2009年11月号
特集

第1部 最低限これだけは知っておこう

NOVEMBER 2009  12 最低限これだけは知っておこう  複数の物流企業から提案を募り、最良のパートナー を選んでロジスティクスを効率化する、コンペ形式の入 札が広く行われるようになってきた。
運営ノウハウの 蓄積も進んできた。
安易にコンペに臨んで痛い目にあ わないように基礎知識を押さえておこう。
(大矢昌浩) 入札準備 ・PJ チーム結成 ・物流分析 ・RFP 作成 ・入札通知、等 合理化施策詳細化 下請集約・選定 現行業務洗い出し 3PL 条件検討 (契約書、SLA、コスト) システム要件定義 (3 カ月) 応札 評価 ・ 選定 M1 図表1 3PL のフレームワークと標準的な導入手順 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 業務移行(引き継ぎ)、 業者切替 入札準備(3 カ月) 入札(3 カ月) トライアル 月次で物流評議会 アクセンチュア資料より 本格 運用 ☆ ☆ ☆ 3PL 化詳細検討(6 カ月) 物流網合理化 新オペレーション体制構築 契約詳細化 新業務設計 (業務フロー作成) システム設計・構築・テスト (4カ月) 入札RFP 発行 基本合意書締結、 共同PJチーム発足 正式契約締結 応札〆切 1社選定 3PLオペレーション開始 第1 部   スケジュール 本稼働まで一年かかる  提案依頼書(RFP)の作成から本契約に至る コンペ期間は通常なら三カ月程度だ。
しかし、コ ンペ前の事前準備に三カ月。
本契約後に業務の詳 細を詰めて新体制に移行するのに六カ月はかかる。
着手から本稼働まで、トータルでは一年以上かか ることを覚悟する必要がある(図表1)。
 ロジスティクス・サポート&パートナーズ(ロジ SP)の中根治専務は「コンペはダイエットと同じ だ」という。
長い期間にわたって努力を強いられ る。
動機付けがあいまいだと途中で挫折してしま う。
即効性を求めて無理をすれば、リバウンドの 可能性も高くなる。
 「成功したいなら、まずは目的をハッキリさせる こと。
一年後に結婚式があるとか、痩せないと生 死に関わるといった大義名分があれば、いくら大 変でも何とか乗り越えられる」と中根専務。
なぜ 物流コンペを実施するのか。
その理由を明確にし て、社内で共有しておく必要がある。
現状把握 自力でできない場合も  まずは配送費、保管料、作業費用などの実績を 整理する。
必要な資料は具体的には図表2の通り だ。
全て揃っているだろうか。
手元にあるのは物 流子会社が発行した請求書だけ。
しかも現場オペ レーションは物流子会社から下請け、孫請けへと 再委託されていて、物流子会社にも実績値がない といったケースが実際には珍しくはない。
 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタ ント(PWCC)の木村弘美ディレクターは「物流 のアウトソーシングが進んだことで、ノウハウまで 特 集 物流コンペのすべて 13  NOVEMBER 2009 3PL側に移ってしまい、荷主側の管理能力が下 がっている。
物流がブラックボックス化し、コスト はもちろんサービスレベルも把握できていない荷主 が増えている」と指摘する。
 ウチの物流コストは高いんじゃないか──そんな 経営陣の問いかけに、物流管理部門が納得のいく 回答をできない。
既存の協力物流会社に支払って いる料金の妥当性を説明できない。
コストを削減 したいという以前に、現状が分からないという理 由から物流コンペを開催する荷主が目立ってきた という。
ロジSPの中根治専務 分類 運賃 ロジスティクス・サポート&パートナーズ資料より 保管料 作業料 システム費 費用負担 資材費 自社配送 契約配送 調達費用 自社倉庫 契約倉庫 マテハン・庫内設備 自社人件費 委託人件費 梱包包装・伝票代 物流支援 内部事務経費 荷扱手数料 内訳必要なデータ 自社車両経費、運転手人件費、燃料費、高速料金 契約している各社の契約書・見積書 各月の請求書明細(できれば1 年分) 支払内訳が明確であればその費用。
明確なら入庫頻度と使用車両台数 契約書、土地代、賃料、償却費(建物・設備)保険料 契約書、契約賃料、入出庫委託料、保険料負担分、設備利用料 リース料(設備・マテハン機器) 水光熱費 物流部固定人件費、残業代 契約している各社の契約書・見積書 投入工数、処理個数、伝票枚数 段ボール・伝票等購入費用 WMS、HTT 等庫内業務に関与するシステムのリース料、減価償却 伝票発行、データ管理 売上比率、先方からの作業料、運賃負担割合による請求 センターフィー (得意先センター負担費用) 図表2 物流コンペ実施時に必要な費用情報 1.概要 ●提案を依頼する荷主企業の概要 ●RFP 提示の背景(外部委託/協力業者見直しによる狙い) 2.提案にあたっての諸条件 1)業務委託範囲、スケジュール ●取扱商品(商品分類、代表商品、流通加工内容、SKU 数) ●業務委託対象範囲(チャネル・物流ネットーワーク図上で委託対象範囲を明記) ●業務委託実施までのスケジュール 2)業務実施に当たっての要件 ●取扱物量 入荷、保管、流通加工、社内移動、エリア配送、返品、のそれぞれについて 年間/ピーク月の入荷/社内移動物量(出荷先数、コンテナ数/車両数、ケース数、重量) 年間平均/ピーク日の在庫量 年間/ピーク月の流通加工量(対象SKU 数、作業量(PC)、作業時間) 年間/ピーク日の返品物量(件数、口数、ライン数) 年間配送物量(モード別・県別・月別、配送先数、ケース数、重量) ●顧客サービスレベル 出荷単位、受注タイミング、納入リードタイム、納期順守率 サービス不順守理由別件数、顧客クレーム件数   ●業務プロセス プロセスフローおよび委託範囲・作業概要(ロット管理条件、トレーサビリティー管理要件など) ●情報システム 荷主企業情報システム機能図、委託先に期待する情報システム機能範囲 委託先に期待する情報システム機能要件 荷主企業情報システムとのインターフェイス要件(データ項目、処理タイミング) ●インフラ(倉庫など)への要件 荷主企業常駐スペース、スプリンクラー、通信環境などの附帯設備 ●法規制対応 ●継続的改善の仕組み KPI、データ取得、契約条件 3) 回答依頼項目 ●提示要件を実現する提案 ●コスト見積もり(回答項目の詳細度を指定) ●スケジュール 図表3 提案依頼書(RFP) の構成 アクセンチュア資料より 図表4 リチャード・ミューサーの「PQRST」 品種、アイテム数、荷姿、サイズ、質量、 段積み制限などのハンドリング条件、特 別な製品特性など 拠点別入出荷・在庫量、配送マップ、入 出荷波動、入出荷ロットサイズ、誤出荷率、 返品率、破汚損率、交錯輸送実績、利用 業者別実績、運行効率、自家物流費など 物流チャネルと輸配送手段、拠点別出荷 プライオリティ基準、情報チャネル、物 流に関する管理組織と権限、各物流チャ ネルにおける支配権の強弱 各輸送機関(マルチモーダル)、諸設備、 パレットなどの補助具のタイプ、情報機 器などの物流インフラ条件 受注から出荷までのリードタイム、時間 帯別受注処理件数、輸配送サービスレベ ル、緊急出荷などの発生頻度、稼働日と 作業時間帯など P(Product)製品 Q(Quantity)物量 R(Route)モノの流れ S(Service)サービス T(Time)時間 ロジ・ソリューションの坂直登氏作成 図表4 リチャード・ミューサーの「PQRST」 品種、アイテム数、荷姿、サイズ、質量、段積み制 限などのハンドリング条件、特別な製品特性など 拠点別入出荷・在庫量、配送マップ、入出荷波動、 入出荷ロットサイズ、誤出荷率、返品率、破汚損率、 交錯輸送実績、利用業者別実績、運行効率、自家物 流費など 物流チャネルと輸配送手段、拠点別出荷プライオリ ティ基準、情報チャネル、物流に関する管理組織と 権限、各物流チャネルにおける支配権の強弱 各輸送機関(マルチモーダル)、諸設備、パレット などの補助具のタイプ、情報機器などの物流インフ ラ条件 受注から出荷までのリードタイム、時間帯別受注処 理件数、輸配送サービスレベル、緊急出荷などの発 生頻度、稼働日と作業時間帯など T(Time)時間 ロジ・ソリューションの坂直登氏作成 P(Product)製品 Q(Quantity)物量 R(Route)モノの流れ S(Service)サービス NOVEMBER 2009  14 図表6 物流業者評価・選定の方法(例) 進め方・評価内容ポイント 1 次選定 2 次選定 A社の物流要件を実現 できる業者を選定 提案依頼書の提示 今回の物流業務提案へ の参加可否を判断 物流機能の評価 物流機能(能力、サー ビス)を評価 販売物流コストの評価 物流機能の評価が高い 物流業者についてコス ト面での評価 新規物流業者への 移行実施評価 新規業者への移行、ま たは既存物流業者への 委託継続について決定 ・A社物流要件の実現性・物流業務委託能力  (自社評価) ・提供される物流機能・配送費用 ・初期費用 ・機能的なメリットデメ リット ・ランニング費用 ・初期費用 新規業者1 社 既存物流業者 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント資料より 物流業者の決定 選抜提案提出 業者8社 既存物流業者 業者選定約 60社 選抜新規業者4社 選抜新規業者3社 区分 Must (欠かせない 機能) プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント資料より Want (望ましい 機能) 全国ネットでの配送 物量の受入体制 休日出荷対応 類似商材取扱い経験 類似納入先納入経験 財務上の安全性 サービスレベルの安定 改善活動への表彰 商材拡大への対応 複数拠点の保有 運送業者選択の柔軟性 企業としての成長性 評価項目評価内容 全国ネットで品質の高い配送を行うことができる 物量の多い顧客を受け入れる体制が整っている 休日に出荷作業を行うことができる A社と類似する商材(電気機器等)を取り扱った経験がある A社と類似する納入先(3カメ・家電量販店等)への納入経験がある 過去3年間の業績(経常損益)において損失を計上していない ISO9001を取得しており、安定したサービスが提供できる 業界団体から改善活動に対して表彰を受けている 取扱い商材の拡大に対応できる リスク対応、拠点分散化に対応できる複数拠点を有している 運送業者を柔軟に選択できる 過去3年の売上高が増加している 図表5 物流業者1 次選定評価項目の設定  実態の把握が自力では困難な場合には、既存の 体制のまま管理業務だけをコンサルタントや3PL に委託して、外部の手を借りて実態を把握しても らうしかない。
それだけコストと時間がかかるが、 正確さを欠いた情報を基に改革を実施してしまう と、後から大きな代償を支払うことになる。
提案依頼書の作成 基本は「PQRST」  図表3はアクセンチュアが作成した物流コンペ の標準的な「提案依頼書(RFP: Request for Proposal)」の構成だ。
荷主企業の概要に始まり、 業務委託範囲や実績データ、使用するインフラの詳 細を事細かに提示した上で、物流企業に求める提 案内容と回答項目、スケジュールを列記している。
通常その総ページ数は数十ページにも及ぶ。
 RFPに必要なデータ項目は荷主企業によって異 なる。
生産管理技術を専門とする米国人コンサル タントのリチャード・ミューサーは物流改善に必要 な分析項目を図表4のように「製品( Product)」 「物量(Quantity)」「モノの流れ(Route)」「サー ビス(Service)」「時間(Time)」の五つに分類し て整理している。
その頭文字を取って「PQRS T分析」と呼ばれる。
一九六〇年代に開発された 手法だが、現在でも有効だ。
一次審査 情報提供依頼書で絞り込む  外資系企業や専門コンサルタントが介在するコン ペでは、RFPを提示する前段階で一次審査を行 うことが多い。
この時点での候補数は、数十社か ら一〇〇社以上になることもある。
可能な限り多 くの候補をリストアップすることが、企業の購買・ 調達活動の原則とされている。
それが協力物流会 PWCCの木村弘美ディレクター 特 集 物流コンペのすべて 15  NOVEMBER 2009 図表7 物流業者機能評価の観点 図表8 物流業者機能評価方法の概要 物流プロセスの 現在の視点 レベル 評価の観点(カテゴリー) 評価項目重みの設定 提案力 業務管理 システム化・情報提供力 不測のリスクへの対応力 物流波動への対応力 庫内作業サービス提供力 対顧客サービス提供力 移行時のリスク 将来的な構造変化への対応力 将来の視点 A社での実施領域 将来的な 構造変化 への対応 システム化・情報提供力 不測のリスクへの対応 物流波動への対応力 庫内作業サービス提供力 対顧客サービス提供力 現在保有のシステム、荷主が要望する情報 項目の提供可否から、システム化・情報提 供力を評価する 災害やシステムトラブルの対応から、リスク 対応力を評価する 現状の物流波動への対応可否を確認する 現状提供されているサービスが維持できるか 評価する(今回の業務要件レベル) 今回の提案内容と業務改革提案の仕組み などから、荷主企業への提案力を評価する 物流の業務の管理方法から、適切に業務を 遂行するための管理能力を評価する 商品の取扱実績、保有拠点 数などから、将来的な構造変 化への対応を評価する 現状提供されている顧客に対する物流サー ビスの維持と今後改善できるサービスに基づ いて、対顧客サービス提供力を評価する 提案力 業務管理能力 移行時のリスク 物流戦略 レベル 物流 プランニング レベル 物流 オペレーション レベル その他 ・評価基準に従い、各項目で物流業者の物流機能を採点 ・採点結果に各項目の重みを乗じた点数を評価の観点毎に集計 ・集計結果をレーダーチャートで表記 新規配送先追加への対応 入荷即出荷への対応 特別仕様の商品の管理 在庫管理精度 梱包サイズの計算 例えば… …など9 項目 3 2 3 3 3 評価項目を各3〜12項目設定各評価項目を重要性に応じて 3 段階で重みを付けた 物流戦略部にて 重みを設定 プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント資料より プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント資料より 社の選定にも反映されている。
 一次審査の候補各社には基礎データの提出を要 請する。
「情報提供依頼書(RFI:Request for Information)」と呼ばれる。
RFIの内容は各候 補企業の拠点展開やアセットの概要、情報システ ム、事業実績など。
ほとんどは各社の会社案内に 記載されているレベルの情報だが、一定のフォー マットに沿って情報を記載してもらわないと比較 がしにくい。
RFIを使って必要な要件を満たし ていない候補企業をふるい落とす。
 図表5はPWCCが支援したコンペの一次審査 の選定基準だ。
このケースではコンペの開催前に、 荷主の物流の現状把握と「あるべき姿(To─Be モデル)」の構築に約三カ月をかけ、機能要件を定 義した。
それをベースに物流会社に求める機能を、 「Must(あるべき物流機能を実現するために欠 かせない機能)」と「Want(あるべき物流機 能を実現するために有していることが望ましい機 能)」の二つに区分して、評価項目を設定している。
二次審査 提案力・対応力を評価する  二次審査に進んだ候補に対しては、守秘義務契 約を結んだ上でRFPを渡す。
RFPには多くの 企業秘密が含まれているうえ、その後の審査では 各候補との緊密なやりとりが発生する。
各候補の 多面的で詳細な評価も必要となる。
そのため通常 は一次審査で候補を一〇社以下まで絞り込む。
 図表6は先のPWCCのコンペで、候補企業を 評価し選定した流れを示している。
このケースでは 六〇社にRFIを通知し、一次審査として既存の 協力会社の他に八社の候補を選んだ。
さらに、八 社に対しRFPを提示したところ、四社が二次審 NOVEMBER 2009  16 織し、オペレーションを具体化していく。
同時に本 契約の詳細を詰めていく。
 荷主が外資系の場合、契約書は英語と日本語の 二つのバージョンを用意する必要がある。
しかも外 資系の契約書は極端に分厚い。
日本なら「本契約 に記載のない事項ついては甲乙誠意をもって協議 する」という一文で済ませるところを、外資系企 業は一つひとつケースを挙げて、その対処法と責 任について契約書に明文化する。
 センコーグループで3PLの導入支援を行ってい るロジ・ソリューションでは、今年四月から3PL 標準契約書の作成に取り組んでいる。
これまでに 同グループが受託した3PL案件の契約書の内容を 洗い直して、各条項の文面を整理している。
作業 に当たる中谷祐治ロジ・ソリューション3PL事業 部ロジスティクス部部長は「契約書によってカバー している範囲や文面があまりに違うことに、今さ らながら驚かされている」という。
 基本的に日本の契約書は性善説に立っていて、ト ラブルが起こった時の対処法や契約解除の条件など が曖昧にされている。
例えば専用センターの業務 委託契約を途中で解除する場合、その施設に導入 した設備類の残存リースを荷主と物流会社のどち らがどれだけ負担するのか、契約書には明記され ていない。
 「そうしたことが後々、紛争の原因になってしま う。
現状の契約書は荷主と物流会社の双方にとっ てリスクが大きい。
3PLの運用を重ねることで、 何が欠けているのか明らかになってきた。
運営が順 調な時には誰も契約書のことなど気にしない。
契 約書が必要になるのは、何かトラブルが発生した時 だ。
最悪の事態を想定する必要がある。
3PLの 契約種類 ? 業務請負契約 ? 個建て契約 ? 従価契約 ? オープンブック ? ゲインシェアリング メリット デメリット メリット デメリット メリット デメリット メリット デメリット メリット デメリット 内容メリット/デメリット 図表9 各料金体系のメリット/デメリット 単価ベース契約のため、双方に請求内容・コスト内 訳がわかりやすく、状況の変化に強い 対象業務を契約条件どおりに遂行することで対価を得る契約方 式。
契約内容は業務ごと単価によって構成され、請求項目も連動 する。
最も一般的な契約形態。
荷主企業が取り扱う製品・商品ごとに、その目的の遂行と達成ま での一貫した作業を1単位として単価設定を行い、請求する契約 方式。
基本的に入荷〜納品までの業務を一貫して請け負う、包括 受託時に適用される契約方式。
荷主企業が行う物流業務をほぼ100%包括して受注し、対象業 務におけるセンター通過売上額の○%、といった比率で物流費を 請求する方式。
包括受託時に適用され、小売センターでは「セ ンターフィー」と呼ぶ場合が多い。
主に物流企業が自社の損益を公開し、取り決められた利益を荷主 企業が保証する形で運用を行う形式。
一種の運命共同体になるため、相互協力体制を組みやすいメリッ トがある。
物流改善における改善項目と期間、具体的方法を荷主、物流企 業が双方に合意し、協力の上(もしくは物流企業主導)で改善 を行い、そこで得られるコスト削減額を一定の割合(通常は50%: 50%)で分配する料金体系とその契約をいう。
価格競争に弱く、付加価値業務の追加を「コ ストアップ」ととらえられやすい 単位ごと物流コストが把握しやすく、物流企業にとっ ては価格競争に強いメリットあり 対象製品・商品の追加毎に見積りが発生し、請求 形態が煩雑になる、原価が見づらくなる 物流費を完全に変動費化でき、物流企業にとっては 価格競争に強いメリットあり 荷主企業の業績が下降した場合、採算割れを起こ す可能性がある 荷主企業にとってはコストが透明化し、物流企業に とって経営が安定化するメリットあり 物流企業にとっては儲けにくい。
他社荷物を取り込 みにくい。
管理が煩雑になる場合あり 相互に一致した目標に対して努力と協力体制が組め るため、早期に改善効果を得やすい 最初の基準設定が困難であり、また最終成果を証明 することが難しい。
ロジスティクス・サポート&パートナーズ資料より 査に進むことを断念した。
 残る四社と既存業者を図表7のアプローチで評価 した。
「提案力」や「業務管理」などのハイレベル な評価項目のほかに、「システム化・情報提供力」 や「不測のリスクへの対応」などオペレーションレ ベルの評価に対して、それぞれ三〜十二の具体的 な採点ポイントを設けている。
 例えば「庫内作業サービス提供力」では、「新規 配送先追加への対応」、「入荷即出荷への対応」、「特 別仕様の商品の管理」、「在庫管理精度」、「梱包サ イズの計算」といった計九項目の採点ポイントが設 定され、それぞれの重要性に応じた三段階の重み 付けをして評価している(図表8)。
 この評価制度に対応した質問事項が当初からR FPの回答依頼項目として設定されている。
PW CCの木村ディレクターは「当社には物流コンペの RFPで使用される要件定義や評価ツールがテンプ レートとして蓄積されている。
そこからその荷主 に必要な項目を選び出すというやり方で、重要な 項目が抜け落ちることを避けている」と説明する。
契約書の作成 最悪の事態を想定する  選考結果が決まったら、コンペを勝ち抜いたパー トナー企業と「LOI:Letter Of Intent」と呼ば れる確認書を取り交わす。
LOIは正式の契約書 ではなく、「予備的合意書」や「関心表明書」と も訳される基本合意書だ。
法的拘束力は「覚え書 (MOU:Memorandum of Understanding)」よ りも低いとされる。
 それでもLOIには両社のトップがサインする。
その時点で業務の委託は事実上確定する。
その後 は荷主と物流会社との共同プロジェクトチームを組 特 集 物流コンペのすべて 17  NOVEMBER 2009  日本企業が一年かけるコンペをグローバル企業は半 分から三分の一の時間で処理している。
グローバル 企業は世界中のどこにでも、すぐに進出できる体制 を整えている。
そのためのマネジメントの型を持って いる。
そのパッケージのなかにロジスティクスも組み 込まれている。
オペレーションの方法に至るまで、日 本の常識よりもずっと踏み込んで標準化している。
 3PLに業務を委託する範囲はソリューションまで 含めるのか、それともオペレーションだけなのか。
物 流会社との間でやり取りすべき情報の内容とそのイ ンターフェースの仕組みはどう実現するのか。
3PL への委託範囲やマネジメント手法、サービスレベルが 当初から明確になっている。
入札方法もテンプレート 化されているので着手から運用開始までのスピード が速い。
 ガバナンスが明確なので本社の人間が大挙して現地 に行かなくてもいい。
最初から現地化できる。
事業 を立ちあげるスピードを重視して、当初は現地の3P Lにソリューションを任せ、その状況をKPIで把握 し、必要なレベルに達していなければ後からグローバ ルな仕組みを導入して改善する、といった運営がで きる。
 グローバル 企業は基本 的に統治の視 点から管理し ている。
日 本はオペレー ションから入 る。
日本のオ ペレーション はグローバルな標準よりずっと優れていることが多い。
しかし、それは日本の現場のスキルと、業務の役割 分担やサービスレベルが不明確でも?あうんの呼吸? で吸収してしまうカルチャーを前提にしている。
人に 依存しているので海外には移植できない。
無理に移 植すればコストがかかる。
稼働までに時間もかかる。
 そのため日本企業は現地化が苦手だ。
実際、日本 企業が日系物流企業を使いたがる傾向は依然として 残っている。
人材はもちろん、サービスや品質も日 本と同じレベルを新興国でも求める。
地域別のサービ スレベルの管理ができていない。
高付加価値のニッ チなビジネスに特化しているのならそれでも良いが、 ボリュームゾーンで勝負しようとなれば厳しい。
 グローバル経営は、事業とファンクションのマトリク ス型で管理するのが基本。
これまでの日本企業はクロ スファンクションの横軸で管理する機能や組織が弱く、 結果的に事業別、市場別の最適化に偏っていた。
 一部の日本企業は既に動き出している。
まずは世 界のどこの国、どこの市場であってもグループ会社が 共通して実施するキーとなる業務、守るべきKPI を社内で定義する。
それをベースにして、各市場の 環境に合わせて必要に応じてローカライズする。
 その際にはトップダウンでやることがポイントだ。
ボトムアップでは結局、既存のオペレーションに振り 回されてしまう。
ローカライズしていいのは基本的に、 その地域の法令や商習慣などやむを得ないものに限 られる。
それぞれの現場の事情に配慮したやり方を 許してしまえば標準化などできない。
グローバル企 業においては現場ごとの効率よりも、事業を立ちあ げるスピードやガバナンスを確保するメリットのほう がずっと大きい。
             (談) 「グローバル企業のスピードに追いつけ」 アクセンチュア 西川幸希 SCMグループマネジャー ような包括的なアウトソーシングでは契約書は分厚 く成らざるを得ない」と中谷部長はいう。
移行期 移転コストは想像以上  パートナーと正式契約を結んだ後、新体制を本 格稼働させるまでには通常三カ月程度の移行期間 が設定される。
その間も日常業務はストップできな い。
二重作業になるので、一時的とはいえ必要な スタッフ数は大きく膨らむ。
移転の直接費もかかっ てくる。
 ロジSPの中根専務は「コンペが済み、新体制 の詳細と料金も決定し、着手から一年以上かけて ようやく本番となった時点になって、初めて移転 の費用を捻出できないと分かり、土壇場で計画を 取りやめたケースを見たことがある。
移転にかか る手間と費用は一般的に考えられているよりずっ と重い」と指摘する。
 コンペの結果、協力会社を切り替えることにな た場合には、取引を打ち切る既存業者の協力を得 なければならない。
スムースな移行には細心の配 慮が必要だ。
しかも、そこで巨額の移行費用が発 生すれば、改革によるコスト削減効果が吹っ飛ん でしまう。
 こうした一連のプロセスを荷主企業が自分の力 だけで処理し、本格稼働までこぎ着けるのは容易 ではない。
それを担当者任せにすれば、結果とし て担当者の思いつきで物流会社を評価し、その後 はパートナーの言いなりになってしまう恐れがある。
そのためコンペを開催する企業の多くはコンサルタ ントの支援を仰ぐ、あるいは専門家をスタッフとし てスカウトしている。
リスクの大きさを考えればム ダな出費ではないだろう。

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