2009年11月号
特集
特集
第3部 物流会社は荷主をこう見ている
NOVEMBER 2009 22
究極の運賃叩きシステム
フォワーダー殺し││ここ数年、国際航空貨物の
ビッド(入札)に広く導入されるようになった究極の
運賃叩きシステム「イーオークション」の別称だ。
三、 四年前から一部の荷主が導入し始めて以降、急速に 普及が進んでいる。
ネット・オークション形式でフォワーダーに運賃を 競わせる。
通常のオークションでは価格がつり上がっ ていくのに対し、イーオークションの場合は下がって いく。
参加するフォワーダーは端末に表示されたレー トよりも安い運賃を提示しなければならない。
最も安いレートを提示したフォワーダーが必ず受託 するというわけではない。
一次選考における?足き り〞に使う場合もあれば、ある程度選考が進んだ段 階で、提示されたレートをさらに一段引き下げるため に用いる場合もある。
レート以外の提案書と合わせて 選定の材料にするというのが一般的だ。
とはいえ、提案がいくら優れていても運賃水準が 他のコンペティターと比較して駆け離れて高ければ受 託は遠くなる。
その荷主の仕事を本気で獲りに行こう とすれば最安値に近い単価を余儀なくされる。
近鉄エクスプレスの服部雅一専務は「ライバル企業 の提示したレートがわかるので、胃に穴の空くよう なレート提示を何度も迫られる」と説明する。
ライバ ルも状況は同じなのでレートはどんどん下がっていく。
ようやく下げ止まるのは赤字ギリギリのラインだ。
イーオークションをビッドに導入しているのは、?グ ローバルアカウント〞と呼ばれる外資を中心とした超 大手荷主が大半だ。
日系荷主や中小規模の荷主への 対応とグローバルアカウントへの対応とでは、必要と なるノウハウやオペレーションが異なる。
そのため近 鉄エクスプレスでは、グローバル・ストラテジック・ カスタマーズ(GSC)本部を設けて担当する部門を 分けている。
服部専務がその本部長を務めている。
グローバルアカウントが実施する航空貨物のビッド においては、イーオークションの利用が今やスタン ダードになりつつある。
イーオークションの多くはシ ステムを開発したネット専業者が運営している。
彼ら が荷主からアウトソーシングを受けてビッドを代行す る。
荷主との間にはターゲット・レートが設定されて おり、そこにどれだけ近づけられたかで成功報酬を 得る。
グローバルアカウントのビッドは日本の一般的な ビッドと比べて候補企業の数が格段に多い。
一次審査 では数十社が候補になる。
ビッドの開催・運営は相応 の時間とコストを要す面倒な仕事だ。
イーオークショ ンを導入すれば、オペレーションの一部をアウトソー シングできる上、底値を拾うことができる。
一方で、フォワーダー側の負荷は増している。
グ ローバルアカウントが開催するビッドへの対応は、フォ ワーダーにとっても従来から一大作業だった。
提示さ れるRFQ(Request for Quotation:見積もり依頼 書)への回答を固めるだけでも大変な手間がかかる。
グローバルアカウントは数百の路線に対して運賃の 入札を求めてくる。
それも一路線につき、ドア to ドア やドア to エアポート、エアポート to エアポートなどい くつもの応札をしなければならない。
求められる応 札数が合計で数千にのぼることもある。
回答方法も フォーマットが厳密に定められており、そこから外れ れば即失格となる。
重い業務の上にイーオークション への対応まで迫られると、利益は大きく食われる。
イーオークションの普及は、とりわけ日系フォワー ダーには厳しい逆風となっている。
ライバルとなる欧 物流会社は荷主をこう見ている コスト削減を狙った物流コンペの増加は世界的な傾向 だ。
物量の減少に苦しむ物流会社の足元を見た値下げ圧 力が強まっている。
しかし、無理な受託は長続きするは ずもない。
荷主企業と同様に物流会社もまた荷主企業 の選別に動き出している。
(石鍋 圭) 第3 部 特 集 物流コンペのすべて 23 NOVEMBER 2009 米の大手フォワーダーは、近年M&Aを繰り返し、事 業規模を急拡大させている。
そのバイイングパワーを 背景に、安いレートをビッドに提示してくる。
?品質〞 を武器に戦う日系フォワーダーの分は悪い。
それでも近鉄エクスプレスの服部専務は、「確かに 厳しい局面ではあるが、必ずしも向かい風ばかりでは ない」という。
その根拠の一つが、グローバルアカウ ントの目が、中国をはじめとするアジアに向き始めた ことだ。
それも、これまでのように生産・出荷拠点 として価値を見出すだけでなく、巨大な消費地とし て注目していることに大きな意味があるという。
「欧米のグローバルアカウントの中には、すでに消費 マーケットとしてアジアに投資を開始している例が出 始めている。
その流れは今後ますます加速するだろ う。
それに伴うサプライチェーンも必要になる。
我々 は早くから中国に投資をしてきており、そのことは彼 らも高く評価してくれている。
これはレートの安さに 替えられない価値だと自負している」と服部専務。
コンペの引き合いが急増 リーマンショック以降、日系メーカーの物流コンペ も増加している。
香港に本社を置くOOCLグループ のOOCLロジスティクス・ジャパン(OOCLロジ) では、今年に入ってメーカーからの3PLコンペの引 き合いが急増しており、その数は例年の五倍以上に も達しているという。
しかし「我々にとって今のところ大きなビジネス チャンスにはなっていない。
日系メーカーの開催する コンペは遅々として進まなかったり、要求事項やスケ ジュールが曖昧でコンペの体を為していないことが多 い」とOOCLロジの樫山峰久取締役経営企画本部 長は指摘する。
OOCLロジはグローバル化の進んだ流通業者を メーンの荷主としている。
いずれの荷主も生産から店 頭に至るサプライチェーンの効率化を、事業の核と位 置付けている。
3PLに委託する業務範囲や必要な サービス条件など、物流のアウトソーシングにも明確 な基準を持っている。
そうした流通業者と比較すると、メーカーにおけ るロジスティクスの重要度は低いと感じざるを得ない。
ロジスティクスの基本方針が経営レベルで明確にさ れないまま、要件設定から物流会社の評価方法まで、 コンペの運営をすべて物流管理部門に任せてしまう傾 向がある。
「売上高比率の何%にも当たる、このやたらと高い 物流費を圧縮すれば利益を捻出できる。
実態がブラッ クボックスになっている分、改善の余地もあるだろう」 ││経営陣がそう考えて導き出す答えが物流コンペと いうわけだ。
しかし事前準備もなく慌ててコンペを開 催しても期待する効果を挙げることは難しい。
肝心の物流管理部門自体が改革を望んでいない。
既 存の協力会社との関係見直しは日常業務に軋轢を生 む。
物流管理部門の負担増は避けられない。
「合理化 などされたら、自分たちの仕事がなくなってしまう」 という負のマインドが働き、社内の?抵抗勢力〞に なってしまうケースさえある。
そのことに気付いた経営陣がトップダウンで改革に 乗り込んでも、これもまた上手くいかないことが多 い。
「メーカーの経営層がコンペや物流改革を主導す ると、フォーカスがロジスティクスからサプライチェー ン全体に広がってしまう傾向がある。
悪いことではな いが、サプライヤーや販売チャネルの選定などにまで 話が波及してしまって収拾がつかなくなる」とOOC Lロジの樫山取締役はいう。
OOCLロジスティクス (ジャパン)の樫山峰久 取締役経営企画本部長 近鉄エクスプレスの服部雅 一 専務取締役 世界本部長 グローバル・ストラテジッ ク・カスタマーズ本部長 医薬品・医療機器でさえコスト重視に 日本通運で消費財メーカーを対象とする営業第二部 の大畠吉雄部長(ヘルスケア担当)も「3PLを魔法 の玉手箱のように考えている荷主が多い。
物流を効率 化した結果としてコストは下がるものなのに、『すぐ にコストをドラスティックに下げてくれ』といった無 茶な要望を投げてくるメーカーが増えている」という。
大畠部長が担当するヘルスケア業界は、付加価値が 高く小さな商品が多いため、売上高に占める物流費比 が一%にも満たない。
そのため従来はサービスレベル の向上が物流管理のテーマだった。
高機能の自動倉庫 を自前で設置し、航空便をふんだんに使い、顧客ニー ズに徹底して応えることが業界標準となっていた。
それが現在はコスト重視にシフトしている。
当たり 前のように行われてきた航空便主体の全国翌日配送 や毎日出荷は姿を消した。
?サービスレベルを捨てて もコストを取る〞というのが今のコンペ要件の主流だ。
二〇〇〇年代に入って外資系のヘルスケアメーカー が日本市場に本格参入し始めた頃から変化は始まって いた。
物流のアセットを持たない外資系メーカーは当 然のように日本で3PLを利用した。
その影響から国 内メーカーの間にも、物流をアウトソーシングする流 れがドミノ倒しのように広がっていった。
中間流通を担う医薬卸の寡占化や薬事法の改正な どの影響でメーカーの収益は年々圧迫されている。
自 社で所有する豪華施設を正社員で回し、営業マンに納 品させる商物一体の物流体制にメスが入れられた。
た だし自社物流のアウトソーシングではサービスレベル の維持が前提条件だった。
それが一段落した現在は純 粋にコスト削減を目的としたコンペが頻繁に行われる ようになっている。
「どんなコンペでも声をかけられたら、とりあえず 参加する。
そして説明会に居合わせた物流会社の顔 ぶれを見て荷主のスタンスを確認する。
その後、RF Pを見て荷主の本音はどこにあるのか、どれだけ準備 しているかを判断する」と大畠担当部長はいう。
3PLにはそれぞれ得意分野がある。
同じヘルスケ ア業界でも日立物流は日用雑貨品が得意だし、医薬 品では倉庫の?空き待ち〞が出るほど三菱倉庫が強 い。
日通は医療機器の分野では他の追随を許さない。
ヘルスケアのなかでも医薬品や医療機器の物流には 専門知識が必要で、その管理には各種の資格や特別 な施設が必要になる。
扱うことのできる3PLは限ら れている。
それなのに説明会の席に総花的に物流会 社が並ぶコンペは、荷主が基礎的な情報収集さえして いないことを意味している。
逆にメンツを絞り込んで いる場合には荷主は本気だと判断できる。
荷主側の準備が不十分なコンペは、RFPの内容も ずさんだ。
ほとんど企業情報しか載っていないもの もある。
必要最低限の情報が無ければ、3PL側と しても提案のしようがない。
物流会社の評価も当てにならない。
その業界の物 流の商慣習や商品特性に配慮しない提案によって、い たずらにコンペが振り回されてしまう。
日通は医療機 器の物流に欠かせない条件を前提にしてコストを見積 もる。
しかし、実績のない物流会社は必要な要件を 理解していないので見積もりが甘くなる。
その違い を理解できない荷主は安い方を選んでしまう。
実際に運営が稼働して、初めて見積もりの金額で は回せないことが判明する。
業務を進めていくうちに 物流会社は想定外の事態に次々と直面する。
追加費 用の請求が繰り返される。
結果として日通が提案した コストよりも高く付いてしまう。
それでも正式に契約 NOVEMBER 2009 24 日本通運の大畠吉雄営業第 二部部長(ヘルスケア担当) ロジ・ソリューションの 中谷祐治3PL事業部 ロジスティクス部部長 特 集 物流コンペのすべて を結んだ3PLをすぐに切り替えることはできない。
大畠担当部長は「いったん当社が逸注した案件で 荷主がひどい目にあい、その数年後に今度は入札な しで当社を指名いただくというケースをこれまでに複 数経験している。
ずさんなコンペは荷主と物流会社の 双方にとって有害だ。
そのため値段を叩くことしか念 頭にない荷主や、当て馬が濃厚な案件では、我々も 相応の対応を取るようにしている」という。
3PL側でも荷主を選別 センコーはそれまで営業部門の傘下に置いてきた 3PLの提案部隊を昨年四月に分社化し、ロジ・ソ リューションとして独立させている。
センコーの営業 マンは担当する荷主がコンペを開催する場合、ロジ・ ソリューションに提案書の作成を委託し、プレゼン テーションの支援を受けることができる。
ただし、ロジ・ソリューションで発生する作業量に 応じたコンサルティング・フィーがセンコーの営業マ ンにチャージされる。
そのため受託できる可能性の低 い案件は、担当の営業マンの判断でコンペの参加が見 送られることになる。
「従来は営業マンがどんな案件でもお構いなしに提 案書の作成を我々に投げてきた。
担当の営業マンが判 断するしかない見積書の単価の決定まで押しつけられ ることもあった。
3PLの営業活動にコスト意識を導 入する必要があった」とロジ・ソリューションの中谷 祐治3PL事業部ロジスティクス部部長はいう。
コンペの参加は物流会社にコストと作業負担を強い る。
本格的な提案書を作成するとなれば、スキルを 持った人材を数週間張り付けなければならない。
コン ペが増えてきたことで、物流会社側でも荷主企業と 案件を選別せざるを得なくなっている。
25 NOVEMBER 2009 「最近の荷主はRFP作りがうまくなった」 こう語るのはトランコム経営企画グループ・エン ジニアリング担当の口脇安夫執行役員だ。
以前はよ く見られたずさんなRFPの数が、ここ数年で大き く減っている。
物量データやアウトソーシングしたい 業務範囲なども明確になっているという。
「コンサルの活用もあるのだろうが、何より荷主が 物流の価値を良く理解し、学んでいるという表れで は」と分析する。
RFPの要件が明確になればコンペにおける物流 会社側の負担は減る。
受注後のオペレーションもし やすい。
しかし、必ずしも歓迎する面ばかりではな いという。
「確かにコンペはスムーズに進むが、要件を固めら れすぎてしまうと3PLとして改善を提案できる余 地が少なくなってしまう。
結局、値段勝負になって しまうことも多い」 たとえRFPが不完全でも、情報が足りなければ ヒアリングして問題点を浮き彫りにすればいい。
そ の問題点への提案能力にこそ3PLの価値があると いうのが口脇執行役員の持論だ。
トランコムでは昨年発表した中期経営計画の中で、 3PL事業の強化を最重要課題の一つに掲げている。
同社の3PL 事業は九年ほ ど前からスタ ートを切って いるが、この 二、三年の間に 引き合いが増 えてきた。
3 PL事業をさらに伸ばし、コア事業である求貨求車 事業とのシナジー効果を発揮させることが狙いだ。
今年度から3PL事業に特化した提案部隊を創設 した。
従来は地域割りで各担当者が3PLの提案や 営業に当たっていたが、社内で提案ノウハウなどに バラツキがあり、共有されていないという弊害があ った。
これを是正するために3PLの提案機能を全社横 串の営業企画グループに集約した。
責任者のポスト に招聘されたのが、メーカー子会社で3PL事業の 立ち上げや提案業務に長年携わってきた口脇執行役 員だ。
口脇執行役員が就任直後から取り組んでいるのが、 荷主の状況把握の徹底だ。
「荷主が何に困っていて、何を求めているのかを ヒアリングや現場視察などで洗い出し、それを提案 書に盛り込む。
以前はトランコムが?売りたい〞機 能をメインに提案書を作る傾向があったが、完全な ?顧客仕様〞にシフトした」 提案書の作り方も変化した。
プレゼンで一分間説 明するのに当たり、提案書を一ページ作成するとい う目安を設けた。
三〇分のプレゼンなら三〇ページ、 一時間なら六〇ページの提案書を作成する。
提案書 が長すぎても短すぎても荷主には刺さらない。
一分 当たり一ページという分量が最適なのだという。
今年度のトランコムの3PLのコンペの数は昨年 と比べて微増だが、成約率は上がっている。
口脇執 行役員は「詳細には言えないが今期のコンペの勝率 は今シーズンの松井の打率くらい。
悪くはない。
こ の数字を保ち続ければ社内目標の数字には届く」と 語る。
「RFPは完璧じゃない方がいい」 トランコム 口脇安夫 執行役員 経営企画グループ エンジニアリング担当
三、 四年前から一部の荷主が導入し始めて以降、急速に 普及が進んでいる。
ネット・オークション形式でフォワーダーに運賃を 競わせる。
通常のオークションでは価格がつり上がっ ていくのに対し、イーオークションの場合は下がって いく。
参加するフォワーダーは端末に表示されたレー トよりも安い運賃を提示しなければならない。
最も安いレートを提示したフォワーダーが必ず受託 するというわけではない。
一次選考における?足き り〞に使う場合もあれば、ある程度選考が進んだ段 階で、提示されたレートをさらに一段引き下げるため に用いる場合もある。
レート以外の提案書と合わせて 選定の材料にするというのが一般的だ。
とはいえ、提案がいくら優れていても運賃水準が 他のコンペティターと比較して駆け離れて高ければ受 託は遠くなる。
その荷主の仕事を本気で獲りに行こう とすれば最安値に近い単価を余儀なくされる。
近鉄エクスプレスの服部雅一専務は「ライバル企業 の提示したレートがわかるので、胃に穴の空くよう なレート提示を何度も迫られる」と説明する。
ライバ ルも状況は同じなのでレートはどんどん下がっていく。
ようやく下げ止まるのは赤字ギリギリのラインだ。
イーオークションをビッドに導入しているのは、?グ ローバルアカウント〞と呼ばれる外資を中心とした超 大手荷主が大半だ。
日系荷主や中小規模の荷主への 対応とグローバルアカウントへの対応とでは、必要と なるノウハウやオペレーションが異なる。
そのため近 鉄エクスプレスでは、グローバル・ストラテジック・ カスタマーズ(GSC)本部を設けて担当する部門を 分けている。
服部専務がその本部長を務めている。
グローバルアカウントが実施する航空貨物のビッド においては、イーオークションの利用が今やスタン ダードになりつつある。
イーオークションの多くはシ ステムを開発したネット専業者が運営している。
彼ら が荷主からアウトソーシングを受けてビッドを代行す る。
荷主との間にはターゲット・レートが設定されて おり、そこにどれだけ近づけられたかで成功報酬を 得る。
グローバルアカウントのビッドは日本の一般的な ビッドと比べて候補企業の数が格段に多い。
一次審査 では数十社が候補になる。
ビッドの開催・運営は相応 の時間とコストを要す面倒な仕事だ。
イーオークショ ンを導入すれば、オペレーションの一部をアウトソー シングできる上、底値を拾うことができる。
一方で、フォワーダー側の負荷は増している。
グ ローバルアカウントが開催するビッドへの対応は、フォ ワーダーにとっても従来から一大作業だった。
提示さ れるRFQ(Request for Quotation:見積もり依頼 書)への回答を固めるだけでも大変な手間がかかる。
グローバルアカウントは数百の路線に対して運賃の 入札を求めてくる。
それも一路線につき、ドア to ドア やドア to エアポート、エアポート to エアポートなどい くつもの応札をしなければならない。
求められる応 札数が合計で数千にのぼることもある。
回答方法も フォーマットが厳密に定められており、そこから外れ れば即失格となる。
重い業務の上にイーオークション への対応まで迫られると、利益は大きく食われる。
イーオークションの普及は、とりわけ日系フォワー ダーには厳しい逆風となっている。
ライバルとなる欧 物流会社は荷主をこう見ている コスト削減を狙った物流コンペの増加は世界的な傾向 だ。
物量の減少に苦しむ物流会社の足元を見た値下げ圧 力が強まっている。
しかし、無理な受託は長続きするは ずもない。
荷主企業と同様に物流会社もまた荷主企業 の選別に動き出している。
(石鍋 圭) 第3 部 特 集 物流コンペのすべて 23 NOVEMBER 2009 米の大手フォワーダーは、近年M&Aを繰り返し、事 業規模を急拡大させている。
そのバイイングパワーを 背景に、安いレートをビッドに提示してくる。
?品質〞 を武器に戦う日系フォワーダーの分は悪い。
それでも近鉄エクスプレスの服部専務は、「確かに 厳しい局面ではあるが、必ずしも向かい風ばかりでは ない」という。
その根拠の一つが、グローバルアカウ ントの目が、中国をはじめとするアジアに向き始めた ことだ。
それも、これまでのように生産・出荷拠点 として価値を見出すだけでなく、巨大な消費地とし て注目していることに大きな意味があるという。
「欧米のグローバルアカウントの中には、すでに消費 マーケットとしてアジアに投資を開始している例が出 始めている。
その流れは今後ますます加速するだろ う。
それに伴うサプライチェーンも必要になる。
我々 は早くから中国に投資をしてきており、そのことは彼 らも高く評価してくれている。
これはレートの安さに 替えられない価値だと自負している」と服部専務。
コンペの引き合いが急増 リーマンショック以降、日系メーカーの物流コンペ も増加している。
香港に本社を置くOOCLグループ のOOCLロジスティクス・ジャパン(OOCLロジ) では、今年に入ってメーカーからの3PLコンペの引 き合いが急増しており、その数は例年の五倍以上に も達しているという。
しかし「我々にとって今のところ大きなビジネス チャンスにはなっていない。
日系メーカーの開催する コンペは遅々として進まなかったり、要求事項やスケ ジュールが曖昧でコンペの体を為していないことが多 い」とOOCLロジの樫山峰久取締役経営企画本部 長は指摘する。
OOCLロジはグローバル化の進んだ流通業者を メーンの荷主としている。
いずれの荷主も生産から店 頭に至るサプライチェーンの効率化を、事業の核と位 置付けている。
3PLに委託する業務範囲や必要な サービス条件など、物流のアウトソーシングにも明確 な基準を持っている。
そうした流通業者と比較すると、メーカーにおけ るロジスティクスの重要度は低いと感じざるを得ない。
ロジスティクスの基本方針が経営レベルで明確にさ れないまま、要件設定から物流会社の評価方法まで、 コンペの運営をすべて物流管理部門に任せてしまう傾 向がある。
「売上高比率の何%にも当たる、このやたらと高い 物流費を圧縮すれば利益を捻出できる。
実態がブラッ クボックスになっている分、改善の余地もあるだろう」 ││経営陣がそう考えて導き出す答えが物流コンペと いうわけだ。
しかし事前準備もなく慌ててコンペを開 催しても期待する効果を挙げることは難しい。
肝心の物流管理部門自体が改革を望んでいない。
既 存の協力会社との関係見直しは日常業務に軋轢を生 む。
物流管理部門の負担増は避けられない。
「合理化 などされたら、自分たちの仕事がなくなってしまう」 という負のマインドが働き、社内の?抵抗勢力〞に なってしまうケースさえある。
そのことに気付いた経営陣がトップダウンで改革に 乗り込んでも、これもまた上手くいかないことが多 い。
「メーカーの経営層がコンペや物流改革を主導す ると、フォーカスがロジスティクスからサプライチェー ン全体に広がってしまう傾向がある。
悪いことではな いが、サプライヤーや販売チャネルの選定などにまで 話が波及してしまって収拾がつかなくなる」とOOC Lロジの樫山取締役はいう。
OOCLロジスティクス (ジャパン)の樫山峰久 取締役経営企画本部長 近鉄エクスプレスの服部雅 一 専務取締役 世界本部長 グローバル・ストラテジッ ク・カスタマーズ本部長 医薬品・医療機器でさえコスト重視に 日本通運で消費財メーカーを対象とする営業第二部 の大畠吉雄部長(ヘルスケア担当)も「3PLを魔法 の玉手箱のように考えている荷主が多い。
物流を効率 化した結果としてコストは下がるものなのに、『すぐ にコストをドラスティックに下げてくれ』といった無 茶な要望を投げてくるメーカーが増えている」という。
大畠部長が担当するヘルスケア業界は、付加価値が 高く小さな商品が多いため、売上高に占める物流費比 が一%にも満たない。
そのため従来はサービスレベル の向上が物流管理のテーマだった。
高機能の自動倉庫 を自前で設置し、航空便をふんだんに使い、顧客ニー ズに徹底して応えることが業界標準となっていた。
それが現在はコスト重視にシフトしている。
当たり 前のように行われてきた航空便主体の全国翌日配送 や毎日出荷は姿を消した。
?サービスレベルを捨てて もコストを取る〞というのが今のコンペ要件の主流だ。
二〇〇〇年代に入って外資系のヘルスケアメーカー が日本市場に本格参入し始めた頃から変化は始まって いた。
物流のアセットを持たない外資系メーカーは当 然のように日本で3PLを利用した。
その影響から国 内メーカーの間にも、物流をアウトソーシングする流 れがドミノ倒しのように広がっていった。
中間流通を担う医薬卸の寡占化や薬事法の改正な どの影響でメーカーの収益は年々圧迫されている。
自 社で所有する豪華施設を正社員で回し、営業マンに納 品させる商物一体の物流体制にメスが入れられた。
た だし自社物流のアウトソーシングではサービスレベル の維持が前提条件だった。
それが一段落した現在は純 粋にコスト削減を目的としたコンペが頻繁に行われる ようになっている。
「どんなコンペでも声をかけられたら、とりあえず 参加する。
そして説明会に居合わせた物流会社の顔 ぶれを見て荷主のスタンスを確認する。
その後、RF Pを見て荷主の本音はどこにあるのか、どれだけ準備 しているかを判断する」と大畠担当部長はいう。
3PLにはそれぞれ得意分野がある。
同じヘルスケ ア業界でも日立物流は日用雑貨品が得意だし、医薬 品では倉庫の?空き待ち〞が出るほど三菱倉庫が強 い。
日通は医療機器の分野では他の追随を許さない。
ヘルスケアのなかでも医薬品や医療機器の物流には 専門知識が必要で、その管理には各種の資格や特別 な施設が必要になる。
扱うことのできる3PLは限ら れている。
それなのに説明会の席に総花的に物流会 社が並ぶコンペは、荷主が基礎的な情報収集さえして いないことを意味している。
逆にメンツを絞り込んで いる場合には荷主は本気だと判断できる。
荷主側の準備が不十分なコンペは、RFPの内容も ずさんだ。
ほとんど企業情報しか載っていないもの もある。
必要最低限の情報が無ければ、3PL側と しても提案のしようがない。
物流会社の評価も当てにならない。
その業界の物 流の商慣習や商品特性に配慮しない提案によって、い たずらにコンペが振り回されてしまう。
日通は医療機 器の物流に欠かせない条件を前提にしてコストを見積 もる。
しかし、実績のない物流会社は必要な要件を 理解していないので見積もりが甘くなる。
その違い を理解できない荷主は安い方を選んでしまう。
実際に運営が稼働して、初めて見積もりの金額で は回せないことが判明する。
業務を進めていくうちに 物流会社は想定外の事態に次々と直面する。
追加費 用の請求が繰り返される。
結果として日通が提案した コストよりも高く付いてしまう。
それでも正式に契約 NOVEMBER 2009 24 日本通運の大畠吉雄営業第 二部部長(ヘルスケア担当) ロジ・ソリューションの 中谷祐治3PL事業部 ロジスティクス部部長 特 集 物流コンペのすべて を結んだ3PLをすぐに切り替えることはできない。
大畠担当部長は「いったん当社が逸注した案件で 荷主がひどい目にあい、その数年後に今度は入札な しで当社を指名いただくというケースをこれまでに複 数経験している。
ずさんなコンペは荷主と物流会社の 双方にとって有害だ。
そのため値段を叩くことしか念 頭にない荷主や、当て馬が濃厚な案件では、我々も 相応の対応を取るようにしている」という。
3PL側でも荷主を選別 センコーはそれまで営業部門の傘下に置いてきた 3PLの提案部隊を昨年四月に分社化し、ロジ・ソ リューションとして独立させている。
センコーの営業 マンは担当する荷主がコンペを開催する場合、ロジ・ ソリューションに提案書の作成を委託し、プレゼン テーションの支援を受けることができる。
ただし、ロジ・ソリューションで発生する作業量に 応じたコンサルティング・フィーがセンコーの営業マ ンにチャージされる。
そのため受託できる可能性の低 い案件は、担当の営業マンの判断でコンペの参加が見 送られることになる。
「従来は営業マンがどんな案件でもお構いなしに提 案書の作成を我々に投げてきた。
担当の営業マンが判 断するしかない見積書の単価の決定まで押しつけられ ることもあった。
3PLの営業活動にコスト意識を導 入する必要があった」とロジ・ソリューションの中谷 祐治3PL事業部ロジスティクス部部長はいう。
コンペの参加は物流会社にコストと作業負担を強い る。
本格的な提案書を作成するとなれば、スキルを 持った人材を数週間張り付けなければならない。
コン ペが増えてきたことで、物流会社側でも荷主企業と 案件を選別せざるを得なくなっている。
25 NOVEMBER 2009 「最近の荷主はRFP作りがうまくなった」 こう語るのはトランコム経営企画グループ・エン ジニアリング担当の口脇安夫執行役員だ。
以前はよ く見られたずさんなRFPの数が、ここ数年で大き く減っている。
物量データやアウトソーシングしたい 業務範囲なども明確になっているという。
「コンサルの活用もあるのだろうが、何より荷主が 物流の価値を良く理解し、学んでいるという表れで は」と分析する。
RFPの要件が明確になればコンペにおける物流 会社側の負担は減る。
受注後のオペレーションもし やすい。
しかし、必ずしも歓迎する面ばかりではな いという。
「確かにコンペはスムーズに進むが、要件を固めら れすぎてしまうと3PLとして改善を提案できる余 地が少なくなってしまう。
結局、値段勝負になって しまうことも多い」 たとえRFPが不完全でも、情報が足りなければ ヒアリングして問題点を浮き彫りにすればいい。
そ の問題点への提案能力にこそ3PLの価値があると いうのが口脇執行役員の持論だ。
トランコムでは昨年発表した中期経営計画の中で、 3PL事業の強化を最重要課題の一つに掲げている。
同社の3PL 事業は九年ほ ど前からスタ ートを切って いるが、この 二、三年の間に 引き合いが増 えてきた。
3 PL事業をさらに伸ばし、コア事業である求貨求車 事業とのシナジー効果を発揮させることが狙いだ。
今年度から3PL事業に特化した提案部隊を創設 した。
従来は地域割りで各担当者が3PLの提案や 営業に当たっていたが、社内で提案ノウハウなどに バラツキがあり、共有されていないという弊害があ った。
これを是正するために3PLの提案機能を全社横 串の営業企画グループに集約した。
責任者のポスト に招聘されたのが、メーカー子会社で3PL事業の 立ち上げや提案業務に長年携わってきた口脇執行役 員だ。
口脇執行役員が就任直後から取り組んでいるのが、 荷主の状況把握の徹底だ。
「荷主が何に困っていて、何を求めているのかを ヒアリングや現場視察などで洗い出し、それを提案 書に盛り込む。
以前はトランコムが?売りたい〞機 能をメインに提案書を作る傾向があったが、完全な ?顧客仕様〞にシフトした」 提案書の作り方も変化した。
プレゼンで一分間説 明するのに当たり、提案書を一ページ作成するとい う目安を設けた。
三〇分のプレゼンなら三〇ページ、 一時間なら六〇ページの提案書を作成する。
提案書 が長すぎても短すぎても荷主には刺さらない。
一分 当たり一ページという分量が最適なのだという。
今年度のトランコムの3PLのコンペの数は昨年 と比べて微増だが、成約率は上がっている。
口脇執 行役員は「詳細には言えないが今期のコンペの勝率 は今シーズンの松井の打率くらい。
悪くはない。
こ の数字を保ち続ければ社内目標の数字には届く」と 語る。
「RFPは完璧じゃない方がいい」 トランコム 口脇安夫 執行役員 経営企画グループ エンジニアリング担当
