2009年12月号
ケース
ケース
三井化学 3PL
DECEMBER 2009 38
3PL
三井化学
物流子会社を吸収し実務子会社を売却
アウトソーシングに切り替え機能強化
住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築
施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達
成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
事業部から「物流が見えない」 大手化学メーカーの三井化学は、最近三年 間で物流の管理体制を抜本的に見直した。
従 来はグループ内の複数の物流子会社を使って オペレーションを管理していた。
一〇〇%子 会社の三井化学物流(MCB)を元請けに、 その傘下で四つのオペレーション子会社と協 力物流会社が実務に当たる体制だった。
グループ内に五つもの物流子会社を抱えて いたのには歴史的な経緯がある。
三井化学は 九七年一〇月に三井石油化学工業と三井東 圧化学の合併によって誕生した。
合併前の二 社はそれぞれ物流子会社を持っており、三井 石油化学は二社(三京海陸運輸と三同運輸倉 庫)、三井東圧化学は一社(エム・ティ・ビ ー)を擁していた。
〇三年七月に三井化学の物流部門とエム・ ティ・ビーの管理部門を再編してMCBを新 設した。
同時にエム・ティ・ビーの現業部門 を東西に分割。
MCBの一〇〇%子会社とし てMCI物流東日本とMCI物流西日本と いう二つのオペレーション会社を発足させた。
これによって総元請会社であるMCBが、 関連の四つの実務会社と、外部の物流専業者 を使って、グループの物流を担う体制ができ あがった。
発足時のMCBの年商は五四〇億 円。
従業員数は一五〇人だった。
実はMCBの設立と、エム・ティ・ビーの 東西分割は、〇一年四月に発表された三井化 学と住友化学の経営統合を前提とした措置だ った。
しかし、〇三年三月末に統合は白紙撤 回された。
物流子会社の再編だけがそのまま 継続され、結果として物流子会社を五つ抱え ることになった。
三井化学の物流部の下にMCBがあり、さ らにその下にオペレーション子会社がぶら下 がるという構造は、管理部門と現場の距離を 隔ててしまった。
?荷主?である事業部から も「物流が見えない」という声が上がるよう になり、物流子会社の存在意義に疑問符が付 くことになっていった。
物流子会社を使ってオペレーションを管理 する当時のやり方は、ライバルの三菱化学や 住友化学も同じだった。
ただし、それぞれの 物流子会社の?実力?には歴然たる差があっ た。
たとえば三菱化学物流は、年商こそMC Bの一・五倍程度だが、約一一〇〇人の従業 員を抱え、自ら輸送車両や船舶、タンクなど の資産を保有。
親会社以外を対象とする外部 販売も手掛けながら、物流事業者として毎年、 安定的に利益を残していた。
三井化学SCM室の寺崎俊夫物流部長は、 2008年1月に三井化学物流を本体に吸収した。
オ ペレーションを担当していた子会社4社も、09年9月 末までにすべて物流専業者に売却した。
その一方で 3PLの活用を本格化している。
07年から山九、08年 から丸全昭和運輸をパートナーとする大型案件をス タートさせた。
SCM室の寺崎俊夫物流部長 39 DECEMBER 2009 一連の物流改革の発端を次のように振り返る。
「〇六年頃に〇四年からの中期経営計画の ローリングをやるなかで?物流改革?の実施 を決めた。
『機能強化』と『組織改革』が二 本柱だった。
機能強化では、物流の永遠のテ ーマであるコストダウン・安全品質・グリー ン化・グローバル化の四つを、それぞれ高度 化するために3PLを導入する。
そしてグル ープ内に複数あった物流子会社の役割を見直 す組織改革も進めることになった」 二つの選択肢があった。
物流子会社を使う 自社物流体制を強化するか、これを見直して 外部の物流専業者を活用していくか。
この意志決定のために、社外のコンサルタ ントも使って評価を実施した。
その結果、コ スト・安全品質・グリーン化・グローバル化 の四つの軸のなかで、自社物流によって優位 性を確保できるのは、唯一、安全品質だけと いうことが改めてはっきりした。
業界トップレベルの競争力を物流子会社に 確保させようとすれば、MCBとオペレーシ ョン子会社四社のインフラを拡充するために 一〇〇億円以上を投じる必要があった。
だが 本業ではない物流分野に多額の資金を投じる ことは、「選択と集中」を推進したい三井化学 の経営方針に反する。
現実的な選択肢は、物 流専業者の活用しかありえなかった。
寺崎部長は、「一〇〇%子会社の立場であ れば荷量は確保できるかもしれない。
だが物 流インフラに投資する余力はない。
物流業界 の競争が激しくなっていくなかで、これでは どんどんジリ貧になってしまう。
働いている 人たちにとっても、大手の物流会社の傘下で 必要な資金を投じて、一般の物流専業者と競 争できる会社になっていくほうがいい」と組 織改革の目的を説明する。
子会社に見切りをつけ3PL導入 〇七年十一月の取締役会で、MCBの本 体への吸収合併を正式に決定した。
翌〇八年 一月一日付でMCBは消滅し、所属していた 人たちは本体や関連会社の物流部門などへ異 動していった。
三井化学とMCBが株式を保 有していた四つのオペレーション子会社を解 消する方針も確認された。
かつて化学メーカー各社が物流子会社を設 立し、自ら物流管理を手掛けてきたのは、安 心して業務を任せられる物流専業者が存在 しなかったからだ。
しかし、時代は変わった。
物流子会社の指揮下で実務を担い、ノウハウ 三井化学の物流の“あるべき姿”と現状のギャップ(06 年時点) 物流課題現 状あるべき姿 ? コスト削減 ? 安全品質向上 ? グローバル化 ? グリーン化 ●合理化案件の枯渇 ●協力会社(270 社)の 集約余地あり ●事業部要請に対応する全 社横断的なコストダウン が推進できる ●危険物管理体制が整備さ れている ●物流不具合の更なる低減 ●事業部要請に対応する物 流企画・設計ができる。
●国際物流の最適化が実 現できている ●データの管理・解析が 可能なシステムがある ●横断的なCO2 削減施策 が立案できる ●MENET 等、安全管理 体制が整備されている ●海外物流の物流企画・ 構築力不足 ●情報収集・データ解析 力が不十分 ●改正正省エネ法に対応 できる管理システム、 体制未整備 ●施策提案力不足 三井化学の 物流部門 (MCI+MCB)の 現状 ?グリーン化 ?安全品質向上 ?コスト削減 ?グローバル化 大手物流会社あるべき姿 安全・品質を除けば現有能力と あるべき姿とのギャップが大きい 07年当時の物流部および物流子会社の役割分担 機 能組 織 物流戦略 企画・管理 オペレーション 管理 オペレーション・ 作業 三井化学(MCI) 物流部 三井化学物流 (MCB) 三京海陸 三同運輸 MCI物流西 MCI物流東 一般物流会社 関係会社 DECEMBER 2009 40 を蓄積してきた専業者が、物流子会社の役割 を肩代わりできるようになってきた。
そうした専業者が四つのオペレーション子 会社の譲渡先にもなった。
まず〇七年九月に、 三同運輸の全株式を合通に売却し、MCI物 流東日本も三井倉庫に売却した。
続く〇八年 三月には三京海陸の保有株五〇%を山九に売 却。
この会社の残り五〇%の株式は従来通り 三井物産系のトライネット・ロジスティクス が保有しつづけ、新会社はトライネットと山 九の折半出資となった。
〇九年九月にはMCI物流西日本の全株 式をニヤクコーポレーションに売却した。
これ によって三井化学は物流子会社と完全に決別 し、「組織改革」にメドをつけた。
こうした動きと並行して、「機能強化」の ために3PLの導入も進めた。
もっとも物流 業者との契約期間は原則として三年間と定め た。
三年に一度は入札を行うことを基本とし て、例外的に一年間の契約延長を二度まで認 める。
つまり、どれほど順調な案件でも、五 年に一度は必ず再入札を実施する。
複数の3PL事業者と、期間を区切って付 き合うことで、アウトソーシングの成果を最 大限に引き出すことを狙っている。
山九をパ ートナーとする第一弾案件はまもなく三年目 を終えるが、ほぼ予定通り一五%程度のコス ト削減を実現できる見込みだ。
取材時点では 再入札を実施するのか、契約を一年間延長す るのかを検討している最中だった。
物流コストの一五%削減めざす 第三弾となる3PLの導入準備も進めてい る。
先の二つの案件では、第一弾はウレタン 事業、第二弾は先端化学品事業と、製品群 ごとに分かれた事業部単位で委託範囲を括っ た。
これに対して第三弾では、樹脂固形品 を対象とする予定だ。
つまり事業部ではなく、 荷姿で対象領域を決めようとしている。
車両 への積み合わせの工夫などを事業部横断的に 実施することで、より大きな成果を狙う。
具体的な対象領域の選定を含め現在、作業 を進めている。
規模は第一弾と同様、年間六 〇億円程度になる見込みだ。
成果としても、 スタートから三年後に物流コストを約一五% 引き下げることをめざしている。
この第三弾では、もう一つの新しい切り口 子会社の解消が3PLに直結したわけではな かった。
外部の専業者をパートナーとしなが ら、三井化学の物流部門が現場まですべてを コントロールするという選択もあり得た。
このため最初は試験的な意味合いも含みな がら、〇七年四月にウレタン事業の管理に3 PLを導入した。
年間六〇億円規模の物流を アウトソーシングする準備を〇六年から進め、 物流コンペを開催。
候補企業二十数社のなか から最終的に山九をパートナーに選んだ。
こ れが三井化学にとって本格的な3PL導入の 第一弾となった。
幸いこの案件は成功し、稼働から一年後に は目的をほぼ達成できる手応えを得た。
この 実績を見た経営陣から、3PLの本格導入に 対して正式にゴーサインが出た。
これを受けて、〇八年四月に先端化学品 事業を対象とする第二弾の3PLを導入した。
年間二〇〜三〇億円規模の案件で、山九を 含む複数の物流事業者を対象に実施したコン ペの結果、丸全昭和運輸をパートナーに選択。
〇九年春から実運用を開始している。
3PLを一社に集約して、管理負担を軽減 するという選択はとらなかった。
「一社に集 約して規模を追求するという考え方もあり得 るが、それでは競争原理が働かなくなる恐れ がある。
取引先の数にこだわるつもりはない が、三社ぐらいが適切なのではないかと考え ている」と寺崎部長はいう。
取引の緊張感を維持するため、3PL事 三京海陸 運輸 三同運輸 倉庫 MCI 物流 西日本 MCI 物流 東日本 旧・三井石油化学工業と京義倉庫(現トライ ネット・ロジスティクス)が折半出資していた 物流子会社。
2008 年3 月に三井化学の持 ち株50%を山九に譲渡。
09年8月サンネッ ト物流に社名変更。
同じく旧・三井石油化学工業の物流子会社と して1976 年から事業をスタート。
07 年9 月に三井化学が持ち株すべてを合通に譲渡し た。
合通の100%子会社として再出発。
03 年にエム・ティ・ビー(旧・三井東圧化 学の物流子会社)の会社分割により発足。
三井化学物流の100%子会社だったが、 09 年9 月にニヤクコーポレーションの 100%子会社として再出発。
同じく03年にエム・ティ・ビーの会社分割 により発足。
三井化学物流の100%子会社 だったが、07 年9 月に三井倉庫の100% 子会社へ。
08 年2 月にMSCロジスティク ス東日本に社名変更。
オペレーション子会社もすべて整理した 41 DECEMBER 2009 ていこうというわけだ。
三井化学の物流部は、〇七年の段階で年間 四五〇億円規模の物流を管理していた。
この うち3PLを導入したのは、第三弾まで含め てもまだ三分の一程度でしかない。
今後はさ らに対象案件が増えていく可能性が高い。
同社の有価証券報告書に記載されている連 結決算の販売管理費に含まれる「運賃・保管 費」を見ると、直近の数値は五七二億円とな っており、物流部が管理している約四五〇億 円とは大幅に異なる。
これは事業部や関連会 社によっては、まったく独自に物流を管理し ているところがあるためだ。
それでも「運賃・保管費」の過去一〇年の 推移を見ると、全体としてかなりの成果を上 げてきたことがわかる。
そして3PLを導入 した領域ではさらに一五%程度の削減を積み 上げつつある。
現状では管理の対象外となっ ている関連会社、プライムポリマー(本誌〇 九年六月号ケーススタディ参照)なども今後 は3PLの導入対象になるかもしれない。
総勢三〇〇人のSCM室を新設 こうした物流合理化の先には、サプライチ ェーン管理の高度化という目標がある。
同社 は〇九年四月に本部級の組織として「SCM 室」を新設している。
その傘下に、それまで は独立した組織だったSCM推進部、購買部、 物流部、システム企画部という関連セクショ ンをすべて編入した。
これによりSCM室全 体では約三〇〇人の一大部隊となった。
改組する以前は、SCM推進部の管掌役員 と、それ以外の三部門の管掌役員が異なって いた。
これを四月からは佐野鉱一代表取締役 副社長が一人で担当している。
四部門の連携 を強化し、事業本部に横串を刺しながら在庫 水準などを最適化していこうとする方針のあ らわれだ。
SCMを高度化するためのITインフラは すでに整っている。
同社は九九年から約五 年をかけてERPの導入プロジェクトを実施 した。
需給管理を高度化するためマニュジス ティックス社のSCPソフトも導入している。
このプロジェクトで寺崎部長はサプライチェー ン分野を担当していた。
その後、情報システ ム部門の責任者を経て現職に就いた。
三井化学にとってサプライチェーン管理の 強化は急務だ。
大手化学メーカーの中でも同 社は自動車産業への依存度が高い。
リーマン ショック以降の不況の影響をもろに受けた。
在庫水準も急速に悪化している。
過去五年 の同社の連結棚卸資産回転期間(期首期末 平均)は一・六〜一・七カ月台で推移してい た。
これが〇九年三月期には二・一カ月とな り、前期の一・七七カ月から大幅に悪化して しまった。
全社を挙げて合理化に取り組んで いる現在、物流コストの削減に加えて、在庫 削減によるキャッシュフローの改善も待ったな しの課題となっている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) として、導入対象の工場を明確化することも 視野に入れている。
事業部単位を基本とする 過去二度のアウトソーシングでは、同じ工場 内の一部の製品だけが3PLの管理下に切り 替わった。
残った物流業務は従来通り処理す る必要があり、工場の物流部門のスリム化に は直結しなかった。
その教訓を第三弾で活か そうとしている。
事業部や関連会社を横断する改革に手を付 ければ、ステークホルダーが増え、物流部の 折衝作業は煩雑になる。
それでも「われわれ としては間接部門の人員削減こそ、この時代 に一番効果があると考えている」と寺崎部長。
これによって物流の競争力を中長期的に高め 連結売上高と物流費、売上高物流費比率の推移。
物流コストの一層の削減を求められている 20,000 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 6 5 4 3 2 1 0 連結売上高(億円)・物流費(千万円) 売上高物流費比率(%) 99 /3 00 /3 01 /3 02 /3 03 /3 04 /3 05 /3 06 /3 07 /3 08 /3 09 /3 ※物流費は有価証券報告書に記載されている「運賃・保管費」 物流費比率 連結売上高 物流費
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
事業部から「物流が見えない」 大手化学メーカーの三井化学は、最近三年 間で物流の管理体制を抜本的に見直した。
従 来はグループ内の複数の物流子会社を使って オペレーションを管理していた。
一〇〇%子 会社の三井化学物流(MCB)を元請けに、 その傘下で四つのオペレーション子会社と協 力物流会社が実務に当たる体制だった。
グループ内に五つもの物流子会社を抱えて いたのには歴史的な経緯がある。
三井化学は 九七年一〇月に三井石油化学工業と三井東 圧化学の合併によって誕生した。
合併前の二 社はそれぞれ物流子会社を持っており、三井 石油化学は二社(三京海陸運輸と三同運輸倉 庫)、三井東圧化学は一社(エム・ティ・ビ ー)を擁していた。
〇三年七月に三井化学の物流部門とエム・ ティ・ビーの管理部門を再編してMCBを新 設した。
同時にエム・ティ・ビーの現業部門 を東西に分割。
MCBの一〇〇%子会社とし てMCI物流東日本とMCI物流西日本と いう二つのオペレーション会社を発足させた。
これによって総元請会社であるMCBが、 関連の四つの実務会社と、外部の物流専業者 を使って、グループの物流を担う体制ができ あがった。
発足時のMCBの年商は五四〇億 円。
従業員数は一五〇人だった。
実はMCBの設立と、エム・ティ・ビーの 東西分割は、〇一年四月に発表された三井化 学と住友化学の経営統合を前提とした措置だ った。
しかし、〇三年三月末に統合は白紙撤 回された。
物流子会社の再編だけがそのまま 継続され、結果として物流子会社を五つ抱え ることになった。
三井化学の物流部の下にMCBがあり、さ らにその下にオペレーション子会社がぶら下 がるという構造は、管理部門と現場の距離を 隔ててしまった。
?荷主?である事業部から も「物流が見えない」という声が上がるよう になり、物流子会社の存在意義に疑問符が付 くことになっていった。
物流子会社を使ってオペレーションを管理 する当時のやり方は、ライバルの三菱化学や 住友化学も同じだった。
ただし、それぞれの 物流子会社の?実力?には歴然たる差があっ た。
たとえば三菱化学物流は、年商こそMC Bの一・五倍程度だが、約一一〇〇人の従業 員を抱え、自ら輸送車両や船舶、タンクなど の資産を保有。
親会社以外を対象とする外部 販売も手掛けながら、物流事業者として毎年、 安定的に利益を残していた。
三井化学SCM室の寺崎俊夫物流部長は、 2008年1月に三井化学物流を本体に吸収した。
オ ペレーションを担当していた子会社4社も、09年9月 末までにすべて物流専業者に売却した。
その一方で 3PLの活用を本格化している。
07年から山九、08年 から丸全昭和運輸をパートナーとする大型案件をス タートさせた。
SCM室の寺崎俊夫物流部長 39 DECEMBER 2009 一連の物流改革の発端を次のように振り返る。
「〇六年頃に〇四年からの中期経営計画の ローリングをやるなかで?物流改革?の実施 を決めた。
『機能強化』と『組織改革』が二 本柱だった。
機能強化では、物流の永遠のテ ーマであるコストダウン・安全品質・グリー ン化・グローバル化の四つを、それぞれ高度 化するために3PLを導入する。
そしてグル ープ内に複数あった物流子会社の役割を見直 す組織改革も進めることになった」 二つの選択肢があった。
物流子会社を使う 自社物流体制を強化するか、これを見直して 外部の物流専業者を活用していくか。
この意志決定のために、社外のコンサルタ ントも使って評価を実施した。
その結果、コ スト・安全品質・グリーン化・グローバル化 の四つの軸のなかで、自社物流によって優位 性を確保できるのは、唯一、安全品質だけと いうことが改めてはっきりした。
業界トップレベルの競争力を物流子会社に 確保させようとすれば、MCBとオペレーシ ョン子会社四社のインフラを拡充するために 一〇〇億円以上を投じる必要があった。
だが 本業ではない物流分野に多額の資金を投じる ことは、「選択と集中」を推進したい三井化学 の経営方針に反する。
現実的な選択肢は、物 流専業者の活用しかありえなかった。
寺崎部長は、「一〇〇%子会社の立場であ れば荷量は確保できるかもしれない。
だが物 流インフラに投資する余力はない。
物流業界 の競争が激しくなっていくなかで、これでは どんどんジリ貧になってしまう。
働いている 人たちにとっても、大手の物流会社の傘下で 必要な資金を投じて、一般の物流専業者と競 争できる会社になっていくほうがいい」と組 織改革の目的を説明する。
子会社に見切りをつけ3PL導入 〇七年十一月の取締役会で、MCBの本 体への吸収合併を正式に決定した。
翌〇八年 一月一日付でMCBは消滅し、所属していた 人たちは本体や関連会社の物流部門などへ異 動していった。
三井化学とMCBが株式を保 有していた四つのオペレーション子会社を解 消する方針も確認された。
かつて化学メーカー各社が物流子会社を設 立し、自ら物流管理を手掛けてきたのは、安 心して業務を任せられる物流専業者が存在 しなかったからだ。
しかし、時代は変わった。
物流子会社の指揮下で実務を担い、ノウハウ 三井化学の物流の“あるべき姿”と現状のギャップ(06 年時点) 物流課題現 状あるべき姿 ? コスト削減 ? 安全品質向上 ? グローバル化 ? グリーン化 ●合理化案件の枯渇 ●協力会社(270 社)の 集約余地あり ●事業部要請に対応する全 社横断的なコストダウン が推進できる ●危険物管理体制が整備さ れている ●物流不具合の更なる低減 ●事業部要請に対応する物 流企画・設計ができる。
●国際物流の最適化が実 現できている ●データの管理・解析が 可能なシステムがある ●横断的なCO2 削減施策 が立案できる ●MENET 等、安全管理 体制が整備されている ●海外物流の物流企画・ 構築力不足 ●情報収集・データ解析 力が不十分 ●改正正省エネ法に対応 できる管理システム、 体制未整備 ●施策提案力不足 三井化学の 物流部門 (MCI+MCB)の 現状 ?グリーン化 ?安全品質向上 ?コスト削減 ?グローバル化 大手物流会社あるべき姿 安全・品質を除けば現有能力と あるべき姿とのギャップが大きい 07年当時の物流部および物流子会社の役割分担 機 能組 織 物流戦略 企画・管理 オペレーション 管理 オペレーション・ 作業 三井化学(MCI) 物流部 三井化学物流 (MCB) 三京海陸 三同運輸 MCI物流西 MCI物流東 一般物流会社 関係会社 DECEMBER 2009 40 を蓄積してきた専業者が、物流子会社の役割 を肩代わりできるようになってきた。
そうした専業者が四つのオペレーション子 会社の譲渡先にもなった。
まず〇七年九月に、 三同運輸の全株式を合通に売却し、MCI物 流東日本も三井倉庫に売却した。
続く〇八年 三月には三京海陸の保有株五〇%を山九に売 却。
この会社の残り五〇%の株式は従来通り 三井物産系のトライネット・ロジスティクス が保有しつづけ、新会社はトライネットと山 九の折半出資となった。
〇九年九月にはMCI物流西日本の全株 式をニヤクコーポレーションに売却した。
これ によって三井化学は物流子会社と完全に決別 し、「組織改革」にメドをつけた。
こうした動きと並行して、「機能強化」の ために3PLの導入も進めた。
もっとも物流 業者との契約期間は原則として三年間と定め た。
三年に一度は入札を行うことを基本とし て、例外的に一年間の契約延長を二度まで認 める。
つまり、どれほど順調な案件でも、五 年に一度は必ず再入札を実施する。
複数の3PL事業者と、期間を区切って付 き合うことで、アウトソーシングの成果を最 大限に引き出すことを狙っている。
山九をパ ートナーとする第一弾案件はまもなく三年目 を終えるが、ほぼ予定通り一五%程度のコス ト削減を実現できる見込みだ。
取材時点では 再入札を実施するのか、契約を一年間延長す るのかを検討している最中だった。
物流コストの一五%削減めざす 第三弾となる3PLの導入準備も進めてい る。
先の二つの案件では、第一弾はウレタン 事業、第二弾は先端化学品事業と、製品群 ごとに分かれた事業部単位で委託範囲を括っ た。
これに対して第三弾では、樹脂固形品 を対象とする予定だ。
つまり事業部ではなく、 荷姿で対象領域を決めようとしている。
車両 への積み合わせの工夫などを事業部横断的に 実施することで、より大きな成果を狙う。
具体的な対象領域の選定を含め現在、作業 を進めている。
規模は第一弾と同様、年間六 〇億円程度になる見込みだ。
成果としても、 スタートから三年後に物流コストを約一五% 引き下げることをめざしている。
この第三弾では、もう一つの新しい切り口 子会社の解消が3PLに直結したわけではな かった。
外部の専業者をパートナーとしなが ら、三井化学の物流部門が現場まですべてを コントロールするという選択もあり得た。
このため最初は試験的な意味合いも含みな がら、〇七年四月にウレタン事業の管理に3 PLを導入した。
年間六〇億円規模の物流を アウトソーシングする準備を〇六年から進め、 物流コンペを開催。
候補企業二十数社のなか から最終的に山九をパートナーに選んだ。
こ れが三井化学にとって本格的な3PL導入の 第一弾となった。
幸いこの案件は成功し、稼働から一年後に は目的をほぼ達成できる手応えを得た。
この 実績を見た経営陣から、3PLの本格導入に 対して正式にゴーサインが出た。
これを受けて、〇八年四月に先端化学品 事業を対象とする第二弾の3PLを導入した。
年間二〇〜三〇億円規模の案件で、山九を 含む複数の物流事業者を対象に実施したコン ペの結果、丸全昭和運輸をパートナーに選択。
〇九年春から実運用を開始している。
3PLを一社に集約して、管理負担を軽減 するという選択はとらなかった。
「一社に集 約して規模を追求するという考え方もあり得 るが、それでは競争原理が働かなくなる恐れ がある。
取引先の数にこだわるつもりはない が、三社ぐらいが適切なのではないかと考え ている」と寺崎部長はいう。
取引の緊張感を維持するため、3PL事 三京海陸 運輸 三同運輸 倉庫 MCI 物流 西日本 MCI 物流 東日本 旧・三井石油化学工業と京義倉庫(現トライ ネット・ロジスティクス)が折半出資していた 物流子会社。
2008 年3 月に三井化学の持 ち株50%を山九に譲渡。
09年8月サンネッ ト物流に社名変更。
同じく旧・三井石油化学工業の物流子会社と して1976 年から事業をスタート。
07 年9 月に三井化学が持ち株すべてを合通に譲渡し た。
合通の100%子会社として再出発。
03 年にエム・ティ・ビー(旧・三井東圧化 学の物流子会社)の会社分割により発足。
三井化学物流の100%子会社だったが、 09 年9 月にニヤクコーポレーションの 100%子会社として再出発。
同じく03年にエム・ティ・ビーの会社分割 により発足。
三井化学物流の100%子会社 だったが、07 年9 月に三井倉庫の100% 子会社へ。
08 年2 月にMSCロジスティク ス東日本に社名変更。
オペレーション子会社もすべて整理した 41 DECEMBER 2009 ていこうというわけだ。
三井化学の物流部は、〇七年の段階で年間 四五〇億円規模の物流を管理していた。
この うち3PLを導入したのは、第三弾まで含め てもまだ三分の一程度でしかない。
今後はさ らに対象案件が増えていく可能性が高い。
同社の有価証券報告書に記載されている連 結決算の販売管理費に含まれる「運賃・保管 費」を見ると、直近の数値は五七二億円とな っており、物流部が管理している約四五〇億 円とは大幅に異なる。
これは事業部や関連会 社によっては、まったく独自に物流を管理し ているところがあるためだ。
それでも「運賃・保管費」の過去一〇年の 推移を見ると、全体としてかなりの成果を上 げてきたことがわかる。
そして3PLを導入 した領域ではさらに一五%程度の削減を積み 上げつつある。
現状では管理の対象外となっ ている関連会社、プライムポリマー(本誌〇 九年六月号ケーススタディ参照)なども今後 は3PLの導入対象になるかもしれない。
総勢三〇〇人のSCM室を新設 こうした物流合理化の先には、サプライチ ェーン管理の高度化という目標がある。
同社 は〇九年四月に本部級の組織として「SCM 室」を新設している。
その傘下に、それまで は独立した組織だったSCM推進部、購買部、 物流部、システム企画部という関連セクショ ンをすべて編入した。
これによりSCM室全 体では約三〇〇人の一大部隊となった。
改組する以前は、SCM推進部の管掌役員 と、それ以外の三部門の管掌役員が異なって いた。
これを四月からは佐野鉱一代表取締役 副社長が一人で担当している。
四部門の連携 を強化し、事業本部に横串を刺しながら在庫 水準などを最適化していこうとする方針のあ らわれだ。
SCMを高度化するためのITインフラは すでに整っている。
同社は九九年から約五 年をかけてERPの導入プロジェクトを実施 した。
需給管理を高度化するためマニュジス ティックス社のSCPソフトも導入している。
このプロジェクトで寺崎部長はサプライチェー ン分野を担当していた。
その後、情報システ ム部門の責任者を経て現職に就いた。
三井化学にとってサプライチェーン管理の 強化は急務だ。
大手化学メーカーの中でも同 社は自動車産業への依存度が高い。
リーマン ショック以降の不況の影響をもろに受けた。
在庫水準も急速に悪化している。
過去五年 の同社の連結棚卸資産回転期間(期首期末 平均)は一・六〜一・七カ月台で推移してい た。
これが〇九年三月期には二・一カ月とな り、前期の一・七七カ月から大幅に悪化して しまった。
全社を挙げて合理化に取り組んで いる現在、物流コストの削減に加えて、在庫 削減によるキャッシュフローの改善も待ったな しの課題となっている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) として、導入対象の工場を明確化することも 視野に入れている。
事業部単位を基本とする 過去二度のアウトソーシングでは、同じ工場 内の一部の製品だけが3PLの管理下に切り 替わった。
残った物流業務は従来通り処理す る必要があり、工場の物流部門のスリム化に は直結しなかった。
その教訓を第三弾で活か そうとしている。
事業部や関連会社を横断する改革に手を付 ければ、ステークホルダーが増え、物流部の 折衝作業は煩雑になる。
それでも「われわれ としては間接部門の人員削減こそ、この時代 に一番効果があると考えている」と寺崎部長。
これによって物流の競争力を中長期的に高め 連結売上高と物流費、売上高物流費比率の推移。
物流コストの一層の削減を求められている 20,000 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 6 5 4 3 2 1 0 連結売上高(億円)・物流費(千万円) 売上高物流費比率(%) 99 /3 00 /3 01 /3 02 /3 03 /3 04 /3 05 /3 06 /3 07 /3 08 /3 09 /3 ※物流費は有価証券報告書に記載されている「運賃・保管費」 物流費比率 連結売上高 物流費
