ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年1号
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「負債削減に特化するフェーズは終わった」プロロジスが金融恐慌から学んだこと

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

57  JANUARY 2010  「今の気分? だいぶ良いよ。
去年 の今頃に比べたらね」  二〇〇九年十一月一八日、本誌の インタビューに応じたプロロジスのウ ォルター・C・ラコウィッチCEOは 終始上機嫌だった。
だが、同氏が無 理なくメディアに笑顔を振りまけるよ うになったのは、おそらく最近にな ってからのことだろう。
 多くの企業にとってそうであったよ うに、プロロジスにとって〇八年後半 から〇九年前半は悪夢そのものだっ た。
金融恐慌の影響が直撃し、七〇 ドルを記録したこともある米国本社 の株価は一時二ドル二〇セントまで急 落。
デフォルトを避けるためには、負 債を削減してマーケットの信頼を取り 戻すことが絶対条件となった。
その 陣頭指揮を託されたのが、当時プレ ジデント兼COO(最高財務責任者) を務めていたラコウィッチ氏だ。
 〇八年十一月にCEOに就任する と、ただちに当面の新規開発案件の 凍結を表明。
加えて、〇九年中に二 〇億ドル分の負債を削減することをマ ーケットに対して約束した。
これを実 現するため、世界中に築き上げてき た多くの優良物流施設の売却や、人 員整理を含む一般管理費の削減の実 行を余儀なくされた。
 日本の施設も売却対象となり、そ の大半がシンガポール政府系のGI Cリアルエステートに譲渡されたこと は、本誌でも数度にわたり報じてき ている。
ラコウィッチCEOは「様々 な思いはあるが、我々はそれをやる 必要があった」と当時を振り返る。
イ ンタビューの中で唯一、同氏の表情が 曇った瞬間だ。
 施設売却や一般管理費の削減と並 行して、大型の社債発行や増資も断 行。
さらには金融機関に対し、負債 の返済期間を二年間延長する約束を 取り付けるなど、財務体質の改善に 奔走した。
 一連の取り組みが奏功し、〇九年 の第3四半期(七月─九月)中まで に目標を大きく上回る三〇億ドル分の 負債を削減することに成功。
マーケ ットもその成果を認め、株価は一四 ドル近く(〇九年十二月一五日現在) にまで回復してきている。
 「負債の削減のみに特化するフェー ズは終わった。
依然?慎重に?とい う前置きは外せないが、一〇年はよ りアクティブにビジネスを展開できる だろう」とラコウィッチCEOは語る。
 実際、〇九年の後半からは停止し ていたビジネスが徐々に動き始めてい る。
日本のマーケットでは埼玉の座間 や千葉の市川の施設を竣工にこぎ着 けたほか、七月には神奈川の海老名 でキリン物流向けに、九月には大阪 の舞洲でセンコー向けに専用施設を着 工している。
まだ発表段階ではない が、新たな案件も水面下で進んでい るという。
 ?火消し?には一通りのメドが立ち、 再び成長・拡大路線へと回帰した格 好だ。
しかし、直近のプロロジスの取 り組みには、金融恐慌前には見られ なかった傾向がある。
 以前のプロロジスは開発も資金調 達も全て自社で行っていた。
ところ が、センコーの専門施設の開発は清 水建設と共同で事業を進めた。
また、 八月には出口戦略の一端として日本 ロジスティクスファンドとの間にパイ プラインサポート協定書を締結してい る。
自前主義から一転し、他社との アライアンスを積極的に進めている。
 「我々は金融危機から一つの事実を 学んだ。
それは、物流施設マーケット はビジネスチャンスに溢れていて、そ の全てに我々だけのバランスシートで 対応するのは難しいということ。
無 論、以前のように自分達だけでプロ ジェクトを進めるという選択肢もある が、今はリスクヘッジの観点からパー トナーと組むというオプションも重視 している」とラコウィッチCEOは説 明する。
 昨秋来停滞していた物流不動産マ ーケットだが、テナントニーズは回復 傾向にある。
再起を図るプロロジスに とっては絶好の追い風だ。
しかしそ れはライバルにとっても同じ。
プロロ ジスの前CEOでもあるGLプロパテ ィーズのジェフリー・H・シュワルツ 会長は〇九年十二月二日の記者会見 で「優良物件の取得を中心に、積極 的にビジネスを展開していく。
市況や 案件によっては自社開発も視野に入 れる」と語っている。
ラサールインベ ストメントマネージメントの吉川陽介 執行役員も「我々にとって事業展開 しやすい環境が整い始めている」と 強調する。
 最悪期を脱した市場でビジネスチャ ンスを獲得しようと、各プレイヤーは 虎視眈々と機を窺っている。
(石鍋) 「負債削減に特化するフェーズは終わった」 プロロジスが金融恐慌から学んだこと プロロジスの ラコウィッチCEO GLプロパティーズの シュワルツ会長 かつて同僚だった2人。
金融危機による業績悪化でシュ ワルツ氏がプロロジスのCEOを辞任。
ラコウィッチ氏 がその後を引き継いだ。
シュワルツ氏はその後GLプ ロパティーズの会長に就任し、関係者を驚かせた。

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