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荷主企業の物流力が落ちている
荷主企業における物流管理能力、とりわけ
現場力の低下が目立ってきた。 アウトソーシン
グが進んだことで、現場を知らない物流マネ
ージャーが増えている。 一九九〇年代までは
現場の改善手法やマテハンの活用法などにつ
いて、荷主のマネージャー自身が体で分かって
いた。 そのスキルが失われている。
リーマンショック以降、物流コスト削減の必
要性はこれまで以上に高まっている。 拠点集
約や共同化といった課題に改めて直面してい
る。 ところが、荷主企業には施策を実施する
ノウハウがない。 その穴を埋めるかたちで、3
PLが力を付けてきている。 九〇年代まで3
PLは我々のようなコンサルティング会社にと
ってクライアントだった。 それが現在は競合相
手になることもある。
マテハンの導入や選択に関しても3PLが主
導権を握る場面が増えている。 しかし、現状
では、3PLの能力や担当者の力量には個人
差が大きい。 マテハンの活用でも、その3P
L、その担当者が熟知している設備、付き合
いのあるベンダーを採用する傾向にある。 物流
拠点のアウトソーシングは長期にわ
たる契約になるため、全てを3P
Lに依存すれば荷主はリスクを背
負い込むことになる。
またアウトソーシングの普及と並
行して、大規模なマテハン投資は
影を潜める傾向にある。 このとこ
ろ水面下ではバブル時代に導入した自動倉庫
や大がかりな自動仕分け機の撤去が相次いで
いる。 撤去に費用がかかるため放置されたま
まの設備もよく目にする。 出荷形態が大きく
変化したことで使い物にならなくなってしま
った設備だ。
現場作業人件費の変動費化が進んだことも
影響を与えている。 派遣やパートアルバイトを
容易に確保できるようになったことで、自動
倉庫や仕分け機に数億円〜一〇億円規模の固
定費をかけるより、必要に応じて労働力を投
入するほうが有利だという判断に傾いている。
その一方、DPSやハンディ端末などパート
の利用を前提としたマテハン設備は普及が進ん
でいる。 必要な作業品質やリードタイムを達成
するのための最低限の設備だ。 投資金額も数
千万円から、下は数百万円規模で済むためハ
ードルが低い。 3PLでも導入しやすい。
もっとも、これらは一般的なトレンドであっ
て、そのトレンドが正しいとは限らない。 例え
ば、家具販売チェーンのIKEAは、愛知県
に設立した「IKEA弥富物流センター」に
巨大な自動倉庫を導入した。 日本市場におけ
る中央倉庫として、海外から調達した家具を
一定期間保管しておくためには必要な設備で
あり、同社にとっては合理性のある投資だろ
う。 同様に書籍通販のアマゾンも必要な物流
機能を確保するため物流設備には積極的に投
資している。
日本勢でも玩具大手のタカラトミーは今年
四月、千葉県市川市の「プロロジスパーク市川
?」に大型センターを立ち上げ、一日当たり
三五万ピースを処理できる高速自動仕分け機
を導入している。 同センターの納品精度は九
九・九九九%だという。
玩具業界は現在、タカラトミーとハピネット
を擁するバンダイナムコグループの二大陣営に
よって勢力が二分されている。 その競争を勝
ち抜くためにはリスクをとって業界の物流プラ
ットフォームとなるインフラの構築に巨費を投
じるという経営判断は理解できる。
一方、やはりこの一〇年で急増した小売業
の専用物流センターには、高度なマテハン設備
がほとんど導入されていない。 天井と壁、そ
してバースがあるだけでフロアはガランとして
いる。 小売りの物流センターの多くが在庫保
管機能を持たないTC(通過型センター)で
あることが理由だ。 店別に仕分けた状態でベ
ンダーに納品させれば後は荷合わせだけなの
で設備は必要ない。 しかも拠点の運営は3P
Lに委託している。
在庫の保管機能やピッキング機能は上流の
卸やメーカーなどのベンダーに依存している。
また、そのベンダーも仕分け機能を物流会社に
頼っていることが多い。 ベンダーの物流フロー
は梱包ラインで出荷ラベルを貼るところまで。
その後の仕分けは路線便や宅配会社などが行
っている。
ベンダーが自ら梱包ラインの後工程に仕分け
機を導入すれば、路線便や宅配便を自社便に
切り替えることができる。 その結果、配送費
の削減や納品サービスの向上が期待できる場合
パートナーとの機能分担からスタート
日本能率協会コンサルティング ロジスティクス・ソリューション・センター
小澤勇夫 センター長/広瀬卓也 マネージャー
第 4部 物流センター立ち上げのポイント
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ではない。
これは荷主だけでなく3PLも同様だ。 現
状の3PLは在庫管理機能には習熟していな
い。 在庫管理には単なる物流のオペレーショ
ンだけでなく、商品や取引制度の知識、受発
注のやり方、需要予測機能などが求められる。
一部の3PLは卸売業者を買収するなどして
ノウハウの蓄積を図っているが、卸やメーカー
などのベンダー自身に比べると、その能力には
まだかなりの差がある。
設備面でもこれまで3PLはマテハン投資
をできるだけ抑えることで柔軟性を確保する
傾向にあったが、今後DCセンターに本格的
に進出するとなれば大規模投資が避けられな
い。 それだけリスクを負うことになるが、ま
た報酬も大きい。 やはり経営判断が求められ
るところだ。 (談)
おざわ・いさお
一九八二年、早稲田大学法学部卒業。 八九年三月、日
本能率協会コンサルティング入社。 中心領域は物流戦
略視点からのビジョン設定・事業企画および、物流効
率化視点からの拠点設計・在庫管理・荷役設計・生産
管理など。 近年では、物流センター構想立案とセンター
建設に対するコンストラクションマネジメントを手がけ、
建設・運用費用の大幅なコストダウンを実現している。
ひろせ・たくや
一九九二年三月、大阪大学法学部卒業、同年四月日本
能率協会コンサルティング入社。 主な専門領域は物流・
ロジスティクスの事業診断・収益改革、コスト管理、コ
ストダウン・生産性向上・品質向上などの機能別改善、
システム設計・運用、行政改革支援など。 近年は特に、
顧客ニーズを起点とした経営視点でのSCM・ロジス
ティクス改革・設計に重点的に取り組んでいる。
を明確にするところからスタートしなければな
らない。 センターの作業工程やマテハンの設計
は、その後のプロセスになる。
このところ旗色の悪い自動倉庫にしても、サ
プライチェーン上に生産と販売のバッファー機
能は必要であり、工場隣接型の拠点であれば
充分に効果を発揮する場合が多い。 一方、川
下のセンターでは、短時間で多くの仕分けを
するための仕分け機や、あるいはライン上で
出荷順序を調整するためのバケット用の自動
倉庫が必要になることもある。
そうした設備や機能を誰が持つべきか。 正
解はない。 基本的には物流機能が競争条件で
あり付加価値を持つのであれば、アウトソーシ
ングできる範囲は限られてくる。 そうでない
場合は取引先、あるいは3PLや物流会社と
の関係をどう作るかということに注力するこ
とになる。
しかし、物流の付加価値を明確に数値化す
るのは難しい。 どこまでの機能を自分たちで
持つのか、物流サービスをどのレベルに設定す
るのかは、その会社の方針やコンセプト次第
だ。 実際、女性用下着業界では業界一位と二
位で物流戦略が全く異なっている。 一方がマ
テハンを駆使したオペレーションを実施してい
るのに対して、もう一方はマンパワー中心で作
業を組み立てている。
そうした経営上の意志決定を欠いたまま目
先のコストダウンを追い求めてアウトソーシン
グに走れば、その会社の存立基盤自体が危う
くなる。 そのリスクはマテハン投資の失敗の比
でも、固定的な設備に投資することを嫌って
パートナーに機能を依存している。
誰が在庫を持つべきか
本来アウトソーシングは、そのサプライチェ
ーンにおいて自分がどんな役割を果たすのか、
パートナーには何を依存するのか、機能分担
特集
マテハン選定のプロセスとポイント
サプライチェーン
機能設計
メーカー
卸
小売
物流事業者
保有機能
プレイヤー
メーカー
卸
小売
物流工程
設計× マテハン =
設計
複数モデル
設定 × 評価 = 最適モデル
決定
設計要素
入出庫流動特性
製品荷姿特性
在庫流動特性
管理アイテム数
エンジニアリング視点
経済性視点
リスク視点
保管系
設計要素
荷役・運搬系
設計要素
先入れ・先出し
入庫・出庫の効率性
スペース効率性
前後工程との同期化
大量運搬による効率化
連続運搬による活性化
スペース効率性
汎用機器による融通性
機能の多能化
運搬物の特性、量、
距離に応じた適切度
サプライチェーン機能設計 物流工程設計 マテハン設計 評価
《SCにおける自社コントロール範囲設計》
サプライチェーンにおいて、どのような機能を果たすのかに
より、必要となる物流設計要素が異なる。
《SCにおける最適業務フォーメーション設計》
また、その機能を主体的に果たすのが、自社又は他社な
のかといった内外作政策により、経済性・リスクの設定
基準が異なる。
広瀬卓也
マネージャー
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