2009年12月号
ケース
ケース
リコー 現場改善
DECEMBER 2009 42
現場改善
リコー
RFIDで部品の動きをリアルタイム管理
在庫滞留期間40%減、工数75%減狙う
住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築
施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達
成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
キーパーツから導入を開始 リコーの御殿場工場ではオフィス用デジタ ル複合機(MFP)の国内市場向け機種を 生産している。
MFPはコピーやプリンター、 スキャナー、ファクスなどを備える多機能機。
そのなかでも、御殿場工場の製品は大型で高 機能なものが大半を占める。
画像処理や出力などの性能に優れるだけで なく、ユーザー認証によって利用を制限した り、通信データを暗号化してパソコンとやり 取りする情報の漏洩を防ぐなどのセキュリテ ィ機能が搭載されたハイエンド製品が多い。
御殿場工場では、増設トレイや無線LAN などのオプションの装着はもちろん、顧客別 のネットワーク環境の設定やプログラム登録な どのコンフィグレーションについてもすべて工 場で行い、納品後すぐに使用できる状態にし て出荷している。
製品を一台ずつ顧客別の仕 様で生産しているといっても過言ではない。
一九八五年に操業を開始した当初、御殿場 工場は小型の複写機やプリンターを生産して いた。
仕入先から納入された部品をパレット 単位で自動倉庫に保管し、次々に生産ライン に供給するFA化の進んだ大量生産工場だっ た。
それが現在では大きく様変わりしている。
製品の多機能化によって生産ラインの工程数 が著しく増えた。
調達する部品の種類や点数 も増え、自動倉庫に格納できない規格のもの が多くなった。
部品の入出庫業務の負担は格 段に増した。
そこで二〇〇七年から御殿場工場では、現 場改善の小集団活動を進めるメンバーと技術 開発メンバーによる研究会を設けて、部品の 入出庫や生産工程の管理を効率化するために RFID(ICタグ)の導入を検討してきた。
リコーはRFIDタグ付きリライタブルシ ート「RECO─View」を製品化してい いる。
これまでにも同社の沼津工場をはじめ 多くの企業に導入実績がある。
研究会では御 殿場工場でもこのRFIDシートを業務の効 率化やトレーサビリティの強化に役立てようと 考えた。
今年八月にまず、御殿場工場で使う部品 のうち、同社の厚木工場で生産しているキー パーツやユニットにRFIDを付け、厚木工 場と御殿場工場の間の入出庫管理に活用した。
続いて九月には御殿場工場の生産工程管理に もRFIDの導入を開始した。
リコーは「RINKS」と呼ぶ統合生産管 理システムで仕入先も含めた国内外のリコー グループの生産拠点の生産計画や実績を管理 している。
生産現場ではRINKSの生産計 画をもとに、「現品票」や「生産指示書」で 部品の管理や生産指示を行い、またその実績 情報をRINKSに報告する。
そのツールとして御殿場工場では、バーコ ードを使ってきた。
部品の納品時にまず、仕 入先が部品に貼付した現品票のバーコードを デジタル複合機を生産する御殿場工場でRFIDの 導入を進めている。
部品の入出庫や生産工程の進捗 をリアルタイムで管理して、在庫やスペースの無駄、 ボトルネックとなっている工程の改善を図り、トレ ーサビリティを強化する。
“見える化”によって工場 に在庫として滞留する期間の40%削減や入出庫作 業の工数を75%削減することを見込んでいる。
43 DECEMBER 2009 スキャナーで一枚ずつ読み込んで品名・品 番・数量などの情報を入力し検品する。
受け払い処理が済むと、工場内での管理に 必要な現品票を新たに発行し、部品に貼付し て倉庫へ入庫する。
出庫時にも再び現品票を 発行して、部品を使用する工程別のピッキン グ指示を出す。
各工程では実際に部品を使用 する時にバーコードを読み込む。
部品単位で入出庫・在庫管理・行き先管 理を行うことによって、どの部品、どのユニ ットが、どの製品の生産に使われたのか、履 歴を把握している。
最終検査で何らかの不具 合が見つかった場合にも、部品段階にまでさ かのぼって原因を特定することができる。
生産工程でも生産指示書によって同様の管 理が行われる。
生産工程は本体の組み付けに 始まり、ユニットの組み付け、機械検査、電 気検査、オプションの組み付け、画像検査な ど、仕上げまでにいくつものプロセスを踏む。
その都度、作業者が生産指示書に印字された バーコードを読み込む。
例えば、治具で作業の位置決めをする工程 では、製品の仕様によって治具の設定が異な るため、バーコードを読むことで、顧客の仕 様に合わせて自動的に設定をコントロールし、 ミスを防いでいる。
このように工場ではバーコードによって作 業者に指示を伝え、工程の進捗状況や生産実 績、さらに製品の品質を管理している。
また、 その実績情報はRINKSを通して翌日また は翌週の生産計画の見直しにも反映される。
負荷のかかる入力作業 だが、こうしたバーコードを使った入力作 業には課題もあった。
御殿場工場では月間二 四万ケースもの部品を調達している(〇八年 度実績)。
多いときには一日に二万ケース近い 部品を受け入れることもある。
入出庫のたび にそれだけの数の現品票を作成してバーコー ドを読むのは、いかにも負荷のかかる作業だ。
しかもバーコードを読む作業は、それ自体 で新たな価値を生むことがない。
生産工程では生産性を上げるためさまざ まな改善を行って極限まで無駄を排除してい る。
たとえば「ねじを締める」という作業に は、「締める」動作の前に「手にとる」「合わ せる」などの動作を伴うが、御殿場工場の生 産ラインではこうした派生的な動作をすべて 省き、作業者がものづくりに必要な「締める」 動作だけを行うよう工程を設計している。
それに対して、バーコードを読むという作 業は生産性の低いまま放置されている。
そう した作業者への負荷が大きく付加価値のない 作業をなくし、工数を削減することが、RF IDに期待する効果の一つだった。
それと並んでもう一つ別の狙いもあった。
先 に述べたように、部品の入庫作業では、入庫 する部品に添付された現品票のバーコードを 一枚一枚入力する決まりになっているが、実 際には守られていなかった。
バーコードを読みながら入庫作業を行うの は効率が悪いため、作業が一段落してからま とめてバーコードを読む作業者が少なくなか った。
このため実際のものの動きとシステム 上で管理される情報との間にタイムラグが生 じてしまっていた。
このタイムラグの解消こそ、RFIDを導 入する最も大きな狙いだった。
生産事業本部 生産統括センターの村井裕之物流改革グルー プリーダーは「RFIDでものの動きをリア ルタイムに管理することによって現場の状態 が見えるようになる。
そこから問題点を見つ け改善活動を深めていくことが我々のめざす ところだ」と強調する。
バッチによる情報の処理でも、一日分の在 庫の平均値等を把握することはできる。
工場 では従来、そうしたデータをもとに部品を一 時保管するために必要な倉庫スペースを決め ていた。
だが昨今は生産のタイミングに合わ せて部品を調達する形に変わりつつあり、入 出庫の回数が増えている。
在庫の中身も頻繁 に入れ替わるようになった。
従来の方法では 保管スペースがどれだけ必要かを判断するこ 生産事業本部生産統括セン ターの村井裕之物流改革グル ープリーダー DECEMBER 2009 44 とが難しくなっている。
RFIDで入出庫の時間をリアルタイムで 把握できれば、必要な保管スペースだけでな く、一つ一つの部品が倉庫にどのように滞留 していたかがわかるようになる。
生産技術セ ンター生産性開発グループの川瀬勉シニアス ペシャリストは「その情報を分析することに よって、どこを改善すれば在庫数やスペース をもっと減らせるかまで見えてくるはずだ」 と期待する。
「棚車」で時間帯納品 御殿場工場では従来から生産工程の作業の 進捗に合わせて時間帯ごとに部品をラインサ イドに供給する「時間帯納品」を実施してい る。
そのツールとして、棚状の仕切りの付い た台車「棚車」を使っている。
仕入先から段 ボールケースなどに入れてパレットで納品され た部品を、倉庫でケースから取り出し、生産 工程で作業するタイミングに合わせて必要な 分だけ棚車に積んで各工程に搬送する。
御殿場工場の仕入先の一つで、自社工場で ある厚木工場のキーパーツやユニットについ ては、この運用を一歩進め、厚木工場から出 荷する時点で棚車に必要な部品を直接積んで 御殿場工場へ納品している。
御殿場工場での ピッキング作業工程を省くことで無駄な在庫 をなくし、リードタイムを短縮した。
キーパ ーツやユニットはほかの部品よりもかさばり、 一時保管のスペースを多く取っていた。
厚木工場では御殿場工場と同じR INKSで生産の計画・実績を管理 している。
御殿場工場の生産計画に 合わせて必要な数量のキーパーツやユ ニットを生産し、御殿場工場の各生 産工程で使用する部品を種類別に棚 車に載せ、生産の時間帯ごとに納品 する。
部品の大きさによって一つの棚に収 まる点数はまちまちだが、概して段 ボールケースよりもデッドスペースが 少なく積載効率がいい。
納品後に段 ボールを廃棄することもなくなり環境 負荷低減にもなる。
この棚車にUHF帯のRFIDシ ートを付けて入出庫管理に利用するこ とにした。
厚木工場で部品を棚車に 積む際に、部品の品目ごとにRFI Dを貼る。
RFIDの付け方や付けるタイミン グは従来の現品票による運用と全く同 じ。
RFIDシートには品目や数量 などの印字もしてあり、作業者が目 生産技術センター生産性開発 グループの川瀬勉シニアスペ シャリスト 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 業務フロー 厚木事務所側 従 来現 在 御殿場事務所側 バーコード読み取り 作業をなくしたい 棚車、空き箱 を管理したい 静脈物流の滞 留をなくしたい 紙廃棄を やめたい 滞留によるスペース・ 在庫管理をなくしたい 一時保管のためのロケ入 力など作業にムダはないか? 輸送タイミング、 コストは最適か? 紙、資源の消 費をなくしたい PC手入力 をやめたい スペース・在庫の 滞留はないか? 部品の使用量、必要量は、最適か? 上流との連携は? 解 決 部品使用情報をシス テムに自動入力 解 決 RFIDで空き棚、車管理 解 決 RFIDシートリユース 解 決 時間情報も自動入力 解 決 自動認識で通るだけ で在庫を管理 解 決 自動認識で通るだけ で在庫を管理 RFIDシート発行 包装カード 現品表 アンテナ RW 棚車タグ キーパーツ組立 行程 キーパーツ完成品検査 キーパーツ完成品搬送 出荷 受入検査 出荷 供給 本体組立 45 DECEMBER 2009 適正化され、省スペース化も実現する。
生産統括センターの中西聡システム改革グ ループ兼戦略・企画グループリーダーのは「仮 置きできるスペースがあるとその大きさに合 わせて棚車が滞留する。
RFIDが収集する ?事実?を見て改善を行い、スペースをもっと 有効活用できるようにしたい」と話す。
ボトルネックの特定にも活用 生産工程でも生産指示書の代わりにRFI Dを導入した。
本体の組み付けを開始すると きと、顧客別に機種の仕様が確定したときに RFIDシートを発行し、自動認識によって 作業者に指示を出す。
他工場などで生産され たオプション品を組み付ける際にも新たにR FIDを発行する。
バーコードからRFIDへ切り替えるには、 工程の一つ一つの作業を管理するシステムと 連携をとるための投資が必要になる。
このた め一度に切り替えずに従来のままバーコード を使う工程も残した。
RFIDシートにバー コードも印字することでこうした運用が可能 になった。
MFPの生産工程には、部品を取り付ける 工程をはじめバーコードの読み取りを行って いないところもあった。
人によって作業のス ピードに違いがあっても進捗状況がわかりに くかった。
こうした工程の進捗管理も自動化 され、ボトルネックとなっている箇所を特定 して工程分割などの対策を講じられるように なった。
厚木工場と御殿場工場では、RFIDによ る入出庫処理の自動化で作業工数の七五%削 減を見込んでいる。
今後、成果を検証し納品 側のメリットを確認した上でこのモデルの運 用をほかの仕入先にも呼びかけていく考えだ。
またRFIDが収集するデータをもとに保 管スペースや納品の数量・頻度などを見直し ていくことで、在庫量を最小限に抑え、調達 した部品が工場内に在庫として滞留する期間 を四〇%削減することを狙っている。
リコーは八〇年代に開発したRINKSを 環境の変化に合わせて手直しやグレードアッ プを行いながら、今も生産管理の基幹システ ムとして稼働させている。
中西氏は「当社で はERPを導入して仕組みを一新するような 方法はあえてとらず、すぐにできるところか ら手をつけて改善を重ねることで大きな改革 につなげる考え方を一貫してとってきた。
今 回の取り組みでも少しずつリードタイムの短縮 や品質の向上を実現していきたい」と話して いる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 視で確認することもできる。
このため現場の 混乱もなく現品票からRFIDへスムーズに 移行できた。
厚木工場から部品を出荷し、御殿場工場で 受け入れ、生産工程に搬送する際に、それぞ れのポイントに設置したゲート型アンテナでR FIDを自動的に読み取り、入出庫の時間と 部品の品目・数量・行き先(生産工程)など のデータを管理している。
生産工程で部品を使うときにRFIDをは ずしてポストに投入する。
これにより「部品 が使われた」という情報がRINKSに送ら れ、厚木工場に対する次の生産指示に反映さ れる。
納品用と構内用の現品票が不要になり、 バーコードの読み取り作業がなくなった。
工場では従来、空になった棚車の管理も悩 みの種だった。
部品を使い終わってから厚木 工場へ棚車を回収するまでのフローは決まっ ているものの、なかなか管理が行き届かずに 滞留してしまうことが多かった。
すみやかに 厚木工場に回収しないと出荷に支障も出てし まう。
そこで棚車自体もRFIDで管理すること にした。
棚車の識別番号を別のRFIDに書 き込み、空になったあともこれだけは棚車か ら外さず、棚車がゲートを通過した時間を記 録する。
これで棚車が空になってからゲート を出るまでの滞留時間がわかる。
このデータを糸口に業務改善を進める。
そ の結果、滞留時間が減れば棚車の保有台数が 生産統括センターの中西聡シ ステム改革グループ兼戦略・ 企画グループリーダー
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
キーパーツから導入を開始 リコーの御殿場工場ではオフィス用デジタ ル複合機(MFP)の国内市場向け機種を 生産している。
MFPはコピーやプリンター、 スキャナー、ファクスなどを備える多機能機。
そのなかでも、御殿場工場の製品は大型で高 機能なものが大半を占める。
画像処理や出力などの性能に優れるだけで なく、ユーザー認証によって利用を制限した り、通信データを暗号化してパソコンとやり 取りする情報の漏洩を防ぐなどのセキュリテ ィ機能が搭載されたハイエンド製品が多い。
御殿場工場では、増設トレイや無線LAN などのオプションの装着はもちろん、顧客別 のネットワーク環境の設定やプログラム登録な どのコンフィグレーションについてもすべて工 場で行い、納品後すぐに使用できる状態にし て出荷している。
製品を一台ずつ顧客別の仕 様で生産しているといっても過言ではない。
一九八五年に操業を開始した当初、御殿場 工場は小型の複写機やプリンターを生産して いた。
仕入先から納入された部品をパレット 単位で自動倉庫に保管し、次々に生産ライン に供給するFA化の進んだ大量生産工場だっ た。
それが現在では大きく様変わりしている。
製品の多機能化によって生産ラインの工程数 が著しく増えた。
調達する部品の種類や点数 も増え、自動倉庫に格納できない規格のもの が多くなった。
部品の入出庫業務の負担は格 段に増した。
そこで二〇〇七年から御殿場工場では、現 場改善の小集団活動を進めるメンバーと技術 開発メンバーによる研究会を設けて、部品の 入出庫や生産工程の管理を効率化するために RFID(ICタグ)の導入を検討してきた。
リコーはRFIDタグ付きリライタブルシ ート「RECO─View」を製品化してい いる。
これまでにも同社の沼津工場をはじめ 多くの企業に導入実績がある。
研究会では御 殿場工場でもこのRFIDシートを業務の効 率化やトレーサビリティの強化に役立てようと 考えた。
今年八月にまず、御殿場工場で使う部品 のうち、同社の厚木工場で生産しているキー パーツやユニットにRFIDを付け、厚木工 場と御殿場工場の間の入出庫管理に活用した。
続いて九月には御殿場工場の生産工程管理に もRFIDの導入を開始した。
リコーは「RINKS」と呼ぶ統合生産管 理システムで仕入先も含めた国内外のリコー グループの生産拠点の生産計画や実績を管理 している。
生産現場ではRINKSの生産計 画をもとに、「現品票」や「生産指示書」で 部品の管理や生産指示を行い、またその実績 情報をRINKSに報告する。
そのツールとして御殿場工場では、バーコ ードを使ってきた。
部品の納品時にまず、仕 入先が部品に貼付した現品票のバーコードを デジタル複合機を生産する御殿場工場でRFIDの 導入を進めている。
部品の入出庫や生産工程の進捗 をリアルタイムで管理して、在庫やスペースの無駄、 ボトルネックとなっている工程の改善を図り、トレ ーサビリティを強化する。
“見える化”によって工場 に在庫として滞留する期間の40%削減や入出庫作 業の工数を75%削減することを見込んでいる。
43 DECEMBER 2009 スキャナーで一枚ずつ読み込んで品名・品 番・数量などの情報を入力し検品する。
受け払い処理が済むと、工場内での管理に 必要な現品票を新たに発行し、部品に貼付し て倉庫へ入庫する。
出庫時にも再び現品票を 発行して、部品を使用する工程別のピッキン グ指示を出す。
各工程では実際に部品を使用 する時にバーコードを読み込む。
部品単位で入出庫・在庫管理・行き先管 理を行うことによって、どの部品、どのユニ ットが、どの製品の生産に使われたのか、履 歴を把握している。
最終検査で何らかの不具 合が見つかった場合にも、部品段階にまでさ かのぼって原因を特定することができる。
生産工程でも生産指示書によって同様の管 理が行われる。
生産工程は本体の組み付けに 始まり、ユニットの組み付け、機械検査、電 気検査、オプションの組み付け、画像検査な ど、仕上げまでにいくつものプロセスを踏む。
その都度、作業者が生産指示書に印字された バーコードを読み込む。
例えば、治具で作業の位置決めをする工程 では、製品の仕様によって治具の設定が異な るため、バーコードを読むことで、顧客の仕 様に合わせて自動的に設定をコントロールし、 ミスを防いでいる。
このように工場ではバーコードによって作 業者に指示を伝え、工程の進捗状況や生産実 績、さらに製品の品質を管理している。
また、 その実績情報はRINKSを通して翌日また は翌週の生産計画の見直しにも反映される。
負荷のかかる入力作業 だが、こうしたバーコードを使った入力作 業には課題もあった。
御殿場工場では月間二 四万ケースもの部品を調達している(〇八年 度実績)。
多いときには一日に二万ケース近い 部品を受け入れることもある。
入出庫のたび にそれだけの数の現品票を作成してバーコー ドを読むのは、いかにも負荷のかかる作業だ。
しかもバーコードを読む作業は、それ自体 で新たな価値を生むことがない。
生産工程では生産性を上げるためさまざ まな改善を行って極限まで無駄を排除してい る。
たとえば「ねじを締める」という作業に は、「締める」動作の前に「手にとる」「合わ せる」などの動作を伴うが、御殿場工場の生 産ラインではこうした派生的な動作をすべて 省き、作業者がものづくりに必要な「締める」 動作だけを行うよう工程を設計している。
それに対して、バーコードを読むという作 業は生産性の低いまま放置されている。
そう した作業者への負荷が大きく付加価値のない 作業をなくし、工数を削減することが、RF IDに期待する効果の一つだった。
それと並んでもう一つ別の狙いもあった。
先 に述べたように、部品の入庫作業では、入庫 する部品に添付された現品票のバーコードを 一枚一枚入力する決まりになっているが、実 際には守られていなかった。
バーコードを読みながら入庫作業を行うの は効率が悪いため、作業が一段落してからま とめてバーコードを読む作業者が少なくなか った。
このため実際のものの動きとシステム 上で管理される情報との間にタイムラグが生 じてしまっていた。
このタイムラグの解消こそ、RFIDを導 入する最も大きな狙いだった。
生産事業本部 生産統括センターの村井裕之物流改革グルー プリーダーは「RFIDでものの動きをリア ルタイムに管理することによって現場の状態 が見えるようになる。
そこから問題点を見つ け改善活動を深めていくことが我々のめざす ところだ」と強調する。
バッチによる情報の処理でも、一日分の在 庫の平均値等を把握することはできる。
工場 では従来、そうしたデータをもとに部品を一 時保管するために必要な倉庫スペースを決め ていた。
だが昨今は生産のタイミングに合わ せて部品を調達する形に変わりつつあり、入 出庫の回数が増えている。
在庫の中身も頻繁 に入れ替わるようになった。
従来の方法では 保管スペースがどれだけ必要かを判断するこ 生産事業本部生産統括セン ターの村井裕之物流改革グル ープリーダー DECEMBER 2009 44 とが難しくなっている。
RFIDで入出庫の時間をリアルタイムで 把握できれば、必要な保管スペースだけでな く、一つ一つの部品が倉庫にどのように滞留 していたかがわかるようになる。
生産技術セ ンター生産性開発グループの川瀬勉シニアス ペシャリストは「その情報を分析することに よって、どこを改善すれば在庫数やスペース をもっと減らせるかまで見えてくるはずだ」 と期待する。
「棚車」で時間帯納品 御殿場工場では従来から生産工程の作業の 進捗に合わせて時間帯ごとに部品をラインサ イドに供給する「時間帯納品」を実施してい る。
そのツールとして、棚状の仕切りの付い た台車「棚車」を使っている。
仕入先から段 ボールケースなどに入れてパレットで納品され た部品を、倉庫でケースから取り出し、生産 工程で作業するタイミングに合わせて必要な 分だけ棚車に積んで各工程に搬送する。
御殿場工場の仕入先の一つで、自社工場で ある厚木工場のキーパーツやユニットについ ては、この運用を一歩進め、厚木工場から出 荷する時点で棚車に必要な部品を直接積んで 御殿場工場へ納品している。
御殿場工場での ピッキング作業工程を省くことで無駄な在庫 をなくし、リードタイムを短縮した。
キーパ ーツやユニットはほかの部品よりもかさばり、 一時保管のスペースを多く取っていた。
厚木工場では御殿場工場と同じR INKSで生産の計画・実績を管理 している。
御殿場工場の生産計画に 合わせて必要な数量のキーパーツやユ ニットを生産し、御殿場工場の各生 産工程で使用する部品を種類別に棚 車に載せ、生産の時間帯ごとに納品 する。
部品の大きさによって一つの棚に収 まる点数はまちまちだが、概して段 ボールケースよりもデッドスペースが 少なく積載効率がいい。
納品後に段 ボールを廃棄することもなくなり環境 負荷低減にもなる。
この棚車にUHF帯のRFIDシ ートを付けて入出庫管理に利用するこ とにした。
厚木工場で部品を棚車に 積む際に、部品の品目ごとにRFI Dを貼る。
RFIDの付け方や付けるタイミン グは従来の現品票による運用と全く同 じ。
RFIDシートには品目や数量 などの印字もしてあり、作業者が目 生産技術センター生産性開発 グループの川瀬勉シニアスペ シャリスト 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 困り事 業務フロー 厚木事務所側 従 来現 在 御殿場事務所側 バーコード読み取り 作業をなくしたい 棚車、空き箱 を管理したい 静脈物流の滞 留をなくしたい 紙廃棄を やめたい 滞留によるスペース・ 在庫管理をなくしたい 一時保管のためのロケ入 力など作業にムダはないか? 輸送タイミング、 コストは最適か? 紙、資源の消 費をなくしたい PC手入力 をやめたい スペース・在庫の 滞留はないか? 部品の使用量、必要量は、最適か? 上流との連携は? 解 決 部品使用情報をシス テムに自動入力 解 決 RFIDで空き棚、車管理 解 決 RFIDシートリユース 解 決 時間情報も自動入力 解 決 自動認識で通るだけ で在庫を管理 解 決 自動認識で通るだけ で在庫を管理 RFIDシート発行 包装カード 現品表 アンテナ RW 棚車タグ キーパーツ組立 行程 キーパーツ完成品検査 キーパーツ完成品搬送 出荷 受入検査 出荷 供給 本体組立 45 DECEMBER 2009 適正化され、省スペース化も実現する。
生産統括センターの中西聡システム改革グ ループ兼戦略・企画グループリーダーのは「仮 置きできるスペースがあるとその大きさに合 わせて棚車が滞留する。
RFIDが収集する ?事実?を見て改善を行い、スペースをもっと 有効活用できるようにしたい」と話す。
ボトルネックの特定にも活用 生産工程でも生産指示書の代わりにRFI Dを導入した。
本体の組み付けを開始すると きと、顧客別に機種の仕様が確定したときに RFIDシートを発行し、自動認識によって 作業者に指示を出す。
他工場などで生産され たオプション品を組み付ける際にも新たにR FIDを発行する。
バーコードからRFIDへ切り替えるには、 工程の一つ一つの作業を管理するシステムと 連携をとるための投資が必要になる。
このた め一度に切り替えずに従来のままバーコード を使う工程も残した。
RFIDシートにバー コードも印字することでこうした運用が可能 になった。
MFPの生産工程には、部品を取り付ける 工程をはじめバーコードの読み取りを行って いないところもあった。
人によって作業のス ピードに違いがあっても進捗状況がわかりに くかった。
こうした工程の進捗管理も自動化 され、ボトルネックとなっている箇所を特定 して工程分割などの対策を講じられるように なった。
厚木工場と御殿場工場では、RFIDによ る入出庫処理の自動化で作業工数の七五%削 減を見込んでいる。
今後、成果を検証し納品 側のメリットを確認した上でこのモデルの運 用をほかの仕入先にも呼びかけていく考えだ。
またRFIDが収集するデータをもとに保 管スペースや納品の数量・頻度などを見直し ていくことで、在庫量を最小限に抑え、調達 した部品が工場内に在庫として滞留する期間 を四〇%削減することを狙っている。
リコーは八〇年代に開発したRINKSを 環境の変化に合わせて手直しやグレードアッ プを行いながら、今も生産管理の基幹システ ムとして稼働させている。
中西氏は「当社で はERPを導入して仕組みを一新するような 方法はあえてとらず、すぐにできるところか ら手をつけて改善を重ねることで大きな改革 につなげる考え方を一貫してとってきた。
今 回の取り組みでも少しずつリードタイムの短縮 や品質の向上を実現していきたい」と話して いる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 視で確認することもできる。
このため現場の 混乱もなく現品票からRFIDへスムーズに 移行できた。
厚木工場から部品を出荷し、御殿場工場で 受け入れ、生産工程に搬送する際に、それぞ れのポイントに設置したゲート型アンテナでR FIDを自動的に読み取り、入出庫の時間と 部品の品目・数量・行き先(生産工程)など のデータを管理している。
生産工程で部品を使うときにRFIDをは ずしてポストに投入する。
これにより「部品 が使われた」という情報がRINKSに送ら れ、厚木工場に対する次の生産指示に反映さ れる。
納品用と構内用の現品票が不要になり、 バーコードの読み取り作業がなくなった。
工場では従来、空になった棚車の管理も悩 みの種だった。
部品を使い終わってから厚木 工場へ棚車を回収するまでのフローは決まっ ているものの、なかなか管理が行き届かずに 滞留してしまうことが多かった。
すみやかに 厚木工場に回収しないと出荷に支障も出てし まう。
そこで棚車自体もRFIDで管理すること にした。
棚車の識別番号を別のRFIDに書 き込み、空になったあともこれだけは棚車か ら外さず、棚車がゲートを通過した時間を記 録する。
これで棚車が空になってからゲート を出るまでの滞留時間がわかる。
このデータを糸口に業務改善を進める。
そ の結果、滞留時間が減れば棚車の保有台数が 生産統括センターの中西聡シ ステム改革グループ兼戦略・ 企画グループリーダー
