ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年3号
メディア批評
一切報道されない検察による「犯罪行為」批判を封じているのは記者クラブの存在か

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 MARCH 2010  84  『週刊プレイボーイ』の対談で、いわゆる?国 策調査?で逮捕された鈴木宗男が私に、  「逮捕されるまでは私も検察は正義だと思っ ていた」  と語った。
しかし、本当にそうなのか?  『週刊朝日』の二月一九日号で、ジャーナリ ストの上杉隆が「東京地検の『抗議』に抗議する」 を書いている。
 前号で上杉が、検察は何の罪もない若い母 親である女性秘書を騙して呼び出し、一〇時 間近くにわたって「監禁」し、「恫喝」を繰り 返すという卑劣な取り調べを行ったとレポート したら、それは「全くの虚偽である」という 抗議書がFAXで送られてきたというのである。
 上杉によれば、それは「反論するのも気が 引けるほど、お粗末な代物だった」。
 まず、再三、取材を依頼しているのにもか かわらず、「司法記者クラブに所属していない 週刊誌に対しては一律お答えしてない」と回 答を拒否しながら、突然、次席検事名で「抗議」 してくる。
 しかし、前々号で報じた議員会館の石川事 務所への捜査令状を示さない「違法捜査」や、 前号の、少なくとも四時間に一度の休憩をと ることや、長時間の取り調べを禁じた最高検 察庁の通達を無視した「脱法捜査」について は触れていないところを見ると、これは認め たということか、と上杉は皮肉る。
 この「抗議」を読めば読むほど、逆に、い かに取り調べの可視化が必要かということが わかるが、それも一刻を争う感じさえする。
 その日、当該検事は女性秘書に、  「午後一時四五分に来て下さい」  と出頭を命じたという。
 抗議書には、「何点か確認したいことがある」 旨を告げて来庁を依頼した、とあるが、コー トも羽織らず、ランチバッグひとつで検察庁 に出かけた彼女は、それから、ほぼ一〇時間 帰れなかった。
いや、帰されなかった。
夕刻、 彼女が保育園で待っている三歳と五歳の子ど もの迎えの手配をしたいと哀願したのに、担 当検事の民野健治は、  「なに言っちゃってんの。
そんなに人生、甘 くないでしょ」  と言い放ったという。
 これに対しての「抗議」はこうである。
 「夕刻、供述人から、子供の迎えもあるので 帰りたい旨申出があったので、当該検事が『家 族の誰かに代わりに迎えに行ってもらうこと はできませんか』と尋ねたところ、供述人が 夫に電話をかけ、その結果、子供の迎えの都 合がついたことから事情聴取が続けられたも のであり、その際、供述人が子供の迎えだけ は行かせてほしい旨発言したり、取り乱した りしたことはない」  しかし、最初に携帯電話の電源を切るよう 命じていること、繰り返し要請した弁護士へ の連絡も、解放直前の午後一〇時半になって 初めて許されていることなどからも、この抗 議のウソは明らかだろう。
上杉は書く。
 「取り調べ後、病院で診察を受けた女性秘書 には診断書が出され、いまだに精神的ショック から立ち直れず、完全な職場復帰を果たせな いでいる」と。
 彼女は検事から、こう怒鳴り続けられたの である。
 「いいんだよっ! とにかく、本当のことを 言えばいいんだよ!」  そして、上杉は次のような疑問を発する。
 なぜ、この検察の「犯罪行為」を報じる新 聞やテレビは皆無なのか、と。
ワイドショーな ど飛びつきそうなネタなのに、なぜ、無視な のか?  それは、このニュースを報じると検察批判に なり、検察と「共生関係」にある記者クラブ 自体の自己否定になってしまうからだ、と自 ら絵解きする。
そのため、この国では、この 「事件」が存在しないことになってしまってい るのである。
一切報道されない検察による「犯罪行為」 批判を封じているのは記者クラブの存在か

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