2009年9月号
物流業のリスクマネジメント
物流業のリスクマネジメント
第8回 グローバルSCM のKPI
SEPTEMBER 2009 86
宇野修 ロジスティクスバンク代表
物流業のリスクマネジメント
物流業のリスクマネジメント
「スマートゴール」を設定する
「スマートゴール(SMART GOAL)」とい
う言葉をご存じだろうか。
明確で(Specific)、 測定可能で(Measurable)、達成可能 (Achievable)かつ現実的な(Realistic)、期限 のある(Time-bound)目標(Goal)を意味し ている。
そしてスマートゴールの測定に必要と なる指標のことを「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)」という。
SCMにKPIを導入し、品質、コスト、 生産性を管理している企業はまだ少ない。
しか し、KPIの導入なくして、サプライチェーン・ プロセスの改善は有り得ない。
時代は商品や価格の競争から、サプライチェ ーン間の競争に移り変わっている。
社内だけで なく社外のパートナーを含めたサプライチェー ン全体を強化をしないと生き残れない。
KPI を導入し、サプライチェーンの競争力を強化す る時代に突入しているということに早く気づく 必要がある。
KPIの測定は、サプライチェーン全体とノ ード(node)/部分の二つに分けて考えられる。
サプライチェーン全体のKPIには「スループ ット」を使用する。
スループットとは、売り上 げから、在庫費用や支払い物流費などの変動費 を引いた「直接利益」のこと。
SCMのベー スとなっている制約理論(TOC:Theory Of Constrains)の核となる指標だ。
従来の利益の考え方と違って、スループット は「時間当たりの利益」に着目する。
在庫には 仕入れから生産、販売までのリードタイムが反 映される。
これを変動費と一緒に売り上げから 差し引くことで利益の考え方に時間の概念を持 ち込んでいるのが特徴だ。
スループットを最大 化することがサプライチェーン全体の利益を最 大化することになる。
サプライチェーン上のボトルネックを解消し 全体のパフォーマンスを向上することで、スル ープットは増大する。
そのためには各ノードを 担当する荷主企業およびロジスティクス・サプ ライヤー各部門のパフォーマンスを測定するK PIを設定して継続的改善を進めると同時に、 部門間のコミュニケーションとコラボレーショ ン(Collaboration:協働)を強化することが 要求される。
以下に本稿では、荷主企業とロジスティクス サプライヤーそれぞれのKPIを具体的に示し、 それがなぜ必要なのかを解説することにする。
荷主企業のKPI 一般的な荷主企業各部門のサプライチェー ン・プロセスを図1に示した。
この図の通り、 荷主のサプライチェーンは通常、?顧客ニー ズの明確化、?製品の設計・開発、?原材料 の調達、?生産工程、?営業、?工場内物流、 ?倉庫、?顧客という八つのプロセスから構成 されている。
このうちロジスティクス部は通常、 ?工場内物流から?倉庫、そして?顧客への納 入までを担当する。
図2は荷主の部門別KPIの具体例を示し たものである。
KPIは数多く考えられるが、 《第8回》 グローバルSCM のKPI 原材料の調達から顧客への納品に至るサプライチ ェーン全体のパフォーマンスは「スループット」と 呼ばれる評価指標で管理する。
それをサプライチェ ーンの各プロセスの担当部門のKPI に落とし込む。
それがSCM の基本的なアプローチだ。
しかし、実 行している企業はまだ少ない。
宇野 修(うのおさむ) 1946 年生まれ。
青山学院大学卒。
英国航空、フライングタイガー航空、 エア・カナダ、ジャパン・シェンカー、 エクセル・ジャパンを経て、2008 年にロジスティクスバンクを設立、 代表に就任。
現在に至る。
http://www.e-logisticsbank.com/、 e-mail:uno-osamu@e-logistics bank.com 87 SEPTEMBER 2009 ここではなるべく測定しやすいKPIを選択し た。
ただし、前述の通り、特定の部門のKP Iが改善されるだけでは意味がない。
そのこと を例を挙げて解説することにしよう。
図2には購買部のKPIの一つとして、「? 購買・調達に要する人時」が挙がっている。
し かし、これだけを改善しても生産工程が従来と 変わっていなければ、サプライチェーン全体の 「スループット・タイム」は短縮できない。
営 業やロジスティクスも同様だ。
全体のスループ ット・タイムの足を引っ張っているプロセスが ボトルネックで、そこを活用強化することが制 約理論のアプローチだ。
このような部門別のKPIおよびプロセス全 体のKPIを実現することに加えて、別の角度 から評価されるKPIがあることも忘れてはな らない。
「株主からみたKPI」と「顧客から みたKPI」である。
「株主からみたKPI」には、会社全体の業 績評価指標であるROA(総資産利益率)、R OE(株主資本利益率)、ROI(投資資本利 益率)、EVA(経済的付加価値)などがある。
「顧客からみたKPI」は、顧客満足度に代 表される。
顧客満足度は顧客満足度調査によ り測定できる。
「ISO9001品質マネジメ ントシステム・2000年版」でもその調査を 実施することが求められている。
もちろん商品 価格も顧客が注目するKPIである。
しかし、これらの指標とSCMの指標は矛盾 するものではない。
スループットの増大はRO AやROEを押し上げ、全業務のプロセスコス 図1 サプライチェーンの荷主のKPI ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?工場内物流 *梱包、ラベル、 保管受注処理 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?製品の設計・開発 ?原材料の調達 ?生産工程 ?商品販売 ?工場内物流 ?フォワーダー倉庫 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図2 荷主の部門別KPI 活動 部門 KPI マーケティング部 のKPI 設計・開発部の KPI ?原材料の調達 *調達物流購買部のKPI ?生産工程生産管理部のKPI ?営業(商品販売) 営業部のKPI ロジスティクス部 のKPI ロジスティクス部 のKPI ?顧客 ?1 時間当たりの顧客調査件数 ?調査開始からニーズ明確化までに要する人時(1 人が 要する時間) ?1 時間当たりの商品設計・開発数 ?開発商品の販売率 ?商品開発に要する人事 ?購買品目の価値分析・選択基準設定およびその実 行率(%) ?調達頻度の削減および物流コストの削減(金額と%) ?サプライヤーの評価と数の削減(件数) ?製造コストに対する購買コストの管理(%) ?販売単価に対する購買コストの管理(%) ?購買・調達に要する人時 ?商品別生産回数と生産コスト ?一定期間の生産量および生産金額 ?生産工程のムリ、ムダ、ムラの発見と是正率 ?生産量と在庫量の割合 ?生産に要する人時 ?訪問顧客数と受注顧客数 ?売上に対する営業マン当たりのロジスティクス・コスト ?営業マン当たりの売上 ?営業マン当たりのクレーム処理時間 ?営業に要する人時 ?1 梱包当たりの梱包・保管コスト ?従業員当たりの作業時間・作業コスト ?従業員当たりの受注数 ?顧客当たりの受注時間(人時) ?全貨物の誤出荷率 ?商品当たりの在庫コスト ?商品当たりの輸配送コスト ?kg、トラック、従業員当たりの在庫・輸配送コスト ?輸送時業者数、輸送便数の標準化 ?全貨物のクレーム件数 ?ROA (Return on Asset:総資産利益率) ?ROE(Return on Equity:株主資本利益率) ?RO(I Return on Investment:投資資本利益率) ?EVA(economic Value Added:経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?新規顧客売上高比率 マーケティング部 設計・開発部 購買部 ロジスティクス部 ロジスティクス部 生産管理部 営業部 ?製品の設計・開発 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI SEPTEMBER 2009 88 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント トは商品の値段に反映される。
部門別およびプ ロセス全体のKPIの実行が「株主からみたK PI」や「顧客からみたKPI」を刺激するの である。
3PLのKPI 荷主企業の各部門と同様に、サプライチェー ン・プロセスを担うロジスティクス・サプライ ヤーにも個別のKPIがある。
図3は航空輸送のサプライチェーンのプロセ スを示したものである。
トラック会社による工 場集荷に始まり、フォワーダーが貨物を顧客に 届けるまでのプロセスを例にとっている。
この プロセスの中には、トラック会社、フォワーダー、 航空会社というサプライヤーが存在する。
各サ プライヤーによるKPIの改善が、サプライチ ェーン全体の競争力を強化する。
もちろん荷主のKPIと同様に、一つのサプ ライヤーのKPIが良くても、他のサプライヤ ーのKPIが改善しなければ全体は良くならな い。
サプライヤー間のコラボレーション、コミ ュニケーションのシステムが必要となる。
具体的なKPIの事例を図4に示した。
すべ てのKPIが、品質改善、コスト削減、生産 性向上と結びついている。
例えば「貨物集荷率」 を一〇〇%にすれば、サービス品質の向上と同 時に、積み残し作業が不要になってコストが下 がる。
つまり、生産性が向上する。
以下に筆者が長く経験した国際フォワーダー を例にとって、KPIの導入とその運用方法を 解説しよう。
フォワーダーの仕事(活動)のプ 図3 サプライチェーン・ロジスティクスのKPI ?工場からの集荷 ?目的地空港上屋 *仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?工場からの集荷 ?フォワーダー倉庫 ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 ?航空会社の上屋 へ保管 ?航空機による輸送 ?目的地空港上屋で の仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図4 ロジスティクス・サプライヤーのKPI 活動 サプライヤー KPI トラック会社 のKPI フォワーダーの KPI ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 通関部・ロジス ティクス部のKPI ?航空会社上屋へ 保管航空会社のKPI ?航空機による輸送航空会社運航部 のKPI 航空会社上屋 のKPI フォワーダー のKPI ?顧客 ?貨物集荷率(積残率) ?損傷貨物発見率 ?トラック待機時間の短縮 ?貨物積込時間の短縮 ?誤入庫・誤出荷率の減少 ?貨物パレタイズ時間に短縮 ?混載仕立て時間の短縮 ?クロスラベルの削減 ?申告当たりの通関人時 ?航空会社搬入時間の短縮 ?搬入時損傷貨物の発見率 ?パレタイズ時間の短縮 ?目的地別パレットの誤出荷率 ?特殊貨物(危険品など)搭載チェックリストの実行率 ?ローディング・プランとアクチャル・ローディングの誤 差管理 ?貨物搭載時間の短縮 ?仕分時間の短縮 ?ダメージ貨物の発見率 ?保管時間の短縮 ?在庫回転率の向上 ?商品・kg 当たりの在庫コスト削減 ?輸配送の誤出荷率の低下 ?商品・kg 当たりの輸配送コスト削減 ?トラック当たりの輸配送コスト削減 ?積込・積降時のダメージ貨物発見率 ?在庫管理に要する人時 ?輸配送に要する人時 ?配達納期順守率 ?トラック待機時間の短縮 ?ROA (総資産利益率) ?ROE(株主資本利益率) ?RO(I 投資資本利益率) ?EVA(経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?配達納期順守率 トラック会社 フォワーダー 通関部・ ロジスティクス部 航空会社上屋 フォワーダー 航空会社 航空会社運航部 ?フォワーダー倉庫 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI 89 SEPTEMBER 2009 始する必要がある。
キログラム当たりのマージ ンを上げるには、顧客への販売能力と商品力が 要求される。
セールスマン・シップと商品開発 力である。
図7は営業部門以外のKPIの例を示した ものである。
仕入値や作業の生産性管理が中心 で低コスト経営を実現するためのKPIがほと んどである。
各部門がこれらのKPIを管理し、 目標達成することが相乗効果を生み経営品質を 向上させるのである。
営業部門のKPIとして図6のような数多く の指標が設定できる。
これらの中で、自社にと って最も適切な指標をKPIとして選択する。
国際フォワーダーの営業マンの売り物は「H AWB(ハウス・エアウエイビル:顧客用の運 送状)」である。
HAWBの裏面に記された約 款に基づいて、顧客と契約することが営業マン の役割である。
売上目標を達成するには、HA WBの販売件数を増やすと同時に、HAWB の中身を充実させることである。
HAWBの販売件数は、営業マンの一時間 当たりの生産性、つまり効率販売が重要な指標 になる。
その改善には営業行動の変化が必要と なる。
また重量や一キログラム当たりのマージ ン(売値と買値の差)は大きければ大きいほど 利益が上がる。
重量を増やすには大手顧客を開 ロセスと担当部門を図5に示した。
この図にあ るように航空機スペースの購入から、混載便の 仕立てまでがフォワーダーの仕事である。
KPIを組織内に導入する時の最初のアクシ ョンは、対象部門の既存の業務プロセスを分析 し、プロセス・マップ(業務のフローチャート) を作る作業である。
次に既存のそれぞれのプロ セスが、なぜ必要なのかを明確にする。
既存の 各プロセスが産出する成果物は何かということ である。
国際フォワーダーの営業のプロセスであれば、 核となる成果物・仕事は、売上予算の達成で ある。
売上予算を達成するためには、営業戦略 をつくり、目標を設定し、その目標の達成度を 測定する指標を設定することが必要となる。
そ れが営業部門のKPIとなる。
図5 フォワーダーの仕事(活動)のプロセス ●輸出オペレーション部の仕事 ●輸出オペレーション部のKPI ?航空機スペースの購入 (kg 当たりの買値) ?ロジスティクス・サービスの商 品化(Doorto Door 商品など) ?顧客からの受注活動 *予約 *HAWB の作成 ?商品の販売 *航空、海上、複合輸送 *輸出、輸入 *ロジスティクス ?混載便の仕立 *MAWB の作成 *貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 航空会社へ貨物搬入 ●購買部門の仕事 ●購買部門のKPI ●マーケティング部門の仕事 ●マーケティング部門のKPI ●営業部門の仕事 ●営業部門のKPI ●カスタマーサービス部門の仕事 ●カスタマーサービス部門のKPI 図6 国際フォワーダー営業部門のKPI ?予算に対する売上達成度(金額と%) ?既存顧客の売上予算達成度(金額と%) ?新規顧客の売上達成度(金額と%) ?既存顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?新規顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?既存顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?新規顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?顧客数の開発目標に対する達成度(顧客数と%) ?営業マン一人当たりの売上金額、重量、件数の目標に対する達成度(%) ?営業マン一人当たりの顧客開発数の目標に対する達成度(%) ?1 件のHAWB 販売に要するセールスマン当たりの時間(時間と%) ?1 件のHAWB 重量の目標に対する達成度(重量と%) ?1 件のMAWBに対するHAWBの件数(件数と%) ?1 件のMAWBの重量(重量と%) ?1 件のMAWBのフリーキロ(Free Kg)/ 重量、金額の達成度(%) ?営業マン一人当たりのコスト(人件費と販売費) ?kg 当たりの売上、利益、コストの達成度(%) ?Shipment 当たりの売上、利益、コスト(%) ?セールス・リードの成約率(%) ?営業マン一人当たりの顧客訪問件数と成約率(%) ㉑「Door to Door」、「Door to Airport」、「Airport to Door」、「Airport to Airport」のHAWBの売上目標と達成率(HAWBの件数と%) ㉒部門の通関件数と営業マン一人当たりの件数(件数と%) ㉓部門の通関料と営業マン一人当たりの通関料(料金と%) ㉔部門の集配料および営業マン一人当たりの集配料(料金と%) ㉕部門の保管料および営業マン一人当たりの保管料(料金と%) ㉖部門の危険品売上高と営業マン一人当たりの売上高(金額と%) 図7 国際フォワーダーのKPI ?kg 当たりの買値を10%下げる ?スペース購入にかける部門当たりの購入時間の5%削減 ?航空会社の選択基準と実現度のチェック(%) ?商品開発時間の20%削減 ?開発商品の販売率を10%上げる ?顧客ニーズの調査(1カ月に2回3 時間) 図表6 参照 ?受注からHAWB作成までの時間を短縮する ( 60分から50分へ) ?一人当たりHAWB作成件数(10 件から12 件へ) ?MAWB作成時間の短縮(1 件30 分から20 分へ) ?航空貨物情報のインプットの削減(1件15分から10分へ) ?貨物搬入時間の短縮(60 分から45 分へ) ?混載便の仕立 *MAWBの作成 *航空貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 輸出オペレーション部 主要活動 部門 KPI ?航空機スペースの購入 ?ロジスティクス・サービスの 商品化 ?商品の販売 ?顧客からの受注活動 *HAWBの作成 購買部門 マーケティング部門 営業部門 カスタマーサービス部SEPTEMBER 2009 86 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント 物流業のリスクマネジメント 「スマートゴール」を設定する 「スマートゴール(SMART GOAL)」とい う言葉をご存じだろうか。
明確で(Specific)、 測定可能で(Measurable)、達成可能 (Achievable)かつ現実的な(Realistic)、期限 のある(Time-bound)目標(Goal)を意味し ている。
そしてスマートゴールの測定に必要と なる指標のことを「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)」という。
SCMにKPIを導入し、品質、コスト、 生産性を管理している企業はまだ少ない。
しか し、KPIの導入なくして、サプライチェーン・ プロセスの改善は有り得ない。
時代は商品や価格の競争から、サプライチェ ーン間の競争に移り変わっている。
社内だけで なく社外のパートナーを含めたサプライチェー ン全体を強化をしないと生き残れない。
KPI を導入し、サプライチェーンの競争力を強化す る時代に突入しているということに早く気づく 必要がある。
KPIの測定は、サプライチェーン全体とノ ード(node)/部分の二つに分けて考えられる。
サプライチェーン全体のKPIには「スループ ット」を使用する。
スループットとは、売り上 げから、在庫費用や支払い物流費などの変動費 を引いた「直接利益」のこと。
SCMのベー スとなっている制約理論(TOC:Theory Of Constrains)の核となる指標だ。
従来の利益の考え方と違って、スループット は「時間当たりの利益」に着目する。
在庫には 仕入れから生産、販売までのリードタイムが反 映される。
これを変動費と一緒に売り上げから 差し引くことで利益の考え方に時間の概念を持 ち込んでいるのが特徴だ。
スループットを最大 化することがサプライチェーン全体の利益を最 大化することになる。
サプライチェーン上のボトルネックを解消し 全体のパフォーマンスを向上することで、スル ープットは増大する。
そのためには各ノードを 担当する荷主企業およびロジスティクス・サプ ライヤー各部門のパフォーマンスを測定するK PIを設定して継続的改善を進めると同時に、 部門間のコミュニケーションとコラボレーショ ン(Collaboration:協働)を強化することが 要求される。
以下に本稿では、荷主企業とロジスティクス サプライヤーそれぞれのKPIを具体的に示し、 それがなぜ必要なのかを解説することにする。
荷主企業のKPI 一般的な荷主企業各部門のサプライチェー ン・プロセスを図1に示した。
この図の通り、 荷主のサプライチェーンは通常、?顧客ニー ズの明確化、?製品の設計・開発、?原材料 の調達、?生産工程、?営業、?工場内物流、 ?倉庫、?顧客という八つのプロセスから構成 されている。
このうちロジスティクス部は通常、 ?工場内物流から?倉庫、そして?顧客への納 入までを担当する。
図2は荷主の部門別KPIの具体例を示し たものである。
KPIは数多く考えられるが、 《第8回》 グローバルSCM のKPI 原材料の調達から顧客への納品に至るサプライチ ェーン全体のパフォーマンスは「スループット」と 呼ばれる評価指標で管理する。
それをサプライチェ ーンの各プロセスの担当部門のKPI に落とし込む。
それがSCM の基本的なアプローチだ。
しかし、実 行している企業はまだ少ない。
宇野 修(うのおさむ) 1946 年生まれ。
青山学院大学卒。
英国航空、フライングタイガー航空、 エア・カナダ、ジャパン・シェンカー、 エクセル・ジャパンを経て、2008 年にロジスティクスバンクを設立、 代表に就任。
現在に至る。
http://www.e-logisticsbank.com/、 e-mail:uno-osamu@e-logistics bank.com 87 SEPTEMBER 2009 ここではなるべく測定しやすいKPIを選択し た。
ただし、前述の通り、特定の部門のKP Iが改善されるだけでは意味がない。
そのこと を例を挙げて解説することにしよう。
図2には購買部のKPIの一つとして、「? 購買・調達に要する人時」が挙がっている。
し かし、これだけを改善しても生産工程が従来と 変わっていなければ、サプライチェーン全体の 「スループット・タイム」は短縮できない。
営 業やロジスティクスも同様だ。
全体のスループ ット・タイムの足を引っ張っているプロセスが ボトルネックで、そこを活用強化することが制 約理論のアプローチだ。
このような部門別のKPIおよびプロセス全 体のKPIを実現することに加えて、別の角度 から評価されるKPIがあることも忘れてはな らない。
「株主からみたKPI」と「顧客から みたKPI」である。
「株主からみたKPI」には、会社全体の業 績評価指標であるROA(総資産利益率)、R OE(株主資本利益率)、ROI(投資資本利 益率)、EVA(経済的付加価値)などがある。
「顧客からみたKPI」は、顧客満足度に代 表される。
顧客満足度は顧客満足度調査によ り測定できる。
「ISO9001品質マネジメ ントシステム・2000年版」でもその調査を 実施することが求められている。
もちろん商品 価格も顧客が注目するKPIである。
しかし、これらの指標とSCMの指標は矛盾 するものではない。
スループットの増大はRO AやROEを押し上げ、全業務のプロセスコス 図1 サプライチェーンの荷主のKPI ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?工場内物流 *梱包、ラベル、 保管受注処理 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?製品の設計・開発 ?原材料の調達 ?生産工程 ?商品販売 ?工場内物流 ?フォワーダー倉庫 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図2 荷主の部門別KPI 活動 部門 KPI マーケティング部 のKPI 設計・開発部の KPI ?原材料の調達 *調達物流購買部のKPI ?生産工程生産管理部のKPI ?営業(商品販売) 営業部のKPI ロジスティクス部 のKPI ロジスティクス部 のKPI ?顧客 ?1 時間当たりの顧客調査件数 ?調査開始からニーズ明確化までに要する人時(1 人が 要する時間) ?1 時間当たりの商品設計・開発数 ?開発商品の販売率 ?商品開発に要する人事 ?購買品目の価値分析・選択基準設定およびその実 行率(%) ?調達頻度の削減および物流コストの削減(金額と%) ?サプライヤーの評価と数の削減(件数) ?製造コストに対する購買コストの管理(%) ?販売単価に対する購買コストの管理(%) ?購買・調達に要する人時 ?商品別生産回数と生産コスト ?一定期間の生産量および生産金額 ?生産工程のムリ、ムダ、ムラの発見と是正率 ?生産量と在庫量の割合 ?生産に要する人時 ?訪問顧客数と受注顧客数 ?売上に対する営業マン当たりのロジスティクス・コスト ?営業マン当たりの売上 ?営業マン当たりのクレーム処理時間 ?営業に要する人時 ?1 梱包当たりの梱包・保管コスト ?従業員当たりの作業時間・作業コスト ?従業員当たりの受注数 ?顧客当たりの受注時間(人時) ?全貨物の誤出荷率 ?商品当たりの在庫コスト ?商品当たりの輸配送コスト ?kg、トラック、従業員当たりの在庫・輸配送コスト ?輸送時業者数、輸送便数の標準化 ?全貨物のクレーム件数 ?ROA (Return on Asset:総資産利益率) ?ROE(Return on Equity:株主資本利益率) ?RO(I Return on Investment:投資資本利益率) ?EVA(economic Value Added:経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?新規顧客売上高比率 マーケティング部 設計・開発部 購買部 ロジスティクス部 ロジスティクス部 生産管理部 営業部 ?製品の設計・開発 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI SEPTEMBER 2009 88 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント トは商品の値段に反映される。
部門別およびプ ロセス全体のKPIの実行が「株主からみたK PI」や「顧客からみたKPI」を刺激するの である。
3PLのKPI 荷主企業の各部門と同様に、サプライチェー ン・プロセスを担うロジスティクス・サプライ ヤーにも個別のKPIがある。
図3は航空輸送のサプライチェーンのプロセ スを示したものである。
トラック会社による工 場集荷に始まり、フォワーダーが貨物を顧客に 届けるまでのプロセスを例にとっている。
この プロセスの中には、トラック会社、フォワーダー、 航空会社というサプライヤーが存在する。
各サ プライヤーによるKPIの改善が、サプライチ ェーン全体の競争力を強化する。
もちろん荷主のKPIと同様に、一つのサプ ライヤーのKPIが良くても、他のサプライヤ ーのKPIが改善しなければ全体は良くならな い。
サプライヤー間のコラボレーション、コミ ュニケーションのシステムが必要となる。
具体的なKPIの事例を図4に示した。
すべ てのKPIが、品質改善、コスト削減、生産 性向上と結びついている。
例えば「貨物集荷率」 を一〇〇%にすれば、サービス品質の向上と同 時に、積み残し作業が不要になってコストが下 がる。
つまり、生産性が向上する。
以下に筆者が長く経験した国際フォワーダー を例にとって、KPIの導入とその運用方法を 解説しよう。
フォワーダーの仕事(活動)のプ 図3 サプライチェーン・ロジスティクスのKPI ?工場からの集荷 ?目的地空港上屋 *仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?工場からの集荷 ?フォワーダー倉庫 ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 ?航空会社の上屋 へ保管 ?航空機による輸送 ?目的地空港上屋で の仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図4 ロジスティクス・サプライヤーのKPI 活動 サプライヤー KPI トラック会社 のKPI フォワーダーの KPI ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 通関部・ロジス ティクス部のKPI ?航空会社上屋へ 保管航空会社のKPI ?航空機による輸送航空会社運航部 のKPI 航空会社上屋 のKPI フォワーダー のKPI ?顧客 ?貨物集荷率(積残率) ?損傷貨物発見率 ?トラック待機時間の短縮 ?貨物積込時間の短縮 ?誤入庫・誤出荷率の減少 ?貨物パレタイズ時間に短縮 ?混載仕立て時間の短縮 ?クロスラベルの削減 ?申告当たりの通関人時 ?航空会社搬入時間の短縮 ?搬入時損傷貨物の発見率 ?パレタイズ時間の短縮 ?目的地別パレットの誤出荷率 ?特殊貨物(危険品など)搭載チェックリストの実行率 ?ローディング・プランとアクチャル・ローディングの誤 差管理 ?貨物搭載時間の短縮 ?仕分時間の短縮 ?ダメージ貨物の発見率 ?保管時間の短縮 ?在庫回転率の向上 ?商品・kg 当たりの在庫コスト削減 ?輸配送の誤出荷率の低下 ?商品・kg 当たりの輸配送コスト削減 ?トラック当たりの輸配送コスト削減 ?積込・積降時のダメージ貨物発見率 ?在庫管理に要する人時 ?輸配送に要する人時 ?配達納期順守率 ?トラック待機時間の短縮 ?ROA (総資産利益率) ?ROE(株主資本利益率) ?RO(I 投資資本利益率) ?EVA(経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?配達納期順守率 トラック会社 フォワーダー 通関部・ ロジスティクス部 航空会社上屋 フォワーダー 航空会社 航空会社運航部 ?フォワーダー倉庫 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI 89 SEPTEMBER 2009 始する必要がある。
キログラム当たりのマージ ンを上げるには、顧客への販売能力と商品力が 要求される。
セールスマン・シップと商品開発 力である。
図7は営業部門以外のKPIの例を示した ものである。
仕入値や作業の生産性管理が中心 で低コスト経営を実現するためのKPIがほと んどである。
各部門がこれらのKPIを管理し、 目標達成することが相乗効果を生み経営品質を 向上させるのである。
営業部門のKPIとして図6のような数多く の指標が設定できる。
これらの中で、自社にと って最も適切な指標をKPIとして選択する。
国際フォワーダーの営業マンの売り物は「H AWB(ハウス・エアウエイビル:顧客用の運 送状)」である。
HAWBの裏面に記された約 款に基づいて、顧客と契約することが営業マン の役割である。
売上目標を達成するには、HA WBの販売件数を増やすと同時に、HAWB の中身を充実させることである。
HAWBの販売件数は、営業マンの一時間 当たりの生産性、つまり効率販売が重要な指標 になる。
その改善には営業行動の変化が必要と なる。
また重量や一キログラム当たりのマージ ン(売値と買値の差)は大きければ大きいほど 利益が上がる。
重量を増やすには大手顧客を開 ロセスと担当部門を図5に示した。
この図にあ るように航空機スペースの購入から、混載便の 仕立てまでがフォワーダーの仕事である。
KPIを組織内に導入する時の最初のアクシ ョンは、対象部門の既存の業務プロセスを分析 し、プロセス・マップ(業務のフローチャート) を作る作業である。
次に既存のそれぞれのプロ セスが、なぜ必要なのかを明確にする。
既存の 各プロセスが産出する成果物は何かということ である。
国際フォワーダーの営業のプロセスであれば、 核となる成果物・仕事は、売上予算の達成で ある。
売上予算を達成するためには、営業戦略 をつくり、目標を設定し、その目標の達成度を 測定する指標を設定することが必要となる。
そ れが営業部門のKPIとなる。
図5 フォワーダーの仕事(活動)のプロセス ●輸出オペレーション部の仕事 ●輸出オペレーション部のKPI ?航空機スペースの購入 (kg 当たりの買値) ?ロジスティクス・サービスの商 品化(Doorto Door 商品など) ?顧客からの受注活動 *予約 *HAWB の作成 ?商品の販売 *航空、海上、複合輸送 *輸出、輸入 *ロジスティクス ?混載便の仕立 *MAWB の作成 *貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 航空会社へ貨物搬入 ●購買部門の仕事 ●購買部門のKPI ●マーケティング部門の仕事 ●マーケティング部門のKPI ●営業部門の仕事 ●営業部門のKPI ●カスタマーサービス部門の仕事 ●カスタマーサービス部門のKPI 図6 国際フォワーダー営業部門のKPI ?予算に対する売上達成度(金額と%) ?既存顧客の売上予算達成度(金額と%) ?新規顧客の売上達成度(金額と%) ?既存顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?新規顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?既存顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?新規顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?顧客数の開発目標に対する達成度(顧客数と%) ?営業マン一人当たりの売上金額、重量、件数の目標に対する達成度(%) ?営業マン一人当たりの顧客開発数の目標に対する達成度(%) ?1 件のHAWB 販売に要するセールスマン当たりの時間(時間と%) ?1 件のHAWB 重量の目標に対する達成度(重量と%) ?1 件のMAWBに対するHAWBの件数(件数と%) ?1 件のMAWBの重量(重量と%) ?1 件のMAWBのフリーキロ(Free Kg)/ 重量、金額の達成度(%) ?営業マン一人当たりのコスト(人件費と販売費) ?kg 当たりの売上、利益、コストの達成度(%) ?Shipment 当たりの売上、利益、コスト(%) ?セールス・リードの成約率(%) ?営業マン一人当たりの顧客訪問件数と成約率(%) ㉑「Door to Door」、「Door to Airport」、「Airport to Door」、「Airport to Airport」のHAWBの売上目標と達成率(HAWBの件数と%) ㉒部門の通関件数と営業マン一人当たりの件数(件数と%) ㉓部門の通関料と営業マン一人当たりの通関料(料金と%) ㉔部門の集配料および営業マン一人当たりの集配料(料金と%) ㉕部門の保管料および営業マン一人当たりの保管料(料金と%) ㉖部門の危険品売上高と営業マン一人当たりの売上高(金額と%) 図7 国際フォワーダーのKPI ?kg 当たりの買値を10%下げる ?スペース購入にかける部門当たりの購入時間の5%削減 ?航空会社の選択基準と実現度のチェック(%) ?商品開発時間の20%削減 ?開発商品の販売率を10%上げる ?顧客ニーズの調査(1カ月に2回3 時間) 図表6 参照 ?受注からHAWB作成までの時間を短縮する ( 60分から50分へ) ?一人当たりHAWB作成件数(10 件から12 件へ) ?MAWB作成時間の短縮(1 件30 分から20 分へ) ?航空貨物情報のインプットの削減(1件15分から10分へ) ?貨物搬入時間の短縮(60 分から45 分へ) ?混載便の仕立 *MAWBの作成 *航空貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 輸出オペレーション部 主要活動 部門 KPI ?航空機スペースの購入 ?ロジスティクス・サービスの 商品化 ?商品の販売 ?顧客からの受注活動 *HAWBの作成 購買部門 マーケティング部門 営業部門 カスタマーサービス部
明確で(Specific)、 測定可能で(Measurable)、達成可能 (Achievable)かつ現実的な(Realistic)、期限 のある(Time-bound)目標(Goal)を意味し ている。
そしてスマートゴールの測定に必要と なる指標のことを「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)」という。
SCMにKPIを導入し、品質、コスト、 生産性を管理している企業はまだ少ない。
しか し、KPIの導入なくして、サプライチェーン・ プロセスの改善は有り得ない。
時代は商品や価格の競争から、サプライチェ ーン間の競争に移り変わっている。
社内だけで なく社外のパートナーを含めたサプライチェー ン全体を強化をしないと生き残れない。
KPI を導入し、サプライチェーンの競争力を強化す る時代に突入しているということに早く気づく 必要がある。
KPIの測定は、サプライチェーン全体とノ ード(node)/部分の二つに分けて考えられる。
サプライチェーン全体のKPIには「スループ ット」を使用する。
スループットとは、売り上 げから、在庫費用や支払い物流費などの変動費 を引いた「直接利益」のこと。
SCMのベー スとなっている制約理論(TOC:Theory Of Constrains)の核となる指標だ。
従来の利益の考え方と違って、スループット は「時間当たりの利益」に着目する。
在庫には 仕入れから生産、販売までのリードタイムが反 映される。
これを変動費と一緒に売り上げから 差し引くことで利益の考え方に時間の概念を持 ち込んでいるのが特徴だ。
スループットを最大 化することがサプライチェーン全体の利益を最 大化することになる。
サプライチェーン上のボトルネックを解消し 全体のパフォーマンスを向上することで、スル ープットは増大する。
そのためには各ノードを 担当する荷主企業およびロジスティクス・サプ ライヤー各部門のパフォーマンスを測定するK PIを設定して継続的改善を進めると同時に、 部門間のコミュニケーションとコラボレーショ ン(Collaboration:協働)を強化することが 要求される。
以下に本稿では、荷主企業とロジスティクス サプライヤーそれぞれのKPIを具体的に示し、 それがなぜ必要なのかを解説することにする。
荷主企業のKPI 一般的な荷主企業各部門のサプライチェー ン・プロセスを図1に示した。
この図の通り、 荷主のサプライチェーンは通常、?顧客ニー ズの明確化、?製品の設計・開発、?原材料 の調達、?生産工程、?営業、?工場内物流、 ?倉庫、?顧客という八つのプロセスから構成 されている。
このうちロジスティクス部は通常、 ?工場内物流から?倉庫、そして?顧客への納 入までを担当する。
図2は荷主の部門別KPIの具体例を示し たものである。
KPIは数多く考えられるが、 《第8回》 グローバルSCM のKPI 原材料の調達から顧客への納品に至るサプライチ ェーン全体のパフォーマンスは「スループット」と 呼ばれる評価指標で管理する。
それをサプライチェ ーンの各プロセスの担当部門のKPI に落とし込む。
それがSCM の基本的なアプローチだ。
しかし、実 行している企業はまだ少ない。
宇野 修(うのおさむ) 1946 年生まれ。
青山学院大学卒。
英国航空、フライングタイガー航空、 エア・カナダ、ジャパン・シェンカー、 エクセル・ジャパンを経て、2008 年にロジスティクスバンクを設立、 代表に就任。
現在に至る。
http://www.e-logisticsbank.com/、 e-mail:uno-osamu@e-logistics bank.com 87 SEPTEMBER 2009 ここではなるべく測定しやすいKPIを選択し た。
ただし、前述の通り、特定の部門のKP Iが改善されるだけでは意味がない。
そのこと を例を挙げて解説することにしよう。
図2には購買部のKPIの一つとして、「? 購買・調達に要する人時」が挙がっている。
し かし、これだけを改善しても生産工程が従来と 変わっていなければ、サプライチェーン全体の 「スループット・タイム」は短縮できない。
営 業やロジスティクスも同様だ。
全体のスループ ット・タイムの足を引っ張っているプロセスが ボトルネックで、そこを活用強化することが制 約理論のアプローチだ。
このような部門別のKPIおよびプロセス全 体のKPIを実現することに加えて、別の角度 から評価されるKPIがあることも忘れてはな らない。
「株主からみたKPI」と「顧客から みたKPI」である。
「株主からみたKPI」には、会社全体の業 績評価指標であるROA(総資産利益率)、R OE(株主資本利益率)、ROI(投資資本利 益率)、EVA(経済的付加価値)などがある。
「顧客からみたKPI」は、顧客満足度に代 表される。
顧客満足度は顧客満足度調査によ り測定できる。
「ISO9001品質マネジメ ントシステム・2000年版」でもその調査を 実施することが求められている。
もちろん商品 価格も顧客が注目するKPIである。
しかし、これらの指標とSCMの指標は矛盾 するものではない。
スループットの増大はRO AやROEを押し上げ、全業務のプロセスコス 図1 サプライチェーンの荷主のKPI ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?工場内物流 *梱包、ラベル、 保管受注処理 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?製品の設計・開発 ?原材料の調達 ?生産工程 ?商品販売 ?工場内物流 ?フォワーダー倉庫 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図2 荷主の部門別KPI 活動 部門 KPI マーケティング部 のKPI 設計・開発部の KPI ?原材料の調達 *調達物流購買部のKPI ?生産工程生産管理部のKPI ?営業(商品販売) 営業部のKPI ロジスティクス部 のKPI ロジスティクス部 のKPI ?顧客 ?1 時間当たりの顧客調査件数 ?調査開始からニーズ明確化までに要する人時(1 人が 要する時間) ?1 時間当たりの商品設計・開発数 ?開発商品の販売率 ?商品開発に要する人事 ?購買品目の価値分析・選択基準設定およびその実 行率(%) ?調達頻度の削減および物流コストの削減(金額と%) ?サプライヤーの評価と数の削減(件数) ?製造コストに対する購買コストの管理(%) ?販売単価に対する購買コストの管理(%) ?購買・調達に要する人時 ?商品別生産回数と生産コスト ?一定期間の生産量および生産金額 ?生産工程のムリ、ムダ、ムラの発見と是正率 ?生産量と在庫量の割合 ?生産に要する人時 ?訪問顧客数と受注顧客数 ?売上に対する営業マン当たりのロジスティクス・コスト ?営業マン当たりの売上 ?営業マン当たりのクレーム処理時間 ?営業に要する人時 ?1 梱包当たりの梱包・保管コスト ?従業員当たりの作業時間・作業コスト ?従業員当たりの受注数 ?顧客当たりの受注時間(人時) ?全貨物の誤出荷率 ?商品当たりの在庫コスト ?商品当たりの輸配送コスト ?kg、トラック、従業員当たりの在庫・輸配送コスト ?輸送時業者数、輸送便数の標準化 ?全貨物のクレーム件数 ?ROA (Return on Asset:総資産利益率) ?ROE(Return on Equity:株主資本利益率) ?RO(I Return on Investment:投資資本利益率) ?EVA(economic Value Added:経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?新規顧客売上高比率 マーケティング部 設計・開発部 購買部 ロジスティクス部 ロジスティクス部 生産管理部 営業部 ?製品の設計・開発 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI SEPTEMBER 2009 88 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント トは商品の値段に反映される。
部門別およびプ ロセス全体のKPIの実行が「株主からみたK PI」や「顧客からみたKPI」を刺激するの である。
3PLのKPI 荷主企業の各部門と同様に、サプライチェー ン・プロセスを担うロジスティクス・サプライ ヤーにも個別のKPIがある。
図3は航空輸送のサプライチェーンのプロセ スを示したものである。
トラック会社による工 場集荷に始まり、フォワーダーが貨物を顧客に 届けるまでのプロセスを例にとっている。
この プロセスの中には、トラック会社、フォワーダー、 航空会社というサプライヤーが存在する。
各サ プライヤーによるKPIの改善が、サプライチ ェーン全体の競争力を強化する。
もちろん荷主のKPIと同様に、一つのサプ ライヤーのKPIが良くても、他のサプライヤ ーのKPIが改善しなければ全体は良くならな い。
サプライヤー間のコラボレーション、コミ ュニケーションのシステムが必要となる。
具体的なKPIの事例を図4に示した。
すべ てのKPIが、品質改善、コスト削減、生産 性向上と結びついている。
例えば「貨物集荷率」 を一〇〇%にすれば、サービス品質の向上と同 時に、積み残し作業が不要になってコストが下 がる。
つまり、生産性が向上する。
以下に筆者が長く経験した国際フォワーダー を例にとって、KPIの導入とその運用方法を 解説しよう。
フォワーダーの仕事(活動)のプ 図3 サプライチェーン・ロジスティクスのKPI ?工場からの集荷 ?目的地空港上屋 *仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?工場からの集荷 ?フォワーダー倉庫 ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 ?航空会社の上屋 へ保管 ?航空機による輸送 ?目的地空港上屋で の仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図4 ロジスティクス・サプライヤーのKPI 活動 サプライヤー KPI トラック会社 のKPI フォワーダーの KPI ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 通関部・ロジス ティクス部のKPI ?航空会社上屋へ 保管航空会社のKPI ?航空機による輸送航空会社運航部 のKPI 航空会社上屋 のKPI フォワーダー のKPI ?顧客 ?貨物集荷率(積残率) ?損傷貨物発見率 ?トラック待機時間の短縮 ?貨物積込時間の短縮 ?誤入庫・誤出荷率の減少 ?貨物パレタイズ時間に短縮 ?混載仕立て時間の短縮 ?クロスラベルの削減 ?申告当たりの通関人時 ?航空会社搬入時間の短縮 ?搬入時損傷貨物の発見率 ?パレタイズ時間の短縮 ?目的地別パレットの誤出荷率 ?特殊貨物(危険品など)搭載チェックリストの実行率 ?ローディング・プランとアクチャル・ローディングの誤 差管理 ?貨物搭載時間の短縮 ?仕分時間の短縮 ?ダメージ貨物の発見率 ?保管時間の短縮 ?在庫回転率の向上 ?商品・kg 当たりの在庫コスト削減 ?輸配送の誤出荷率の低下 ?商品・kg 当たりの輸配送コスト削減 ?トラック当たりの輸配送コスト削減 ?積込・積降時のダメージ貨物発見率 ?在庫管理に要する人時 ?輸配送に要する人時 ?配達納期順守率 ?トラック待機時間の短縮 ?ROA (総資産利益率) ?ROE(株主資本利益率) ?RO(I 投資資本利益率) ?EVA(経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?配達納期順守率 トラック会社 フォワーダー 通関部・ ロジスティクス部 航空会社上屋 フォワーダー 航空会社 航空会社運航部 ?フォワーダー倉庫 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI 89 SEPTEMBER 2009 始する必要がある。
キログラム当たりのマージ ンを上げるには、顧客への販売能力と商品力が 要求される。
セールスマン・シップと商品開発 力である。
図7は営業部門以外のKPIの例を示した ものである。
仕入値や作業の生産性管理が中心 で低コスト経営を実現するためのKPIがほと んどである。
各部門がこれらのKPIを管理し、 目標達成することが相乗効果を生み経営品質を 向上させるのである。
営業部門のKPIとして図6のような数多く の指標が設定できる。
これらの中で、自社にと って最も適切な指標をKPIとして選択する。
国際フォワーダーの営業マンの売り物は「H AWB(ハウス・エアウエイビル:顧客用の運 送状)」である。
HAWBの裏面に記された約 款に基づいて、顧客と契約することが営業マン の役割である。
売上目標を達成するには、HA WBの販売件数を増やすと同時に、HAWB の中身を充実させることである。
HAWBの販売件数は、営業マンの一時間 当たりの生産性、つまり効率販売が重要な指標 になる。
その改善には営業行動の変化が必要と なる。
また重量や一キログラム当たりのマージ ン(売値と買値の差)は大きければ大きいほど 利益が上がる。
重量を増やすには大手顧客を開 ロセスと担当部門を図5に示した。
この図にあ るように航空機スペースの購入から、混載便の 仕立てまでがフォワーダーの仕事である。
KPIを組織内に導入する時の最初のアクシ ョンは、対象部門の既存の業務プロセスを分析 し、プロセス・マップ(業務のフローチャート) を作る作業である。
次に既存のそれぞれのプロ セスが、なぜ必要なのかを明確にする。
既存の 各プロセスが産出する成果物は何かということ である。
国際フォワーダーの営業のプロセスであれば、 核となる成果物・仕事は、売上予算の達成で ある。
売上予算を達成するためには、営業戦略 をつくり、目標を設定し、その目標の達成度を 測定する指標を設定することが必要となる。
そ れが営業部門のKPIとなる。
図5 フォワーダーの仕事(活動)のプロセス ●輸出オペレーション部の仕事 ●輸出オペレーション部のKPI ?航空機スペースの購入 (kg 当たりの買値) ?ロジスティクス・サービスの商 品化(Doorto Door 商品など) ?顧客からの受注活動 *予約 *HAWB の作成 ?商品の販売 *航空、海上、複合輸送 *輸出、輸入 *ロジスティクス ?混載便の仕立 *MAWB の作成 *貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 航空会社へ貨物搬入 ●購買部門の仕事 ●購買部門のKPI ●マーケティング部門の仕事 ●マーケティング部門のKPI ●営業部門の仕事 ●営業部門のKPI ●カスタマーサービス部門の仕事 ●カスタマーサービス部門のKPI 図6 国際フォワーダー営業部門のKPI ?予算に対する売上達成度(金額と%) ?既存顧客の売上予算達成度(金額と%) ?新規顧客の売上達成度(金額と%) ?既存顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?新規顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?既存顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?新規顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?顧客数の開発目標に対する達成度(顧客数と%) ?営業マン一人当たりの売上金額、重量、件数の目標に対する達成度(%) ?営業マン一人当たりの顧客開発数の目標に対する達成度(%) ?1 件のHAWB 販売に要するセールスマン当たりの時間(時間と%) ?1 件のHAWB 重量の目標に対する達成度(重量と%) ?1 件のMAWBに対するHAWBの件数(件数と%) ?1 件のMAWBの重量(重量と%) ?1 件のMAWBのフリーキロ(Free Kg)/ 重量、金額の達成度(%) ?営業マン一人当たりのコスト(人件費と販売費) ?kg 当たりの売上、利益、コストの達成度(%) ?Shipment 当たりの売上、利益、コスト(%) ?セールス・リードの成約率(%) ?営業マン一人当たりの顧客訪問件数と成約率(%) ㉑「Door to Door」、「Door to Airport」、「Airport to Door」、「Airport to Airport」のHAWBの売上目標と達成率(HAWBの件数と%) ㉒部門の通関件数と営業マン一人当たりの件数(件数と%) ㉓部門の通関料と営業マン一人当たりの通関料(料金と%) ㉔部門の集配料および営業マン一人当たりの集配料(料金と%) ㉕部門の保管料および営業マン一人当たりの保管料(料金と%) ㉖部門の危険品売上高と営業マン一人当たりの売上高(金額と%) 図7 国際フォワーダーのKPI ?kg 当たりの買値を10%下げる ?スペース購入にかける部門当たりの購入時間の5%削減 ?航空会社の選択基準と実現度のチェック(%) ?商品開発時間の20%削減 ?開発商品の販売率を10%上げる ?顧客ニーズの調査(1カ月に2回3 時間) 図表6 参照 ?受注からHAWB作成までの時間を短縮する ( 60分から50分へ) ?一人当たりHAWB作成件数(10 件から12 件へ) ?MAWB作成時間の短縮(1 件30 分から20 分へ) ?航空貨物情報のインプットの削減(1件15分から10分へ) ?貨物搬入時間の短縮(60 分から45 分へ) ?混載便の仕立 *MAWBの作成 *航空貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 輸出オペレーション部 主要活動 部門 KPI ?航空機スペースの購入 ?ロジスティクス・サービスの 商品化 ?商品の販売 ?顧客からの受注活動 *HAWBの作成 購買部門 マーケティング部門 営業部門 カスタマーサービス部SEPTEMBER 2009 86 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント 物流業のリスクマネジメント 「スマートゴール」を設定する 「スマートゴール(SMART GOAL)」とい う言葉をご存じだろうか。
明確で(Specific)、 測定可能で(Measurable)、達成可能 (Achievable)かつ現実的な(Realistic)、期限 のある(Time-bound)目標(Goal)を意味し ている。
そしてスマートゴールの測定に必要と なる指標のことを「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)」という。
SCMにKPIを導入し、品質、コスト、 生産性を管理している企業はまだ少ない。
しか し、KPIの導入なくして、サプライチェーン・ プロセスの改善は有り得ない。
時代は商品や価格の競争から、サプライチェ ーン間の競争に移り変わっている。
社内だけで なく社外のパートナーを含めたサプライチェー ン全体を強化をしないと生き残れない。
KPI を導入し、サプライチェーンの競争力を強化す る時代に突入しているということに早く気づく 必要がある。
KPIの測定は、サプライチェーン全体とノ ード(node)/部分の二つに分けて考えられる。
サプライチェーン全体のKPIには「スループ ット」を使用する。
スループットとは、売り上 げから、在庫費用や支払い物流費などの変動費 を引いた「直接利益」のこと。
SCMのベー スとなっている制約理論(TOC:Theory Of Constrains)の核となる指標だ。
従来の利益の考え方と違って、スループット は「時間当たりの利益」に着目する。
在庫には 仕入れから生産、販売までのリードタイムが反 映される。
これを変動費と一緒に売り上げから 差し引くことで利益の考え方に時間の概念を持 ち込んでいるのが特徴だ。
スループットを最大 化することがサプライチェーン全体の利益を最 大化することになる。
サプライチェーン上のボトルネックを解消し 全体のパフォーマンスを向上することで、スル ープットは増大する。
そのためには各ノードを 担当する荷主企業およびロジスティクス・サプ ライヤー各部門のパフォーマンスを測定するK PIを設定して継続的改善を進めると同時に、 部門間のコミュニケーションとコラボレーショ ン(Collaboration:協働)を強化することが 要求される。
以下に本稿では、荷主企業とロジスティクス サプライヤーそれぞれのKPIを具体的に示し、 それがなぜ必要なのかを解説することにする。
荷主企業のKPI 一般的な荷主企業各部門のサプライチェー ン・プロセスを図1に示した。
この図の通り、 荷主のサプライチェーンは通常、?顧客ニー ズの明確化、?製品の設計・開発、?原材料 の調達、?生産工程、?営業、?工場内物流、 ?倉庫、?顧客という八つのプロセスから構成 されている。
このうちロジスティクス部は通常、 ?工場内物流から?倉庫、そして?顧客への納 入までを担当する。
図2は荷主の部門別KPIの具体例を示し たものである。
KPIは数多く考えられるが、 《第8回》 グローバルSCM のKPI 原材料の調達から顧客への納品に至るサプライチ ェーン全体のパフォーマンスは「スループット」と 呼ばれる評価指標で管理する。
それをサプライチェ ーンの各プロセスの担当部門のKPI に落とし込む。
それがSCM の基本的なアプローチだ。
しかし、実 行している企業はまだ少ない。
宇野 修(うのおさむ) 1946 年生まれ。
青山学院大学卒。
英国航空、フライングタイガー航空、 エア・カナダ、ジャパン・シェンカー、 エクセル・ジャパンを経て、2008 年にロジスティクスバンクを設立、 代表に就任。
現在に至る。
http://www.e-logisticsbank.com/、 e-mail:uno-osamu@e-logistics bank.com 87 SEPTEMBER 2009 ここではなるべく測定しやすいKPIを選択し た。
ただし、前述の通り、特定の部門のKP Iが改善されるだけでは意味がない。
そのこと を例を挙げて解説することにしよう。
図2には購買部のKPIの一つとして、「? 購買・調達に要する人時」が挙がっている。
し かし、これだけを改善しても生産工程が従来と 変わっていなければ、サプライチェーン全体の 「スループット・タイム」は短縮できない。
営 業やロジスティクスも同様だ。
全体のスループ ット・タイムの足を引っ張っているプロセスが ボトルネックで、そこを活用強化することが制 約理論のアプローチだ。
このような部門別のKPIおよびプロセス全 体のKPIを実現することに加えて、別の角度 から評価されるKPIがあることも忘れてはな らない。
「株主からみたKPI」と「顧客から みたKPI」である。
「株主からみたKPI」には、会社全体の業 績評価指標であるROA(総資産利益率)、R OE(株主資本利益率)、ROI(投資資本利 益率)、EVA(経済的付加価値)などがある。
「顧客からみたKPI」は、顧客満足度に代 表される。
顧客満足度は顧客満足度調査によ り測定できる。
「ISO9001品質マネジメ ントシステム・2000年版」でもその調査を 実施することが求められている。
もちろん商品 価格も顧客が注目するKPIである。
しかし、これらの指標とSCMの指標は矛盾 するものではない。
スループットの増大はRO AやROEを押し上げ、全業務のプロセスコス 図1 サプライチェーンの荷主のKPI ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?工場内物流 *梱包、ラベル、 保管受注処理 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?顧客ニーズの調査 および明確化 ?製品の設計・開発 ?原材料の調達 ?生産工程 ?商品販売 ?工場内物流 ?フォワーダー倉庫 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図2 荷主の部門別KPI 活動 部門 KPI マーケティング部 のKPI 設計・開発部の KPI ?原材料の調達 *調達物流購買部のKPI ?生産工程生産管理部のKPI ?営業(商品販売) 営業部のKPI ロジスティクス部 のKPI ロジスティクス部 のKPI ?顧客 ?1 時間当たりの顧客調査件数 ?調査開始からニーズ明確化までに要する人時(1 人が 要する時間) ?1 時間当たりの商品設計・開発数 ?開発商品の販売率 ?商品開発に要する人事 ?購買品目の価値分析・選択基準設定およびその実 行率(%) ?調達頻度の削減および物流コストの削減(金額と%) ?サプライヤーの評価と数の削減(件数) ?製造コストに対する購買コストの管理(%) ?販売単価に対する購買コストの管理(%) ?購買・調達に要する人時 ?商品別生産回数と生産コスト ?一定期間の生産量および生産金額 ?生産工程のムリ、ムダ、ムラの発見と是正率 ?生産量と在庫量の割合 ?生産に要する人時 ?訪問顧客数と受注顧客数 ?売上に対する営業マン当たりのロジスティクス・コスト ?営業マン当たりの売上 ?営業マン当たりのクレーム処理時間 ?営業に要する人時 ?1 梱包当たりの梱包・保管コスト ?従業員当たりの作業時間・作業コスト ?従業員当たりの受注数 ?顧客当たりの受注時間(人時) ?全貨物の誤出荷率 ?商品当たりの在庫コスト ?商品当たりの輸配送コスト ?kg、トラック、従業員当たりの在庫・輸配送コスト ?輸送時業者数、輸送便数の標準化 ?全貨物のクレーム件数 ?ROA (Return on Asset:総資産利益率) ?ROE(Return on Equity:株主資本利益率) ?RO(I Return on Investment:投資資本利益率) ?EVA(economic Value Added:経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?新規顧客売上高比率 マーケティング部 設計・開発部 購買部 ロジスティクス部 ロジスティクス部 生産管理部 営業部 ?製品の設計・開発 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI SEPTEMBER 2009 88 宇野修 ロジスティクスバンク代表 物流業のリスクマネジメント トは商品の値段に反映される。
部門別およびプ ロセス全体のKPIの実行が「株主からみたK PI」や「顧客からみたKPI」を刺激するの である。
3PLのKPI 荷主企業の各部門と同様に、サプライチェー ン・プロセスを担うロジスティクス・サプライ ヤーにも個別のKPIがある。
図3は航空輸送のサプライチェーンのプロセ スを示したものである。
トラック会社による工 場集荷に始まり、フォワーダーが貨物を顧客に 届けるまでのプロセスを例にとっている。
この プロセスの中には、トラック会社、フォワーダー、 航空会社というサプライヤーが存在する。
各サ プライヤーによるKPIの改善が、サプライチ ェーン全体の競争力を強化する。
もちろん荷主のKPIと同様に、一つのサプ ライヤーのKPIが良くても、他のサプライヤ ーのKPIが改善しなければ全体は良くならな い。
サプライヤー間のコラボレーション、コミ ュニケーションのシステムが必要となる。
具体的なKPIの事例を図4に示した。
すべ てのKPIが、品質改善、コスト削減、生産 性向上と結びついている。
例えば「貨物集荷率」 を一〇〇%にすれば、サービス品質の向上と同 時に、積み残し作業が不要になってコストが下 がる。
つまり、生産性が向上する。
以下に筆者が長く経験した国際フォワーダー を例にとって、KPIの導入とその運用方法を 解説しよう。
フォワーダーの仕事(活動)のプ 図3 サプライチェーン・ロジスティクスのKPI ?工場からの集荷 ?目的地空港上屋 *仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 ?工場からの集荷 ?フォワーダー倉庫 ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 ?航空会社の上屋 へ保管 ?航空機による輸送 ?目的地空港上屋で の仕分・保管 ?フォワーダー倉庫 *在庫管理 *輸配送管理 株主からみたKPI 顧客からみたKPI 図4 ロジスティクス・サプライヤーのKPI 活動 サプライヤー KPI トラック会社 のKPI フォワーダーの KPI ?フォワーダーによ る通関および航空 会社への搬入 通関部・ロジス ティクス部のKPI ?航空会社上屋へ 保管航空会社のKPI ?航空機による輸送航空会社運航部 のKPI 航空会社上屋 のKPI フォワーダー のKPI ?顧客 ?貨物集荷率(積残率) ?損傷貨物発見率 ?トラック待機時間の短縮 ?貨物積込時間の短縮 ?誤入庫・誤出荷率の減少 ?貨物パレタイズ時間に短縮 ?混載仕立て時間の短縮 ?クロスラベルの削減 ?申告当たりの通関人時 ?航空会社搬入時間の短縮 ?搬入時損傷貨物の発見率 ?パレタイズ時間の短縮 ?目的地別パレットの誤出荷率 ?特殊貨物(危険品など)搭載チェックリストの実行率 ?ローディング・プランとアクチャル・ローディングの誤 差管理 ?貨物搭載時間の短縮 ?仕分時間の短縮 ?ダメージ貨物の発見率 ?保管時間の短縮 ?在庫回転率の向上 ?商品・kg 当たりの在庫コスト削減 ?輸配送の誤出荷率の低下 ?商品・kg 当たりの輸配送コスト削減 ?トラック当たりの輸配送コスト削減 ?積込・積降時のダメージ貨物発見率 ?在庫管理に要する人時 ?輸配送に要する人時 ?配達納期順守率 ?トラック待機時間の短縮 ?ROA (総資産利益率) ?ROE(株主資本利益率) ?RO(I 投資資本利益率) ?EVA(経済的付加価値) ?顧客満足度 ?全業務プロセスのコスト(ロジスティクスおよびサポート 業務) ?配達納期順守率 トラック会社 フォワーダー 通関部・ ロジスティクス部 航空会社上屋 フォワーダー 航空会社 航空会社運航部 ?フォワーダー倉庫 株主から みたKPI 顧客から みたKPI 全業務プロセスの評価指標(スループット・マネジメント) KPI 89 SEPTEMBER 2009 始する必要がある。
キログラム当たりのマージ ンを上げるには、顧客への販売能力と商品力が 要求される。
セールスマン・シップと商品開発 力である。
図7は営業部門以外のKPIの例を示した ものである。
仕入値や作業の生産性管理が中心 で低コスト経営を実現するためのKPIがほと んどである。
各部門がこれらのKPIを管理し、 目標達成することが相乗効果を生み経営品質を 向上させるのである。
営業部門のKPIとして図6のような数多く の指標が設定できる。
これらの中で、自社にと って最も適切な指標をKPIとして選択する。
国際フォワーダーの営業マンの売り物は「H AWB(ハウス・エアウエイビル:顧客用の運 送状)」である。
HAWBの裏面に記された約 款に基づいて、顧客と契約することが営業マン の役割である。
売上目標を達成するには、HA WBの販売件数を増やすと同時に、HAWB の中身を充実させることである。
HAWBの販売件数は、営業マンの一時間 当たりの生産性、つまり効率販売が重要な指標 になる。
その改善には営業行動の変化が必要と なる。
また重量や一キログラム当たりのマージ ン(売値と買値の差)は大きければ大きいほど 利益が上がる。
重量を増やすには大手顧客を開 ロセスと担当部門を図5に示した。
この図にあ るように航空機スペースの購入から、混載便の 仕立てまでがフォワーダーの仕事である。
KPIを組織内に導入する時の最初のアクシ ョンは、対象部門の既存の業務プロセスを分析 し、プロセス・マップ(業務のフローチャート) を作る作業である。
次に既存のそれぞれのプロ セスが、なぜ必要なのかを明確にする。
既存の 各プロセスが産出する成果物は何かということ である。
国際フォワーダーの営業のプロセスであれば、 核となる成果物・仕事は、売上予算の達成で ある。
売上予算を達成するためには、営業戦略 をつくり、目標を設定し、その目標の達成度を 測定する指標を設定することが必要となる。
そ れが営業部門のKPIとなる。
図5 フォワーダーの仕事(活動)のプロセス ●輸出オペレーション部の仕事 ●輸出オペレーション部のKPI ?航空機スペースの購入 (kg 当たりの買値) ?ロジスティクス・サービスの商 品化(Doorto Door 商品など) ?顧客からの受注活動 *予約 *HAWB の作成 ?商品の販売 *航空、海上、複合輸送 *輸出、輸入 *ロジスティクス ?混載便の仕立 *MAWB の作成 *貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 航空会社へ貨物搬入 ●購買部門の仕事 ●購買部門のKPI ●マーケティング部門の仕事 ●マーケティング部門のKPI ●営業部門の仕事 ●営業部門のKPI ●カスタマーサービス部門の仕事 ●カスタマーサービス部門のKPI 図6 国際フォワーダー営業部門のKPI ?予算に対する売上達成度(金額と%) ?既存顧客の売上予算達成度(金額と%) ?新規顧客の売上達成度(金額と%) ?既存顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?新規顧客のHAWB 開発目標に対する達成度(件数と%) ?既存顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?新規顧客の重量開発目標に対する達成度(重量と%) ?顧客数の開発目標に対する達成度(顧客数と%) ?営業マン一人当たりの売上金額、重量、件数の目標に対する達成度(%) ?営業マン一人当たりの顧客開発数の目標に対する達成度(%) ?1 件のHAWB 販売に要するセールスマン当たりの時間(時間と%) ?1 件のHAWB 重量の目標に対する達成度(重量と%) ?1 件のMAWBに対するHAWBの件数(件数と%) ?1 件のMAWBの重量(重量と%) ?1 件のMAWBのフリーキロ(Free Kg)/ 重量、金額の達成度(%) ?営業マン一人当たりのコスト(人件費と販売費) ?kg 当たりの売上、利益、コストの達成度(%) ?Shipment 当たりの売上、利益、コスト(%) ?セールス・リードの成約率(%) ?営業マン一人当たりの顧客訪問件数と成約率(%) ㉑「Door to Door」、「Door to Airport」、「Airport to Door」、「Airport to Airport」のHAWBの売上目標と達成率(HAWBの件数と%) ㉒部門の通関件数と営業マン一人当たりの件数(件数と%) ㉓部門の通関料と営業マン一人当たりの通関料(料金と%) ㉔部門の集配料および営業マン一人当たりの集配料(料金と%) ㉕部門の保管料および営業マン一人当たりの保管料(料金と%) ㉖部門の危険品売上高と営業マン一人当たりの売上高(金額と%) 図7 国際フォワーダーのKPI ?kg 当たりの買値を10%下げる ?スペース購入にかける部門当たりの購入時間の5%削減 ?航空会社の選択基準と実現度のチェック(%) ?商品開発時間の20%削減 ?開発商品の販売率を10%上げる ?顧客ニーズの調査(1カ月に2回3 時間) 図表6 参照 ?受注からHAWB作成までの時間を短縮する ( 60分から50分へ) ?一人当たりHAWB作成件数(10 件から12 件へ) ?MAWB作成時間の短縮(1 件30 分から20 分へ) ?航空貨物情報のインプットの削減(1件15分から10分へ) ?貨物搬入時間の短縮(60 分から45 分へ) ?混載便の仕立 *MAWBの作成 *航空貨物情報のインプット *航空会社への貨物搬入 輸出オペレーション部 主要活動 部門 KPI ?航空機スペースの購入 ?ロジスティクス・サービスの 商品化 ?商品の販売 ?顧客からの受注活動 *HAWBの作成 購買部門 マーケティング部門 営業部門 カスタマーサービス部
