2009年10月号
ケース

ホギメディカル 医療物流

OCTOBER 2009  36 医療物流 ホギメディカル 手術材料を一式セットして病院に直送 ITと物流を駆使して経営改善まで支援  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
手術の準備作業を大幅に削減  ホギメディカルは、一九六一年の会社設立 以来、四八年連続増収を達成している医療用 消耗品の大手メーカーだ。
二〇〇九年三月期 の売上高は三一〇億円で前年比六・九%増。
営業利益は七五億円で、営業利益率二四・ 二%という高い収益性を誇っている。
 従来から滅菌用包装材や手術用ガウンなど 不織布製品の分野ではトップメーカーとして不 動の地位にあったことに加え、近年は手術材 料を一式セットにして病院に納品し、ITと 物流サービスを駆使して手術室の運営効率化 を支援するソリューションが急拡大している。
 同社は医療機器や材料を滅菌する際に用 いる包装材を六四年に日本で初めて販売した。
この商品は、医療の安全性を高めるのに一役 買い、今では商品名の「メッキンバッグ」が 滅菌用包装材の一般名称のように用いられる ほど認知度が高い。
 七二年には、使い捨て医療材料を世に出し た。
それまで手術用のガウンやドレープなど は綿など布製のものが主流で、使用後に洗濯 し再利用するのが一般的だった。
手術中に血 液がガウンなどに付着することも多く、院内 感染を防ぐための安全対策が求められていた。
 そこで同社は、綿布の代わりに使い捨てタ イプの不織布でガウンやドレープ、キャップ などを製品化し、使用後ただちに廃棄処理す る方法を医療機関に提案した。
これらの製品 も医療関係者の間に広く浸透し、医療材料の 新市場を切り開いた。
 このメッキンバッグと不織布製品に続く、 三つ目の画期的製品が「キット製品」で、や はり同社がトップシェアを握っている。
単品 の商品ではなく、院内で手術や処置を行う際 に必要な医療器具や医療材料をセットにして 提供する。
 一回の手術に使用する医療器具や材料は二 〇〇〜三〇〇アイテムに上る。
必要な部材を 病院の保管室から集めて手術の手順通りに並 べておく準備作業には、大がかりな手術の場 合、数人の看護士があたって一〜二時間かか る。
業務負荷は決して小さくない。
集品時に 取り間違えが起こる危険もある。
 こうした病院側の業務負担を軽減しミスの 発生を抑制するため、同社は九四年に業界で 初めてキット製品を商品化した。
それぞれの 手術に必要な材料をパッケージにまとめ、滅 菌を施して病院に届ける。
 病院ではパッケージを開封して材料を並べ るだけで手術前の準備が済む。
看護婦一人で 一〇〜一五分程度しかかからない。
不要なも のが入っていないため集品ミスも起こらない。
キット製品の中身はすべて使い捨てで、手術 後はパッケージごと廃棄処分できるようにな っており、後片付けも簡単だ。
 同社は病棟や外来で使う注射器やピンセッ ト、ガーゼなど処置用の簡易キットから手術 用のフルキットまで、不織布などの自社製品 医療用消耗品メーカーのホギメディカルは手術 に使用する医療器具や材料をセットにして受注から 4日後に病院に届けるサービスを提供している。
これ を利用することで病院は無駄な在庫を持たずに済み、 手術の準備にかかる時間を大幅に短縮できる。
発表 から5年間で契約件数は100件を超えた。
37  OCTOBER 2009 に限らず他社の製品も組み合わせて、病院の 需要に応じさまざまなキット製品を提供して いる。
 キット製品は組み合わせた複数の医療材料 や器具を滅菌用包装材で単一包装して滅菌を 行う。
厚生労働省では、単品で滅菌を施すの と、集合体にして施すのとでは安全性に違い があるという判断から、キット製品を単品の 製品とは別の製品として位置づけている。
 メーカーはキット製品を製造するにあたっ て、単品製品とは別に安全性に関する審査 を受け、厚労省の承認を得なければならない。
そのためキット製品の内容を充実させるのに は時間がかかる。
同社はこれまでに、他社か らの仕入れ品も含めおよそ二万点の材料につ いてキット製品製造の承認を得ている。
この 点数は業界で最も多く、先行者利益となって いる。
手術室こそ病院の最大の収益源  さらに同社は〇四年四月にキット製品をよ り進化させた「オペラマスター」という商品 を売り出した。
病院の経営改善を支援する狙 いで開発した同社の戦略商品だ。
 〇四年は国立病院の独立行政法人化が実施 され、経営の透明性を高めるため病院会計に 企業会計基準が導入された年でもあった。
政 府の進める医療制度改革のもとで病院の経営 環境は大きく変化しつつあった。
 それまで医療機関の多くは、経験や勘を 頼りに医療材料などの物品の発注を行い、手 書き伝票で購買管理や在庫管理を処理してい た。
業務効率が著しく悪いうえ管理精度も低 く、不良在庫がたびたび発生するなどロスが 大きかった。
 診療報酬が相次いで引き下げられるなかで、 健全な事業運 営を行うため病 院も一般企業 並みの経営効 率化を迫られ ていた。
企業 会計の導入は、 病院の経営体 質改善を目指 す最初の一歩 だった。
これ によって各病院は医療材料などの購買・在庫 管理を高度化する必要があった。
しかしシス テム構築や人件費などの新たな費用が発生す れば、大きな負担になってしまう。
そこでこ れを支援するために、医療関連企業などが 様々なかたちで新しいサービスに乗り出した。
 医療材料の卸や物品管理のITソリューシ ョンを手がけるシステムインテグレーターなど が病院の「SPD(サプライ・プロセッシン グ・ディストリビューション)=物品管理業 務」を代行するサービスや、物流会社の手が ける院内物流などがその代表例だ。
 これに対してホギメディカルの提供するオペ ラマスターは、病院の中の?手術室?に焦点 を当て、物品管理の効率化だけでなく、手術 室内の医療業務全体の効率化を支援すること に狙いを置いている。
 同社はかねがね、手術室は病院にとって最 大の利益源であると見ていた。
全国公私病院 連盟が行った病院運営の実態調査からも、多 くの病院で外来や入院病棟の収支が赤字とな っているのに対し、手術室の収益性は比較的 高いことが明らかになっている。
このことか ら同社は、手術室の運営を効率化して手術の 件数を増やすことが、病院の経営を改善する うえで最も効果的だと考えた。
 手術の件数を増やす方策としては、手術の スケジュール管理を改善して手術室の未稼働 時間を減らすことや、手術前の準備にかかる 時間を短縮することなどが挙げられる。
すで 図2 筑波工場の概要 配送センター 滅菌センター キット工場 部材倉庫 新配送センター ディスポーザブルガウンと ディスポーザブルドレープ 整形外科キット 図1 ホギメディカルの主力商品 メッキンバッグ OCTOBER 2009  38 に述べた通り同社がそれまで販売してきたキ ット製品は、一回の手術に必要な材料をセッ トで供給する商品で、手術前の準備時間を短 縮するという点で大いに有効だった。
 ただし準備時間の短縮によって手術の件数 が増えても、使用する材料などの管理がずさ んで適切な仕入れが行われていないと収支バ ランスは改善されない。
事実、キット製品を 購入している病院のなかにも、在庫が正確に 管理されていないため材料の使用期限が過ぎ て在庫ロスを発生させてしまうケースが少な くなかった。
 手術室の運営を効率化するには、どんな材 料をいくら仕入れてどれだけ使ったか、スタ ッフを何人配置したかなど、手術ごとに管理 できる体制にする必要がある。
そこで同社は キット製品にこうした情報管理を行うための ソリューションを付加してオペラマスターとし て新たに商品化した。
 オペラマスターの導入を希望する病院には、 病院ごとにカスタマイズされた専用端末を貸 与する。
病院は端末で手術のスケジュールを 管理し、手術の日程に合わせてキット製品の 発注を行う。
 また手術に使用した物品の種類や数、準備 に費やした時間やスタッフの人数などを端末 に入力し、原価管理に必要な情報を収集して、 手術一件あたりの収支を把握する。
同社の営 業担当者がこれらのデータをもとに手術室の 稼働率や在庫水準、人員配置などを適正化す る。
国内にはこれ以外に美浦第一工場と第二 工場の二工場を置いている。
筑波工場が稼働 する前は、美浦第二工場でキット化(組み合 わせ)を行った後に、別の場所にある滅菌セ ンターで滅菌を施して出荷していた。
 筑波工場にはキット工場のほか部材倉庫、 滅菌センター、および二棟の配送センターが 併設されている。
部材の調達からキットの組 み合わせ・包装、滅菌、出荷までを一カ所で 行えるようになった。
この一貫体制がオペラ マスターの物流システムを支えている。
 部材倉庫には厚労省の承認を受けた二万点 の材料が保管されている。
このうちおよそ半 分は他社からの仕入れ品だ。
材料にはそれぞ れ医療機器の標準バーコードであるGS1─1 28で商品コード・有効期間・製造ロット番 号などが表示してある。
このバーコードを活 用して在庫管理や庫内作業を効率化し、商品 の追跡管理を実施している。
キット化したあ との製品にもタグをつけて滅菌記録の管理を 行っている。
 滅菌センターでは、医療材料の滅菌法とし て多く用いられているガス法よりもはるかに 処理時間の短い電子線滅菌法を採用した。
ま た二棟ある配送センターはいずれも、コンピ ューター制御により入庫から出庫までがすべ て自動化されている。
 キット製品は手術の内容や担当する医師に よってセットする材料の中身が一つひとつす べて異なる。
従って受注生産が基本だ。
契約 るうえで目安となる管理指標を提供し、病院 の経営改善に役立ててもらう。
 オペラマスターのもう一つの目玉が物流サ ービスだ。
受注時に納期を約束して従来のキ ット製品よりも短い日数で届ける。
 通常のキット製品は受注から納品までに一 週間から一〇日かかる。
これに対してオペラ マスターを導入した病院には四日で届ける体 制をとっている。
病院はこの日数から逆算し て、手術日の前日に必要な材料が届くよう納 期を指定して発注を行うことで在庫数を最小 限に抑制することが可能になる。
キット化から出荷まで一貫体制  簡易キットを除く同社のキット製品はすべ て、〇三年に稼働した筑波工場で製造してい 図3 オペラマスター手術件数推移 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 05.3 期06.3 期07.3 期08.3 期09.3 期 10.3 期 49期 1Q 48 期3Q 48 期1Q 47 期3Q 47 期1Q 46 期3Q 46 期1Q 45 期3Q 45 期1Q 44 期3Q 44 期1Q (万件) 39  OCTOBER 2009 庫でピッキングを行い、キット工場でオーダー ごとに組み合わせてメッキンバッグに包装す る。
このあとの滅菌から配送センターでの出 荷まではすべて自動処理される。
 共通部材は事前にキット化  リードタイムを短縮するために一部のキッ トについては見込み生産を行っている。
最終 的に組み合わせるキットの中身に違いはあっ ても、構成する材料の七〜八割は共通してい る。
このため七〜八割にあたる部分を事前に 小分けにしてキットをつくっておき、オーダ ーが確定した段階で一つのキットにまとめる 方法をとっている。
 オペラマスターのキット製品については専 用の製造ラインを設け、最短の日数で製造を 行っている。
配送もほかの製品とは別の形態 をとっている。
メッキンバッグや不織布製品、 一般のキット製品については、全国に二六カ 所ある同社の営業所および卸の拠点を経由し て病院に配送している。
これに対しオペラマ スターのキット製品は工場の配送センターか ら病院へ直送している。
一部の地域を除けば、 翌日配送も可能だ。
 このように業務フローや輸送方法の見直し により受注から四日以内の納品が実現した。
製造や滅菌処理が必要な「キット製品のリー ドタイムとしてはかなり短い水準だと思う」 と石井順雄管理部長は話す。
 同社は年間の手術件数が三〇〇〇件を超え る病院をターゲットに、オペラマスターの販 売に力を入れてきた。
販売開始から五年間の 累計でオペラマスターの契約件数は一〇八件 を数えるまで増加した。
累計手術件数は今や 四〇万件を超えている。
 オペラマスターを採用した病院からは、?年 間の手術回数が増えた、?材料購入費を削減 できた、?看護士が手術前のピッキングや準備 作業から解放され本来の業務に専念できるよ うになった、などの評価を得ているという。
 〇九年三月期決算の製品別売上高でキット 製品は四二・七%を占め、メッキンバッグや 不織布用品類を抑えて最も比重が大きい。
こ のうちオペラマスターの構成比がすでに半分近 くを占め、売り上げ全体でも一九%に達して いる。
オペラマスターが近年における同社の成 長の原動力になっていることは間違いない。
 中期経営計画でも同社はオペラマスターの 強化を戦略の柱に位置づけ、年間に三〇件以 上の契約拡大を目標にしている。
今年は情報 システムのバージョンアップを実施し、月次 から日次でのより短いサイクルで経営分析が できるようにした。
またカメラを使って手術 室でのスタッフの滞在時間を詳細に把握する 仕掛けなども取り入れた。
 「最近では製造現場並みの原価管理をめざ す病院も増えている。
そうした病院のニーズ に対応できるようさらにオペラマスターの内容 を充実させていきたい」と石井部長は話して いる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 時に病院との間で手術方法・医師ごとにキッ ト製品を構成する材料を決め、情報をコンピ ューターに登録しておく。
 オーダーが入ると登録内容に従って部材倉 図4 売上と製品別売上の推移 350 300 250 200 150 100 50 0 (億円) 10 / 03 09 / 03 08 / 03 07 / 03 06 / 03 05 / 03 04 / 03 03 / 03 02 / 03 01 / 03 00 / 03 99 / 03 98 / 03 97 / 03 96 / 03 95 / 03 94 / 03 93 / 03 92 / 03 91 / 03 90 / 03 89 / 03 88 / 03 87 / 03 86 / 03 85 / 03 84 / 03 83 / 03 82 / 03 81 / 03 80 / 03 79 / 03 78 / 03 77 / 03 76 / 03 75 / 03 74 / 03 73 / 03 72 / 03 71 / 03 70 / 03 69 / 03 68 / 03 67 / 03 66 / 03 65 / 03 64 / 03 63 / 03 62 / 03 (予定) キット用品類 42.7% その他 12.1% 不織布用品類 35.3% メッキンバック 9.8% ※09 / 03 実績 メッキンバック 不織布 総売上 キット

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