2009年10月号
特集

第7部 成功する同業種共配の仕掛け方

OCTOBER 2009  28 東洋紡&帝人ファイバー  東洋紡と帝人ファイバーは昨年一〇月、合繊業界 では初となるライバルメーカー同士の共同輸送を開始 した。
山口県岩国市の両社の工場から大阪地区のス トックポイント(SP)への幹線輸送を共同化した。
さらにはSPから顧客への納品も、帝人ファイバーか ら輸送の委託を受けているグループ会社の帝人物流が、 東洋紡の物流子会社の東洋紡ロジスティクスに再委託 するかたちで実質的に共同化した。
 東洋紡の物流部長で東洋紡ロジスティクスの社長も 兼務する諏訪次郎参与は「一昔前なら考えられない ことだ。
合繊業界では各メーカーが似通った製品を販 売しているため、ライバル意識が強い。
物流部門から 話し合いが始まったのがよかったのだと思う。
環境負 荷の低減要請が社内外との調整を後押ししたとも感 じている」という。
 帝人グループの持ち株会社、帝人の早川泰宏購 買・物流室長(帝人グループのシェアードサービス会 社、帝人クリエイティブスタッフ取締役購買物流部門 長、原燃料購買部長を兼務)も「時代に要請されて いる、とにかくやらなければならないと思っていた」 と振り返る。
 きっかけは業界団体の日本化学繊維協会に設置さ れている物流専門委員会だった。
主要メーカーの物流 担当者が年数回のペースで一同に顔を揃える。
そこで 共同物流がテーマに上がり、各社が国内物流の動線を 公開し合って付き合わせたところ、東洋紡と帝人ファ イバーの共同輸送の可能性が見つかった。
 早川室長は「東洋紡さんのほかにも数社と検討を していたが、東洋紡さんとは岩国での事業所間の距 離が近いほか、貨物の相性が非常によいなどいくつ かの条件が整っていた」という。
とはいえ、実際に 共同化に踏み切るには、発地と着地の場所だけでな く、物量や配送頻度、積み合わせる貨物の商品特性、 納品時間など、細かな調整が必要だ。
昨年に入って 両社で本格的な検討を始めたが、本格稼働までには 約一〇カ月を要した。
 まず両社が岩国から出荷している商品を棚卸しして、 東洋紡の「スパンボンド」と呼ばれる不織布と、帝人 ファイバーのポリエステル繊維という組み合わせが積 み合わせに向いていることが分かった。
スパンボンド は容積に比べて重量が軽く、ポリエステル繊維は重量 が勝っている。
 スパンボンドはたとえトラックの荷台を満載にして も重量ベースの積載率は一〇〇%にはならない。
実際、 東洋紡のスパンボンドの幹線輸送車の積載率は、重量 ベースで四〇〜五〇%程度に過ぎなかった。
 同社は改正省エネ法の特定荷主として、物流にお ける環境負荷を計算して政府に報告し、毎年CO2排 出量を一%削減する義務を負っている。
CO2排出量 の算定には改良トンキロ法を用いている。
改良トンキ ロ法では積載率を重量ベースで計算するため、スパン ボンドの幹線輸送は排出量を削減しようがなかった。
 ポリエステル繊維との混載はその突破口となり得た。
東洋紡はスパンボンドを大阪府のSPにほぼ毎日幹線 輸送している。
これに対して帝人ファイバーは大口顧 客には直接輸送だが、小口は路線便で大阪のSPに運 び、そこからチャーター便に積み替えて納品していた。
 帝人ファイバーもまた特定荷主だ。
改良トンキロ法 では積載率の把握が困難な場合の算定基準として平 均積載率が示されている。
路線便の積載率は一律六 二%と決められていて工夫の余地がなかった。
そこで 東洋紡の幹線輸送車に帝人ファイバーの小口貨物を混 成功する同業種共配の仕掛け方  各分野のトップメーカーが自らライバル企業との物流 共同化に乗り出している。
主導するのは物流部門だ。
環 境負荷低減を武器にして従来のタブーを破り、顧客や社 内の調整に奔走している。
その背中を中立的第三者の 立場から後押しすることで、3PLもまたビジネスチャン スを掴んでいる。
           (梶原幸絵) 第7部 29  OCTOBER 2009 東洋紡事業所 帝人ファイバー 事業所 幹線輸送 図1 東洋紡と帝人ファイバーの共同輸送(イメージ) 東洋紡SP 帝人ファイバー SP 納品先 納品先 ・・・ 納品先 納品先 ・・・ 東洋紡納品先 東洋紡納品先 帝人ファイバー 納品先 帝人ファイバー 納品先 納品先 納品先 納品先 ・・・ 小口は路線便を利用 岩国大阪 納品先 東洋紡事業所 荷積み 2社の貨物を混載 帝人ファイバー 事業所 幹線輸送 岩国大阪 大口は顧客直送 東洋紡 SP 従 来現 在 ・・・・・・ 大口は 顧客直送 集荷 出荷情報 状況確認 荷積み 納品先 納品先 大口は顧客直送 載することにした。
しかも混載貨物は帝人ファイバー の大阪SPを経由せずに、東洋紡のSP経由でその まま顧客に納品するかたちをとった。
 帝人ファイバーは物流業務をグループ会社の帝人物 流に委託している。
東洋紡も東洋紡ロジスティクスが 物流を運営している。
そのため契約としては帝人物 流が東洋紡ロジスティクスに再委託するかたちだ。
 帝人クリエイティブスタッフ物流企画部兼機材購買 部の谷文和担当課長は「共同輸送の今後の拡大に向 けて仕組みを作り上げ、成功させることが重要だった。
しかも非常にやりやすい条件だった。
ウチのほうでも 便数が多ければ、どっちが運ぶんだとエゴが出てきて しまうところかも知れない」と説明する。
 しかし、共同輸送をすることで最大で半日、納品 時間が遅れる納品先もあった。
そこで改めて顧客の許 容範囲と要望をヒアリングし、その結果をすり合わせ て各顧客の納品時間を調整していった。
 調整終了後もトライアルを重ねた。
両社の岩国事業 所、東洋紡の大阪SP、主要納品先の四ポイントで 積み付けや貨物の養生、荷役などについて確認した。
「大阪SPでは工業用ポリエステル繊維は扱っていな かった上に中継輸送ということもあり、念には念を入 れて確認した」と両社の関係者は口を揃える。
 その甲斐あって本稼働後もトラブルは起こらず、順 調に進んでいる。
両社が貨物を混載したトラックの積 載率は重量ベースで平均七〇%程度に向上した。
ただ し昨秋以降、物量が減少しているため当初想定したC O2排出量の四〇%削減には届いておらず、コスト削 減効果も「コストは同等以下にはなっている」(両社) という程度で程度で大きくはない。
 それでも両社は今後の物量の回復をにらみ、対象貨 物と地域の拡大を検討している。
例えば一〇月にトラ イアルを予定している東海地区、北陸地区、滋賀県 向けだ。
仕組みは大阪向けと同様だが、滋賀県向け などでは対象貨物が異なり、帝人ファイバーの幹線輸 送に東洋紡の小口出荷を合い積みするかたちになる。
 さらに東洋紡は異業種の二社とも共同物流を検討 しているという。
今回の共同輸送が各メディアに多く 取り上げられたため、先方から話が舞い込んできたと いう。
「異業種だけに難しい面もあるが、純然たる物 流で話ができるという利点もある」と東洋紡物流部 の山岸博之主幹は実現に期待を寄せている。
エプソン&キヤノン&日通  エプソンとキヤノンもまた今年六月に共同配送を開 始した。
エプソンの販売子会社、エプソン販売とキヤ ノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)が日本通 運を利用し、物流センターから主に家電量販店向けに 家庭用プリンターなどの配送を共同化した。
 エプソンとキヤノンは国内のインクジェットプリン ター市場でそれぞれ四割程度のシェアを占めるライバ ル同士。
それでもエプソン販売の平林洋一物流サービ ス部部長は「コスト削減も環境負荷低減も、一社だ けの取り組みは限界に来ている。
確かにキヤノンさん はライバルではある。
しかし物流部門同士で話してみ ると、お互い納入先が同じならば共同化できないか という考え方を持っていた。
そもそも大手と組まなけ れば共同化も効果を見込みにくい」と語る。
 これまでエプソン販売ではキヤノンMJを含め、競 合メーカーと物流部門同士の情報交換を積極的に行っ てきた。
業態が同じだけに物流上の課題は共通して いる。
得るものは大きいという。
 キヤノンMJとの共同配送に先立ち、エプソン販売 は二〇〇七年度から社内の大がかりな物流改革を進 OCTOBER 2009  30 している。
このため一センター当たりの納品数量が減 少し、物量の多い大都市圏でも積載率が低下する傾 向にあった。
 エプソン販売の抱えていた課題は、ライバルのキヤ ノンも直面している。
もともと両社の納品先はほとん ど変わらない。
商品の梱包・仕分け方法や伝票取扱 条件も同様だった。
さらにキヤノンMJもセンター運 営と配送で日通を利用していた。
時間帯さえ調整す れば共同化できる。
 それでもキヤノンMJ、日通と細部を詰めながら社 内の関連部署を説得し、納品時間を調整するのに一 年間かかった。
札幌地区から開始したのは、札幌に は共配の対象となる納品先と両社のセンターが狭い範 囲にあったためだ。
札幌が無事稼働したのを確認した 上で、大消費地の東京、仙台地区に着手した。
現在 は納品先の拡大と他地区への展開を進めている。
共 配の対象を選ぶ上で明確な基準を設けているわけで はないが、「五〇%以下の積載率が常態的に続いてい れば検討の対象になるだろう。
両社のデータを持って いる日通さんに提案してもらいながら判断していく」 (平林部長)方針だ。
 これとは別に、エプソン販売は社内の受発注部門や 各センター、営業部門、さらに顧客の物流部門とも調 整し、納品条件を改める取り組みも進めている。
例え ば輸入商品の在庫はこれまで東京と大阪の両センター に集中して保管しており、両センターから他のエリア に小口の横持ちが多発していた。
そこで回転率の高 い商品については各地のセンターでも一定量の在庫を 持つように改めて、輸送費と在庫配分を最適化した。
 顧客との調整も、社内と比べてハードルは高いが不 可能ではない。
古い納品条件を検証せずに踏襲し、現 状に合わなくなっていることもある。
「お客さまの物 めていた。
国内に一四拠点あった物流センターを、二 年間で札幌、仙台、東京、大阪、福岡の五拠点に統 合。
商品の出荷倉庫、デモ用機材倉庫、カタログ倉 庫、輸入取扱倉庫など、製品別・機能別に分かれて いた倉庫を集約し、拠点間の横持ちと同一納入先へ の輸送の重複を削減した。
 各センターの倉庫管理システム(WMS)と業務プ ロセスも昨年度までに統一した。
センターの運営と配 送委託業者は日本通運一社に集約した。
以前は地域 によってWMSも、センター業務を行う物流業者も異 なっていた。
 WMSの統合効果は大きかった。
作業工程の標準 化はもちろん、輸入物流を効率化できた。
輸入製品 は東京と大阪のセンターで在庫しているが、商品に よっては入荷が偏在し、多くの横持ちが発生していた。
しかし海外拠点の生産予定台数と国内各拠点の在庫 状況、販売実績などに合わせて、海外拠点に週次で 東京と大阪への出荷指示を出せるようになった。
 国内各拠点の輸送状況、貸し切り便の積載率など を把握できるようにもなった。
物流子会社のエプソン ロジスティクスが配車をコントロールして、積載率を 上げて輸送コストを抑えている。
同じ方面への荷物を まとめることで、荷受け側の負担も減った。
 こうした取り組みから発展したのがキヤノンMJと の共同配送だった。
同社の物流部門と情報交換をす る中で、昨年春頃から検討が始まった。
この共同化 もやはり改正省エネ法が要因の一つとなっている。
 プリンターは年々製品の小型化が進んでいる。
例え ば昨年度に発売した「カラリオ」の容積は〇七年度ま での型に比べて約三〇%も小さい。
それだけ積載率 の向上は難しくなる。
一方、主な納品先である量販 店は店舗数の増加に合わせて一括物流センターを増設 東洋紡物流部の 山岸博之主幹 帝人クリエイティブスタッフ 物流企画部兼機材購買部の 谷文和担当課長 エプソン販売の平林洋一 物流サービス部部長 31  OCTOBER 2009 フィーも南日本が調整する。
「ベンダーさんは何十も の店舗の指定時間に大変な苦労をされている。
しかし われわれに在庫を預けて配送を任せてくれれば、それ までに負担していた物流コストよりもセンターフィー を低く設定できる。
そしてチェーン本部も商物分離に よって商品の本体価格と物流コストを洗い出せる。
関 係者全員にとってメリットのある仕組みを築いている」 と南日本の大園博史社長は説明する。
 現在、汎用センターは埼玉県川口市とさいたま市岩 槻区の二カ所に置いている。
来年央には三五億円を投 資し同区に三カ所目の共配センターを開設する計画だ。
 「新センターが稼働すれば配送ネットワークはさら に密になる」と大園社長。
積載率と配送効率は受託 件数と貨物量に比例する。
現在、都心向けの共配車 両は繁華街を数カ所回り、センターに帰着しているが、 新センターの稼働で荷主が増えれば一つの車両で一つ の繁華街をカバーできるようになるという。
郊外でも 大型ショッピングセンターのフードコートなどへの配送 件数増を想定している。
 外食不況は深刻化しているが、新センターは先行投 資で建設する。
大園社長は「首都圏には四〇〇〇万 近い胃袋がある。
不況でステーキが豚肉に変わっても 物量が減るわけではない。
ローコストで高品質な提案 をすれば荷主は集まる」と自信を持っている。
 昨年度の南日本の連結売上高は二二五億円。
経 常利益率は約一〇%を誇っている。
今後も共配セン ターの増設を続け、中期目標として売上高三六五億 円、運行車両二〇〇〇台以上を目指す。
既に千葉県 でも共配センターの用地を取得した。
商品決済への進 出も検討している。
「利益率は徐々に厳しくなってい くかもしれないが、社員教育と品質向上で何とかが んばっていく」と大園社長は意気込んでいる。
南日本運輸倉庫の 大園博史社長 流部門の方と話して先方にとってメリットのあるかた ちに変えていくことで、当社の効率が向上し環境負 荷も軽減したというケースが増えている」と平林部長 は手応えをつかんでいる。
中小外食チェーン&南日本運輸  エプソンとキヤノンの共同化は、いずれも日通を メーンの物流パートナーとしていたことが大きくプラ スした。
ライバル同士の共同化でも中立的な第三者と して物流企業が仲介すれば拒絶反応を抑制することが できる。
首都圏を地盤とする南日本運輸倉庫は、そ れを外食チェーンにしかけることで不況下でも順調に 業績を伸ばしている。
 外食チェーン向けの汎用センターを建設し、自社専 用センターを作るほどの規模がないチェーンに対して 受発注、在庫管理から店舗配送までを一括して請け 負っている。
貨物を三温度帯の共配便に混載し、各 店舗の時間指定に応じて納品している。
 受発注の締め時間と納品時間は業態や店舗によって 異なる。
時間指定が厳しいチェーンも緩いチェーンも ある。
この差を利用し、南日本はチェーン側の要望を 組み合わせて配送効率を上げている。
ただし、外食 チェーンのなかでも直接バッティングする店同士は混 載しないよう配慮している。
 汎用センターは外食チェーンに商品を納めるベン ダーにとってもメリットがある。
店舗納品は店舗数が 多ければ多いほど負担になる。
納品先が南日本の汎 用センター一カ所になれば、店舗納品に使用していた 多くの車両が不要になる。
浮いた金額を南日本と荷 主ばかりでなく、ベンダーともシェアしている。
 新規案件の立ち上げに当たっては、南日本がベン ダー説明会を開催し、仕組みと品質を説明。
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