【☞注8】)、生産マネ ジメント系の流れ(JIT、CIM)、 情報系の流れ(CALS、EC)等 がSCMに発展的に統合されてきた が、これにスループット、キャッシュ フロー、さらにEVA【☞注9】やM VA【☞注 10 】で補強すれば、現時点 でもSCMは「経営戦略」になり得 ると考える。
SCMは社内の個別機能を部門横 断的に統合するレベルから企業横断 的なSCMを経て、今やグローバルS CMへと発展しつつある。
? SCMの本質 SCMは本来、小売(消費者)に SCMを経営戦略に活かせるか コンセプトと方法論の進化を解説 六月のフォーラムでは、大阪大学 大学院を今年三月に定年退官した西 垣葵氏が、昨年度の大阪大学大学院 経済学研究科および経済学部での講 義「SCM」全十三コマから二コマ 分「SCMと流通」、「SCMと経営 戦略序章」を圧縮して講演を行った。
本稿では、その後段「SCMと経営 戦略序章」の概要を紹介する。
(西垣葵) ? 経営を取り巻く環境の変化 企業にとって、外部環境の変化に 対応できないことは衰退を意味する。
イノベーション、規制緩和(現在小 休止?)、グローバリゼーション、少 子・高齢化、ライフスタイル・価値 観の変化、就業構造の変化等の諸変 化に、内部資源の調整、適合、機 会・脅威の抽出等の迅速な対応が求 められている。
企業のライフサイクルは一〇年(ジ ュグラー)〜五〇年(コンドラチェフ) の景気循環(膨張と収縮)の影響を 受ける。
現在は新興国の隆盛により オールドエコノミーの復活も顕著だ。
製品のライフサイクルでは、二〇 〇二年のバーン・エラーズのデスバレ ー現象(「魔の川」:基礎研究と技術 開発の間に存在する障壁〜「ダーウィ ンの海」:事業化と産業化の間の障 壁)が知られているが、SCMはか かる外部環境の変化にどのような影 響を受け、どんな貢献をしていける のであろうか。
? SCMを『「経営戦略」に』 SCMにつながる「経営管理」の 歴史をレビューすると、科学的管理 法、フォーディズム、IE(Industrial Engineering)、JIT(Just In Time) の流れがあり、経営戦略ではマイケ ル・ポーターの競争優位・バリュー チェーンの流れがある。
一方、CALS【☞注1】を源流 にもつEC(電子商取引)の発展 や流通業界での変革(QR〈Quick 図1 SCM の間連系譜図 垂直型バリューチェーン サプライチェーン ERP QC TQC TQM JIT TPS CALS EC Eビジネス VMI CRP MRP X QR ECR ロジスティクス デマンドチェーン ●スループット ●TOC(制約理論) ●キャッシュフロー ●プロフィットプール SCM (サプライチェーン・マネジメント) 図2 SCM と企業価値 ■SCM によるキャッシュ・フロー創出 SCM による全体最適=スループットの向上、在庫 削減等でキャッシュフロー創出 ■キャッシュ・フローと企業価値 企業価値を高める=キャッシュ・フローベースのリ ターンを高めること ■バリュー・ドライバー・ツリー レベル1:ROS・売上高成長率・資本回転率、レ ベル2、レベル3) ■EVA(Economic Value Added)評価 ・EVA=利益価値創造のために投下された資本コス ト控除後の残 余利益 ・投資コスト以上のリターン上げる ※資本コスト=有利子負債+ 株主コスト ・MVA(Market Value Added)で将来予測 83 AUGUST 2009 大きな進歩がみられた(図3、4)。
? SCMと今後一〇年の潮流 過去、SCMは管理技法と捉えら れ、?JITやCRPによる在庫削 減効果、?ECRや製販同盟による コラボレーション、?APSやMR Pによる生産管理、?CPFR【☞ 注 15 】やCRMなど顧客対応、?LE (Logistics Engineering)やRFI D技術活用の効果──等、「管理」と しての注目が多かった。
しかし前項? で紹介した経営管理技法や経営戦略 もSCMに大きな影響を与えており、 一部は定着しつつある。
では、「今後一〇年のメガトレンド はどうなるのか」は神のみぞ知るで あるが、あえて想起すれば以下のキー ワードがある。
?垂直(水平)統合からEC・ファ ブレス(バーチャル・リアル連結) への本格移行 ?スキルからIT、知財等知識ベー スへ ?ネットワーク再構築(オープン・ネ ットワーク) ?価値創造(各種ステークホルダー: 顧客価値、株主価値、企業価値 =M&A価値、従業員価値など多 彩)志向のSCM ?循環・グリーン取り込みのSCM (大阪大学での最終講義で詳述) 連動し生産、物流を連鎖する考えで、 メーカーや流通が売れた数だけ「後補 充発注」(CRP)する、あるいはE RP等による需要予測・計画を行い、 メーカーが最短リードタイムで必要数 を生産・納品し、在庫削減、スルー プット、キャッシュフローの向上を図 るものである。
S C M ←→ D C M(Demand (3PL、物流付加価値)、?顧客戦 略として:CRM、データマイニング、 ?キャッシュフロー戦略として:RO A(総資産利益率)やROS(売上 高利益率)の重視、スループット増大 によるCCC【☞注 11 】の短縮、等が 挙げられる。
加えて顧客サービスや需 要フローと調達・物流戦略との統合 戦略が重要になる(図2)。
? 現下のSCMと経営戦略 この一五年の経営では、企業価値 =株主価値の考えでキャッシュフロー が重視され、EVA、MVAによる 評価・戦略が重用された。
また、「失 われた一〇年」の企業再生活動では、 ?PLC【☞注 12 】?(四段階)とボスト ンコンサルティングの?PPM【☞注 13 】?(四事象)を、二層マトリックス 構造的に連関させ、キャッシュフロー のイン←→アウトやシェアから事業戦 略、買収戦略を立案することが行わ れた。
SCM分野ではTOC【☞注 14 】や スループット(含スループット会計) がブームとなり、その他の管理会計 的手法(ABM〈活動基準原価管理〉、 BSC〈バランス・スコアカード〉等) も物流・ロジスティクス分野に応用 されてきた。
加えて、ERP等IT の普及・高度化やRFID等もSC Mの管理技法に大きな影響を及ぼし、 Chain Management) の狙いは三 つ、? 顧客ニーズに迅速に対応し て、CRM(Customer Relationship Management)=「顧客価値」を増 大し、?生産から消費に至るあらゆる 制約条件を減らし、各段階の生産性 を向上させ、?キャッシュフローを拡 大し、事業価値=企業価値=株主価 値を高めることである。
つまり「価 値」を届け、「経営構造」を変革す ることがSCMの目的であり、管理 レベルでの?アジャイル(俊敏)?や ?在庫削減?だけでなく、むしろ経営 的に「顧客価値」や「企業価値」の 増大に貢献することにある。
かくし て、SCMは「経営戦略」としても 枢要になり得るのである(図2)。
マイケル・ポーターは五つの主要活 動(調達物流、製造、販売物流、販 売、顧客サービス)の中でインバウン ド、アウトバウンドによる連鎖をとり あげ、「競争企業との価値連鎖の差異 が競争優位の主因になる」(バリュー チェーン管理)とした。
したがって、 マイケル・ポーターは「バリューチェ ーンの元祖」であるばかりでなく、S CMの「経営戦略」における?ルー ツ?ともいえよう。
SCMによる「経営戦略」として は、?調達戦略として:コストカッ トや納入リードタイムの短縮、?物 流戦略として:物流アセットの再考 ●経営戦略 SCM の学際範囲 (経営戦略を中心軸とした場合) ●ロジスティクス 物流論 在庫管理 港湾論 倉庫論 交通経済 ●生産マネジメント 経営工学(OR) 品質管理(TQR) ●マーケティング 流通論 ●システム論 経営情報(流通システム) システム設計 ●ロジスティクス技術(LE) ●プロジェクト・マネジメント ●生産技術 ●経営管理 管理会計 図3 SCM とその学際領域図4 SCM その他 ロジスティクス技術 経営管理・キャッシュフロー 管理会計 IT 在庫管理 生産管理 物流・ロジスティクス 流通 SCM AUGUST 2009 84 よって演繹的に導出されたものであ る。
SCMでも最適化、最大化、均 衡点、意思決定等を科学的に導出で きる。
しかし実際の適応には限界も ある。
現実は想像以上のスピードで 変化している。
「実証的」と称する研 究は多いが、実施前に現実が変わる ことも多く、仮説検証も事後ならと もかく、フィジビリテイは容易でない。
つまり「現実」(実際)の世界は、概 して理論(仮説モデル)とは異なる。
理論の現実適応性が問われていると 考える。
大学教員になる前、長く企業に勤 めた経験から本日ご出席の皆様へのエ ールとして「経験(現実感覚)」を磨 き、「現場で生かし・やり遂げる」こ との重要性を訴えたい。
百聞は一見 にしかず、体験・経験によって初め て分かることも多い。
理論をそのま ま、実現・実行することは可能か。
肝要なことは、現実との擦り合わ せである。
実行力=実際適応=やり 遂げることが大切で、実行力と結果 が問われているのである。
?グローバルSCMの普及 と考える。
? SCMの課題 強靭なSCMを構築するに当たっ ては、課題も多い。
SCMの本来の起点である実需を 迅速かつ正確に把握することは本当 に実現できるのか。
ブルウィップ効果 【☞注 16 】などもあるので、POS(販 売時点情報管理)等表面に現れたデ ータを過信することなく、現象の深 層を読み、正しく意思決定すること が必要である。
形だけのSCMは誤りを生む。
商 品管理に目が行き過ぎると顧客ニー ズや消費者の動向を見誤り、需給ギ ャップを膨らます。
また、自力で問 題を正確に把握した上で構造解析し、 自らソリューションを導き出さねばな らない。
?借りた知恵?は早晩、破綻 するものである。
変化は速い。
真のS CMを実現するには、コラボレーショ ン(CPFR)が重要であり、製・ 販が協働で最終消費者・市場を見て 予測・計画・補充を同期化しなけれ ば、成果は偏り持続し得ない。
その 他、懸念されることは多い。
最後に、アカデミズムの課題である ﹃理論と現実﹄の問題を挙げたい。
す なわち「理論の現実適応性」である。
「理論」は理性・合理主義・科学に 次回フォーラムのお知らせ 2009年8月度のフォーラムは 休会とし、次回フォーラムは9月 度「SOLE2009Conference参 加報告」を予定している。
このフ ォーラムは年間計画に基づいて運営 しているが、単月のみの参加も可 能。
一回の参加費は6,000円。
ご 希望の方は事務局(sole-j-offi ce@ cpost.plala.or.jpまでお問い合わ せください。
※ S O L E(The International Society of Logistics)は一九六〇年代に設立されたロジ スティクス団体。
米国に本部を置き、会員は 五一カ国・三〇〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日 本支部では毎月「フォーラム」を開催し、講 演、研究発表、現場見学などを通じてロジス ティクス・マネジメントに関する活発な意見交 換、議論を行っている。
注1 Continuous Acquisition and Life-cycle Support:継続的な調達とライフサイクルの支 援。
情報の電子化と共有により、製品のライ フサイクルのさまざまな局面でコスト削減、生 産性の向上を図る 注2 Efficient Consumer Response:効率 的な消費者対応。
メーカー、卸、小売りが連 携し、流通全体を効率化する取り組み 注3 Material Requirements Planning:資材 所要量計画。
資材管理で生産を計画する手法 注4 Advanced Planning and Scheduling :複数の制約条件の下、最適な生産計画を立 案する仕組み 注5 Total Quality Management:会社全 体で品質を中心に、絶えずあらゆることを改 善する活動 注6 MRPを発展させ、資材以外の人員、 設備など製造に必要なすべての資源を管理す る仕組み 注7 Computer Integrated Manufacturing:コ ンピューター統合生産。
製造、技術、管理な ど生産現場の情報をコンピューターシステムに よって統括し、生産の効率化を推進すること 注8 Continuous Replenishment Program :商品の連続補充方式。
ECR手法の一つで POSデータから消費者が購入した分だけ自 動的に補充するシステム 注9 Economic Value Added:経済的付加 価値。
企業の資本を使って生み出された価値 を表す 注 10 Market Value Added:市場付加価値。
企業に投じられた資金が生み出した企業価値 表す 注 11 Cash Conversion Cycle:現金循環 化日数。
仕入れから販売に伴う現金回収まで の日数を示す 注 12 Product Life Cycle:製品ライフサイ クル。
製品の導入期、成長期、成熟期、衰 退期の四段階から成る 注 13 Products Portfolio Management:製 品ポートフォリオ・マネジメント。
市場占有 率を縦軸に、成長性を横軸にとって製品や事 業を分類し、事業を四つの事象に分類し、組 み合わせてそれぞれの分野の戦略を決定する 注 14 Theory Of Constraints:制約条件の 理論。
最適生産のためには工程全体のスケジ ュールをボトルネック工程の能力に合わせる必 要があり、生産性向上のためにはボトルネッ ク工程を重点的に改善すべきとする。
注 15 Collaboratitive, Planning, Forecasting and Replenishment:複数の企業の協働によ る計画立案、需要予測、補充 注 16 消費者のわずかな需要変動が、増幅し てメーカーに伝わっていくこと 語 注
これら「同期 化」や「一貫化思考」を高めて「S CMを経営戦略」へと進化・発展で きないか。
高度情報化や経営システムの進化は、 商品管理、生産管理、SCMに大き な影響を与え、SCMのオペレーショ ン・システム(QR、MRP【☞注3】、 APS【☞注4】→TQM【☞注5】、M RP?【☞注6】、CIM【☞注7】→E RP〈Enterprise Resource Planning〉、 SCM)を進化・発展させ経営に近付 けている(図1)。
SCMへの系譜でも、バリューチ ェーンに沿うように、ビジネスプロ セス系の流れ( B P R〈Business Process Reengineering〉、ERP)、 流通・ロジスティクス系の流れ(QR、 ECR、CRP【☞注8】)、生産マネ ジメント系の流れ(JIT、CIM)、 情報系の流れ(CALS、EC)等 がSCMに発展的に統合されてきた が、これにスループット、キャッシュ フロー、さらにEVA【☞注9】やM VA【☞注 10 】で補強すれば、現時点 でもSCMは「経営戦略」になり得 ると考える。
SCMは社内の個別機能を部門横 断的に統合するレベルから企業横断 的なSCMを経て、今やグローバルS CMへと発展しつつある。
? SCMの本質 SCMは本来、小売(消費者)に SCMを経営戦略に活かせるか コンセプトと方法論の進化を解説 六月のフォーラムでは、大阪大学 大学院を今年三月に定年退官した西 垣葵氏が、昨年度の大阪大学大学院 経済学研究科および経済学部での講 義「SCM」全十三コマから二コマ 分「SCMと流通」、「SCMと経営 戦略序章」を圧縮して講演を行った。
本稿では、その後段「SCMと経営 戦略序章」の概要を紹介する。
(西垣葵) ? 経営を取り巻く環境の変化 企業にとって、外部環境の変化に 対応できないことは衰退を意味する。
イノベーション、規制緩和(現在小 休止?)、グローバリゼーション、少 子・高齢化、ライフスタイル・価値 観の変化、就業構造の変化等の諸変 化に、内部資源の調整、適合、機 会・脅威の抽出等の迅速な対応が求 められている。
企業のライフサイクルは一〇年(ジ ュグラー)〜五〇年(コンドラチェフ) の景気循環(膨張と収縮)の影響を 受ける。
現在は新興国の隆盛により オールドエコノミーの復活も顕著だ。
製品のライフサイクルでは、二〇 〇二年のバーン・エラーズのデスバレ ー現象(「魔の川」:基礎研究と技術 開発の間に存在する障壁〜「ダーウィ ンの海」:事業化と産業化の間の障 壁)が知られているが、SCMはか かる外部環境の変化にどのような影 響を受け、どんな貢献をしていける のであろうか。
? SCMを『「経営戦略」に』 SCMにつながる「経営管理」の 歴史をレビューすると、科学的管理 法、フォーディズム、IE(Industrial Engineering)、JIT(Just In Time) の流れがあり、経営戦略ではマイケ ル・ポーターの競争優位・バリュー チェーンの流れがある。
一方、CALS【☞注1】を源流 にもつEC(電子商取引)の発展 や流通業界での変革(QR〈Quick 図1 SCM の間連系譜図 垂直型バリューチェーン サプライチェーン ERP QC TQC TQM JIT TPS CALS EC Eビジネス VMI CRP MRP X QR ECR ロジスティクス デマンドチェーン ●スループット ●TOC(制約理論) ●キャッシュフロー ●プロフィットプール SCM (サプライチェーン・マネジメント) 図2 SCM と企業価値 ■SCM によるキャッシュ・フロー創出 SCM による全体最適=スループットの向上、在庫 削減等でキャッシュフロー創出 ■キャッシュ・フローと企業価値 企業価値を高める=キャッシュ・フローベースのリ ターンを高めること ■バリュー・ドライバー・ツリー レベル1:ROS・売上高成長率・資本回転率、レ ベル2、レベル3) ■EVA(Economic Value Added)評価 ・EVA=利益価値創造のために投下された資本コス ト控除後の残 余利益 ・投資コスト以上のリターン上げる ※資本コスト=有利子負債+ 株主コスト ・MVA(Market Value Added)で将来予測 83 AUGUST 2009 大きな進歩がみられた(図3、4)。
? SCMと今後一〇年の潮流 過去、SCMは管理技法と捉えら れ、?JITやCRPによる在庫削 減効果、?ECRや製販同盟による コラボレーション、?APSやMR Pによる生産管理、?CPFR【☞ 注 15 】やCRMなど顧客対応、?LE (Logistics Engineering)やRFI D技術活用の効果──等、「管理」と しての注目が多かった。
しかし前項? で紹介した経営管理技法や経営戦略 もSCMに大きな影響を与えており、 一部は定着しつつある。
では、「今後一〇年のメガトレンド はどうなるのか」は神のみぞ知るで あるが、あえて想起すれば以下のキー ワードがある。
?垂直(水平)統合からEC・ファ ブレス(バーチャル・リアル連結) への本格移行 ?スキルからIT、知財等知識ベー スへ ?ネットワーク再構築(オープン・ネ ットワーク) ?価値創造(各種ステークホルダー: 顧客価値、株主価値、企業価値 =M&A価値、従業員価値など多 彩)志向のSCM ?循環・グリーン取り込みのSCM (大阪大学での最終講義で詳述) 連動し生産、物流を連鎖する考えで、 メーカーや流通が売れた数だけ「後補 充発注」(CRP)する、あるいはE RP等による需要予測・計画を行い、 メーカーが最短リードタイムで必要数 を生産・納品し、在庫削減、スルー プット、キャッシュフローの向上を図 るものである。
S C M ←→ D C M(Demand (3PL、物流付加価値)、?顧客戦 略として:CRM、データマイニング、 ?キャッシュフロー戦略として:RO A(総資産利益率)やROS(売上 高利益率)の重視、スループット増大 によるCCC【☞注 11 】の短縮、等が 挙げられる。
加えて顧客サービスや需 要フローと調達・物流戦略との統合 戦略が重要になる(図2)。
? 現下のSCMと経営戦略 この一五年の経営では、企業価値 =株主価値の考えでキャッシュフロー が重視され、EVA、MVAによる 評価・戦略が重用された。
また、「失 われた一〇年」の企業再生活動では、 ?PLC【☞注 12 】?(四段階)とボスト ンコンサルティングの?PPM【☞注 13 】?(四事象)を、二層マトリックス 構造的に連関させ、キャッシュフロー のイン←→アウトやシェアから事業戦 略、買収戦略を立案することが行わ れた。
SCM分野ではTOC【☞注 14 】や スループット(含スループット会計) がブームとなり、その他の管理会計 的手法(ABM〈活動基準原価管理〉、 BSC〈バランス・スコアカード〉等) も物流・ロジスティクス分野に応用 されてきた。
加えて、ERP等IT の普及・高度化やRFID等もSC Mの管理技法に大きな影響を及ぼし、 Chain Management) の狙いは三 つ、? 顧客ニーズに迅速に対応し て、CRM(Customer Relationship Management)=「顧客価値」を増 大し、?生産から消費に至るあらゆる 制約条件を減らし、各段階の生産性 を向上させ、?キャッシュフローを拡 大し、事業価値=企業価値=株主価 値を高めることである。
つまり「価 値」を届け、「経営構造」を変革す ることがSCMの目的であり、管理 レベルでの?アジャイル(俊敏)?や ?在庫削減?だけでなく、むしろ経営 的に「顧客価値」や「企業価値」の 増大に貢献することにある。
かくし て、SCMは「経営戦略」としても 枢要になり得るのである(図2)。
マイケル・ポーターは五つの主要活 動(調達物流、製造、販売物流、販 売、顧客サービス)の中でインバウン ド、アウトバウンドによる連鎖をとり あげ、「競争企業との価値連鎖の差異 が競争優位の主因になる」(バリュー チェーン管理)とした。
したがって、 マイケル・ポーターは「バリューチェ ーンの元祖」であるばかりでなく、S CMの「経営戦略」における?ルー ツ?ともいえよう。
SCMによる「経営戦略」として は、?調達戦略として:コストカッ トや納入リードタイムの短縮、?物 流戦略として:物流アセットの再考 ●経営戦略 SCM の学際範囲 (経営戦略を中心軸とした場合) ●ロジスティクス 物流論 在庫管理 港湾論 倉庫論 交通経済 ●生産マネジメント 経営工学(OR) 品質管理(TQR) ●マーケティング 流通論 ●システム論 経営情報(流通システム) システム設計 ●ロジスティクス技術(LE) ●プロジェクト・マネジメント ●生産技術 ●経営管理 管理会計 図3 SCM とその学際領域図4 SCM その他 ロジスティクス技術 経営管理・キャッシュフロー 管理会計 IT 在庫管理 生産管理 物流・ロジスティクス 流通 SCM AUGUST 2009 84 よって演繹的に導出されたものであ る。
SCMでも最適化、最大化、均 衡点、意思決定等を科学的に導出で きる。
しかし実際の適応には限界も ある。
現実は想像以上のスピードで 変化している。
「実証的」と称する研 究は多いが、実施前に現実が変わる ことも多く、仮説検証も事後ならと もかく、フィジビリテイは容易でない。
つまり「現実」(実際)の世界は、概 して理論(仮説モデル)とは異なる。
理論の現実適応性が問われていると 考える。
大学教員になる前、長く企業に勤 めた経験から本日ご出席の皆様へのエ ールとして「経験(現実感覚)」を磨 き、「現場で生かし・やり遂げる」こ との重要性を訴えたい。
百聞は一見 にしかず、体験・経験によって初め て分かることも多い。
理論をそのま ま、実現・実行することは可能か。
肝要なことは、現実との擦り合わ せである。
実行力=実際適応=やり 遂げることが大切で、実行力と結果 が問われているのである。
?グローバルSCMの普及 と考える。
? SCMの課題 強靭なSCMを構築するに当たっ ては、課題も多い。
SCMの本来の起点である実需を 迅速かつ正確に把握することは本当 に実現できるのか。
ブルウィップ効果 【☞注 16 】などもあるので、POS(販 売時点情報管理)等表面に現れたデ ータを過信することなく、現象の深 層を読み、正しく意思決定すること が必要である。
形だけのSCMは誤りを生む。
商 品管理に目が行き過ぎると顧客ニー ズや消費者の動向を見誤り、需給ギ ャップを膨らます。
また、自力で問 題を正確に把握した上で構造解析し、 自らソリューションを導き出さねばな らない。
?借りた知恵?は早晩、破綻 するものである。
変化は速い。
真のS CMを実現するには、コラボレーショ ン(CPFR)が重要であり、製・ 販が協働で最終消費者・市場を見て 予測・計画・補充を同期化しなけれ ば、成果は偏り持続し得ない。
その 他、懸念されることは多い。
最後に、アカデミズムの課題である ﹃理論と現実﹄の問題を挙げたい。
す なわち「理論の現実適応性」である。
「理論」は理性・合理主義・科学に 次回フォーラムのお知らせ 2009年8月度のフォーラムは 休会とし、次回フォーラムは9月 度「SOLE2009Conference参 加報告」を予定している。
このフ ォーラムは年間計画に基づいて運営 しているが、単月のみの参加も可 能。
一回の参加費は6,000円。
ご 希望の方は事務局(sole-j-offi ce@ cpost.plala.or.jpまでお問い合わ せください。
※ S O L E(The International Society of Logistics)は一九六〇年代に設立されたロジ スティクス団体。
米国に本部を置き、会員は 五一カ国・三〇〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日 本支部では毎月「フォーラム」を開催し、講 演、研究発表、現場見学などを通じてロジス ティクス・マネジメントに関する活発な意見交 換、議論を行っている。
注1 Continuous Acquisition and Life-cycle Support:継続的な調達とライフサイクルの支 援。
情報の電子化と共有により、製品のライ フサイクルのさまざまな局面でコスト削減、生 産性の向上を図る 注2 Efficient Consumer Response:効率 的な消費者対応。
メーカー、卸、小売りが連 携し、流通全体を効率化する取り組み 注3 Material Requirements Planning:資材 所要量計画。
資材管理で生産を計画する手法 注4 Advanced Planning and Scheduling :複数の制約条件の下、最適な生産計画を立 案する仕組み 注5 Total Quality Management:会社全 体で品質を中心に、絶えずあらゆることを改 善する活動 注6 MRPを発展させ、資材以外の人員、 設備など製造に必要なすべての資源を管理す る仕組み 注7 Computer Integrated Manufacturing:コ ンピューター統合生産。
製造、技術、管理な ど生産現場の情報をコンピューターシステムに よって統括し、生産の効率化を推進すること 注8 Continuous Replenishment Program :商品の連続補充方式。
ECR手法の一つで POSデータから消費者が購入した分だけ自 動的に補充するシステム 注9 Economic Value Added:経済的付加 価値。
企業の資本を使って生み出された価値 を表す 注 10 Market Value Added:市場付加価値。
企業に投じられた資金が生み出した企業価値 表す 注 11 Cash Conversion Cycle:現金循環 化日数。
仕入れから販売に伴う現金回収まで の日数を示す 注 12 Product Life Cycle:製品ライフサイ クル。
製品の導入期、成長期、成熟期、衰 退期の四段階から成る 注 13 Products Portfolio Management:製 品ポートフォリオ・マネジメント。
市場占有 率を縦軸に、成長性を横軸にとって製品や事 業を分類し、事業を四つの事象に分類し、組 み合わせてそれぞれの分野の戦略を決定する 注 14 Theory Of Constraints:制約条件の 理論。
最適生産のためには工程全体のスケジ ュールをボトルネック工程の能力に合わせる必 要があり、生産性向上のためにはボトルネッ ク工程を重点的に改善すべきとする。
注 15 Collaboratitive, Planning, Forecasting and Replenishment:複数の企業の協働によ る計画立案、需要予測、補充 注 16 消費者のわずかな需要変動が、増幅し てメーカーに伝わっていくこと 語 注
