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2010年2月号
ケース

UTiワールドワイド 世界同時不況

FEBRUARY 2010  52 世界同時不況 UTiワールドワイド 運賃値上げと3PL部門の健闘で 09年後半から業績は回復基調に M&Aを重ねて事業規模を拡大  UTiワールドワイドが創業から二〇年あ まりでロジスティクス業界において頭角を現す ようになった背景には、M&A(企業買収) をテコにした成長戦略がある。
 同社の創業は一九八六年のこと。
タックス ヘイブンとして知られるイギリス領バージン諸 島に、同社の前身となるユニオン・トランス ポートが設立された。
九〇年代に三つの航空 と海上フォワーダーを買収したことを契機に 法人格を取得。
その後さらに同業他社の買収 を重ねて二〇〇〇年にアメリカのナスダック 市場に上場、同時に現在のUTiワールドワ イドに社名を変更した。
 IPO(株式公開)で得た資金を使い、そ の後も北米やヨーロッパ、中東、アジアでフ ォワーダーやロジスティクス企業の買収を重 ねている。
その結果、現在では、航空フォワ ーディングと海上フォワーディング、3PL、 配送業務──という四つの事業の柱を持つノ ンアセット型の総合ロジスティクス企業に成長 した(図1)。
 立ち上げ時のメンバーであるロジャー・マ クファーレン前CEO(最高経営責任者)と タイガー・ウエッセルズ前会長は〇九年一月、 会社の成長に一区切りがついたとして、役員 会のメンバーに退き、後任にUPS出身のエ リック・カーシュナー氏をCEOに指名して いる。
 同社は〇五年度から〇九年度までの五年間 で、総売上高と純売上高(売上高から輸送枠 の購入費用を引いた額)とも、一九%台の年 平均成長率を誇ってきた。
純売上高に占める 営業利益の比率も一〇%前後と高い水準を確 保していた。
 世界同時不況に見舞われた〇九年一月期の 決算も競合他社に比べれば堅調だった。
総売 上高四五億四三七二万ドル(=四二二五億六 六〇〇万円、前年同期比四・一%増)、純売 上高一五億四六三四万ドル(同三・九%増) で増収を確保。
 同期はリストラ費用とのれん代を計上した ために最終利益は四六四万ドルの赤字(前期 は九八六九万ドルの黒字)となったが、営業 利益は二三二九万ドルで(図2)、前期比八 四・五%減ながら黒字を確保した。
同社によ れば、これらの特殊要因を除けば、営業利益 は一億五四〇〇万ドルで、最終利益は九七〇  米ナスダック市場に上場するUTiワールドワイド は、これまで企業買収を重ねることで急成長を遂 げてきた。
世界同時不況の影響から09年前半には 業績が急落したが、年後半からは早くも回復の兆 しが見えてきた。
リストラによる固定費削減に加 え、3PL部門の強化と荷主に対する運賃値上げ要 請が効果を上げている。
図1 売上高の部門別の比率 航空 フォワー ディング 36% 海上フォワーディング 27% 通関 2% 3PL 15% 配送 12% その他 8% 2009 年度 総売上高 45 億 4372 万ドル 社名 UTiワールドワイド 本社 イギリス領バージン諸島 創業 1986 年 代表者 エリック・カーシュナーCEO 売上高 45 億4372 万ドル(4225 億6600 万円) 純売上高 15 億4634 万ドル(1440 億8900 万円) 最終利益 −464 万ドル(4 億3200 万円) 従業員数 20,415 人 企業概要 (注1) 2009 年1月期の数字 (注2) 1ドル=93円で換算 53  FEBRUARY 2010 〇万ドルになっていたという。
 しかし、同社が不況の影響を免れたわけで はない。
 〇九年二月から、一〇年度に入ってから は売上高、利益率とも大きく悪化している。
第1四半期の総売上高は前年同期比三五・ 一%の減少、第2四半期は三三・〇%の減 少、第3四半期は二〇・一%の減少だ。
そ の結果、〇九年二月から始まった今期九カ月 分の総売上高は二五億七六〇六万ドルとなり、 前年に比べて二九・二%の減少となっている。
 同業他社の多くが、〇八年下期から急速に 業績を悪化させたのに対し、UTiの業績悪 化が数カ月遅れたのは、運賃の安い海上貨物 の増加が、航空貨物の落ち込みを補ったため である。
運賃の値上げ交渉に成功  同社にとってとりわけ大きな打撃となった のは、営業利益率の低下だ。
それまで一〇% 前後で推移していた利益率が、第1四半期は 五%台、第2四半期は六%台に落ち込んだ。
 フォワーディング業務が全体の六割強を占 める同社にとって、総売上高の減少は輸送枠 の購入の支払いの減少と連動するため、本来 なら利益率を大きく落とす原因にはならない。
しかし、売り上げの減少幅があまりに大きく 固定費を圧迫した。
 もちろん〇 八年からリス トラに着手し て、経費削 減は進めてき た。
全従業員 の五%に当た る一〇〇〇人 を削減し、不 採算のフォワ ーディング事 務所も二〇カ 所閉鎖した。
 リストラの 一環として、 営業スタッフ の配置も変えた。
たとえば、これまでは中国 を発着する貨物の増加に合わせて、中国国内 に営業スタッフを手厚く配置してきた。
しか し中国発着の貨物をどういう輸送モードを使 って、どのタイミングで運ぶのかという決定 は、中国現地よりもアメリカやヨーロッパな どの荷主本社機能があるところで下されるこ とが多い。
そこで、営業スタッフを荷主の本 社に近い場所に手厚く置くようにした。
 今期は、給与の凍結や出張などの経費の引 き締めを通じて、年間で五〇〇〇万ドルの経 費を削減することを目標にしている。
カーシ ュナーCEOは「目標達成に向けて着実に進 んできている」という。
 しかし、当面リストラはそこまで。
現時点 ではそれ以上の人員削減は考えていないとす る。
景気回復の兆しが見えてきたことがその 一因となっている。
 直近の第3四半期では、売上高こそ減った ものの営業利益率は八%台後半まで戻してい る。
総売上高九億六七二〇万ドル、純売上 高三億六一五四万ドルに対して、営業利益は 三一四二万ドル(同四一・七%減)、最終利 益が一七九七万ドル(同五二・六%減)── となった(図3)。
 第3四半期終了時のキャッシュフローは、 三億ドル超で、前年同期より五〇〇〇万ドル 増えた。
これは業績回復に加えて、これまで の企業買収を中心に使ってきた投資額を大幅 に抑えたためだ。
図3 10 年度第3四半期の損益計算書 売上高 9 億6720 万ドル -20.1% 航空貨物 3 億2875 万ドル -23.3% 海上貨物 2 億3833 万ドル -27.1% 通関業務 2523 万ドル -10.8% 3PL 1 億7516 万ドル 1.3% 配送 1 億955 万ドル -27.7% その他 9018 万ドル -11.6% 営業経費 9 億3578 万ドル -19.1% 輸送枠の購入 6 億567 万ドル -24.5% 人件費 1 億9668 万ドル -7.2% 原価償却 1139 万ドル 6.2% 無形資産の償却 270 万ドル -22.0% その他の営業経費 1 億1936 万ドル -6.9% 営業利益 3142 万ドル -41.7% 利子収入 237 万ドル -46.4% 利子支出 ▲652 万ドル ─ その他の収支 74 万ドル ─ 税引き前利益 2800 万ドル -44.9% 法人税準備金 753 万ドル -47.1% 税引き後利益 2047 万ドル -44.0% 非継続事業の売却益 ─ ─ 非支配持分 250 万ドル 224.7% 最終利益 1797 万ドル -52.6% 潜在株式調整後一株当たりの利益 0.18ドル -52.6% (注1)決算期は1月 (注2)パーセンテージは、前年比の増減率 図2 UTi の業績の推移 純売上高 768,621 960,449 1,215,793 1,488,814 1,546,340 営業利益 62,581 98,778 154,498 150,478 23,294 (単位:千ドル) (前年同期比) 2005 年度 2006 年度 2007 年度 2008 年度 2009 年度 (注1)純売上高(net revenues)とは、総売上高(revenues)から輸送枠の購 入を引いたもの。
(注2)2009 年度の営業利益の落ち込みは、リストラ費用と?のれん代?の計上に よるもの。
それがなければ、1 億5400 万ドルとなっていた。
FEBRUARY 2010  54  カーシュナーCEOは、「輸送貨物を取り巻 く状況が本格的に上向き始めたというにはま だ時間がかかるけれど、市場に活気が戻って きたことは心強く思っている。
(主力である) 航空貨物の荷動きは第3四半期を通じて良く なってきており、特に一〇月の取扱量は〇八 年以来初めて、前年同月の数字を上回った」 と語る。
 第3四半期全体では輸送トン数は前年同期 比で一%の減少となったが、一〇月単月だと 六%の増加となった。
同社は、十一月以降も 航空貨物の増加傾向が続くとみている。
 一方、海上貨物の荷動きは依然低調で、T EU(二〇フィートコンテナ)換算で、同六% の減少となった。
しかしこれでも、第2四半 期の一六%減少に比べると、落ち込み幅が小 さくなってきている。
第2四半期と第3四半 期を比べると、TEUの取り扱いは一〇%増 えた。
 荷動きが活気を取り戻しつつあるのはいい ニュースではあるが、ここにきて頭の痛い問 題も持ち上がっている。
航空・海上キャリア 各社による運賃の値上げだ。
 キャリア各社は、世界同時不況以降の貨物 スペースの供給過剰から運賃の値下げを余儀 なくされてきた分を取り戻すために、相次い で値上げに踏み切っている。
多くの海上キャ リアは〇九年八月から、そして航空キャリア は九月に入ってから値上げを行っている。
値 上げ幅は、平均で五〜六%だ。
これがUTi した。
第3四半期には、大手荷主の物流セン ターを二つ立ち上げて、そのイニシャルコスト が九〇〇万ドルの経費が発生していることを 勘案すると、その健闘ぶりが一層際立つ。
 ローレンス・サミュエルズCFO(最高財 務責任者)は、「この四半期では、3PLと 配送部門が健闘して、利益率でわれわれが目 標に据えてきた一〇%を初めて超えることが できた。
当社にとって最大の市場であるアメ リカでのセンター業務や輸送業務が低調に推 移していることを考えると、この健闘の意味 は大きい」と語った。
 利益率が改善した背景には、前期に大手荷 主の中で収益性が悪かった二カ所のセンター の利益率を圧迫している。
 キャリア運賃値上げの 対応策として、UTiは 一〇月以降、荷主各社に 「エクスプレス運賃」とい う形で値上げ要請を行って いる。
多くの荷主は、値 上げ要請に前向きに対応し ているという。
 「特にアメリカの感謝祭 (一〇月第二週の月曜日) を前に貨物スペースがタイ トになってきたために、通 常運賃の貨物は順番待ち を余儀なくされているのに 対して、エクスプレス運賃 の貨物は優先的に積み込まれるようになって いる。
われわれが荷主企業にこうした状況を 説明すると、多くの荷主はエクスプレス運賃 を払うことに同意した」(カーシュナーCEO)  同社によると、荷動きがピークを迎える年 末のクリスマスまでは同様の傾向が続き、そ の後貨物スペースの不足が一段落して、中国 の旧正月を前にまたスペースが不足してくる ことになるだろうと予測している。
3PL部門で一〇%の利益率を維持  第3四半期の収益性改善に貢献したのは3 PLと配送部門だった。
営業利益率は一〇% を超え、前年同期の七・五%から大幅に改善 UTiワールドワイドの略史 1986 年 カリブ海のイギリス領バージン諸島で前身となるユニオン・トランスポートを設立 1994 年 ブロームリー・シッピング社を買収 1995 年 それまでに買収した三つの会社を核に法人化する 1988 年 ノード・エクスプレスを買収 2000 年 カナダで「コマース・カスタムズ・ブローカーズ&フレイト」を買収 〃 米でサザン・オーバーシーズを買収 〃 ナスダック市場に上場、社名を現在のUTi ワールドワイドに変更 2002 年 スペインでサービシオス・ロジスティコスを買収 〃 アメリカでロジ企業のスタンダード・コープを買収 2003 年 インドでインディエア・キャリアーズを買収 2004 年 スペインでバンディアナを買収 〃 カナダでユニジスティクスを買収 2005 年 米でコンセントレックを買収 2006 年 スペインでシステマス・ロジスティコスを買収 〃 米でマーケット・インダストリーズを買収 〃 イスラエルでトランスカル・トレードを買収 〃 カナダでスパン・インターナショナルを買収 2007 年 独でファーマ・ロジスティクスを買収 〃 南アでクロニック・ソリューションズを買収 〃 イスラエルでニューログを買収 2009 年 新CEOにUPS出身のカーシュナー氏を指名 〃 イスラエルのマルチ・パーパス・ロジスティクスを買収 55  FEBRUARY 2010 方メートル)だ。
〇五年度の一一〇カ所と比 べると、物流センターの数はほぼ倍増したこ とになる。
ただし、3PL業務においても、 ノンアセット型の運営を目指す同社としては、 運営する物流センターの半分は荷主所有のセ ンターだ。
 同社は、荷主企業を以下の六つの業種に分 けて管理し、それぞれ有力な主要荷主を抱え ている。
●日用雑貨品/小売業──プロクター・アン ド・ギャンブル、ターゲット、ホームデポ など ●衣料/ファッション──アディダス、ポロ・ ラルフ・ローレン、リズクレイボーンなど ●医薬品業界──ファイザー、バイエル、ボ シュロムなど ●化学業界──3M、エクソンモービル、シ ェブロンなど ●自動車業界──BMW、フォード・モータ ーやトヨタ自動車など ●ハイテク産業──マイクロソフト、富士フ イルム、パナソニックなど  対象業種の幅広さに加え、物流センターを 含むグローバルネットワークが、一つの地域に 集中することなく、世界中に分散していると ころにUTiの特徴がある。
地域別の売上高 を見ても、自らを国際インテグレーターと位 置付けるフェデックスやUPSでさえ、自国 のアメリカでの売り上げが過半を占めているの に対し、UTiはアメリカ、ヨーロッパ、ア ジア/アフリカがほぼ三分の一ずつとバランス がいい(図4)。
ITシステムの統合が課題  同社が現在、積極的に取り組んでいるのが ITシステムの一本化だ。
「4asOneプ ロジェクト」と呼んでいる。
M&Aを繰り返 した企業の常として、現在は社内に多くのシ ステムが乱立する状態になっている。
バラバ ラのシステムを一本化することで業務の効率 化と利益率の向上につなげようと、既に数年 間かけて取り組んでいる。
 そのうちフォワーディング業務のシステムは、 自社戦力で開発して、実用手前の段階までこ ぎつけたという。
財務などのERP(業務統 合パッケージ)にはオラクル社のソフトを導入 中で、二〇一〇年度中には全社的な統合が完 了するとする。
 システムの統合作業を含め「4asOne プロジェクト」は外部のコンサルタントやベン ダーへの依存をできる限り排除し、自社戦力 中心で行っている。
その理由をカーシュナー CEOは次のように説明する。
 「これは単にITシステムの変革というだけ でなく、我が社が国際企業としてどのように 仕事のやり方を変えていくかということにつ ながってくる。
よって、単にシステムに詳し い外部の人間ではなく、我が社の仕事の内容 に精通した社内の人材が開発するべきだと考 えている」。
  (ジャーナリスト 横田増生) 業務を大幅に改善したのに加えて、収益率で 「ワースト一〇」の荷主のセンター業務や配送 業務の見直しを行ったことなどが積み重なっ た結果だ。
 同社は今後も利益率で一〇%のラインを維 持することは可能だとしている。
売上規模の 面でも、3PL部門と配送部門を合計した売 上高は、過去五年間にほぼ三倍となっている。
 同社は現在、二六カ国で二〇〇カ所の物流 センターを運営している。
延べ床面積の合計 は二六四〇万フィート(二三七万六〇〇〇平 1ドル=93円で換算 南北アメリカ 9カ国に68 事務所 3カ国に69センター アジア 17カ国に101 事務所 7カ国に39センター ヨーロッパ 29カ国に148 事務所 15カ国に50センター 図4 UTi のグローバルネットワーク アフリカ 7カ国に73 事務所 1カ国に42センター ヨーロッパ 30% アジア 24% 14% アフリカ アメリカ 32%

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