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2009年12月号
現場改善

第83回 外資系ITベンダーの日本市場参入

75  DECEMBER 2009 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 第83 回  今回はいつもと違って物流現場の改善ではなく、外資系 ITベンダーによる日本のロジスティクス市場への参入を、 コンサルタントとしてサポートした事例を紹介したい。
物 流とは異なるカルチャー、異なる人材とのプロジェクトは、 筆者に多くの気付きを与えてくれるものだった。
外資系ITベンダーの日本市場参入 有力ITベンダーが物流分野に展開  外資系IT企業のL社は東アジアに本社を 置くパッケージベンダーだ。
ある分野のパッケ ージソフトでは世界シェア九〇%を誇る有力企 業で、世界十二カ国に進出し事業を展開して いる。
 しかし、日本市場には参入してからまだ数 年しか経っていない段階で、とりわけロジステ ィクス分野への展開には手を焼いていた。
我々 日本ロジファクトリー(NLF)が、その手助 けをすることになった。
 L社の営業やITコンサルタントはヘッドハ ンティングによって集められた混成部隊であっ たが、良好なチームワークとパワフルな機動力 を発揮していた。
現地法人とはいえ、本社か らの権限委譲が進んでいた。
 強みとする特定分野においては日本におけ る知名度も高く、参入してから間もなく有力 各社にパッケージが採用されている。
その後も 保守やメンテナンス、さらには再カスタマイズ といった業務が増え、日本市場に上手く定着 してきた。
 しかし、ロジスティクス分野の日本市場にお ける実績は、ほぼゼロの状態だった。
計画と しては当面の三年程度はオーダーメードのシス テム構築に専念し、そのなかから汎用性の高 いシステムを選んでパッケージ化していこうと いう考えだった。
 ただし、WMS(倉庫管理システム)は対象 外としていた。
技術的には十分対応可能であ ったが、WMS市場が既に飽和状態にあるこ とから、採算が見込めない判断していた。
こ れは我々NLFから見ても頷ける判断だった。
後発として無理に参入しても価格競争に陥る だけだろう。
 そのかわりWMS以外のシステムであれば、 どんなに難しいテーマであっても貪欲に対応し ていこうという方針で、メンバーたちも意欲 を見せていた。
このベンチャースピリットが後 に成果をもたらすことになった。
 さて、L社の営業部長M氏は顧客とのコミ ュニケーションを第一に考える人脈づくりのス ペシャリストであった。
表裏のない気さくな人 柄で多くのファンをつくっていた。
その営業 力がロジスティクス分野の最初の案件をもたら した。
 物流子会社系3PL企業からシステムコン DECEMBER 2009  76 ペの説明会のお呼びがかかった。
システムの 統合がテーマであった。
M&Aを実施した結 果として、複数のシステムを並行して運用し ている状態になっているという。
M&A戦略 を進める企業であれば必ず直面する普遍性の 高いテーマだ。
 具体的には、受払(収入・支出)管理や日 報、月報管理、伝票、帳票類管理などの業務 フローの見直し、そしてアプリケーションやデ ータ、使用言語、セキュリティ機能の統合など がソリューションとして求められた。
 この不況下で比較的大型の案件とあって、説 明会には国内の名だたるシステムベンダーがそ ろって参加していた。
説明会の質疑応答にお ける活発なやり取りからも各社の意気込みが うかがえた。
 一次の書類選考は無事通過することができ た。
ロジスティクス全体の視点からの提案、そ して人件費の割安な東南アジアで開発を行い、 その後のメンテナンスやカスタマイズのコスト も最小限に抑えるという、ユーザー本位のアプ ローチが功を奏した。
?おたくの見積りが最も高い?  書類選考を通過した候補企業各社のプレゼ ンテーションは、それから一週間後に設定され ていた。
我々はいっそうの差別化を図る必要 があった。
何としても投資効果を上積みしな ければならない。
 というのも「L社さんの見積りが最も高か った」とコンペの窓口担当者から聞かされて いたからだ。
恐らく事実だろう。
 赤字覚悟の安い値段でとりあえず受注を決 め、後の保守、メンテナンス、カスタマイズで 採算を取るというやり方をL社はとらない。
そ の点で他のシステムベンダーの戦略とは一線を 画していた。
 とはいえ、日本のロジスティクス分野におい てL社は新参者である。
?価格?ではなく?技 術力と差別化された提案?で勝負するという L社の方針が日本でも通用するのか、筆者と しては、はなはだ疑問だった。
そのことをL 社メンバーに強く訴えてもいた。
 L社のメンバーは徹夜作業で提案のブラッシ ュアップに努め、プレゼンの日を迎えることに なった。
このプレゼンでは筆者もひとつの役割 を与えられていた。
物流コンサルタントとして 第三者的な立場から提案先企業に助言するこ とであった。
 プレゼンの結果は、その日のうちに入って きた。
L社と別の一社の二社に絞られたとい うことだった。
最有力候補と目されていたベ ンダーS社は落選したという。
あとは価格の 最終調整のみであった。
 それから二週間後、落札者が決定した。
そ の結果については、みなさんのご想像にお任 せするしかない。
 筆者としては最終二社に残ったという時点 で既に大きな収穫を得たと評価している。
L 社が日本国内のロジスティクス分野でも充分通 用することが分かった。
次の展望が大きく開 けた。
実際、このコンペでL社のメンバーは大 きな自信と手応えを得たのだった。
 それから我々NLFは様々な荷主企業や物 流企業、さらには金融やサービス分野の企業ま でL社に紹介した。
先ずは顧客ありきで、各 企業のニーズを収集することに努めた。
なか には?こんなものがあったらいいな?という レベルの夢物語も少なくなかったが、それで も貪欲に耳を傾けた。
 L社としては、強みとする特定分野で培っ た技術をロジスティクス分野に応用するという アプローチが理想であった。
具体的には、店 舗発注システムや物流業界における在庫管理 システム、CO2削減に向けた環境システムな どが、その対象となった。
 そもそもL社の強みは、顧客さえ獲得でき れば、いかなるスキームの案件にも対応でき ることにあった。
低コストの開発力を活かし て、オーダーメードのシステムを構築し、その RFP によく見られるシステム提案の対象領域と優先順位(例) ?MD 業務 ?店舗業務 ?広報・顧客管理 ?商品管理・物流 ?輸入業務 ?経理・財務 ?総務 データベース・ハード 第1グループ 第2グループ 77  DECEMBER 2009 うち汎用性の高いシステムをパッケージ化して それを世界十二カ国に展開するというのが勝 ちパターンだ。
 先に説明した特定分野で圧倒的な世界シェ アを誇っているため、あらゆる同業者とのパ イプが出来上がっている。
同業者にパッケージ を供給する一方で、同業者の下請けとしてシ ステム開発に当たることもできた。
 この強みを活かせば、日本市場におけるロ ジスティクス分野への展開も十分期待できるは ずだ。
後はL社のメンバー、特に営業やIT コンサルタントのフロントメンバーが、どれだ け日本企業のシステムニーズを吸い上げていく ことができるかにかかっていた。
独自のアプローチで日本市場攻略  我々はさらに顧客の発掘を進めた。
当初は ?システムニーズのありそうな顧客?からニーズ を聞くという、マーケティング戦略を欠いた営 業活動に奔走しているところがあったが、多 くの企業との接触を重ねるうちに、L社が対 応すべき企業とそうでない企業が大別できる ようになってきた。
 やはりL社の独自技術を応用できるシステ ム、これまで国内にはなかった付加価値の高 いシステムの構築がL社には適していた。
そ うしたニーズを持つ顧客企業を対象に、営業 ターゲットをリセットすることで、ビジネスが 回転を始めた。
 現時点でL社のロジスティクス分野の事業 は、開発案件が大小合わせて四件、商談中が 九件となっている。
上々の成果だろう。
 昨年のリーマンショック以降、企業の設備投 資は冷え切っているが、いくら不況だといっ ても、本当に必要な投資は避けられない。
ま してや他にはないシステムを構築し、他社と差 別化できるとなれば、厳しいなかでも予算は 確保できる。
そのことをL社の事業は証明し ているように思う。
 L社との一連のプロジェクトは筆者にとって も収穫の多い仕事であった。
様々なサプライズ や気づきを得ることができた。
物流の現場と は異なる文化、異なる人材とのやり取りは新 鮮で、想像力をかきたてられた。
そこで得た ロジックや方法論を今度は我々NLFがベース とする物流分野にも応用していきたいと考え ている。
あおき・しょういち  1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89 年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp

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