2010年6月号
SOLE
SOLE
RAMS研究会報告航空機のRAMS活動膨大なライフサイクルコストを最適化
SOLE 日本支部フォーラムの報告
The International Society of Logistics
JUNE 2010 80
SOLE日本支部RAMS研究
会では、「保全革新・システム改善」
を今年度の調査研究テーマの一つと
し、業種別RAMSの事例研究を実
施している。
今回はその代表例とし て航空機のライフサイクルを通して 実行されるRAMSの活動を扱った。
航空機はライフサイクルの長い高価 格な製品(システム)であり、その 膨大なトータル・コストを最適化す るために早くからRAMSに関する 活動が行われている。
(富士重工業航空宇宙カンパニー航 空機設計部・富田博之) RAMS活動の概要 RAMS(Reliability, Availability, Maintainability and Supportability) という言葉は一般的になじみが薄い かもしれない。
信頼性設計や整備 (保全)性設計、安全性設計といった 具体的な個々の活動単位で理解され ている場合も多く、システム工学や LSA(Logistics Support Analysis :後方支援分析)のように同じよう な活動範囲を示す言葉で扱われる場 合もある。
これに対して航空機におけるRA MS活動は、安全性を確保するのは 当然のこと、要求される任務(運航) を最適なコストで達成するため、ラ イフサイクル期間を通して継続され る。
信頼性や整備性は製品そのもの の設計で決まるが、アベイラビリテ ィは信頼性や整備性に基づき設定さ れる整備計画や後方支援計画で決ま り、その計画に基づく後方支援体制 の構築や体制維持のマネジメントの レベルにより支援性が決まる。
図1 に示すように、RAMSの活動は相 互のカテゴリーを連携させて稼動(可 動)率とコストを最適なバランスを目 指すものである。
R:信頼性 信頼性とは故障の起こりにくさ であり、その「故障が起こらない 膨大なライフサイクルコストを最適化 確率」を具体的に管理する指標とし て故障率またはその逆数である平均 故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure、航空機の場合、 Timeの代わりにFlight Hourを用い てMFHBFとする)が使用される。
また、飛行安全に関わる故障につい てはFTA(Fault Tree Analysis: フォールトの木解析)等の手法を用 いて、その発生確率が限りなくゼロ になるように管理される。
M:整備(保全)性 整備性は故障が発生した場合の 修復のしやすさを指し、平均修復 時間(MTTR:Mean Time To Repair)で管理される。
航空機の場 合は、修復作業を開始してから航空 機が可動状態に復元するまでの直接 整備を実施した時間を対象とし、部 品待ち等の整備を実施していない時 間は対象外とする。
信頼性が製品 の設計だけで決まるのに対し、修復 の方法によってもMTTRは影響を 受ける。
例えば、故障した機器を航 空機に取り付けた状態で修理する場 合と、故障機器を良品と交換し別の 場所で修理する場合とでは航空機自 体が修理される時間が変わってくる。
また、修復時間のほかに工数(Man Hour)を用いることもあり、航空機 全体の整備負荷を見る場合は飛行時 間当たりの平均工数(MMH/FH :Mean Man Hour/Flight Hour ) を用いる。
A:アベイラビリティ 可用性や運用性または稼動(可 動)率と様々に訳されており、運用 できる時間の割合または必要な時に 動ける確率で、評価指標としては 稼動(可動)率が用いられる。
稼 動率には様々な種類があり、MTB FとMTTRだけで決まる固有稼動 率(Inherent availability、製品の 設計だけが反映される数値)、そこに 計画整備(点検検査等の予防整備) を考慮した達成稼動率(Achieved availability、支援体制が完全な場合 に達成可能な数値)、部品待ち等の RAMS研究会報告航空機のRAMS活動 図1 RAMSの各要素の関連 稼働(可動)率 最適なバランス 信頼性/整備性 ↓ 製品設計の最適化 コスト アベイラビリティ ↓ 製品支援要求の 最適化 支援性 ↓ 製品運用・支援体制 の最適化 81 JUNE 2010 後方支援上の遅れ時間も非稼動時間 として扱う運用稼動率(Operational availability、支援体制も含めて評価 する数値)のほか、任務達成率や定 時出発率等が使用される。
S:支援性 製品の運用や支援を行う場合に必 要なリソースが存在する確率と考え ればよいが、実際に具体的な数値で 示すことのできる一般的な指標は無 い。
入手性の高い部品を使用するこ とや汎用器材で整備が可能な構成に するといった製品設計に関わるとこ ろを除き、その大部分が後方支援体 制の能力で決まることが指標の設定 を難しくしている。
アベイラビリティを向上させるため には支援リソースを十分に整える必 要があるが、アベイラビリティを高く すればするほど支援リソースにかけ るコストは高くなる。
このことから アベイラビリティとライフサイクルコ ストを相対的に比較して指標とする こともある。
ライフサイクルとRAMS活動 RAMSの各活動は独立したもの ではなく、それぞれが密接に関連し たり、いくつかの範囲にまたがって いたりする。
そこでそれぞれの活動 について、一般的な開発機体におけ 間隔、計画外整備の実施整備段階と 各段階での基本的な実施範囲を要求 事項として整理する。
これらの数値 は航空機のユーザーが購入する機数 によって運航や任務に必要となる可 動機数を満足するように設定されな ければならない。
また、コストの拡大を防止するた めにライフサイクルコストの目標値 を設定する。
ライフサイクルコスト に関わる考慮事項として、ユーザー が航空機を使用する拠点や整備の施 設・設備に想定しているインフラの 後方支援上の制約も可能な範囲で明 確化する必要がある。
基本設計段階 構想段階で明確化した数値をシス テム、サブシステムと下位構成品に 順次ブレークダウンして振り分けてい く。
ただし全てのパラメーターがブレ ークダウンすることに適しているとい うわけではないため、一般的にはM TBFとMTTRを対象とし、信頼 性・整備性の配分(Allocation)と して実施される。
配分を行うに当た っては、最初にシステムの構成を定 義しておく必要があるが、基本設計 段階で末端の部品一つひとつまで決 まっていないので、設計の進行に合 わせてシステム構成のレベルを深くし、 要求を配分する。
配分される数値は るライフサイクルを以下の五つのフェ ーズに分けて時系列的に要求事項等 を説明する。
●構想段階:航空機に対する要求を 明確化する ●基本設計段階:航空機のシステム 構成を定義し、要求事項をブレー クダウンする ●詳細設計段階:システムの要求を 満足する構成品を決定する ●製造/試験:設計に基づき製品を 製造し、試験により確認する ●運用〜廃棄段階:運用実績をフィ ードバックし、要求達成度を維持 する 構想段階 航空機に要求される機能・性能が 決められるのと同様に、航空機によ って行う運航や任務が実現するため のRAMS上の要求が明確化される。
後方支援上のリソース規模を予測する ために航空機の運用モデル(機数、平 均飛行時間等)も設定しておく。
こ こでは航空機全体のMTBFやMT TR、MMH/FH、安全性に関わ る故障の発生確率、稼動率等の具体 的な数値が決められるほか、航空機 全体の整備コンセプトも策定される。
整備コンセプトでは計画整備の種 類と実施する整備段階や目標とする 類似機体の実績値をベースに設計上 の特徴や完成度を考慮し、現実的に 可能と考えられるように設定する。
安全性の設計として、FTAや F M E A(Failure Mode Effect Analysis: 故障モード影響分析、 Criticality=致命度を加えてFME CAとすることもある)を開始する。
こちらも設計の進行に合わせて分析 のレベルをより下位の構成品まで広 げていく。
詳細設計段階 前段階で配分した構成品の要求値 を満足するように各構成品のMTB FやMTTRの予測(Prediction) を行う。
信頼性の場合、予測には他 機種での実績値、類似品の実績値 をベースとした推定値、信頼性試験 等の結果を用いるほか、「MIL─H DBK─217(米国防総省信頼度 予測モデル)」等の電子機器に適用 される予測手法や「NPRD(Nonelectronic Parts Reliability Data)」 等、非電子機器のデータ集も利用さ れる。
整備性の場合も他機種/類似品の 実績値、モックアップ等実物大模型 による整備性評価結果やタイムチャ ートを用いた机上分析結果が用いら れるが、他機種の実績を用いる場合、 同じ部品でも取り付け方法やアクセ JUNE 2010 82 材や施設・設備、交換する部品や消 耗品を明らかにする。
各整備作業は、実施場所(整備段 階)や実施間隔(計画整備は整備間 隔、計画外整備はMTBF等)が明 らかになっているので航空機の運用 力やライセンス等の契約 上の制約により決まって いる場合も多いが、制約 事項の無い場合はコスト によるトレードオフが行 われる。
これはLOR (Level Of Repair:修理 段階)分析と呼ばれ、? 故障した品目をユーザー が修理する場合、?製 造会社等最上位の修理 能力を有する工場で修理 する場合、?二つの間に 中間の能力を有する組織 があればそれらで修理す る場合、?廃棄する場 合、の修理コストをライ フサイクルベースでシミ ュレーションし、コスト が最小になるケースを明 らかにする。
計画/計画外整備に おける要求を詳細に把 握するために、整備作 業を細分化し工程を明 らかにする整備工程分析(前述のタ イムチャートによる分析を含む)や 工程ごとの必要リソースを洗い出す 整備タスク分析を行う。
ここで各整 備作業における整備員の人数、作業 時間、要求される能力、使用する器 米連邦航空局によって整備項目の初 期設定を行う手順書)」が有名である。
ただしこの分析には多くの労力を要 するので、十分な整備実績のある品 目や重要性の低い品目は既存の整備 をベースに計画整備を設定する。
RCM分析の結果では、整備間隔 が各品目ごとにバラバラに計算され るので、パッケージングと呼ばれる作 業で管理しやすい時間間隔のグルー プに分類する。
時間間隔は整備コン セプトとして当初仮設定した航空機 全体の計画整備間隔を基準とし、安 全性や経済性の観点から最適な間隔 を設定する。
■計画外整備 故障した品目を航空機に取り付け たまま修理または良品と交換すれば 航空機としての修復処置は終わるが、 良品と交換した故障品は構造上可能 かつ経済的に有効であれば修理を行 う。
修理は航空機のユーザーで実施 できるものもあれば、専門的な修理 部門で行うものもあり、修理をどこ で行うかが計画外整備要求の重要な ところである。
修理を行う場所には 必要な支援リソースを展開する必要 があり、その選択が妥当でない場合 にはライフサイクルコストの上昇を招 く結果となる。
修理する場所は修理する部門の能 ス方法等の違いでMTTRの値は変 わるので注意しなければならない。
この段階で設計が細部まで決まっ てくるので、信頼性・整備性の設計 に応じた整備計画を策定し、整備に 必要な支援リソースの要求である後 方支援計画をまとめていく。
この流 れを図2に示す。
整備計画は計画(予防)整備と計 画外(修復)整備の二つに分けて分 析が行われる。
■計画整備 整備による非稼動時間のうち、大 部分は計画整備によるものであり、 安全性を阻害する故障を確実に排 除し、運航/任務へのインパクトを 最小とし、必要最小限のコストで 実行する計画整備を設定しなけれ ばならない。
現在計画整備の設定 にはR C M(Reliability Centered Maintenance:信頼性中心整備)分 析と呼ばれる手法が用いられている。
これは航空機を構成する各部品の信 頼性上の特性(発生する故障の内容、 発生メカニズム、故障の影響、探知 する方法、時間特性等)に基づき整 備の方法、実施整備段階と実施間 隔を決める方法で、その規格として は「MSG(Maintenance Steering Group)─3(メーカー、航空会社、 図2 整備計画/後方支援計画策定の概略フロー 整備構想 信頼性設計 整備性設計故障モード MFHBF MTTR MMH/MA 予防整備 計画整備 修復整備 計画外整備 重要品目選定 CM 分析 整備行程分析 LOR 分析 整備タスク分析 後方支援計画 システム構成 重要品目選定 FMECA RCM 分析 パッケージング 整備計画 1 1 83 JUNE 2010 る必要がある。
運用が開始されても運用要求の変 化や信頼性・整備性向上、製造コス ト削減等の様々な理由から形態の変 更が繰り返されるため、形態管理を 確実に行い、各形態に応じた整備と 支援を実施できるようにRAMSの アウトプットを見直さなければならな い。
運用期間が長くなり廃棄時期が 近づくと経年劣化による不具合の増 加や部品の製造中止等の問題も出て くるため、併せて対応していく必要 がある。
RAMS活動の課題 航空機のライフサイクルコストの 八割〜九割は詳細設計段階までに決 まってしまうといわれている。
詳細 設計段階でのRAMS活動がコスト を大きく左右するのであり、多大な マンパワーが必要とされる。
航空機 を構成する膨大な部品に対し、信頼 性・整備性のパラメーターを予測し、 安全性を阻害する要因を排除し、有 効な予防整備と効率的な修理体制の 策定、必要な支援リソースの洗い出 しを行わなければならない。
そのた め、航空機の構想段階かその前の準 備段階で必要な人件費を開発費用に 盛り込んで計画するとともに、専門 エンジニアの教育等人員計画を立て ておく必要がある。
また、各種活動を効率的に進め るため、過去の経験を最大限に活用 できるようにRAMS活動のアウト プットを体系的に整備して管理する データベースを用意する必要がある。
航空機の開発は、そのライフサイク ルの長さから頻度が少なく、より多 くの情報を集めるためには会社や組 織をこえた(国が管理する)データ ベースの構築が望ましい。
して何を準備するかはアベイラビリテ ィとコストの間のトレードオフとなり、 要求されるアベイラビリティを達成す る最小限のコストで実現するまたは 限られた予算の中で最大限のアベイ ラビリティを得る支援体制を構築し なければならない。
運用〜廃棄段階 前段階までに設定される整備計画 や後方支援計画は設計における技術 的な推定値をベースとしているため、 計画整備の間隔が安全側で設定され ることにより、必要以上の回数の予 防整備が実施される。
また、想定外 の故障発生による飛行安全や任務達 成への影響、修復整備の増加、支援 体制の不備等によるリソースの追加 調達や過剰配置等多くのライフサイ クルコスト上の無駄が発生する。
特に計画整備はアベイラビリティ やコストへの影響が大きいため、運 用実績をベースに見直しを行い、実 施間隔の延長等によるユーザーの運 用形態に応じた整備計画の最適化を 図らなければならない。
そのためには RCM分析をはじめとする整備計画 設定の根拠データを文書化して残し ておくとともに、見直しに使用する 実績データの種類を明確にして、収 集の方法や計画を事前に設定して漏 れなくデータを確保できるようにす モデルをベースにリソースをどこにど れだけ準備すればよいか計画できる。
整備の要求は整備計画として整理し、 整備マニュアル等作成のベースとし、 支援リソースに対する要求は後方支 援計画として整理して支援体制の構 築やリソース調達のベースとする。
製造/試験段階 詳細設計が完了した時点で一通り システムとしての定義が明らかになり、 製造上の対策や試験結果の反映によ り改善が行われる。
信頼性における 初期故障や整備員に対する不十分な 教育、支援リソースの不適切な配置 等の設計/計画の不備による問題が 発生するため、その対応策に応じて RAMS活動のアウトプットに対す る見直しが行われる。
本格的な運用 に先立ち、整備マニュアルも刊行さ れ、整備に使用する部品や器材の調 達、施設・設備の導入や改修、教育 訓練コースの設定と基幹整備員教育 が進められる。
この段階になると、最も大きな制 約事項はコストになる。
より完全な 支援体制の実現に向けて詳細をつめ ていくが、無制限にコストをかける ことはできない。
部品の在庫切れを 防ぐために多くの部品を用意すれば アベイラビリティは高く維持できるが、 部品費が増大する。
支援リソースと 次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは6月18日(金)SCM 革新事例(現場見学会)「トヨタ生産方 式、RFID活用:NECパソコン事業 米沢 工場」を予定している。
このフォーラム は年間計画に基づいて運営しているが、 単月のみの参加も可能。
1回の参加費は 6,000円。
ご希望の方は事務局(sole-joffi ce@cpost.plala.or.jp)までお問い 合わせください。
※SOLE(The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会)は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団 体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・ 三〇〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部 では毎月「フォーラム」を開催し、講演、 研究発表、現場見学などを通じてロジステ ィクス・マネジメントに関する活発な意見 交換、議論を行っている。
RAMS研究会はSOLE日本支部の調 査研究会の略称であり、同支部の毎月のフ ォーラムに合わせて開催し、会員が自主的 に話題・テーマを持ち寄り、運営している。
今回はその代表例とし て航空機のライフサイクルを通して 実行されるRAMSの活動を扱った。
航空機はライフサイクルの長い高価 格な製品(システム)であり、その 膨大なトータル・コストを最適化す るために早くからRAMSに関する 活動が行われている。
(富士重工業航空宇宙カンパニー航 空機設計部・富田博之) RAMS活動の概要 RAMS(Reliability, Availability, Maintainability and Supportability) という言葉は一般的になじみが薄い かもしれない。
信頼性設計や整備 (保全)性設計、安全性設計といった 具体的な個々の活動単位で理解され ている場合も多く、システム工学や LSA(Logistics Support Analysis :後方支援分析)のように同じよう な活動範囲を示す言葉で扱われる場 合もある。
これに対して航空機におけるRA MS活動は、安全性を確保するのは 当然のこと、要求される任務(運航) を最適なコストで達成するため、ラ イフサイクル期間を通して継続され る。
信頼性や整備性は製品そのもの の設計で決まるが、アベイラビリテ ィは信頼性や整備性に基づき設定さ れる整備計画や後方支援計画で決ま り、その計画に基づく後方支援体制 の構築や体制維持のマネジメントの レベルにより支援性が決まる。
図1 に示すように、RAMSの活動は相 互のカテゴリーを連携させて稼動(可 動)率とコストを最適なバランスを目 指すものである。
R:信頼性 信頼性とは故障の起こりにくさ であり、その「故障が起こらない 膨大なライフサイクルコストを最適化 確率」を具体的に管理する指標とし て故障率またはその逆数である平均 故障間隔(MTBF:Mean Time Between Failure、航空機の場合、 Timeの代わりにFlight Hourを用い てMFHBFとする)が使用される。
また、飛行安全に関わる故障につい てはFTA(Fault Tree Analysis: フォールトの木解析)等の手法を用 いて、その発生確率が限りなくゼロ になるように管理される。
M:整備(保全)性 整備性は故障が発生した場合の 修復のしやすさを指し、平均修復 時間(MTTR:Mean Time To Repair)で管理される。
航空機の場 合は、修復作業を開始してから航空 機が可動状態に復元するまでの直接 整備を実施した時間を対象とし、部 品待ち等の整備を実施していない時 間は対象外とする。
信頼性が製品 の設計だけで決まるのに対し、修復 の方法によってもMTTRは影響を 受ける。
例えば、故障した機器を航 空機に取り付けた状態で修理する場 合と、故障機器を良品と交換し別の 場所で修理する場合とでは航空機自 体が修理される時間が変わってくる。
また、修復時間のほかに工数(Man Hour)を用いることもあり、航空機 全体の整備負荷を見る場合は飛行時 間当たりの平均工数(MMH/FH :Mean Man Hour/Flight Hour ) を用いる。
A:アベイラビリティ 可用性や運用性または稼動(可 動)率と様々に訳されており、運用 できる時間の割合または必要な時に 動ける確率で、評価指標としては 稼動(可動)率が用いられる。
稼 動率には様々な種類があり、MTB FとMTTRだけで決まる固有稼動 率(Inherent availability、製品の 設計だけが反映される数値)、そこに 計画整備(点検検査等の予防整備) を考慮した達成稼動率(Achieved availability、支援体制が完全な場合 に達成可能な数値)、部品待ち等の RAMS研究会報告航空機のRAMS活動 図1 RAMSの各要素の関連 稼働(可動)率 最適なバランス 信頼性/整備性 ↓ 製品設計の最適化 コスト アベイラビリティ ↓ 製品支援要求の 最適化 支援性 ↓ 製品運用・支援体制 の最適化 81 JUNE 2010 後方支援上の遅れ時間も非稼動時間 として扱う運用稼動率(Operational availability、支援体制も含めて評価 する数値)のほか、任務達成率や定 時出発率等が使用される。
S:支援性 製品の運用や支援を行う場合に必 要なリソースが存在する確率と考え ればよいが、実際に具体的な数値で 示すことのできる一般的な指標は無 い。
入手性の高い部品を使用するこ とや汎用器材で整備が可能な構成に するといった製品設計に関わるとこ ろを除き、その大部分が後方支援体 制の能力で決まることが指標の設定 を難しくしている。
アベイラビリティを向上させるため には支援リソースを十分に整える必 要があるが、アベイラビリティを高く すればするほど支援リソースにかけ るコストは高くなる。
このことから アベイラビリティとライフサイクルコ ストを相対的に比較して指標とする こともある。
ライフサイクルとRAMS活動 RAMSの各活動は独立したもの ではなく、それぞれが密接に関連し たり、いくつかの範囲にまたがって いたりする。
そこでそれぞれの活動 について、一般的な開発機体におけ 間隔、計画外整備の実施整備段階と 各段階での基本的な実施範囲を要求 事項として整理する。
これらの数値 は航空機のユーザーが購入する機数 によって運航や任務に必要となる可 動機数を満足するように設定されな ければならない。
また、コストの拡大を防止するた めにライフサイクルコストの目標値 を設定する。
ライフサイクルコスト に関わる考慮事項として、ユーザー が航空機を使用する拠点や整備の施 設・設備に想定しているインフラの 後方支援上の制約も可能な範囲で明 確化する必要がある。
基本設計段階 構想段階で明確化した数値をシス テム、サブシステムと下位構成品に 順次ブレークダウンして振り分けてい く。
ただし全てのパラメーターがブレ ークダウンすることに適しているとい うわけではないため、一般的にはM TBFとMTTRを対象とし、信頼 性・整備性の配分(Allocation)と して実施される。
配分を行うに当た っては、最初にシステムの構成を定 義しておく必要があるが、基本設計 段階で末端の部品一つひとつまで決 まっていないので、設計の進行に合 わせてシステム構成のレベルを深くし、 要求を配分する。
配分される数値は るライフサイクルを以下の五つのフェ ーズに分けて時系列的に要求事項等 を説明する。
●構想段階:航空機に対する要求を 明確化する ●基本設計段階:航空機のシステム 構成を定義し、要求事項をブレー クダウンする ●詳細設計段階:システムの要求を 満足する構成品を決定する ●製造/試験:設計に基づき製品を 製造し、試験により確認する ●運用〜廃棄段階:運用実績をフィ ードバックし、要求達成度を維持 する 構想段階 航空機に要求される機能・性能が 決められるのと同様に、航空機によ って行う運航や任務が実現するため のRAMS上の要求が明確化される。
後方支援上のリソース規模を予測する ために航空機の運用モデル(機数、平 均飛行時間等)も設定しておく。
こ こでは航空機全体のMTBFやMT TR、MMH/FH、安全性に関わ る故障の発生確率、稼動率等の具体 的な数値が決められるほか、航空機 全体の整備コンセプトも策定される。
整備コンセプトでは計画整備の種 類と実施する整備段階や目標とする 類似機体の実績値をベースに設計上 の特徴や完成度を考慮し、現実的に 可能と考えられるように設定する。
安全性の設計として、FTAや F M E A(Failure Mode Effect Analysis: 故障モード影響分析、 Criticality=致命度を加えてFME CAとすることもある)を開始する。
こちらも設計の進行に合わせて分析 のレベルをより下位の構成品まで広 げていく。
詳細設計段階 前段階で配分した構成品の要求値 を満足するように各構成品のMTB FやMTTRの予測(Prediction) を行う。
信頼性の場合、予測には他 機種での実績値、類似品の実績値 をベースとした推定値、信頼性試験 等の結果を用いるほか、「MIL─H DBK─217(米国防総省信頼度 予測モデル)」等の電子機器に適用 される予測手法や「NPRD(Nonelectronic Parts Reliability Data)」 等、非電子機器のデータ集も利用さ れる。
整備性の場合も他機種/類似品の 実績値、モックアップ等実物大模型 による整備性評価結果やタイムチャ ートを用いた机上分析結果が用いら れるが、他機種の実績を用いる場合、 同じ部品でも取り付け方法やアクセ JUNE 2010 82 材や施設・設備、交換する部品や消 耗品を明らかにする。
各整備作業は、実施場所(整備段 階)や実施間隔(計画整備は整備間 隔、計画外整備はMTBF等)が明 らかになっているので航空機の運用 力やライセンス等の契約 上の制約により決まって いる場合も多いが、制約 事項の無い場合はコスト によるトレードオフが行 われる。
これはLOR (Level Of Repair:修理 段階)分析と呼ばれ、? 故障した品目をユーザー が修理する場合、?製 造会社等最上位の修理 能力を有する工場で修理 する場合、?二つの間に 中間の能力を有する組織 があればそれらで修理す る場合、?廃棄する場 合、の修理コストをライ フサイクルベースでシミ ュレーションし、コスト が最小になるケースを明 らかにする。
計画/計画外整備に おける要求を詳細に把 握するために、整備作 業を細分化し工程を明 らかにする整備工程分析(前述のタ イムチャートによる分析を含む)や 工程ごとの必要リソースを洗い出す 整備タスク分析を行う。
ここで各整 備作業における整備員の人数、作業 時間、要求される能力、使用する器 米連邦航空局によって整備項目の初 期設定を行う手順書)」が有名である。
ただしこの分析には多くの労力を要 するので、十分な整備実績のある品 目や重要性の低い品目は既存の整備 をベースに計画整備を設定する。
RCM分析の結果では、整備間隔 が各品目ごとにバラバラに計算され るので、パッケージングと呼ばれる作 業で管理しやすい時間間隔のグルー プに分類する。
時間間隔は整備コン セプトとして当初仮設定した航空機 全体の計画整備間隔を基準とし、安 全性や経済性の観点から最適な間隔 を設定する。
■計画外整備 故障した品目を航空機に取り付け たまま修理または良品と交換すれば 航空機としての修復処置は終わるが、 良品と交換した故障品は構造上可能 かつ経済的に有効であれば修理を行 う。
修理は航空機のユーザーで実施 できるものもあれば、専門的な修理 部門で行うものもあり、修理をどこ で行うかが計画外整備要求の重要な ところである。
修理を行う場所には 必要な支援リソースを展開する必要 があり、その選択が妥当でない場合 にはライフサイクルコストの上昇を招 く結果となる。
修理する場所は修理する部門の能 ス方法等の違いでMTTRの値は変 わるので注意しなければならない。
この段階で設計が細部まで決まっ てくるので、信頼性・整備性の設計 に応じた整備計画を策定し、整備に 必要な支援リソースの要求である後 方支援計画をまとめていく。
この流 れを図2に示す。
整備計画は計画(予防)整備と計 画外(修復)整備の二つに分けて分 析が行われる。
■計画整備 整備による非稼動時間のうち、大 部分は計画整備によるものであり、 安全性を阻害する故障を確実に排 除し、運航/任務へのインパクトを 最小とし、必要最小限のコストで 実行する計画整備を設定しなけれ ばならない。
現在計画整備の設定 にはR C M(Reliability Centered Maintenance:信頼性中心整備)分 析と呼ばれる手法が用いられている。
これは航空機を構成する各部品の信 頼性上の特性(発生する故障の内容、 発生メカニズム、故障の影響、探知 する方法、時間特性等)に基づき整 備の方法、実施整備段階と実施間 隔を決める方法で、その規格として は「MSG(Maintenance Steering Group)─3(メーカー、航空会社、 図2 整備計画/後方支援計画策定の概略フロー 整備構想 信頼性設計 整備性設計故障モード MFHBF MTTR MMH/MA 予防整備 計画整備 修復整備 計画外整備 重要品目選定 CM 分析 整備行程分析 LOR 分析 整備タスク分析 後方支援計画 システム構成 重要品目選定 FMECA RCM 分析 パッケージング 整備計画 1 1 83 JUNE 2010 る必要がある。
運用が開始されても運用要求の変 化や信頼性・整備性向上、製造コス ト削減等の様々な理由から形態の変 更が繰り返されるため、形態管理を 確実に行い、各形態に応じた整備と 支援を実施できるようにRAMSの アウトプットを見直さなければならな い。
運用期間が長くなり廃棄時期が 近づくと経年劣化による不具合の増 加や部品の製造中止等の問題も出て くるため、併せて対応していく必要 がある。
RAMS活動の課題 航空機のライフサイクルコストの 八割〜九割は詳細設計段階までに決 まってしまうといわれている。
詳細 設計段階でのRAMS活動がコスト を大きく左右するのであり、多大な マンパワーが必要とされる。
航空機 を構成する膨大な部品に対し、信頼 性・整備性のパラメーターを予測し、 安全性を阻害する要因を排除し、有 効な予防整備と効率的な修理体制の 策定、必要な支援リソースの洗い出 しを行わなければならない。
そのた め、航空機の構想段階かその前の準 備段階で必要な人件費を開発費用に 盛り込んで計画するとともに、専門 エンジニアの教育等人員計画を立て ておく必要がある。
また、各種活動を効率的に進め るため、過去の経験を最大限に活用 できるようにRAMS活動のアウト プットを体系的に整備して管理する データベースを用意する必要がある。
航空機の開発は、そのライフサイク ルの長さから頻度が少なく、より多 くの情報を集めるためには会社や組 織をこえた(国が管理する)データ ベースの構築が望ましい。
して何を準備するかはアベイラビリテ ィとコストの間のトレードオフとなり、 要求されるアベイラビリティを達成す る最小限のコストで実現するまたは 限られた予算の中で最大限のアベイ ラビリティを得る支援体制を構築し なければならない。
運用〜廃棄段階 前段階までに設定される整備計画 や後方支援計画は設計における技術 的な推定値をベースとしているため、 計画整備の間隔が安全側で設定され ることにより、必要以上の回数の予 防整備が実施される。
また、想定外 の故障発生による飛行安全や任務達 成への影響、修復整備の増加、支援 体制の不備等によるリソースの追加 調達や過剰配置等多くのライフサイ クルコスト上の無駄が発生する。
特に計画整備はアベイラビリティ やコストへの影響が大きいため、運 用実績をベースに見直しを行い、実 施間隔の延長等によるユーザーの運 用形態に応じた整備計画の最適化を 図らなければならない。
そのためには RCM分析をはじめとする整備計画 設定の根拠データを文書化して残し ておくとともに、見直しに使用する 実績データの種類を明確にして、収 集の方法や計画を事前に設定して漏 れなくデータを確保できるようにす モデルをベースにリソースをどこにど れだけ準備すればよいか計画できる。
整備の要求は整備計画として整理し、 整備マニュアル等作成のベースとし、 支援リソースに対する要求は後方支 援計画として整理して支援体制の構 築やリソース調達のベースとする。
製造/試験段階 詳細設計が完了した時点で一通り システムとしての定義が明らかになり、 製造上の対策や試験結果の反映によ り改善が行われる。
信頼性における 初期故障や整備員に対する不十分な 教育、支援リソースの不適切な配置 等の設計/計画の不備による問題が 発生するため、その対応策に応じて RAMS活動のアウトプットに対す る見直しが行われる。
本格的な運用 に先立ち、整備マニュアルも刊行さ れ、整備に使用する部品や器材の調 達、施設・設備の導入や改修、教育 訓練コースの設定と基幹整備員教育 が進められる。
この段階になると、最も大きな制 約事項はコストになる。
より完全な 支援体制の実現に向けて詳細をつめ ていくが、無制限にコストをかける ことはできない。
部品の在庫切れを 防ぐために多くの部品を用意すれば アベイラビリティは高く維持できるが、 部品費が増大する。
支援リソースと 次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは6月18日(金)SCM 革新事例(現場見学会)「トヨタ生産方 式、RFID活用:NECパソコン事業 米沢 工場」を予定している。
このフォーラム は年間計画に基づいて運営しているが、 単月のみの参加も可能。
1回の参加費は 6,000円。
ご希望の方は事務局(sole-joffi ce@cpost.plala.or.jp)までお問い 合わせください。
※SOLE(The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会)は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団 体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・ 三〇〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部 では毎月「フォーラム」を開催し、講演、 研究発表、現場見学などを通じてロジステ ィクス・マネジメントに関する活発な意見 交換、議論を行っている。
RAMS研究会はSOLE日本支部の調 査研究会の略称であり、同支部の毎月のフ ォーラムに合わせて開催し、会員が自主的 に話題・テーマを持ち寄り、運営している。
