2010年4月号
特集
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第3部 運送会社の倒産は再び増加する
三年ぶりに倒産が減少
東京商工リサーチの調べによると、二〇〇九年の道
路貨物運送業の倒産件数は四六四件で、前年(四九
二件)に比べて五・六%減少した。
道路貨物運送業 の倒産件数が前年を下回るのは三年ぶりのことだと いう。
四半期別推移でみると、〇九年一〜三月が前年同 月比二二・二%増(一〇八→一三二件)、四〜六月 が同九・六%増(一一四→一二五件)、七〜九月が同 一七・三%減(一二七→一〇五件)、一〇〜十二月が 同二八・六%減(一四三→一〇二件)となっており、 〇九年後半からトレンドが変化している。
その理由を東京商工リサーチ情報本部の友田信男上 席部長は次のように指摘する。
「政府による景気・金融対策の効果が大きい。
経済 も企業の業績も好転していない中でこれだけ倒産が減 るということは、公的な支援制度が下支えしている からにほかならない」 具体的には、主に二つの政策が機能しているとい う。
一つはリーマンショックの直後、〇八年一〇月三 一日に施行された緊急保証制度だ。
原材料価格など の高騰により厳しい経営環境におかれた中小企業を 対象としたもので、民間の金融機関からの融資を受 ける際に信用保証協会がそれを保証する。
信用保証協会の一般保証二億八〇〇〇万円(うち 無担保八〇〇〇万円)とは別枠で、さらに二億八〇 〇〇万円(うち無担保八〇〇〇万円)までの利用が 可能(既にセーフティネット保証を利用している場合 は合算で二億八〇〇〇万円まで)となっている。
もう一つの政府支援策は〇九年十二月四日に施行 された中小企業金融円滑化法、いわゆる?モラトリア ム法案?だ。
返済期限の延長を金融機関に強要する 同法案の施行に対しては激しい反発の声があがったこ とは記憶に新しい。
それでも友田上席部長は「確か に問題はあるが、企業にとって借り入れを増やすばか りの従来の制度ではなく、返済をストップするという 発想はあっても良い」と評価している。
モラトリアム法案に関して、今年二月一五日に大手 四行(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそな) は〇九年十二月中の申込状況や猶予決定件数を発表 している。
それによると、申込件数が一万九一二八 件で、そのうち返済猶予に応じた件数は三〇〇〇件 を超えている。
一方、猶予が認められなかった件数はわずかに三 八件。
残りは審査中だが、関係者からはそのうちの 九割以上が猶予を認められるだろうとみられている。
融資が受けやすくなり、返済にもゆとりができる環 境が整いつつある。
しかし、倒産件数が今後も減少するとは限らない。
友田上席部長は「今年の夏前、おそらく六月頃から 運輸業者の倒産件数は再び増勢に転じるのではない か。
今は二つの支援制度のプラスの面ばかりが強調さ れているが、既に足下では必ずしもプラスとは言えな い面も現れ始めている」と語る。
緊急保証制度は借入金なので、当然いつかは返済 する必要がある。
契約は個々の案件によって異なるが、 返済が始まるのは早ければ施行から一年後といわれて いる。
つまり昨年の一〇月頃から既に返済を迫られ ている運送会社も出始めていることになる。
モラトリアム法案にしても借り手側の警戒心が解け てきたこともあって申込者はますます増えることが見 込まれているが、今後は審査が厳しくなるとの見方 が強い。
運送会社の倒産は再び増加する 運送会社の倒産は昨年後半から沈静化に向かってい る。
緊急支援制度やモラトリアム法案といった政府支 援策が一定の効果を発揮している。
しかし、この状況 は長くは続かない。
“ 薬” が効いているうちに景気が 回復しなければ、倒産件数は今年後半から再び増勢に 向かうだろう。
(石鍋 圭) APRIL1 2010 20 友田上席部長は「亀井金融相の肝いりで始まった この法案だが、金融機関からすれば甚だ迷惑なシロモ ノ。
猶予の応諾に?努力義務?を課しているため今 のところ応じているものの、このまま受け入れ続けれ ば、極端な話、金融機関が不良債権の温床にもなり かねない。
銀行がそのような事態を放置しておくと も思えない」とみている。
たとえ返済猶予が認められても、事業継続に必要 な新規あるいは追加融資を受けられなければデフォル トは避けられない。
返済猶予を受けてさらに融資を 受ける場合には、一定期間内に経営環境の持ち直し 案をまとめた実抜計画(実質的抜本的計画)を金融 機関に提出し、認められる必要がある。
しかし、実 際には金融機関に認められるような実効性のある実 抜計画を描くことのできない企業が大半を占める可能 性が高いという。
「結局、緊急保証制度もモラトリアム法案も企業の 業績が好転しなければただの倒産先送り制度にすぎ ない。
景気が戻らない中で経営を立て直すのは多くの 中小企業にとっては至難の業。
?薬?が効いているう ちは良いが、効果が切れれば倒産も増えてくる。
運 輸業に関しては、六月頃に建設業や小売業がへこむ のに連動して倒産が増えるだろう。
避けるには国のさ らなる対策に期待するしかない」(友田上席部長) 猶予は根本的な解決ではない 同様に、帝国データバンク情報部の早川輝之記者も 「いくら返済をストップして延命しても、景気や企業 体力の回復がなければ根本的な解決にはならない。
し かし、現状を見渡す限り好転する要素は見えない。
今 年の秋口から倒産のペースは再び加速するのではない か」と予想する。
帝国データバンクの調査は東京商工リサーチとは異 なる結果になっている。
〇九年の運輸業の倒産件数 は五二九件で前年(四八八件)よりも八・四%増え た。
過去五年間では最多だ。
それに対して運輸業以 外の業種では前年に比べて横ばいや減少に転じている ケースも少なくない。
その詳細を見ると、全業種の推移としては〇九年 の春頃に倒産はピークを迎えて、その後は前年同月比 で大幅な減少傾向に向かっている。
運輸業も同様の 流れなのだが、通年で横ばいや減少に転じた業種と比 べると、倒産件数の減少率は低かった。
その理由を 早川記者は次のように分析する。
「他の業種には効果 のあった国による支援制度が、運輸業にはあまり効か なかったのではないか。
運輸業者の中には今日、明 日の事業存続に四苦八苦しているところが多い。
そ ういった会社の多くは、既にセーフティネットや他の 金融機関からの借入金が嵩んでいて緊急保証制度の 恩恵を十分に受けることはできなかったはずだ」 よしんば審査を通って融資を受けても、返済が始ま るまでに体力がついていなければ意味がない。
それ が出来なければ、もともとギリギリの状態だったのだ から返済開始と同時に倒産してしまう。
そういった例 が実際に出始めているという。
二つの政策の効果に対する見解は違うが、今年の 中頃から運輸業者の倒産が増勢に向かうという点で東 京商工リサーチの友田上席部長と帝国データバンクの 早川記者の意見は一致している。
景気が戻らず、荷物がない。
支援制度の効果も今 後は期待できなくなる。
まだコストの圧迫要因にまで はなっていないものの、沈静化していた燃料価格も ジリジリと上がり始めている。
不安要素ばかりが、運 輸業界を取り巻いている。
21 APRIL 2010 東京商工リサーチ情報 本部情報部の友田信男 上席部長 道路貨物運送業の倒産件数 2008 年 2009 年 2010 年 出所:東京商工リサーチ リーマンショック以降、軽油価格は09 年3月を底にジリジリと上がっている 出所:石油情報センター ※上記の価格は、軽油引取税を含み、消費税は除いている 20年 1 月 3月 5月 7月 9月 11月 21 年1月 22 年1月 3月 5月 7月 9月 11月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 年計 32 39 32 32 42 24 44 51 35 48 45 40 34 37 32 39 50 33 45 33 48 36 44 29 51 37 492 464 56 軽油インタンク納入価格(全国平均) (単位:円/L) 160 140 20 0 (円) 120 100 80 60 40 リーマンショック 146.2 円 77.3 円 91.2 円 特 集 トラック運賃 2010
道路貨物運送業 の倒産件数が前年を下回るのは三年ぶりのことだと いう。
四半期別推移でみると、〇九年一〜三月が前年同 月比二二・二%増(一〇八→一三二件)、四〜六月 が同九・六%増(一一四→一二五件)、七〜九月が同 一七・三%減(一二七→一〇五件)、一〇〜十二月が 同二八・六%減(一四三→一〇二件)となっており、 〇九年後半からトレンドが変化している。
その理由を東京商工リサーチ情報本部の友田信男上 席部長は次のように指摘する。
「政府による景気・金融対策の効果が大きい。
経済 も企業の業績も好転していない中でこれだけ倒産が減 るということは、公的な支援制度が下支えしている からにほかならない」 具体的には、主に二つの政策が機能しているとい う。
一つはリーマンショックの直後、〇八年一〇月三 一日に施行された緊急保証制度だ。
原材料価格など の高騰により厳しい経営環境におかれた中小企業を 対象としたもので、民間の金融機関からの融資を受 ける際に信用保証協会がそれを保証する。
信用保証協会の一般保証二億八〇〇〇万円(うち 無担保八〇〇〇万円)とは別枠で、さらに二億八〇 〇〇万円(うち無担保八〇〇〇万円)までの利用が 可能(既にセーフティネット保証を利用している場合 は合算で二億八〇〇〇万円まで)となっている。
もう一つの政府支援策は〇九年十二月四日に施行 された中小企業金融円滑化法、いわゆる?モラトリア ム法案?だ。
返済期限の延長を金融機関に強要する 同法案の施行に対しては激しい反発の声があがったこ とは記憶に新しい。
それでも友田上席部長は「確か に問題はあるが、企業にとって借り入れを増やすばか りの従来の制度ではなく、返済をストップするという 発想はあっても良い」と評価している。
モラトリアム法案に関して、今年二月一五日に大手 四行(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそな) は〇九年十二月中の申込状況や猶予決定件数を発表 している。
それによると、申込件数が一万九一二八 件で、そのうち返済猶予に応じた件数は三〇〇〇件 を超えている。
一方、猶予が認められなかった件数はわずかに三 八件。
残りは審査中だが、関係者からはそのうちの 九割以上が猶予を認められるだろうとみられている。
融資が受けやすくなり、返済にもゆとりができる環 境が整いつつある。
しかし、倒産件数が今後も減少するとは限らない。
友田上席部長は「今年の夏前、おそらく六月頃から 運輸業者の倒産件数は再び増勢に転じるのではない か。
今は二つの支援制度のプラスの面ばかりが強調さ れているが、既に足下では必ずしもプラスとは言えな い面も現れ始めている」と語る。
緊急保証制度は借入金なので、当然いつかは返済 する必要がある。
契約は個々の案件によって異なるが、 返済が始まるのは早ければ施行から一年後といわれて いる。
つまり昨年の一〇月頃から既に返済を迫られ ている運送会社も出始めていることになる。
モラトリアム法案にしても借り手側の警戒心が解け てきたこともあって申込者はますます増えることが見 込まれているが、今後は審査が厳しくなるとの見方 が強い。
運送会社の倒産は再び増加する 運送会社の倒産は昨年後半から沈静化に向かってい る。
緊急支援制度やモラトリアム法案といった政府支 援策が一定の効果を発揮している。
しかし、この状況 は長くは続かない。
“ 薬” が効いているうちに景気が 回復しなければ、倒産件数は今年後半から再び増勢に 向かうだろう。
(石鍋 圭) APRIL1 2010 20 友田上席部長は「亀井金融相の肝いりで始まった この法案だが、金融機関からすれば甚だ迷惑なシロモ ノ。
猶予の応諾に?努力義務?を課しているため今 のところ応じているものの、このまま受け入れ続けれ ば、極端な話、金融機関が不良債権の温床にもなり かねない。
銀行がそのような事態を放置しておくと も思えない」とみている。
たとえ返済猶予が認められても、事業継続に必要 な新規あるいは追加融資を受けられなければデフォル トは避けられない。
返済猶予を受けてさらに融資を 受ける場合には、一定期間内に経営環境の持ち直し 案をまとめた実抜計画(実質的抜本的計画)を金融 機関に提出し、認められる必要がある。
しかし、実 際には金融機関に認められるような実効性のある実 抜計画を描くことのできない企業が大半を占める可能 性が高いという。
「結局、緊急保証制度もモラトリアム法案も企業の 業績が好転しなければただの倒産先送り制度にすぎ ない。
景気が戻らない中で経営を立て直すのは多くの 中小企業にとっては至難の業。
?薬?が効いているう ちは良いが、効果が切れれば倒産も増えてくる。
運 輸業に関しては、六月頃に建設業や小売業がへこむ のに連動して倒産が増えるだろう。
避けるには国のさ らなる対策に期待するしかない」(友田上席部長) 猶予は根本的な解決ではない 同様に、帝国データバンク情報部の早川輝之記者も 「いくら返済をストップして延命しても、景気や企業 体力の回復がなければ根本的な解決にはならない。
し かし、現状を見渡す限り好転する要素は見えない。
今 年の秋口から倒産のペースは再び加速するのではない か」と予想する。
帝国データバンクの調査は東京商工リサーチとは異 なる結果になっている。
〇九年の運輸業の倒産件数 は五二九件で前年(四八八件)よりも八・四%増え た。
過去五年間では最多だ。
それに対して運輸業以 外の業種では前年に比べて横ばいや減少に転じている ケースも少なくない。
その詳細を見ると、全業種の推移としては〇九年 の春頃に倒産はピークを迎えて、その後は前年同月比 で大幅な減少傾向に向かっている。
運輸業も同様の 流れなのだが、通年で横ばいや減少に転じた業種と比 べると、倒産件数の減少率は低かった。
その理由を 早川記者は次のように分析する。
「他の業種には効果 のあった国による支援制度が、運輸業にはあまり効か なかったのではないか。
運輸業者の中には今日、明 日の事業存続に四苦八苦しているところが多い。
そ ういった会社の多くは、既にセーフティネットや他の 金融機関からの借入金が嵩んでいて緊急保証制度の 恩恵を十分に受けることはできなかったはずだ」 よしんば審査を通って融資を受けても、返済が始ま るまでに体力がついていなければ意味がない。
それ が出来なければ、もともとギリギリの状態だったのだ から返済開始と同時に倒産してしまう。
そういった例 が実際に出始めているという。
二つの政策の効果に対する見解は違うが、今年の 中頃から運輸業者の倒産が増勢に向かうという点で東 京商工リサーチの友田上席部長と帝国データバンクの 早川記者の意見は一致している。
景気が戻らず、荷物がない。
支援制度の効果も今 後は期待できなくなる。
まだコストの圧迫要因にまで はなっていないものの、沈静化していた燃料価格も ジリジリと上がり始めている。
不安要素ばかりが、運 輸業界を取り巻いている。
21 APRIL 2010 東京商工リサーチ情報 本部情報部の友田信男 上席部長 道路貨物運送業の倒産件数 2008 年 2009 年 2010 年 出所:東京商工リサーチ リーマンショック以降、軽油価格は09 年3月を底にジリジリと上がっている 出所:石油情報センター ※上記の価格は、軽油引取税を含み、消費税は除いている 20年 1 月 3月 5月 7月 9月 11月 21 年1月 22 年1月 3月 5月 7月 9月 11月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 年計 32 39 32 32 42 24 44 51 35 48 45 40 34 37 32 39 50 33 45 33 48 36 44 29 51 37 492 464 56 軽油インタンク納入価格(全国平均) (単位:円/L) 160 140 20 0 (円) 120 100 80 60 40 リーマンショック 146.2 円 77.3 円 91.2 円 特 集 トラック運賃 2010
