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2009年12月号
SOLE

米ダラスの年次総会報告 米軍のロジスティクス・セキュリティ

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics DECEMBER 2009  80 米ダラスの年次総会報告 米軍のロジスティクス・セキュリティ 化しており、 グローバル セキュリテ ィは非常に 重要な領域 になってい る。
このグ ローバルセ キュリティ を支え、維 持するため のロジステ ィクスの役 割、および ロジスティ クス・プロセスそのもののセキュリテ ィの確保・維持という二つの視点から の課題は何か、を出発点に企画され た。
それらに対する解釈、視点、重 要事項についての議論と理解促進を ロジスティシャンに提供することが狙 いである。
 会議は前述した二つの視点を柱に基 調講演、プレナリーセッション(全体 会議)、パネルディスカッション、ペ ーパーセッションで構成され、九つの 切り口からのサブ・テーマにおける発 表・討議がプレナリーセッションとパ ネルディスカッションI、?に割り当 てられた(図1)。
 朝の開始時刻は午前七時と非常に 早い。
例年通り、午前中は基調演説 とプレナリーセッションに続いて最初 のパネルディスカッション。
午後か らは二つめのパネルディスカッション が行われる。
その後にペーパーセッシ ョンだ。
 ペーパーセッションは同時並行で 四トラックが実施され、各々三〜四 の発表から構成されるため、参加者 は自分の興味に合わせていずれかを 聴くことになる。
同セッションでの 発表は、主として講演者が今年のテ ーマに関連した課題を研究し、紹介 するものであるから内容は多彩であ る。
日本支部からの参加は今年は一 人であったため、聴講したトラック のみを図2に紹介する。
 以下、三日間のプログラムの中か  SOLEの年次総会﹁SOLE2 009コンファレンス﹂が八月一八日 から二〇日にかけ、米国テキサス州 ダラスで開催された。
今年のテーマは ﹁グローバルセキュリティにおけるロジ スティクス﹂。
米国防総省︵DoD︶ を筆頭に、NASA、産・官・学の 要人が出席した。
とりわけ米軍や沿岸 警備隊による講演ではロジスティクス のグローバルセキュリティへの貢献は 極めて重要だが、多くの課題があるこ とを痛感させられた。
︵SOLE日本支部幹事・瀬良光弘︶ 総会概況 ──グローバルセキュリティを   二つの視点から考える  年次総会は毎年八月にSOLE本 部のある米国で開催される。
今年の 開催地はダラスといってもダウンタウ ンではなく、空港とダウンタウンのち ょうど中間に位置するアービング地区 である。
会場はビジネスオフィスパー ク風に開発された区域の一角にある、 オムニマンダレイホテル。
同ホテルで は三年前の二〇〇六年にも年次総会 が開催されている。
 今年の参加者は例年より若干少 なく、二百数十人だったが、ホテル の会議施設をすべて使っての開催だ。
ホテルの庭は非常に広い池に面してお り、静寂が保たれている。
その上会 議開催中、ホテル内にいたほとんどが SOLEの関係者という状態であり、 顔なじみも多く家庭的な雰囲気に包 まれての会議だった。
参加者の所属 は産・官・学と幅広いが、やはりD oDからの参加者の存在感が大きい。
 三日間の会議のメーン・テーマは 「グローバルセキュリティにおけるロジ スティクス」である。
昨年の「ロジス ティクスの変革とグローバル・エコノ ミー」同様、今年もグローバルの視点 からではあるが、今回はセキュリティ に焦点が当てられた。
 世界各国の社会活動は政治・産 業・個人レベルに至るまでグローバル 図1 全体会議のテーマ 今年度テーマ:グローバルセキュリティにおけるロジスティクス 1 日目2 日目3 日目 John G. Coburn General(Ret) Mark A. Harnitchek VADM(US Transcom) グローバルセキュリ ティにおけるロジスティ クスの多面性 セキュリティのための デザイン 製造プロセスにおける セキュリティ John P. Currier VADM Chief of Staff US Coast Guard HQ 国防最前線はロジス ティクス 人道支援・災害復旧 活動におけるセキュリ ティ 国際複合輸送におけ るセキュリティ Michael Loose VADM Deputy Chief of Naval Operation グローバルセキュリ ティへのロジスティク ス技術の貢献 グローバルエコノミッ クセキュリティへの 宇宙技術の役割 情報セキュリティへ の挑戦 基調講演全体講演パネル1 パネル2 図2 ペーパーセッションのプログラム(抜粋) 1 日目 《Track 1》 Sense and Respond Logistics Logistics Netwoks Ready to Flex Using Simulation Modeling and Analysis Global Resiliency 2 日目 《Track 1》 Future Trends In Transportation Terrorism Mitigating the Global Cargo Theft Crisis Air Cargo Security Profitability and Revenue Management Security of Container Movements 3 日目 《Track 3》 Enabling End-to-End Supply Chain Management RFID Implementation Issues In Warehouse Global Food Security 81  DECEMBER 2009 レディネス(艦隊即応)ロジスティク ス担当の海軍作戦部次長の職にあり、 世界一七カ所・海洋の七〇%をカバ ーしている海軍の活動について、グ ローバルセキュリティに焦点を当てな がら解説した。
プレナリーセッションから ──データは単に   蓄積するものではない  司会をSOLEのネムファコス(C. P. Nemfakos)委員長が務め、官民 のパネリストが討論した。
パネリスト は基調講演も行ったコバーンCEO、 ハーニトチェック副官、ルース中将の 三人に米国土安全保障省からリチャ ード・スキナー(Richard Skinner)氏、 テキサス大学サイバーセキュリティ・ リサーチセンターからブァヴァニ・ スライシンガム博士(Dr. Bhavani Thuraisingham)を加えた五人だっ た。
 議論のポイントは、IT関係では サイバーセキュリティの確保、移動体 追跡のデータ分析である。
現在はI Tにより、移動体のリアルタイムでの モニタリングと多くの情報収集が可能 になっている。
しかしただ情報を蓄積 するだけでなく、データマイニング技 術のように、大量のデータの中から特 別な情報を読み取ることこそが重要な のである。
ら、いくつかを選んで要点をご紹介 する。
基調講演 ──米輸送軍がイラク・アフガンで   直面した課題とは  第一日目、官民二人の講演者によ る基調講演で年次総会の幕が上がっ た。
まず産業界からVTシステムズ 社のジョン・G・コバーン(John G. Coburn)プレジデント兼CEOが講 演した。
主なメッセージは、 ●ロジスティクスは最初のバトル ●弱い産業=弱い国防 ●SCMは古びたものか? ●ロジスティクスはネットワークであ る ●これからは国境をまたぐチーム作り がますます大切になる ●港湾でのリードタイム短縮は迅速な 供給と同様に重要 ●港湾の安全性は不可欠 ●ロジスティクスには制約がつきもの。
例えば港湾でのオペレーションの関 係者、機関は一〇以上に上り、複 雑である ●故に、モデリング・アンド・とシ ミュレーションが重要 ●軍と産業界のパートナーシップも重 要 ●安定したソフトウエア開発は必須  などであった。
●政情不安等に起因する国境での輸 送遅延 ●厳しい天候、道路事情、労働力確 保困難、盗難 などへの対処を含め、補給ネットワー ク構築の難しさや課題を説明した。
 第二日目には米沿岸警備隊(US Coast Guard) のジョン・クーリア (John Currier)中将が講演。
同隊で はグローバルロジスティクスに対応す るための組織改革が、ステップ四の 「プロアクティブ・アクション(率先垂 範の行動)」の段階まで進み、現在は、 ?ライフサイクル・マネジメント ?データベース・マネジメント ?トータルシステム統合 ?トランジション(改革移行) ?コンフィギュレーション・マネジメ ント(形態管理) ?トータルアセット・マネジメント ?5メジャー(主要)ロジスティクス ?人材 ?法整備 ?隊内文化の改革 から成る「 10 アイテムアクション」の 領域に取り組んでいるという。
 また、クーリア中将はアカウンタビ リティ、サステナビリティの重要性も 説いていた。
 第三日目は米海軍のミハエル・ル ース(Michael Loose)中将が基調講 演を行った。
ルース中将はフリート・  次いで官側からは、USトランス コム(US Transportation Command :米国輸送統制本部)のマーク・ハ ーニトチェック(Mark Harnitcheck) 副官が登場した。
U Sトランスコ ムはD o Dのサプライチェーンと ディストリビューションのすべてを 平時も有事にも担当する組織であ る。
?陸上・洋上展開輸送任務部隊 (Surface Deployment/Distribution Command)、? 統合貨物洋上 輸送任務部隊(Military Sealift Command)、?航空機動輸送任務部 隊(Air mobility Command)、?民 間企業協力(Commercial Industry Contribution)、の四つのチームで構 成されている。
 ハーニトチェック副官は、?トルコ 経由、ヨルダン経由のイラク駐留米 軍向け補給ネットワーク、?ロシア・ カザフスタン経由、黒海・カスピ海 経由のアフガニスタン駐留米軍向け補 給ネットワーク、の構築を例に、 ●広範囲に分散されたオペレーション の実行 ●海外へのアクセスには制約が多いこ と ●民間ネットワークの信頼性の問題 ●複数の関係国・連合・エージェン トの連携 ●安全確保に問題のある通信回線 ●リソース・プレッシャー DECEMBER 2009  82 ィクスにはいかに多くの事柄:機関、 組織、国、人々、地理、地勢、政情、 通信技術等々が関係し、グローバルセ キュリティへのロジスティクスの貢献 がいかに複雑・困難であるかを学んだ。
実践には迅速なコミュニケーションと 情報共有が不可欠であり、バックボー ンとなるネットワークの安全性も非常 に重要であることを再認識させられた。
 メーン・テーマに関わる多くの発表 もあり、グローバルセキュリティにお けるロジスティクスの重要性、および その他多くのことを学ぶことができ、 刺激を得られた会議であった。
全な運行を目指して、より精度の高 いGPSの開発が進められているこ とにも感心した。
ペーパーセッションから ──状況を即座に感知、認知、   決定、行動するロジスティクス  第一日目の「Sense and Respond Logistics(S&RL)」では長年取り 組んでいる課題が取り上げられていた。
 S & R LはSense ->Interpret / Understand -> Decide ->Act/ Respondと表現される。
いかに早 く状況/状態を感知し、判るように 翻訳し、それを理解し、判断・決定 し、行動/対処できるロジスティクス の実現を目指すかということである。
 実現のために必要なテクノロジーを ?現在使えるもの、?開発中のもの、 ?研究中のもの、に分類し、ロード マップを作成、S&RLの実現を推 進する。
配布された資料は二三四ペ ージにも及ぶもの(もちろん媒体はC Dであるが)であり、ロジスティクス の将来像、そしてプロジェクトマネジ メントの視点からも、学ぶべきことが 多くある貴重な資料であった。
 三日間の会議を振り返ると、基調 講演はグローバルロジスティクスを 日々実行しているUSトランスコム、 米沿岸警備隊、米海軍の実態を解説 するものであり、それらのロジステ ザイン」では、挑戦事項として?グロ ーバルサプライチェーンの構築、?仕 入先/供給元の信頼性、?輸送途上 のコントロール、?海賊・テロ対策、 に焦点を当て、議論の領域をA.セキ ュリティのためのプロダクトデザイン、 B.サイバーセキュリティ、C.資材・ 部材の仕入先/供給元の決定、D.バ リューチェーン・セキュリティ、とし て進められた。
 課題としては、エージェントとの連 携や、企業など連合体の中でのオペレ ーションを可能にしなければならない、 ということが挙げられた。
またそれ らを実行するには、健全で安全なサイ バーネットワークが必須であるが、ど のようにセキュリティをデザインする かという課題も浮かび上がった。
 製造プロセスにおけるセキュリティ ではエレクトロニクス・データの偽造 が多いようであるが、その実態の把 握と対処が不十分であると指摘され ている。
このため、第三者の認証機 関確立とそのサービス活用が重要と議 論された。
 なお、三日目のNASAのプレゼ ンテーションで、宇宙ウェザー・ア クティビティでの磁気嵐等の観測は、 通信衛星のセキュリティを考えると、 なるほどと感心させられた。
同じく次 世代GPSの研究者の発表では、ハ イウェーへの活用、航空機のより安  そこでは対処が必要な異常値を発 見し、直ちにアクションを取る体制を 構築しておくことも必要だ。
関係機 関、パートナー等とは情報をタイムリ ーに、しかも正確に共有していなけれ ばならない。
ネットワークのセキュリ ティ確保、つまりサイバーアタックや ハッカーへの対処など、情報セキュリ ティにおいてもエンド・ツー・エンド のマネジメントが重要である。
またグ ローバルセキュリティでは水資源、エ ネルギー資源の問題も考慮しなければ ならない。
パネルディスカッションから ──健全で安全なサイバー   ネットワークのデザインは必須  第一日目「セキュリティのためのデ 次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは12月8日(火)「需 給マネジメント──ポストERP / SCM に向けて」文教大学の石井信明氏によ る講演を予定している。
このフォーラム は年間計画に基づいて運営しているが、 単月のみの参加も可能。
1回の参加費は 6,000円。
ご希望の方は事務局(solej- offi ce@cpost.plala.or.jp)までお問 い合わせください。
※ S O L E︵The International Society of Logistics: 国際ロジスティクス学会︶ は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・三〇〇 〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎月 ﹁フォーラム﹂を開催し、講演、研究発表、現 場見学などを通じてロジスティクス・マネジメ ントに関する活発な意見交換、議論を行って いる。

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