2010年4月号
米3PL研究
米3PL研究
第4回 サプライチェーンの進化の行方
APRIL 2010 60
サプライチェーンの進化の行方
一五年ほど前になるだろうか、メーカーの
多くは工場をアジア地域に移転させ、長いリ
ードタイムと引き換えに安価な労働力と輸送
費を享受する道を選んだ。
しかし今の大不況 が始まる前でさえ、その戦略を見直す経営者 は出始めていた。
その主な要因の一つは、米国のGDPに占 める在庫費と輸送費の割合が一五年間下がり 続けたあとに反転し、その後四、五年にわた って上昇基調にあることである。
その他、現在のサプライチェーン戦略は以 下の要因によって見直しを迫られている。
●中国、インド、メキシコ、タイ、ベトナム といったコストの安い国々に工場が殺到し て新たな中間層が誕生した結果、現地の労 賃が急激に上昇していること。
●燃油価格が一バレル当たり四〇ドルから一 四六ドルの間を乱高下していること。
●政府による通貨への介入がしばしば貿易国 間の関係性を歪めていること。
●テロリズムと海賊行為による輸送貨物の危 険性について、米国企業が特別の関心を抱 いていること。
●衣料品に含まれる環境ホルモンや玩具に使 われる鉛が入った塗料など、品質保証(Q A)問題がクローズアップされ、品質保証 への対応が結果的にコストを押し上げてい ること。
●パナマ運河の拡張や効率的なインターモー ダル輸送など、新たな輸送オプションが 次々と登場していること。
経済危機に加えてこうしたオプションが登 場してきたことで、経営者たちはサプライチ ェーン戦略の見直しを余儀なくされている。
それに対して3PLの役割は、オプション の増加に伴って新たにインフラに求められる ことになった戦略的キャパシティの発揮だけ でなく、環境の激変に対応してサプライチェ ーンを再構築することにもある。
そのことを 荷主の経営者たちはよく認識しておく必要が ある。
図1にあるように、荷主の六〇%近くは今 回の不況を3PLとの関係を再評価する好機 であり、その関係性をできるだけ深いものに したいと考えている。
ただし、一九%は「よ くわからない」と回答している。
これはおそ 第4回 当連載の第1回は3PL市場の現状について、第2回は 景気変動の影響と対応策、第3回は3PLのITをテーマと してきた。
連載の最後を締めくくる今回は、サプライチ ェーンがこれからどこに向かって進化していくのかを考 察し、さらに3PLと荷主の双方に対して提言を行う。
米キャップジェミニ・コンサルティング 図1 経済危機はサプライチェーン/ 3PL との関係を見直すきっかけとな るのか? はい 59% いいえ 22% よくわからない 19% 61 APRIL 2010 らく現在の状況が自分たちのビジネスおよび 3PLとの関係に、どう影響してくるのか計 りかねているということであろう。
3PLとの関係を見直すとしている荷主の 割合は高いとはいえ、サプライチェーンのデ ザインと実行については3PLよりも自分た ちの方が一枚上手であると感じている荷主が、 依然として多いようである。
半数以上の荷主 (五六%)はサプライチェーンが自社にとって コアコンピタンスであるとしている。
たしかにサプライチェーンで勝負をしてい る、変化の早い消費財やハイテクのような業 界では、そうした高度な専門知識は自分たち 自身で確立するのが当然だ。
戦略面での意思 決定をアウトソーシングするというコンセプト は、かなり新しい考え方なのである。
また、荷主の四〇%は3PLには実行部分 だけに注力して欲しいと考えている。
そして 三八%が、3PLには荷主をアウトソーシン グへと駆りたてるような専門知識が欠けてい ると答えている。
ある荷主は次のように語る。
「付き合いの あった大手3PLに、あるソリューションを 依頼した。
ところが彼らには専門知識が無い ことが判明し、結局、専門知識を持つ別の会 社に切り替えることになった」 荷主側は3PLに対して、従来とは違った とらえ方をするようにはなっている。
しかし それは3PL側が、戦略的キャパシティを発 揮するのに必要な特定分野の専門知識とスキ ルを持っている限りにおいてなのである。
新たな時代の新たなメトリクス 変化する市場のダイナミクスは、サプライ チェーンのデザインにも影響を与えている。
荷 主は目まぐるしく変わる顧客の需要にもっと 素早く対応しうる機敏なサプライチェーンを、 さらには持続可能で環境に優しいサプライチ ェーンを求めている。
そのことから人件費・輸送費というコスト と炭素排出量削減プロセスの価値の間のバラ ンス、および生産サイクル短縮の価値とのバ ランスという問題が生じている。
コスト削減の方向性の一つは安価な人件費 を追い求めることよりも、むしろ生産工程を オートメーション化することである。
そして もう一つはエネルギー削減戦略と、コストが 安くて(必ずしも最も安い必要はないが)市 場に近い場所で生産することである。
そうしたロケーションを選ぶ際の新たな指標 として先鋭的なサプライチェーンのリーダーは、 「TLC(total landed cost:製品の総原価= 製造・輸送・保管・税金・保険等、当該製 品の製造から納品までにかかるすべての費用 の合計)」という測定規準を採用するように なってきている。
TLCが正しく機能するためには当然それ が算定可能でなければならない。
しかし話は それほど簡単ではない。
TLCの計算に必要 なデータは集めることができないか、あるい は複数のシステムに分散しているケースが多い。
そのためTLCを推定したり、実際のデー タにもとづいて推定値を調整したり、そして 得られたTLCデータをサプライチェーンの見 直しに利用することについては、ほとんどの 企業がまだ試行錯誤している段階なのである。
TLCを採用している荷主は今のところま だ少ない。
採用しているところでもその多く は独自のソリューションに依拠しており、3 PLと荷主が協働してTLCを算出する試み はめったにない。
TLCを採用している荷主 であっても、適切なフォーマットに則ったデー タを関係者に伝達するのは3PLに頼ってい る。
TLC算出には3PLの本当のコストに関 するデータが必要となる。
3PL側はそれを TLCの レポートと分析 ビジネスプロセスと ITに関する 深い専門的知識 サプライチェーンの ネットワークデザイン 図2 荷主が3PLに望む決定的に重要な能力 0% 20% 40% 50% 80% 64 60 46 APRIL 2010 62 しかしこうした利益を享受できるようにな るまでには、一仕事が待っている。
前述の通 り、荷主の三八%が3PLにはアウトソーシ ングを拡大するモチベーションとなる専門知 識に欠けているとしている。
しかしながら3 PLの多くは、各市場別のサービスと個々の 業界の専門知識を積み上げてきていることも また、まぎれもない事実である。
請け負っている業界のことを理解していな い3PLが顧客のニーズを満たしているとい う例はめったになく、そうした3PLの従業 員が顧客の業界経験を積んでいることも稀で ある。
医薬品に強いある3PLは知識を深め るために薬剤師を雇うなど、他業界から人を 引き抜くといった努力を重ねている。
ローカルな知識を活用したいと考えている 荷主にとり、特定地域の専門知識は魅力的で ある。
たとえばある3PLは「オーストラリ ア地域では、荷主は自分たちの本社がある地 域で最も強い会社を起用する傾向にある」と 述べる。
また、ASEAN(東南アジア)地域の3 PLは歴史が浅いため、「まだ産業として十 分に確立されているとは言い難い。
彼らが目 指しているものと我々が彼らに期待するもの とが食い違っている」との荷主側の声もある。
荷主が3PLに期待するこれまで述べてき たすべての要因から、3PLは戦略的パート ナーになりうるだけの能力と専門知識を持つ ことを荷主にアピールする必要がある。
3P を持っていることが明らかになったが、具体 的には3PLが提供するITサービス、サプ ライヤー・リレーションシップ管理、サプラ イチェーン計画、インターネットベースのやり 取り、RFID、グローバル・トレード管理 などに興味を持っている。
こうしたサービスが荷主にとってどのよう な価値を持つかは明白である。
図3にあると おり、四分の三もの荷主が3PLと戦略的関 係を結ぶことでTLCが低減されると答えて いる。
また、六〇%近くがオペレーションの 柔軟性が向上して、よりデマンドドリブン(需 要主導)を進めるための手助けとなり、資本 コスト・従業員数・営業費も圧縮されるとし ている。
開示することには抵抗があるだろう。
また複 雑なTLCの計算のもう一つの問題は、計算 に必要な細かいデータがそもそも存在しない 企業や組織があることである。
大手製薬会社シェリング・プラウのダニ ー・タンはこう述べる。
「過去の経験からす ると、企業は本当にTLCを計測していると はいえない。
輸送費や製造費などの個々のコ ストばかり気にしている。
こうしたものはた だスナップショットを撮っているようなものだ。
TLCの把握にはおそらく3PLが役に立つ ケースが多いだろう」 荷主は3PLに求める機能として、TLC についてのレポートと分析を最も重視してい る。
(図2参照)つまり荷主は3PLが戦略 的パートナーとなってくれることを望んでい るのである。
こうした回答からわかるのは、荷主はソー シングやネットワークを大幅に変更することを 本格的に検討しており、もし3PLが必要な スキルと専門知識を有するなら大いに力にな ってもらいたいと考えているということであ る。
ただしそうしたサービスを現在3PLが普 通に提供しているわけではなく、また必ずし もすべての荷主がサービスに対する対価を払 おうと考えているわけではないことは特記し ておかなければならない。
二〇〇八年度の当調査で、荷主は3PLと もっと戦略的な関係を構築したいという意欲 TLCの低減 オペレーションの フレキシビリティ向上と デマンドドリブン化 資本コスト、 従業員数、 営業費の圧縮 図3 3PLとのより戦略的な関係性の価値 0% 20% 40% 50% 80% 75 58 58 63 APRIL 2010 プロセスを再構築 する必要を感じて いる。
ただし「3PL とのより戦略的な 関係には、需要予 測・会計・ビジネ スプラン・ソーシ ング等の詳細なデ ータを共有するこ とが必要だ」とす る荷主が五八%と、 若干低めの数字が 出ていることには 注意を要する。
これにはおそら くいくつかの理由 が考えられる。
一つには荷主が期待する3P LのIT能力と実態との乖離により、もし詳 細データを共有したとしても、3PL側には それを活用する能力が欠けていると荷主が判 断していることがあるだろう。
いま一つは、競合相手とも付き合いがある かもしれない第三者に、こうしたデータを渡 すのが不安だという理由が考えられる。
いま のところ需要予測のような機密データを共有 する例は非常に限られている。
家電大手エレクトロラックス社のビヨル ン・イエンセンは、そうしたシナリオにおい ては「荷主側はコアコンピタンスを手放すこ LのIT能力に関する期待と実態との間にギ ャップがあったように、荷主が3PLに期待 する能力と実態の間にもギャップが存在する のである。
図4にロジスティクスサービス・プロバイ ダーの進化の過程を図示した。
ここには実行 系をベースとした個々のサービスを提供する 旧来型から、すべてのサプライチェーン・サ ービスの総司令官としての3PL、ならびに 4PL/リード・ロジスティクス・プロバイ ダー(LLP)モデルへの進化が見てとれる。
その総司令官は荷主とともにサプライチェ ーンのコーディネーション戦略を構築し、そ してサプライチェーンにおける全活動のサイク ル全体を管理することになる。
ロジスティクス・プロバイダーが、あるス テージから一段上のステージへとレベルアップ するにつれ、サプライチェーンへの関与と責 任が増える。
したがって前述の調査結果が示 すように、プロバイダーがその業種や業界に 極めて精通していることを明示できる場合に のみ、荷主は進んでプロバイダーに責任を委 譲しようとするのである。
より開かれた関係へ お互いの関係性からより多くの利益を得る ための解決策を必要としてるのは、3PLば かりではない。
なんらかの変化が必要なこと は荷主側も認識している。
図5によれば、六 六%の荷主が3PLと協力しあってビジネス 図4 3PLはサプライチェーンの総司令官へと進化する マネジメントロジスティクス ビジネス戦略 戦略 計画 コーディネーション 実行 顧客 旧来型 顧客 3PL 輸配送 保 管 コントラクト・ ロジスティクス 3PL 3PL 付加価値 サービス 3PL 顧客 リードロジスティクス リードロジスティクス / 4PL (意思決定) サプライチェーン・サービス サプライチェーン・ コーディネーション (戦略) 顧客 サプライチェーン ・マネジャー エンジニアリング 計画 ソーシング 製造/アセンブリー 保管 付加価値 サービス 輸送 時間軸 付加価値 サービス 輸配送 保 管 輸配送 保 管 ビジネスプロセスを再構築するため 3PLと専門チームを組む 需要予測、会計、ビジネスプラン、 ソーシングなどの詳細データ 0% 20% 40% 50% 80% 66 58 図5 3PLとのより戦略的関係構築には何が必要か APRIL 2010 64 ●調達のロケーション、ネットワークの再編 成、TLCの算定など、戦略的サービスの スキルを磨く(3PL側)。
●市場とそれぞれの荷主固有のビジネスニー ズを深く理解する。
●サプライチェーンの全体像把握とビジネス プロセスの再構築のために、ワークショッ プを荷主と3PLで共催する。
●標準化されたオープンなプラットフォームに 投資をしてITギャップを克服する。
●測定と継続的改善のための確固としたプロ セスの導入を容易にするため、明確に定義 した標準オペレーティング手順とKPIに ついて双方の合意を形成する。
●個々の活動基準原価よりもTLC算定に必 要なデータの収集を始める。
ある荷主の例 では、TLC算定につながるデータを3P Lと進んで共有しようとしたが、3PLは 必要なレベルの詳細なデータを提供できな かったという。
最後に挙げた課題はとても重要だ。
調査結 果が示唆するように、荷主側はサプライチェ ーンを新たな目で見直す時期だと感じており、 どこでモノを作るかということから何を外注 に出すかということまで再検討を始めている。
しかしサプライチェーンについて考え直すこ とは、荷主側にも新たなアプローチに基づい たサプライチェーンからのデータ収集が必要と なる。
3PLとの関係から新たなレベルの価 して関係が中途半端に終わってしまう。
3PLが図4の右側に示したモデルへと進 化することを阻んでいるのも、やはり危惧な のである。
3PLが持つ専門知識に対する荷 主側の信頼と、双方が進んでデータやリスク、 潜在的な利益などをシェアすることで、新し い付加価値の高いビジネスモデルが単なるアイ デアではなくリアリティを持つものとなる。
変化へのステップ 昨今の厳しいマーケットの要求に応えられ るようにサプライチェーンを再構築するという、 この決定的に重要な目標を達成するには、よ り戦略的な3PLとの関係が役に立つと、荷 主は強く感じている。
しかしそのようなレベ ルにまで到達するには、克服しなければなら ない課題が3PLと荷主のどちらの側にもあ る。
以下に列挙する。
●あらゆるレベルからの後押し。
荷主と3P Lがサクセスストーリーを共有できるならば、 トップマネジメントからのサポートが足りな いという問題も克服できるだろう。
●円滑なコミュニケーションの確立。
組織全 体を通しての円滑なコミュニケーションの 確立と社内外の戦略を調整することで、サ プライチェーン・モデルの変化は加速する。
また、何がビジネスを駆動させるのか、コ スト/プロフィット・ドライバーは何かとい うことを双方が知ることも役に立つ。
とになる。
自社のすべてのビジネスが突然3 PLのどこかのサーバーに依存することにな ったら、それは大きなリスクだ」と述べる。
一方で3 P Lサドルクリーク社のウッデ ィ・ブレイロックは次のように語る。
「3PL のプロセスを顧客のサーバー・インフラ上で走 らせるということになると、その分野での合 理化のポテンシャルが損なわれる。
3PL側 はデータの取り扱いと責任の所在を、契約内 容に確実に盛り込む必要がある。
データとプ ロセスが我々にとって大きなリスクとなって いたために、RFP(提案依頼書)に基づく ビッドへの応札を見合わせたこともあるほど だ」 調査結果の背後にあるストーリーは、3P Lが顧客と戦略的レベルの関係性を構築する ために必要な条件を示唆している。
つまり3 PLは荷主に対しビジネスプロセスへの深い理 解と専門知識を持つことをアピールし、フレ キシブルかつ統合されたITのプラットフォー ムとシステムを提供し、なおかつ高度な機密 データの共有が荷主の利益になることを納得 させなければならない。
3PLと顧客の間にはパートナーシップが 本当に不足している。
インフラを共有するこ とは双方ともにメリットがある。
やらねばな らないのはオープンにすることの不安を克服 すること、そして限られたITリソースで有 益な統合を成し遂げることである。
そうしな ければ3PLと荷主の双方がリソースを浪費 65 APRIL 2010 〇%が3PLにはアウトソーシングを増やす 気にさせるようなビジネスの専門知識がない としている。
3PLと共同で不況に立ち向かう戦略を立 てようというアプローチはまだ少ない。
それど ころか多くの荷主は前向きの話をせずに、値 段だけを下げさせるという正反対の方針をと っている。
同じ3PLと継続的に付き合って いくことは自社のKPIには含まれていない と、ある荷主はコメントしている。
こうしたスタンスではロジスティクスの地位 は下がる一方であり、3PLが荷主のサプラ イチェーンに関する専門知識を強化しようと する機運に水を差すだけだ。
荷主と3PLがよりコラボレーティブで戦 略的な関係を構築する上で、問題となってい るのはそれだけではない。
前回(連載第三回) 詳しく見たように、3PLのIT対応力に対 する荷主側の期待と実際の満足度の間には隔 たりがある。
だが実際は、両者の間にはこの問題に対す る認識の違いがあるのである。
はっきりして いるのは、現行のレガシーシステムでは、今 後サプライチェーンを運営していくのに必要 とされるKPI、警告、可視性などを、隅々 まで行き渡らせることができないということ である。
調査により判明した、もう一つの3PLに 期待されるIT機能として、荷主がサプライ チェーン・ネットワークの設計において最善 ーンをいかにそれに適応させていくかという ことが重要となる。
将来の市場の浮き沈みを切り抜けることが できる、より機敏で適応力のある効率的なサ プライチェーンを荷主が構築するに当たって、 3PLの果たす役割は大きい。
もしくは、少 なくとも3PLはそうした役割を果たしうる ということを、荷主に認識してもらいたいと 望んでいる。
3PLは物量の減少に直面しているが、一 方でコスト削減および荷主とのビジネスを維持 獲得するため、短期的・長期的両方の戦略確 立を模索している。
充分に活用されていない アセットにこだわっているわけではなく、ま すます複雑化する荷主のロジスティクス・ニ ーズに応えるために必要なアジリティ(機敏 さ)、キャパシティ、そしてサプライチェーン の専門知識を提供したいと望んでいる。
今回の調査結果によれば、荷主の多くは3 PLを必ずしも戦略的キャパシティとしてはと らえていない。
しかし3PLからの提案に耳 を傾けるようにはなってきている──六〇% の荷主が3PLとの関係を再検討し、可能で あればいっそう緊密な関係性を築くべきとき であるとの回答を寄せている。
例えばすでに 輸配送の分野においては、モーダルシフトも しくはインターモーダル・ソリューションとい ったイノベーションが進行している。
しかしながら荷主の四〇%は3PLに実行 という役割しか期待しておらず、同じく約四 値を引き出すには、信用しうるパートナーと しての3PLとのデータ共有とともに、新た なレベルの詳細なデータが必要となるのであ る。
まとめと提言 目下の不況真っ只中から長期的な視野で振 りかえると、過去二〇年間は二度と繰り返さ れることのない例外的な状況であった。
世界 的な生産能力の急増、自由貿易協定、資金 調達の容易さ、IT技術の進歩など、歴史上 例を見ない要因によって経済が著しく発展し、 そしてそれに寄り添うように3PL産業が勃 興、拡大していった。
今年で一四年目を迎える我々の調査は、そ の成長をつぶさに報告してきた。
しかし現在、 3PL市場は急激に変化している。
これまで みてきたように、いまやロジスティクス産業は キャパシティの過剰、価格下落圧力、工場閉 鎖、資金調達の制約、企業合併、サプライヤ ーの減少、消費者需要の減退などの問題に直 面している。
こうしたことから荷主はこれまで当然とさ れてきた前提を問いなおし、自らを革新して 市場に一歩でも近づく方法を模索せざるをえ ない。
さしあたり荷主にはコスト削減が急務であ る。
しかしもっと長いスパンでみれば、今後 なにが?新しい標準?になるかということを 理解し、自分たちのビジネスとサプライチェ APRIL 2010 66 ため、現行のITアプリケーションを合理 化・最新化しなければならない。
一つのオペレーションで多種の業務や顧 客をサポートするプラットフォームを作り上 げることで、3PLはマーケットに機敏に 対応し、ITコストを削減し、さらに荷主 と輸送キャリアとのコラボレーションを容易 にすることが可能となるのである。
●3PLと荷主はコラボレーションのための 新たな方法論と枠組みを生み出す必要が ある。
具体的にはKPIの共有、ジョイン ト・ブレーンストーミング、リスクとイノ ベーションがもたらす報酬を共有する長期 的コミットメントとそのモデルなどである。
3PLと荷主の組み合せは、それぞれが単 独でいるよりもはるかに強いものになりうる。
両者にとってコラボレーションは、現在の状 況を乗り切って新たな時代によりよく適応し ていく助けになる可能性を秘めている。
経済 の落ち込みがコラボレーションと変化の触媒と なって、3PLと荷主の関係性はレベルアッ プしていくことになるのかもしれない。
の調査を締めくくりたい。
●3PLは、ネットワークの最適化、サステ ナビリティに関するガイダンスといったスキ ルを強化し、それを荷主に対してアピール し、さらには成果を開陳して自分たちの価 値を高めていく必要がある。
また、物流業 界は協力関係の先進的な成功例に目を向け なければならない。
●荷主側は3PLの持つ専門知識を利用する ことをためらわず、ネットワーク最適化な どの必要とされるサービスを依頼すべきで ある。
依頼することで失うものは何もなく、 むしろ潜在的には得るもののほうが大きい。
●3PLはネットワークの構築力を強化し、 多くの荷主をカバーできるようアセットを 配置する必要がある。
パナルピナのように この不況を良い機会ととらえているところ もある。
「パナルピナは今の経済状況を、マ ーケットにおける我々の立場の強化を目的 とした投資を行うチャンスとして考えてい る」と同社のモニカ・ライバーCEOは語 る。
「役員たちと私はいろいろな戦略を実 行に移している。
景気回復の暁には、すぐ にでもそれが成果となって現れることを確 信している」 ● 3 P Lはプラットフォーム戦略を採用す る必要がある──オープン・インダストリ ー・スタンダードをベースとした拡張可能 で柔軟なITプラットフォームを実現する の選択をすることを可能にする、TLCの算 定に役立つレポートと分析ツールを提供する能 力がある。
しかしTLC算定機能といった高 度な機能や、もっとオープンなプラットフォー ム、データの共有などについては、信用とリ スクの問題が立ちはだかって進展を阻害して いる。
3PLと荷主が新たな低成長時代に対処す るのに役立つ、新たなコンセプトと技術が登 場してきている。
そのうちの一つが、中立的 な第三者が調整する、企業間をまたがる水平 的なサプライチェーンである。
特定のロジスティクス業務をひとまとめに してサプライチェーンを統合することで規模の 経済の原理を活用し、効率性(ロジスティク ス・コスト)、有効性(顧客サービス)、環境 性(カーボン・フットプリント)を高めると いうコンセプトにもとづいたイノベーションで ある。
この分野のパイオニアがベルギーを本拠とす る3PL、TRI─VIZOR社である。
創 立者の一人であるスヴェン・ヴェルストレー ペンによれば、世界有数の荷主たちがサプラ イチェーンの統合に乗り出だそうとしている ため、物流セクターはいままさにパラダイムシ フトの時期を迎えつつあるという。
これからの経済環境の中で成功のポテンシ ャルを最大化するような3PLと荷主の実り ある関係が築かれるよう、今年度の3PL年 次調査の著者一同は以下のことを提案し、こ ©2009 C.John Langley, Jr.,Ph.D.,and Capgemini U.S. LLC. All rights reserved.
しかし今の大不況 が始まる前でさえ、その戦略を見直す経営者 は出始めていた。
その主な要因の一つは、米国のGDPに占 める在庫費と輸送費の割合が一五年間下がり 続けたあとに反転し、その後四、五年にわた って上昇基調にあることである。
その他、現在のサプライチェーン戦略は以 下の要因によって見直しを迫られている。
●中国、インド、メキシコ、タイ、ベトナム といったコストの安い国々に工場が殺到し て新たな中間層が誕生した結果、現地の労 賃が急激に上昇していること。
●燃油価格が一バレル当たり四〇ドルから一 四六ドルの間を乱高下していること。
●政府による通貨への介入がしばしば貿易国 間の関係性を歪めていること。
●テロリズムと海賊行為による輸送貨物の危 険性について、米国企業が特別の関心を抱 いていること。
●衣料品に含まれる環境ホルモンや玩具に使 われる鉛が入った塗料など、品質保証(Q A)問題がクローズアップされ、品質保証 への対応が結果的にコストを押し上げてい ること。
●パナマ運河の拡張や効率的なインターモー ダル輸送など、新たな輸送オプションが 次々と登場していること。
経済危機に加えてこうしたオプションが登 場してきたことで、経営者たちはサプライチ ェーン戦略の見直しを余儀なくされている。
それに対して3PLの役割は、オプション の増加に伴って新たにインフラに求められる ことになった戦略的キャパシティの発揮だけ でなく、環境の激変に対応してサプライチェ ーンを再構築することにもある。
そのことを 荷主の経営者たちはよく認識しておく必要が ある。
図1にあるように、荷主の六〇%近くは今 回の不況を3PLとの関係を再評価する好機 であり、その関係性をできるだけ深いものに したいと考えている。
ただし、一九%は「よ くわからない」と回答している。
これはおそ 第4回 当連載の第1回は3PL市場の現状について、第2回は 景気変動の影響と対応策、第3回は3PLのITをテーマと してきた。
連載の最後を締めくくる今回は、サプライチ ェーンがこれからどこに向かって進化していくのかを考 察し、さらに3PLと荷主の双方に対して提言を行う。
米キャップジェミニ・コンサルティング 図1 経済危機はサプライチェーン/ 3PL との関係を見直すきっかけとな るのか? はい 59% いいえ 22% よくわからない 19% 61 APRIL 2010 らく現在の状況が自分たちのビジネスおよび 3PLとの関係に、どう影響してくるのか計 りかねているということであろう。
3PLとの関係を見直すとしている荷主の 割合は高いとはいえ、サプライチェーンのデ ザインと実行については3PLよりも自分た ちの方が一枚上手であると感じている荷主が、 依然として多いようである。
半数以上の荷主 (五六%)はサプライチェーンが自社にとって コアコンピタンスであるとしている。
たしかにサプライチェーンで勝負をしてい る、変化の早い消費財やハイテクのような業 界では、そうした高度な専門知識は自分たち 自身で確立するのが当然だ。
戦略面での意思 決定をアウトソーシングするというコンセプト は、かなり新しい考え方なのである。
また、荷主の四〇%は3PLには実行部分 だけに注力して欲しいと考えている。
そして 三八%が、3PLには荷主をアウトソーシン グへと駆りたてるような専門知識が欠けてい ると答えている。
ある荷主は次のように語る。
「付き合いの あった大手3PLに、あるソリューションを 依頼した。
ところが彼らには専門知識が無い ことが判明し、結局、専門知識を持つ別の会 社に切り替えることになった」 荷主側は3PLに対して、従来とは違った とらえ方をするようにはなっている。
しかし それは3PL側が、戦略的キャパシティを発 揮するのに必要な特定分野の専門知識とスキ ルを持っている限りにおいてなのである。
新たな時代の新たなメトリクス 変化する市場のダイナミクスは、サプライ チェーンのデザインにも影響を与えている。
荷 主は目まぐるしく変わる顧客の需要にもっと 素早く対応しうる機敏なサプライチェーンを、 さらには持続可能で環境に優しいサプライチ ェーンを求めている。
そのことから人件費・輸送費というコスト と炭素排出量削減プロセスの価値の間のバラ ンス、および生産サイクル短縮の価値とのバ ランスという問題が生じている。
コスト削減の方向性の一つは安価な人件費 を追い求めることよりも、むしろ生産工程を オートメーション化することである。
そして もう一つはエネルギー削減戦略と、コストが 安くて(必ずしも最も安い必要はないが)市 場に近い場所で生産することである。
そうしたロケーションを選ぶ際の新たな指標 として先鋭的なサプライチェーンのリーダーは、 「TLC(total landed cost:製品の総原価= 製造・輸送・保管・税金・保険等、当該製 品の製造から納品までにかかるすべての費用 の合計)」という測定規準を採用するように なってきている。
TLCが正しく機能するためには当然それ が算定可能でなければならない。
しかし話は それほど簡単ではない。
TLCの計算に必要 なデータは集めることができないか、あるい は複数のシステムに分散しているケースが多い。
そのためTLCを推定したり、実際のデー タにもとづいて推定値を調整したり、そして 得られたTLCデータをサプライチェーンの見 直しに利用することについては、ほとんどの 企業がまだ試行錯誤している段階なのである。
TLCを採用している荷主は今のところま だ少ない。
採用しているところでもその多く は独自のソリューションに依拠しており、3 PLと荷主が協働してTLCを算出する試み はめったにない。
TLCを採用している荷主 であっても、適切なフォーマットに則ったデー タを関係者に伝達するのは3PLに頼ってい る。
TLC算出には3PLの本当のコストに関 するデータが必要となる。
3PL側はそれを TLCの レポートと分析 ビジネスプロセスと ITに関する 深い専門的知識 サプライチェーンの ネットワークデザイン 図2 荷主が3PLに望む決定的に重要な能力 0% 20% 40% 50% 80% 64 60 46 APRIL 2010 62 しかしこうした利益を享受できるようにな るまでには、一仕事が待っている。
前述の通 り、荷主の三八%が3PLにはアウトソーシ ングを拡大するモチベーションとなる専門知 識に欠けているとしている。
しかしながら3 PLの多くは、各市場別のサービスと個々の 業界の専門知識を積み上げてきていることも また、まぎれもない事実である。
請け負っている業界のことを理解していな い3PLが顧客のニーズを満たしているとい う例はめったになく、そうした3PLの従業 員が顧客の業界経験を積んでいることも稀で ある。
医薬品に強いある3PLは知識を深め るために薬剤師を雇うなど、他業界から人を 引き抜くといった努力を重ねている。
ローカルな知識を活用したいと考えている 荷主にとり、特定地域の専門知識は魅力的で ある。
たとえばある3PLは「オーストラリ ア地域では、荷主は自分たちの本社がある地 域で最も強い会社を起用する傾向にある」と 述べる。
また、ASEAN(東南アジア)地域の3 PLは歴史が浅いため、「まだ産業として十 分に確立されているとは言い難い。
彼らが目 指しているものと我々が彼らに期待するもの とが食い違っている」との荷主側の声もある。
荷主が3PLに期待するこれまで述べてき たすべての要因から、3PLは戦略的パート ナーになりうるだけの能力と専門知識を持つ ことを荷主にアピールする必要がある。
3P を持っていることが明らかになったが、具体 的には3PLが提供するITサービス、サプ ライヤー・リレーションシップ管理、サプラ イチェーン計画、インターネットベースのやり 取り、RFID、グローバル・トレード管理 などに興味を持っている。
こうしたサービスが荷主にとってどのよう な価値を持つかは明白である。
図3にあると おり、四分の三もの荷主が3PLと戦略的関 係を結ぶことでTLCが低減されると答えて いる。
また、六〇%近くがオペレーションの 柔軟性が向上して、よりデマンドドリブン(需 要主導)を進めるための手助けとなり、資本 コスト・従業員数・営業費も圧縮されるとし ている。
開示することには抵抗があるだろう。
また複 雑なTLCの計算のもう一つの問題は、計算 に必要な細かいデータがそもそも存在しない 企業や組織があることである。
大手製薬会社シェリング・プラウのダニ ー・タンはこう述べる。
「過去の経験からす ると、企業は本当にTLCを計測していると はいえない。
輸送費や製造費などの個々のコ ストばかり気にしている。
こうしたものはた だスナップショットを撮っているようなものだ。
TLCの把握にはおそらく3PLが役に立つ ケースが多いだろう」 荷主は3PLに求める機能として、TLC についてのレポートと分析を最も重視してい る。
(図2参照)つまり荷主は3PLが戦略 的パートナーとなってくれることを望んでい るのである。
こうした回答からわかるのは、荷主はソー シングやネットワークを大幅に変更することを 本格的に検討しており、もし3PLが必要な スキルと専門知識を有するなら大いに力にな ってもらいたいと考えているということであ る。
ただしそうしたサービスを現在3PLが普 通に提供しているわけではなく、また必ずし もすべての荷主がサービスに対する対価を払 おうと考えているわけではないことは特記し ておかなければならない。
二〇〇八年度の当調査で、荷主は3PLと もっと戦略的な関係を構築したいという意欲 TLCの低減 オペレーションの フレキシビリティ向上と デマンドドリブン化 資本コスト、 従業員数、 営業費の圧縮 図3 3PLとのより戦略的な関係性の価値 0% 20% 40% 50% 80% 75 58 58 63 APRIL 2010 プロセスを再構築 する必要を感じて いる。
ただし「3PL とのより戦略的な 関係には、需要予 測・会計・ビジネ スプラン・ソーシ ング等の詳細なデ ータを共有するこ とが必要だ」とす る荷主が五八%と、 若干低めの数字が 出ていることには 注意を要する。
これにはおそら くいくつかの理由 が考えられる。
一つには荷主が期待する3P LのIT能力と実態との乖離により、もし詳 細データを共有したとしても、3PL側には それを活用する能力が欠けていると荷主が判 断していることがあるだろう。
いま一つは、競合相手とも付き合いがある かもしれない第三者に、こうしたデータを渡 すのが不安だという理由が考えられる。
いま のところ需要予測のような機密データを共有 する例は非常に限られている。
家電大手エレクトロラックス社のビヨル ン・イエンセンは、そうしたシナリオにおい ては「荷主側はコアコンピタンスを手放すこ LのIT能力に関する期待と実態との間にギ ャップがあったように、荷主が3PLに期待 する能力と実態の間にもギャップが存在する のである。
図4にロジスティクスサービス・プロバイ ダーの進化の過程を図示した。
ここには実行 系をベースとした個々のサービスを提供する 旧来型から、すべてのサプライチェーン・サ ービスの総司令官としての3PL、ならびに 4PL/リード・ロジスティクス・プロバイ ダー(LLP)モデルへの進化が見てとれる。
その総司令官は荷主とともにサプライチェ ーンのコーディネーション戦略を構築し、そ してサプライチェーンにおける全活動のサイク ル全体を管理することになる。
ロジスティクス・プロバイダーが、あるス テージから一段上のステージへとレベルアップ するにつれ、サプライチェーンへの関与と責 任が増える。
したがって前述の調査結果が示 すように、プロバイダーがその業種や業界に 極めて精通していることを明示できる場合に のみ、荷主は進んでプロバイダーに責任を委 譲しようとするのである。
より開かれた関係へ お互いの関係性からより多くの利益を得る ための解決策を必要としてるのは、3PLば かりではない。
なんらかの変化が必要なこと は荷主側も認識している。
図5によれば、六 六%の荷主が3PLと協力しあってビジネス 図4 3PLはサプライチェーンの総司令官へと進化する マネジメントロジスティクス ビジネス戦略 戦略 計画 コーディネーション 実行 顧客 旧来型 顧客 3PL 輸配送 保 管 コントラクト・ ロジスティクス 3PL 3PL 付加価値 サービス 3PL 顧客 リードロジスティクス リードロジスティクス / 4PL (意思決定) サプライチェーン・サービス サプライチェーン・ コーディネーション (戦略) 顧客 サプライチェーン ・マネジャー エンジニアリング 計画 ソーシング 製造/アセンブリー 保管 付加価値 サービス 輸送 時間軸 付加価値 サービス 輸配送 保 管 輸配送 保 管 ビジネスプロセスを再構築するため 3PLと専門チームを組む 需要予測、会計、ビジネスプラン、 ソーシングなどの詳細データ 0% 20% 40% 50% 80% 66 58 図5 3PLとのより戦略的関係構築には何が必要か APRIL 2010 64 ●調達のロケーション、ネットワークの再編 成、TLCの算定など、戦略的サービスの スキルを磨く(3PL側)。
●市場とそれぞれの荷主固有のビジネスニー ズを深く理解する。
●サプライチェーンの全体像把握とビジネス プロセスの再構築のために、ワークショッ プを荷主と3PLで共催する。
●標準化されたオープンなプラットフォームに 投資をしてITギャップを克服する。
●測定と継続的改善のための確固としたプロ セスの導入を容易にするため、明確に定義 した標準オペレーティング手順とKPIに ついて双方の合意を形成する。
●個々の活動基準原価よりもTLC算定に必 要なデータの収集を始める。
ある荷主の例 では、TLC算定につながるデータを3P Lと進んで共有しようとしたが、3PLは 必要なレベルの詳細なデータを提供できな かったという。
最後に挙げた課題はとても重要だ。
調査結 果が示唆するように、荷主側はサプライチェ ーンを新たな目で見直す時期だと感じており、 どこでモノを作るかということから何を外注 に出すかということまで再検討を始めている。
しかしサプライチェーンについて考え直すこ とは、荷主側にも新たなアプローチに基づい たサプライチェーンからのデータ収集が必要と なる。
3PLとの関係から新たなレベルの価 して関係が中途半端に終わってしまう。
3PLが図4の右側に示したモデルへと進 化することを阻んでいるのも、やはり危惧な のである。
3PLが持つ専門知識に対する荷 主側の信頼と、双方が進んでデータやリスク、 潜在的な利益などをシェアすることで、新し い付加価値の高いビジネスモデルが単なるアイ デアではなくリアリティを持つものとなる。
変化へのステップ 昨今の厳しいマーケットの要求に応えられ るようにサプライチェーンを再構築するという、 この決定的に重要な目標を達成するには、よ り戦略的な3PLとの関係が役に立つと、荷 主は強く感じている。
しかしそのようなレベ ルにまで到達するには、克服しなければなら ない課題が3PLと荷主のどちらの側にもあ る。
以下に列挙する。
●あらゆるレベルからの後押し。
荷主と3P Lがサクセスストーリーを共有できるならば、 トップマネジメントからのサポートが足りな いという問題も克服できるだろう。
●円滑なコミュニケーションの確立。
組織全 体を通しての円滑なコミュニケーションの 確立と社内外の戦略を調整することで、サ プライチェーン・モデルの変化は加速する。
また、何がビジネスを駆動させるのか、コ スト/プロフィット・ドライバーは何かとい うことを双方が知ることも役に立つ。
とになる。
自社のすべてのビジネスが突然3 PLのどこかのサーバーに依存することにな ったら、それは大きなリスクだ」と述べる。
一方で3 P Lサドルクリーク社のウッデ ィ・ブレイロックは次のように語る。
「3PL のプロセスを顧客のサーバー・インフラ上で走 らせるということになると、その分野での合 理化のポテンシャルが損なわれる。
3PL側 はデータの取り扱いと責任の所在を、契約内 容に確実に盛り込む必要がある。
データとプ ロセスが我々にとって大きなリスクとなって いたために、RFP(提案依頼書)に基づく ビッドへの応札を見合わせたこともあるほど だ」 調査結果の背後にあるストーリーは、3P Lが顧客と戦略的レベルの関係性を構築する ために必要な条件を示唆している。
つまり3 PLは荷主に対しビジネスプロセスへの深い理 解と専門知識を持つことをアピールし、フレ キシブルかつ統合されたITのプラットフォー ムとシステムを提供し、なおかつ高度な機密 データの共有が荷主の利益になることを納得 させなければならない。
3PLと顧客の間にはパートナーシップが 本当に不足している。
インフラを共有するこ とは双方ともにメリットがある。
やらねばな らないのはオープンにすることの不安を克服 すること、そして限られたITリソースで有 益な統合を成し遂げることである。
そうしな ければ3PLと荷主の双方がリソースを浪費 65 APRIL 2010 〇%が3PLにはアウトソーシングを増やす 気にさせるようなビジネスの専門知識がない としている。
3PLと共同で不況に立ち向かう戦略を立 てようというアプローチはまだ少ない。
それど ころか多くの荷主は前向きの話をせずに、値 段だけを下げさせるという正反対の方針をと っている。
同じ3PLと継続的に付き合って いくことは自社のKPIには含まれていない と、ある荷主はコメントしている。
こうしたスタンスではロジスティクスの地位 は下がる一方であり、3PLが荷主のサプラ イチェーンに関する専門知識を強化しようと する機運に水を差すだけだ。
荷主と3PLがよりコラボレーティブで戦 略的な関係を構築する上で、問題となってい るのはそれだけではない。
前回(連載第三回) 詳しく見たように、3PLのIT対応力に対 する荷主側の期待と実際の満足度の間には隔 たりがある。
だが実際は、両者の間にはこの問題に対す る認識の違いがあるのである。
はっきりして いるのは、現行のレガシーシステムでは、今 後サプライチェーンを運営していくのに必要 とされるKPI、警告、可視性などを、隅々 まで行き渡らせることができないということ である。
調査により判明した、もう一つの3PLに 期待されるIT機能として、荷主がサプライ チェーン・ネットワークの設計において最善 ーンをいかにそれに適応させていくかという ことが重要となる。
将来の市場の浮き沈みを切り抜けることが できる、より機敏で適応力のある効率的なサ プライチェーンを荷主が構築するに当たって、 3PLの果たす役割は大きい。
もしくは、少 なくとも3PLはそうした役割を果たしうる ということを、荷主に認識してもらいたいと 望んでいる。
3PLは物量の減少に直面しているが、一 方でコスト削減および荷主とのビジネスを維持 獲得するため、短期的・長期的両方の戦略確 立を模索している。
充分に活用されていない アセットにこだわっているわけではなく、ま すます複雑化する荷主のロジスティクス・ニ ーズに応えるために必要なアジリティ(機敏 さ)、キャパシティ、そしてサプライチェーン の専門知識を提供したいと望んでいる。
今回の調査結果によれば、荷主の多くは3 PLを必ずしも戦略的キャパシティとしてはと らえていない。
しかし3PLからの提案に耳 を傾けるようにはなってきている──六〇% の荷主が3PLとの関係を再検討し、可能で あればいっそう緊密な関係性を築くべきとき であるとの回答を寄せている。
例えばすでに 輸配送の分野においては、モーダルシフトも しくはインターモーダル・ソリューションとい ったイノベーションが進行している。
しかしながら荷主の四〇%は3PLに実行 という役割しか期待しておらず、同じく約四 値を引き出すには、信用しうるパートナーと しての3PLとのデータ共有とともに、新た なレベルの詳細なデータが必要となるのであ る。
まとめと提言 目下の不況真っ只中から長期的な視野で振 りかえると、過去二〇年間は二度と繰り返さ れることのない例外的な状況であった。
世界 的な生産能力の急増、自由貿易協定、資金 調達の容易さ、IT技術の進歩など、歴史上 例を見ない要因によって経済が著しく発展し、 そしてそれに寄り添うように3PL産業が勃 興、拡大していった。
今年で一四年目を迎える我々の調査は、そ の成長をつぶさに報告してきた。
しかし現在、 3PL市場は急激に変化している。
これまで みてきたように、いまやロジスティクス産業は キャパシティの過剰、価格下落圧力、工場閉 鎖、資金調達の制約、企業合併、サプライヤ ーの減少、消費者需要の減退などの問題に直 面している。
こうしたことから荷主はこれまで当然とさ れてきた前提を問いなおし、自らを革新して 市場に一歩でも近づく方法を模索せざるをえ ない。
さしあたり荷主にはコスト削減が急務であ る。
しかしもっと長いスパンでみれば、今後 なにが?新しい標準?になるかということを 理解し、自分たちのビジネスとサプライチェ APRIL 2010 66 ため、現行のITアプリケーションを合理 化・最新化しなければならない。
一つのオペレーションで多種の業務や顧 客をサポートするプラットフォームを作り上 げることで、3PLはマーケットに機敏に 対応し、ITコストを削減し、さらに荷主 と輸送キャリアとのコラボレーションを容易 にすることが可能となるのである。
●3PLと荷主はコラボレーションのための 新たな方法論と枠組みを生み出す必要が ある。
具体的にはKPIの共有、ジョイン ト・ブレーンストーミング、リスクとイノ ベーションがもたらす報酬を共有する長期 的コミットメントとそのモデルなどである。
3PLと荷主の組み合せは、それぞれが単 独でいるよりもはるかに強いものになりうる。
両者にとってコラボレーションは、現在の状 況を乗り切って新たな時代によりよく適応し ていく助けになる可能性を秘めている。
経済 の落ち込みがコラボレーションと変化の触媒と なって、3PLと荷主の関係性はレベルアッ プしていくことになるのかもしれない。
の調査を締めくくりたい。
●3PLは、ネットワークの最適化、サステ ナビリティに関するガイダンスといったスキ ルを強化し、それを荷主に対してアピール し、さらには成果を開陳して自分たちの価 値を高めていく必要がある。
また、物流業 界は協力関係の先進的な成功例に目を向け なければならない。
●荷主側は3PLの持つ専門知識を利用する ことをためらわず、ネットワーク最適化な どの必要とされるサービスを依頼すべきで ある。
依頼することで失うものは何もなく、 むしろ潜在的には得るもののほうが大きい。
●3PLはネットワークの構築力を強化し、 多くの荷主をカバーできるようアセットを 配置する必要がある。
パナルピナのように この不況を良い機会ととらえているところ もある。
「パナルピナは今の経済状況を、マ ーケットにおける我々の立場の強化を目的 とした投資を行うチャンスとして考えてい る」と同社のモニカ・ライバーCEOは語 る。
「役員たちと私はいろいろな戦略を実 行に移している。
景気回復の暁には、すぐ にでもそれが成果となって現れることを確 信している」 ● 3 P Lはプラットフォーム戦略を採用す る必要がある──オープン・インダストリ ー・スタンダードをベースとした拡張可能 で柔軟なITプラットフォームを実現する の選択をすることを可能にする、TLCの算 定に役立つレポートと分析ツールを提供する能 力がある。
しかしTLC算定機能といった高 度な機能や、もっとオープンなプラットフォー ム、データの共有などについては、信用とリ スクの問題が立ちはだかって進展を阻害して いる。
3PLと荷主が新たな低成長時代に対処す るのに役立つ、新たなコンセプトと技術が登 場してきている。
そのうちの一つが、中立的 な第三者が調整する、企業間をまたがる水平 的なサプライチェーンである。
特定のロジスティクス業務をひとまとめに してサプライチェーンを統合することで規模の 経済の原理を活用し、効率性(ロジスティク ス・コスト)、有効性(顧客サービス)、環境 性(カーボン・フットプリント)を高めると いうコンセプトにもとづいたイノベーションで ある。
この分野のパイオニアがベルギーを本拠とす る3PL、TRI─VIZOR社である。
創 立者の一人であるスヴェン・ヴェルストレー ペンによれば、世界有数の荷主たちがサプラ イチェーンの統合に乗り出だそうとしている ため、物流セクターはいままさにパラダイムシ フトの時期を迎えつつあるという。
これからの経済環境の中で成功のポテンシ ャルを最大化するような3PLと荷主の実り ある関係が築かれるよう、今年度の3PL年 次調査の著者一同は以下のことを提案し、こ ©2009 C.John Langley, Jr.,Ph.D.,and Capgemini U.S. LLC. All rights reserved.
