2009年9月号
ケース
ケース
三菱電機 コスト削減
SEPTEMBER 2009 50
コスト削減
三菱電機
生産技術者を推進役に全工場で改善活動
社内巻き込み3年で15%の物流費削減
住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築
施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達
成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
継続できる活動を目指す 三菱電機では、製造現場で業務のムダを徹 底的に排除して生産性向上を図る小集団活動 を「JIT改善活動」と称し、二〇〇三年度 から全社的に取り組んでいる。
モノづくりの スタッフ部門である生産システム本部が主導 し、製造、調達、開発、設計の各部門で改 善を進めてきた。
〇六年度からその対象を物流現場にも拡大 した。
同本部のロジスティクス部が推進役と なり、全工場で「物流JIT改善活動」をス タートさせた。
生産管理技術を活用して、現 場の実態や課題の把握、計画、進捗、実績の 共有など、さまざまな「見える化」を実践し ながら効率化を進めている。
三菱電機は事業本部制をとり、事業本部 が製造・販売・物流などすべての事業活動を 束ねて、物流コストも含めた損益管理に責任 を負っている。
各事業本部の下部組織として、 製品ごとに事業を統括する本社事業部を置い ている。
各製作所(工場)も、事業本部の傘 下にある。
本社事業部の営業とは別に、工場にも「工 場営業」と呼ぶ同社独特の営業部隊を設けて いる。
本社営業はマーケティング活動や顧客 への販売活動を行う。
これに対し工場営業は、 事業部の受注した商品を生産して顧客に届け るまでをフォローする。
受注生産品であれば、事業部の指示のもと、 工場の営業が製品の仕様書の内容を開発・設 計、資材調達、製造、出荷などの各部門に 展開し、納入までのスケジュールを管理する。
その一貫として工場の営業は、完成品を顧客 に届けるまでの販売物流の管理も担当してい る。
家電品など量産品の配送センターへの在 庫配分を決めるのも工場営業の役割だ。
販売物流の改善活動も従来は工場営業の 業務課などが担当していた。
本社のロジステ ィクス部からアドバイスを受けて、物流子会 社の三菱電機ロジスティクス(MDL)や協 力物流会社と協力して改善を進める体制だっ た。
しかし、顧客満足の向上を最優先しなけ ればならない立場にある工場の営業にとって、 物流コストの削減は二律背反するテーマだっ た。
工場営業が改善の対象にできる物流プロ セスも限られていた。
そのため改善活動は他 の業務に埋没しがちで、長続きしなかった。
そこにメスを入れるため、本社ロジスティ クス部が主導して、物流JIT改善プロジェ クトを全社で立ち上げた。
当面のコスト削減 だけでなく、物流改善を担う人材を現場で育 2006年に全工場で物流業務改善活動を開始した。
生産技術部門のスタッフをリーダーに起用。
生産管 理技術を活用して物流現場の実態や課題把握・分 析し、効率化を進めている。
3年間で15%の物流費 削減を実現した。
活動を継続することで物流の人材 育成も狙っている。
菊谷純生産システム本部ロジ スティクス部部長 51 SEPTEMBER 2009 成し、活動が停滞せずに継続する環境を整え ることを狙っている。
その手法も従来の延長 ではなく、工場の業務全体を視野に入れ、技 術的なアプローチで?見える化?を行うとい う、より質の高い活動を目指している。
そのために工場の営業ではなく、工場に配 属されている生産技術部門の技術者を活動リ ーダーに起用した。
工場内での日常的な物流 管理業務は従来どおり工場の営業が担当する が、物流改善活動を推進するのは生産技術部 門の役割として明確に位置づけた。
生産技術部門の担当者は通常は各工場で製 造の技術支援や原価低減活動の支援などを行 っている。
〇三年にスタートした製造分野の JIT改善活動でも、生産技術担当者がけ ん引役となり、作業工数や材料の使用量削減、 省スペース化などを実現させている。
同様に 物流現場でも、生産技術部門の持つIE(イ ンダストリアル・エンジニアリング)の技術を 活用し、設計や製造工程と連携したトータル の活動に発展させることを期待した。
物流改善の仲間をつくる プロジェクトは具体的には次のような組織 体制をとった。
本社のロジスティクス部長が プロジェクト全体の指揮官となり、各事業本 部に「物流管理責任者」を置いた。
さらにそ れぞれの現場で改善活動のリーダーとなる「物 流キーマン」を、各工場の生産技術部門から 選出した。
これまで生産技術部門のメンバーが製品完 成後の販売物流に関与したことはほとんどな かった。
現場は業務委託先に任せ切りで、物 流への関心も低かった。
そこでロジスティク ス部ではまず、物流キーマンたちを対象とし た研修会を催した。
彼らに物流の基礎知識を 習得させて、最適輸送手段の選択が物流コス トを左右する大きな要素であることなどを理 解させた。
次のステップでは?見える化?の第一歩と して、特定の製品を題材にとり、受注してか らユーザーに届けるまでの「バリューストリー ム・マップ」を作成させた。
現状のプロセス のどこにムダがあるのか、何がムダの原因で、 改善するために何が必要か、どんな制約があ るかなど、マップをもとにキーマンたちがデ ィスカッションを重ねた。
議論が暗礁に乗り上げるとロジスティクス部 のメンバーが具体的な解決方法をアドバイス する。
こうした機会を通じてロジスティクス部 門とキーマンたちが共通の言葉で物流問題を 語りあえる土壌ができあがっていった。
一連 の研修を菊谷純ロジスティクス部長は「我々 にとっては、ともに物流改善を進めていく仲 間をつくることにほかならなかった」と振り 返る。
キーマンたちは研修でそれぞれの課題を認 識したうえで、自分の工場に戻り、改善活動 を開始した。
現場の作業領域を大きく三つに 分け、倉庫内の保管・入出庫業務を改善する 「倉庫内JIT活動」、輸送を効率化する「輸 送費削減活動」、包装作業の生産性を上げる 「包装現場JIT活動」の各ワーキンググルー プ(WG)を組織した。
WGには生産技術担当者のほか関連する業 務の担当者も参加させた。
庫内作業の改善に は入出庫指示の仕方や作業のやり方に関わっ ている製造や営業部門、業務を受託している MDLの担当者などが参加した。
同様に輸送 費削減には輸送単位を決める営業部門、包装 作業改善には資材や製造部門などからメンバ ーが加わった。
作業改善のほか、「開発包装VA活動」と 名付けたWGも設けた。
工場で包装設計を担 当する設計部門からキーマンを選んだ。
物流 効率化の視点で包装設計を見直すことが狙い だ。
従来は包装のサイズが数センチ合わない ためにトラックやコンテナへの積載率が著しく 悪くなるといったことが少なくなかった。
改善の糸口を探るため、まずは物流の実態 把握から着手した。
一日の作業量やトラック の積載率、コストなどのデータを取り、分析 を行った。
そこから問題点を抽出して改善の ターゲットと目標を決め、活動計画を立てた。
その内容はもちろん、計画目標に対する進 捗や実績、活動の成果などが、誰でも一目で わかるようなツールを作ることにした。
見え る化を徹底することで活動のモチベーション を高める効果を狙った。
例えば、輸送計画の見直しによって積載率 SEPTEMBER 2009 52 が何ポイント上がり、物流コストがいくら減 ったというように成果を具体的に示す。
する と一人一人が工場の損益にどれだけ寄与でき るかを意識しながら活動に取り組むようにな り、目標達成への意欲が増す。
包装設計の担当者であれば、製造原価を いくら低減できたかだけでなく、トラックを 何台減らせたかという点からも評価されるよ うになる。
また工場長にも物流の実態や改善 活動の進捗状況が手に取るように分かるため、 叱咤激励の指示が飛ぶようになり現場の士気 が上がる。
ロジスティクス部は、改善のモチベーショ ンを持続させるための仕掛けも用意した。
ロ ジスティクス部長が外部のコンサルタントを 同行して一日がかりで工場長とともに現場を 巡回し、活動の評価や提案を行った。
ロジス ティクス部のメンバーも定期的に工場を回り、 キーマンと改善方法について議論した。
さらにキーマン同士が互いに刺激し合える よう、情報交換会を年に四回主催した。
包装 キーマン向けには技術向上のための「実践改 善会」を設けた。
持ち回りで各工場に集まり、 特定の製品の包装設計をたたき台に改善案を 出し合う。
キーマンが他工場の改善事例を自 工場にも取り入れることにより、横への展開 が進むことを期待したものだ。
活動は基本的に各工場の自主性に委ねた。
ロジスティクス部が活動の成果を数値化した り、工場間で成果を比較したりすることもな ったという。
ルームエアコンの工場では、製品そのもの の小型化に取り組んだ。
エアコンの室外機を リニューアルする際に開発段階から保管や輸 送効率を考慮して設計を行い、従来の機種よ りも奥行きを五九ミリ、幅を一三一ミリ、高 さを一〇ミリ短縮した。
この結果、一台のト ラックへの積載数量が一四〇台から一七〇台 に増え、積載率は二〇%アップした。
従来は静岡の工場から佐賀の物流拠点まで 七〇〇台の室外機を大型トラック五台で運ん でいたが、製品の小型化により台数を四台に 減らすことができた。
さらに同じルートでト ラックから三一フィートコンテナを使った鉄道 輸送へモーダルシフトを進め、CO2排出量を かった。
「まずは物流を効率化すれば収益も改 善することに気づいてもらう。
その後はどう すれば儲かるか(コストが減るか)を我々が アドバイスする。
そして現場のやる気を鼓舞 し、活動が停滞しないようにもり立てていく。
その繰り返しだった」と菊谷部長は説明する。
製品を小型化し積載率アップ 一連の活動から、物流コストの削減や環境 負荷を軽減する、いくつかの成功事例が生ま れた。
例えば電子機器の工場では包装設計を見直 して、材料の使用量や保管スペースを大幅に 減らした。
この製品は突起物が多い構造にな っているため、輸送中の振動などでダメージ を受けないように突起部分を浮かした状態で 包装しなければならない。
従来は包装箱の中 に段ボール板を何層も重ね、製品の形にくり ぬいた形状の包装材を使用していた。
この形 のまま工場に搬入されるため、資材倉庫でか なりの保管スペースを占有していた。
そこで包装箱自体に強度を持たせ、段ボー ル板を使わなくても製品を支えることができる ように包装箱を組み立て、突起部分を浮かし た状態で包装する設計にした。
これによって、 収納や開梱の作業性を損なうことなく、包装 材の使用量を三七%、包装コストを四六%削 減できた。
資材倉庫では包装箱を組み立てる 前の一枚のシートの状態で保管ができ、従来 の数十分の一の保管スペースですむようにな 《改善前》《改善後》 53 SEPTEMBER 2009 担の方法や輸送期間中にトラブルが発生した 場合の対応などについて工場間の合意がいる ため、実現が難しかった。
工場のキーマンが 架け橋となることで共同化を検討する環境が 整った。
三年で物流費一五%削減 この物流JIT改善活動により三菱電機で は、〇六年度から〇八年度までの三年間に物 流費を一五%削減することができた。
〇六年 のスタート時にキーマンを務めたメンバーの多 くは異動で代替わりしたが、後任のキーマン によって工場の活動は継続されている。
ロジスティクス部では新しいキーマンやワー キンググループのメンバーを育成するために毎 年研修会を開いている。
今年の春も各地の工 場から八〇人余りが参加した。
「ローテーショ ンで人が代わっても、工場のなかに物流改善 を担当する部門を設けたことで、その組織に 対し支援を行い、活動を継続することができ た。
このやり方で間違っていなかったと思う」 と菊谷部長は満足げだ。
〇七年度からは物流JIT改善活動を国内 のグループ会社にも拡大している。
会社ごと にキーマンを置いて三菱電機のロジスティクス 部が研修・指導を行い、各社で倉庫・輸送・ 包装のなかから事業形態に合ったテーマを選 び、ワーキンググループにメンバーを集めて活 動を行っている。
配送センターなど工場以外の物流現場(フ ィールド)でも、センターを運営するMDL と共同でJIT改善活動を進めている。
生産 システム本部に属する生産技術センターのス タッフがフィールドの倉庫に一定期間駐在し て活動を指導し、成果をあげた後に、MDL の物流技術部のメンバーが引き継ぎ、同じ改 善手法を全国のフィールドで展開している。
今後は海外の関係会社へも活動を広げる。
今年中にモデル工場を選んでデータ収集など を開始し、来年度から順次ほかの工場へ拡大 する計画だ。
三菱電機は二〇二一年を目標年度とする環 境ビジョンを策定し、これに向けて今年度か ら第六次環境計画をスタートした。
そのなか で販売物流によるCO2排出総量を二〇一一 年度に〇八年度比で三%削減する目標を掲げ ている。
包装材の使用量については一〇%の 削減をめざしている。
今後の物流JIT物流活動はこれを目標と し、車両台数の削減やモーダルシフト、共同 輸送の推進、リターナブル容器の拡大などに 取り組む。
菊谷部長は「物流にはムダがたくさん残っ ている。
事業本部間やグループ企業間の共同 輸送にもまだ本格的に手がつけられていない。
JIT活動でいろいろなデータが取れるよう になったので、それを集約して共同輸送など もっと踏み込んだ提案をしていきたい」と話 している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 八七%削減することができた。
キーマン同士の情報共有をきっかけに国際 間輸送の共同化が実現した例もある。
別々の 製品を生産する二つの工場(A工場とB工場) で、米国内の同じ販売会社向けに製品を輸出 していることがわかった。
A工場からは海上コンテナで月に四回出荷 し、平均積載率が七〇%だった。
一方、B 工場からは月に一回で積載率は五〇%と低か った。
話し合いにより、B工場の製品をA 工場へ搬入していっしょにバンニングし、二 工場の製品をコンテナで混載輸送することに した。
その結果、積載率は八〇%にアップ した。
従来は同じ三菱電機の工場であっても国際 間輸送を共同化する発想はなかった。
費用分 製品のコンパクト化 ルームエアコンの室外機を小型化! 373×930×594mm 314×799×584mm 20% 小型化 奥行を 59 ?、幅を 131 ?、高さを 10 ? 短縮!
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
継続できる活動を目指す 三菱電機では、製造現場で業務のムダを徹 底的に排除して生産性向上を図る小集団活動 を「JIT改善活動」と称し、二〇〇三年度 から全社的に取り組んでいる。
モノづくりの スタッフ部門である生産システム本部が主導 し、製造、調達、開発、設計の各部門で改 善を進めてきた。
〇六年度からその対象を物流現場にも拡大 した。
同本部のロジスティクス部が推進役と なり、全工場で「物流JIT改善活動」をス タートさせた。
生産管理技術を活用して、現 場の実態や課題の把握、計画、進捗、実績の 共有など、さまざまな「見える化」を実践し ながら効率化を進めている。
三菱電機は事業本部制をとり、事業本部 が製造・販売・物流などすべての事業活動を 束ねて、物流コストも含めた損益管理に責任 を負っている。
各事業本部の下部組織として、 製品ごとに事業を統括する本社事業部を置い ている。
各製作所(工場)も、事業本部の傘 下にある。
本社事業部の営業とは別に、工場にも「工 場営業」と呼ぶ同社独特の営業部隊を設けて いる。
本社営業はマーケティング活動や顧客 への販売活動を行う。
これに対し工場営業は、 事業部の受注した商品を生産して顧客に届け るまでをフォローする。
受注生産品であれば、事業部の指示のもと、 工場の営業が製品の仕様書の内容を開発・設 計、資材調達、製造、出荷などの各部門に 展開し、納入までのスケジュールを管理する。
その一貫として工場の営業は、完成品を顧客 に届けるまでの販売物流の管理も担当してい る。
家電品など量産品の配送センターへの在 庫配分を決めるのも工場営業の役割だ。
販売物流の改善活動も従来は工場営業の 業務課などが担当していた。
本社のロジステ ィクス部からアドバイスを受けて、物流子会 社の三菱電機ロジスティクス(MDL)や協 力物流会社と協力して改善を進める体制だっ た。
しかし、顧客満足の向上を最優先しなけ ればならない立場にある工場の営業にとって、 物流コストの削減は二律背反するテーマだっ た。
工場営業が改善の対象にできる物流プロ セスも限られていた。
そのため改善活動は他 の業務に埋没しがちで、長続きしなかった。
そこにメスを入れるため、本社ロジスティ クス部が主導して、物流JIT改善プロジェ クトを全社で立ち上げた。
当面のコスト削減 だけでなく、物流改善を担う人材を現場で育 2006年に全工場で物流業務改善活動を開始した。
生産技術部門のスタッフをリーダーに起用。
生産管 理技術を活用して物流現場の実態や課題把握・分 析し、効率化を進めている。
3年間で15%の物流費 削減を実現した。
活動を継続することで物流の人材 育成も狙っている。
菊谷純生産システム本部ロジ スティクス部部長 51 SEPTEMBER 2009 成し、活動が停滞せずに継続する環境を整え ることを狙っている。
その手法も従来の延長 ではなく、工場の業務全体を視野に入れ、技 術的なアプローチで?見える化?を行うとい う、より質の高い活動を目指している。
そのために工場の営業ではなく、工場に配 属されている生産技術部門の技術者を活動リ ーダーに起用した。
工場内での日常的な物流 管理業務は従来どおり工場の営業が担当する が、物流改善活動を推進するのは生産技術部 門の役割として明確に位置づけた。
生産技術部門の担当者は通常は各工場で製 造の技術支援や原価低減活動の支援などを行 っている。
〇三年にスタートした製造分野の JIT改善活動でも、生産技術担当者がけ ん引役となり、作業工数や材料の使用量削減、 省スペース化などを実現させている。
同様に 物流現場でも、生産技術部門の持つIE(イ ンダストリアル・エンジニアリング)の技術を 活用し、設計や製造工程と連携したトータル の活動に発展させることを期待した。
物流改善の仲間をつくる プロジェクトは具体的には次のような組織 体制をとった。
本社のロジスティクス部長が プロジェクト全体の指揮官となり、各事業本 部に「物流管理責任者」を置いた。
さらにそ れぞれの現場で改善活動のリーダーとなる「物 流キーマン」を、各工場の生産技術部門から 選出した。
これまで生産技術部門のメンバーが製品完 成後の販売物流に関与したことはほとんどな かった。
現場は業務委託先に任せ切りで、物 流への関心も低かった。
そこでロジスティク ス部ではまず、物流キーマンたちを対象とし た研修会を催した。
彼らに物流の基礎知識を 習得させて、最適輸送手段の選択が物流コス トを左右する大きな要素であることなどを理 解させた。
次のステップでは?見える化?の第一歩と して、特定の製品を題材にとり、受注してか らユーザーに届けるまでの「バリューストリー ム・マップ」を作成させた。
現状のプロセス のどこにムダがあるのか、何がムダの原因で、 改善するために何が必要か、どんな制約があ るかなど、マップをもとにキーマンたちがデ ィスカッションを重ねた。
議論が暗礁に乗り上げるとロジスティクス部 のメンバーが具体的な解決方法をアドバイス する。
こうした機会を通じてロジスティクス部 門とキーマンたちが共通の言葉で物流問題を 語りあえる土壌ができあがっていった。
一連 の研修を菊谷純ロジスティクス部長は「我々 にとっては、ともに物流改善を進めていく仲 間をつくることにほかならなかった」と振り 返る。
キーマンたちは研修でそれぞれの課題を認 識したうえで、自分の工場に戻り、改善活動 を開始した。
現場の作業領域を大きく三つに 分け、倉庫内の保管・入出庫業務を改善する 「倉庫内JIT活動」、輸送を効率化する「輸 送費削減活動」、包装作業の生産性を上げる 「包装現場JIT活動」の各ワーキンググルー プ(WG)を組織した。
WGには生産技術担当者のほか関連する業 務の担当者も参加させた。
庫内作業の改善に は入出庫指示の仕方や作業のやり方に関わっ ている製造や営業部門、業務を受託している MDLの担当者などが参加した。
同様に輸送 費削減には輸送単位を決める営業部門、包装 作業改善には資材や製造部門などからメンバ ーが加わった。
作業改善のほか、「開発包装VA活動」と 名付けたWGも設けた。
工場で包装設計を担 当する設計部門からキーマンを選んだ。
物流 効率化の視点で包装設計を見直すことが狙い だ。
従来は包装のサイズが数センチ合わない ためにトラックやコンテナへの積載率が著しく 悪くなるといったことが少なくなかった。
改善の糸口を探るため、まずは物流の実態 把握から着手した。
一日の作業量やトラック の積載率、コストなどのデータを取り、分析 を行った。
そこから問題点を抽出して改善の ターゲットと目標を決め、活動計画を立てた。
その内容はもちろん、計画目標に対する進 捗や実績、活動の成果などが、誰でも一目で わかるようなツールを作ることにした。
見え る化を徹底することで活動のモチベーション を高める効果を狙った。
例えば、輸送計画の見直しによって積載率 SEPTEMBER 2009 52 が何ポイント上がり、物流コストがいくら減 ったというように成果を具体的に示す。
する と一人一人が工場の損益にどれだけ寄与でき るかを意識しながら活動に取り組むようにな り、目標達成への意欲が増す。
包装設計の担当者であれば、製造原価を いくら低減できたかだけでなく、トラックを 何台減らせたかという点からも評価されるよ うになる。
また工場長にも物流の実態や改善 活動の進捗状況が手に取るように分かるため、 叱咤激励の指示が飛ぶようになり現場の士気 が上がる。
ロジスティクス部は、改善のモチベーショ ンを持続させるための仕掛けも用意した。
ロ ジスティクス部長が外部のコンサルタントを 同行して一日がかりで工場長とともに現場を 巡回し、活動の評価や提案を行った。
ロジス ティクス部のメンバーも定期的に工場を回り、 キーマンと改善方法について議論した。
さらにキーマン同士が互いに刺激し合える よう、情報交換会を年に四回主催した。
包装 キーマン向けには技術向上のための「実践改 善会」を設けた。
持ち回りで各工場に集まり、 特定の製品の包装設計をたたき台に改善案を 出し合う。
キーマンが他工場の改善事例を自 工場にも取り入れることにより、横への展開 が進むことを期待したものだ。
活動は基本的に各工場の自主性に委ねた。
ロジスティクス部が活動の成果を数値化した り、工場間で成果を比較したりすることもな ったという。
ルームエアコンの工場では、製品そのもの の小型化に取り組んだ。
エアコンの室外機を リニューアルする際に開発段階から保管や輸 送効率を考慮して設計を行い、従来の機種よ りも奥行きを五九ミリ、幅を一三一ミリ、高 さを一〇ミリ短縮した。
この結果、一台のト ラックへの積載数量が一四〇台から一七〇台 に増え、積載率は二〇%アップした。
従来は静岡の工場から佐賀の物流拠点まで 七〇〇台の室外機を大型トラック五台で運ん でいたが、製品の小型化により台数を四台に 減らすことができた。
さらに同じルートでト ラックから三一フィートコンテナを使った鉄道 輸送へモーダルシフトを進め、CO2排出量を かった。
「まずは物流を効率化すれば収益も改 善することに気づいてもらう。
その後はどう すれば儲かるか(コストが減るか)を我々が アドバイスする。
そして現場のやる気を鼓舞 し、活動が停滞しないようにもり立てていく。
その繰り返しだった」と菊谷部長は説明する。
製品を小型化し積載率アップ 一連の活動から、物流コストの削減や環境 負荷を軽減する、いくつかの成功事例が生ま れた。
例えば電子機器の工場では包装設計を見直 して、材料の使用量や保管スペースを大幅に 減らした。
この製品は突起物が多い構造にな っているため、輸送中の振動などでダメージ を受けないように突起部分を浮かした状態で 包装しなければならない。
従来は包装箱の中 に段ボール板を何層も重ね、製品の形にくり ぬいた形状の包装材を使用していた。
この形 のまま工場に搬入されるため、資材倉庫でか なりの保管スペースを占有していた。
そこで包装箱自体に強度を持たせ、段ボー ル板を使わなくても製品を支えることができる ように包装箱を組み立て、突起部分を浮かし た状態で包装する設計にした。
これによって、 収納や開梱の作業性を損なうことなく、包装 材の使用量を三七%、包装コストを四六%削 減できた。
資材倉庫では包装箱を組み立てる 前の一枚のシートの状態で保管ができ、従来 の数十分の一の保管スペースですむようにな 《改善前》《改善後》 53 SEPTEMBER 2009 担の方法や輸送期間中にトラブルが発生した 場合の対応などについて工場間の合意がいる ため、実現が難しかった。
工場のキーマンが 架け橋となることで共同化を検討する環境が 整った。
三年で物流費一五%削減 この物流JIT改善活動により三菱電機で は、〇六年度から〇八年度までの三年間に物 流費を一五%削減することができた。
〇六年 のスタート時にキーマンを務めたメンバーの多 くは異動で代替わりしたが、後任のキーマン によって工場の活動は継続されている。
ロジスティクス部では新しいキーマンやワー キンググループのメンバーを育成するために毎 年研修会を開いている。
今年の春も各地の工 場から八〇人余りが参加した。
「ローテーショ ンで人が代わっても、工場のなかに物流改善 を担当する部門を設けたことで、その組織に 対し支援を行い、活動を継続することができ た。
このやり方で間違っていなかったと思う」 と菊谷部長は満足げだ。
〇七年度からは物流JIT改善活動を国内 のグループ会社にも拡大している。
会社ごと にキーマンを置いて三菱電機のロジスティクス 部が研修・指導を行い、各社で倉庫・輸送・ 包装のなかから事業形態に合ったテーマを選 び、ワーキンググループにメンバーを集めて活 動を行っている。
配送センターなど工場以外の物流現場(フ ィールド)でも、センターを運営するMDL と共同でJIT改善活動を進めている。
生産 システム本部に属する生産技術センターのス タッフがフィールドの倉庫に一定期間駐在し て活動を指導し、成果をあげた後に、MDL の物流技術部のメンバーが引き継ぎ、同じ改 善手法を全国のフィールドで展開している。
今後は海外の関係会社へも活動を広げる。
今年中にモデル工場を選んでデータ収集など を開始し、来年度から順次ほかの工場へ拡大 する計画だ。
三菱電機は二〇二一年を目標年度とする環 境ビジョンを策定し、これに向けて今年度か ら第六次環境計画をスタートした。
そのなか で販売物流によるCO2排出総量を二〇一一 年度に〇八年度比で三%削減する目標を掲げ ている。
包装材の使用量については一〇%の 削減をめざしている。
今後の物流JIT物流活動はこれを目標と し、車両台数の削減やモーダルシフト、共同 輸送の推進、リターナブル容器の拡大などに 取り組む。
菊谷部長は「物流にはムダがたくさん残っ ている。
事業本部間やグループ企業間の共同 輸送にもまだ本格的に手がつけられていない。
JIT活動でいろいろなデータが取れるよう になったので、それを集約して共同輸送など もっと踏み込んだ提案をしていきたい」と話 している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 八七%削減することができた。
キーマン同士の情報共有をきっかけに国際 間輸送の共同化が実現した例もある。
別々の 製品を生産する二つの工場(A工場とB工場) で、米国内の同じ販売会社向けに製品を輸出 していることがわかった。
A工場からは海上コンテナで月に四回出荷 し、平均積載率が七〇%だった。
一方、B 工場からは月に一回で積載率は五〇%と低か った。
話し合いにより、B工場の製品をA 工場へ搬入していっしょにバンニングし、二 工場の製品をコンテナで混載輸送することに した。
その結果、積載率は八〇%にアップ した。
従来は同じ三菱電機の工場であっても国際 間輸送を共同化する発想はなかった。
費用分 製品のコンパクト化 ルームエアコンの室外機を小型化! 373×930×594mm 314×799×584mm 20% 小型化 奥行を 59 ?、幅を 131 ?、高さを 10 ? 短縮!
