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2009年12月号
値段

第55回 ヤマトホールディングス

DECEMBER 2009  50 宅配便市場の成熟化に打ち勝て  昨年度、ヤマトホールディングス(以下、ヤ マト)の宅急便取扱個数は前年度比〇・三%減 の十二億三〇五三万個となった。
取扱個数が前 年度を下回るのは一九七六年のサービス開始以 来、初めてのことである。
景気低迷で総需要が 低迷し、国内宅配便取扱個数も〇・六%減の三 二億七七四九万個と、国土交通省が統計を取り 始めた八四年度以降、初めて減少した。
 その後ヤマトの取扱個数は回復傾向にある。
二〇一〇年三月期第1四半期は前年同期比一・ 四%減だったが、一〇月は前年同月比一・六% 増となり、九月の一・二%増に引き続き増加を 達成した。
宅急便はこのまま再び成長軌道に乗 ることが出来るのであろうか。
 過去、宅急便取扱個数は鉱工業生産指数がマ イナスのときでもプラス成長を示してきた。
そ れが昨年のリーマンショック以降、宅急便も鉱 工業生産指数と共に下落に転じた(図1)。
三 菱UFJ証券では?経済ショックが大きすぎた こと、?宅配便マーケットの成熟感、が背景に あると考えている。
 足元の鉱工業生産の推移などを踏まえても、 景気はいずれ回復へ向かうだろう。
九月の鉱工 業生産指数は前月比一・四%増(事前市場予想 一・〇%増)、経済産業省による今後の同指数予 測は一〇月が前月比三・一%増、十一月が一・ 九%増である。
景気回復に伴い、宅急便取扱個 数も増加基調が予想されるが、もう一段の成長 を達成するためには成熟化するマーケットに打 ち勝つための戦略展開が求められることになる。
 特に現在、C to Cの分野は成熟化しており、 これまでのような高い伸び率を達成することは 難しくなっている。
そのような中、期待できる のはB(法人)発である。
 ヤマトの宅急便取扱個数のうちC to Cは約一 四%、B to B・B to Cは約八六%である(〇 九年三月期末時点)。
B発貨物の市場は、主に 消費者向けの商品の配送や生産部品・材料の 納入だ。
?よりきめ細かい在庫管理が求められ、 他頻度少量納入が増えている点、?通販マーケ ットの拡大、などを踏まえると、B発の取り扱 いが増加すると三菱UFJ証券では考える。
 ヤマトが近年展開しているサービスを見ると、 今後成長が期待できる分野に積極的な戦略展開 していることがうかがえる。
例えばB to C(通 販市場)でのシェア拡大が期待できる「TSS (Today Shopping Service)」、C to Bというこ れまでにあまり無かったマーケットの開拓が期 待できる「メンテナンスサポートサービス」だ。
ヤマトホールディングス B to CやC to Bの成長分野に積極展開 海外事業も本格化し収益拡大に布石  「宅急便」のオペレーション改革などの コスト削減策は、市場から一定の評価を得 ている。
しかし国内宅急便事業が頭打ち となる中、もう一段の成長を達成するには 売上高の増加が必要だ。
B to C、C to B 物流の開拓や海外事業の本格化など、成 長分野への展開に期待している。
姫野良太 三菱UFJ証券 エクイティリサーチ部 アナリスト 第55回 51  DECEMBER 2009  TSSは通販商品を受注から最短四時間で顧 客に届けるサービスである。
同サービスの取扱 量は、宅急便全体の取扱量が減少した〇九年三 月期においても増加を達成したもようだ。
 メンテナンスサポートではメーカーの修理部 隊がヤマトのセンターに常駐、家電などの故障 品の受付から最短三日で修理品をユーザーに返 送する仕組みを構築した。
同分野の一〇年三月 期中間期の売上高は前年同期比一・七%増の 三〇億円。
売上寄与としてはまだまだ小さいが、 連結売上高が減少する中、増収を達成できた成 長分野である。
中国での買収は大きな一歩  以上のような国内マーケットでの成長戦略に 加えて、ヤマトは宅急便の海外ビジネスに打っ て出た。
一〇年後半までに東アジアとASEA N全域に事業を広げ、〇九年三月期は二%だっ た海外売上高比率を数年先には一〇%程度に引 き上げる考えのようである。
 まず中国で今年八月二六日、政府系の物流会 社、上海巴士物流を子会社化する契約を締結し た。
社名を「雅瑪多(中国)運輸」に改称し、 来年一月に営業を開始する。
上海市にはトラッ クに対する交通規制があり、市中心部に出入り するライセンスを持つ会社を買収しない限り宅 配サービスを展開することは難しい。
このため、 ライセンスを持つ上海巴士物流の子会社化は中 国ビジネスを展開する上で大きな布石になった と見ることができる。
 事業開始の初年度は取扱個 数六〇〇万個、売上高十二億円 を計画し、三年後には売上高一 〇〇億円以上と単年度黒字化 を目指す。
さらに今後一〇年間 でトラックを中心に八〇〜一〇 〇億円を投資。
一〇年後は売上 高一四〇億円、営業利益二五億 円を目標に掲げた。
 中国では宅配大手のDHLな どと競合することになるが、既 存のサービスはB to Bが主力で ある。
日本のような宅配ネット ワークも整備されていない。
ヤ マトは配達時間帯指定サービス や「クール宅急便」などの独自 サービスを提供し、シェア拡大を狙う。
当初は B to Cのサービス展開を中心とするが、将来的 にはC to Cのマーケットも開拓していくという。
 新たな商品投入の継続と海外戦略で成長を 目指すヤマトを市場はどう見ているのだろうか。
足元の株価は調整局面にあるものの、昨年九月 末から一年間でTOPIXが約一八%下落し たのに対し、ヤマトの株価は二二%も上昇した。
民主党がマニフェストで掲げた高速道路無料化 や暫定税率廃止といった政策が収益拡大期待を もたらした点が大きいが、コスト抑制を中心と した収益回復策も評価されたと三菱UFJ証券 では考えている。
 実際、ヤマトは一〇年三月期通期営業利益計 画を期初の五六〇億円から二度増額修正し、六 〇〇億円に引き上げた。
パートタイマーを投入 し、人的生産性の向上を目指した効果が顕在化 してきたことに対する自信の表れともとれる。
 生産性の向上やコスト抑制による収益性拡大 は株価上昇をもたらす要因といえる。
しかしコ スト構造改革がある程度浸透した後には、やは り売り上げの増加が必要だ。
今後は筋肉質にな ったコスト構造の下、さらに売り上げを伸ばし ていくことによって収益拡大が期待できる。
ヤ マトはその源泉を新たな戦略展開、海外に求め ていった。
その成果を注視していきたい。
ひめの・りょうた 二〇〇四年慶應義塾大学経済学部 卒業、同年三菱証券(現三菱UFJ 証券)入社。
〇五年から明治ドレスナ ー・アセットマネジメントで建設、不 動産、運輸、公益セクターのアナリ ストを務め、〇八年二月より現職。
図2 ヤマトホールディングスの過去10年間の株価推移 《出来高》 出所:会社資料、AMSUS より三菱UFJ 証券作成 20 10 0 -10 -20 -30 -40 98/ 05 99/ 01 99/ 09 00/ 05 01/ 01 01/ 09 02/ 05 03/ 01 03/ 09 04/ 05 05/ 01 05/ 09 06/ 05 07/ 01 07/ 09 08/ 05 09/ 01 09/ 09 図 1 鉱工業生産指数と宅急便取扱個数の推移 (%) 宅急便取扱個数(前年同月比) 鉱工業生産指数(前年同月比)

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