2010年7月号
ケース
ケース
キユーソー流通システム 定温物流
既存の三温度帯車両の課題を解消
食品の輸送には品質を保持するための厳密
な温度管理が求められる。
一方で店舗配送な どを効率化するために温度帯の異なる商品を 一台の車両に積み合わせて運ぶ工夫も必要だ。
こうしたニーズに適う二温度帯または三温度 帯管理車両がこれまでにいろいろ開発されて いる。
最も普及しているタイプは、荷台の中央に 間仕切りを設けて荷室を二つに分け、前部と 後部にエバポレーター(冷凍機)を装着して 各部屋をそれぞれフローズン帯とチルド帯の設 定温度で管理できるようにした二室式二温度 帯管理車両だ。
食品物流大手のキユーソー流通システムも 従来、このタイプの車両を利用してきた。
店 舗などへフローズン・チルド・ドライの三つ の温度帯の商品を納品する場合は、冷凍品と チルド品を二温度帯管理車(冷凍車)に混載 し、常温品を一般車に積んで二台で配送する 形が一般的だった。
だが近年は景気悪化などの影響により、と くに地方で輸送数量が減り、配送効率が悪化 している。
その対策として同社は主力の四ト ンクラスの配送車を対象に、一台で常温品も いっしょに積載できる三温度帯管理車両の独 自開発に踏み切った。
既存の車両にはいくつか欠点があった。
一 般に三温度帯車両と呼ばれるものには、従来 の二温度帯車両に常温品を積むスペースを設 けただけのものが多い。
間仕切りで荷室を前 部・中央・後部の三つの部屋に分けて、エバ ポレーターの装備された前部と後部の部屋に は従来通り冷凍品とチルド品を積み、間仕切 りで区切った中央の部分に常温品を積む。
この方法では真ん中の常温帯の室温を厳密 にコントロールすることができない。
常温帯 といっても実際には、外気温などに左右され る?成り行き?の温度帯となっていた。
車両の構造上の理由から荷物を出し入れす る際に温度管理面で問題が生じる。
通常、冷 凍車の荷室には前寄り側面と後部の二カ所に ドアがあり、前の冷凍室へは側面のドアから、 後のチルド室へは後部のドアから出入りする ようになっている。
だが真ん中の部屋にはド アがないため、荷物を出し入れするには冷凍 室またはチルド室を通り、間仕切りを開けて 進入しなければならない。
作業性が悪いうえ、 間仕切りを開放するたびに冷気が隣の部屋に 流れ出し、室温に影響する。
さらにもう一つ問題がある。
これも構造上 の理由で、間仕切りを設ける位置がドアの位 置によって制約を受けるため、三つの部屋の スペースが固定されてしまう。
低温品は必ず 車両の前部か後部に積まなければならないう えに、温度帯ごとに積むスペースも制限され る。
荷量の変動に柔軟に対応できず、かえっ て配送効率が悪化する恐れもある。
側面にドアを二つ付けて三室への出入りを 冷凍品から加温品まで3つの温度帯の商品を同時 に運べて、しかも物量に応じて荷室のスペース自 在に変更できる“フレキシブル車両”を車体メーカー らと共同開発した。
さまざまなパターンの混載輸送 が可能になる。
3年間に500台を導入、共同配送の 効率化やコンビニ配送など成長分野の開拓に活かす。
定温物流 キユーソー流通システム 独自開発の3温度帯配送車を本格導入 荷室レイアウト・温度設定を自在に変更 45 JULY 2010 分けるという方法もないわけではない。
だが ドアの数を増やすと、それだけ積載できる貨 物の量が減るというデメリットを覚悟しなけ ればならない。
そこで既存の車両に頼らず、自分たちの手 で全く新しいタイプの三温度帯配送車を開発 することにした。
業務内容に応じて荷室を自 由にレイアウトして温度帯を設定できて、し かも荷量に応じ各部屋のスペースを自在に変 更できる「フレキシブル車両」をめざした。
キユーソー流通システムの業務支援室を中 心に関連事業部が技術面のアドバイザーとな り、〇八年十二月に車体メーカーおよび部品 メーカーとの三社による共同開発をスタート した。
荷室のレイアウトと温度帯の設定が自由に できるということは、三つに区分した荷室の どの部屋をどの温度帯に設定しても完全にコ ントロールできる状態を意味する。
これを実 現するために、エバポレーターを前部に一つ、 後部に二つ並べ、合わせて三つ設置する方法 を考えた。
図Aのように間仕切りを、車両を上から見 たときにTの字になるようにして荷室を三つ に区分すれば、各部屋に一台のエバポレータ ーでそれぞれの設定温度を管理することがで きる。
しかもこの形なら、部屋ごとに専用のドア を設けられる。
前部の部屋へは前寄り側面の ドアから入り、後部の二室へは後ろの観音開 きのドアを片方ずつ開閉して出入りする。
積 み降ろし作業を部屋ごとに完全に分けて行う ことができるので、それだけ品温保持の精度 が高くなる。
米飯類や惣菜の配送を想定して、前部の部 屋には加温機も付けられる設計にした。
一般 に米飯類の管理温度帯は常温だが、外気温が 低いと米が硬くなるため、コンビニエンススト アなどでは荷室を二五度に加温して配送する ケースが多い。
こうしたニーズにも対応でき るように考えた。
着脱可能な間仕切りを開発 荷量の変動に応じて部屋のスペースを自在 に変更できるという、もうひとつの課題につ いては、容易に着脱が可能な間仕切りを開発 することでクリアした。
機密性の高さととも にレイアウト変更の際の操作性が開発のポイ ントだった。
三つの部屋の設定温度を厳密に保持するに は、間仕切りによって隣り合わせになる部屋 が相互に温度の影響を受けないように高い機 密性を持たせることが品質面で第一の要件と なる。
加温の設定温度はプラス二五度で、フロー ズン帯のマイナス二〇度とは大きな温度差が ある。
間仕切りの両面にそれだけの温度差が あっても反りなどが生じないよう十分な強度 が必要だ。
その一方、簡単な操作で間仕切り を移動できる設計にすることも重要な要素だ。
間仕切りの素材選びと接合方法に最も腐心し た。
試行錯誤の末、天井や床にレールや溝を付 けるのではなく、パネルの接合方法に独自の 技術を用い、固定装置を使ってパネルを固定 することで強度を補強するやり方にした。
六枚のパネルを組み合わせて荷室内を区分 する。
レイアウトを変更する時は、パネルを 一枚ずつ荷室の床面に対して垂直および水平 方向に移動する。
パネルの重量は一枚あたり 二〇キロあるが、襖をはずすときの要領でド ライバー一人でもスムーズに着脱できる。
昨年一〇月に四トンクラスの試作車が完成 し、テスト運用を開始した。
温度管理の品質 図A プラス25 度からマイナス20 度まで荷量に応じて温度帯別スペースを変更 業界初、縦横着脱自在の間仕切りを装備した車両用荷箱を開発 フレキシブル配送車で物流品質の向上と運送機能の再構築 切替え可能 温度帯 加温 常温 チルド 冷凍 常温 チルド 冷凍 常温 チルド 冷凍 ? ? ? ? ? ? JULY 2010 46 や操作性は期待通りでこれまでに全国で二〇 台を導入している。
車体にF(frozen)、 C(chilled)、D(dry)の三つ の温度帯に加温をプラスすることを示す「F CD3+1」のロゴマークをつけアピールして いる。
フレキシブル車両の開発・導入によって輸 送のバリエーションは一気に広がった。
図1 のように三室に仕切って三温度帯を輸送する またこれまでは食品メーカーも小売業も、 低温品と常温品の物流拠点は別々に設けるの が一般的だった。
関連事業部の奥津利明部長 は「三温度帯車両が普及すれば、一カ所に設 ける形に変わっていく可能性もある」と分析 する。
フレキシブル車両の開発は、キユーソー流 通システムが今年度から?新たな食品物流の 創造?をスローガンにスタートした新中期経 営計画を象徴する施策の一つだ。
同社は食品メーカーのキユーピーの物流子 会社でありながら積極的に外部顧客を開拓し て自立を進めている。
キユーピーグループ以 外の売り上げ構成比は〇九年度実績で八五% という極めて高い数字になっている。
全国六〇カ所に低温または常温の物流拠点 を配置し、自社では車両を保有せず協力運送 会社で組織する「キユーソー会」の輸配送網 を活用して、全国で共同物流やコンビニ・外 食チェーン・食品スーパー向けの一括物流を 指す「専用物流」を展開し、食品物流分野で トップを走ってきた。
形が基本で、冷凍・チルド・常温・加温の中 からどの温度帯でも選べる。
ただし加温機を 前部に設置する設計のため、加温品だけは必 ず前部に積む。
荷量が変われば図2のように間仕切りの位 置を変えてレイアウトを変更する。
図3や図 4のように二室に分けて二温度帯車両として 使用することも可能だ。
間仕切りをはずして 側面に寄せれば単温度車にもなる。
一台でさまざまな用途に対応できるため、 コンビニの店舗へ三温度帯で配送した帰りに、 食品メーカーの工場へ集荷に行き、冷凍品だ けを積んで物流センターへ輸送するといった 配車も可能になる。
また納品先から通い箱などを回収する場合 には、冷凍品の荷室の一角を図6のように 間仕切りで隔離して積むこともできる。
夏場 などに気温の高い場所で保管されていた通い 箱をうっかり冷凍品などといっしょに運ぶと、 荷室の温度が上がってしまう。
間仕切りで隔 離することでそうした事態を回避できる。
拠点ネットワークを再編 開発を主導した業務支援室の三木隆室長は 「今までの車両よりきめ細かな温度管理ができ る。
三温度帯輸送の品質が一気に高まる。
メ ーカーや卸から三温度帯配送への要望は多い。
広く認知されれば二室式の二温度車に代わる 新しいスタンダードになるかもしれない」と 期待する。
関連事業部の奥津利明部長 フレキシブル帯配送車(貨物室レイアウト) 図1 3温度3室 基本形エバポレーター 常温 冷凍 チルド 図2 3温度3室(荷量に応じて室内変更) 常温 加温 チルド 図3 2温度帯配送(従来型) 常温チルド 図4 2温度帯配送(アレンジ) 冷凍 チルド 図5 3温度帯配送(アレンジ) 常温 常温 冷凍 チルド 図6 2温度帯配送(アレンジ) 冷凍 47 JULY 2010 集約する。
さらに配車計画を最適化するためにシミュ レーションシステムを進化させる。
車載端末 で配送データを収集・蓄積し、これらのデー タをもとにシミュレーションシステムで曜日や 天候などによる道路状況の違いを分析し最適 な配車計画を作成する。
車載端末には検品システムを搭載し、配送 のたびにドライバーが荷物と伝票のバーコード をチェックして誤配を防止できるようにする。
また配送情報を活用して問い合わせへの対応 を迅速化する。
〇九年十二月からスタートした三カ年計画 の前半で、こうしたネットワークの再編や情 報システムの高度化による輸送の効率化や品 質向上を図り、そのうえで後半からは成長分 野へのシフトを進める。
二〜三トン車でも新型車開発 同社が今後ターゲットとする成長分野は輸 入貨物と専用物流だ。
これまで同社は輸入貨 物へのアプローチで、遅れを取ってきた。
今 後、グループの通関会社などと連携して取り 扱いを増やす。
コンビニや外食チェーン向けの専用物流も 強化する。
従来は物流センターのシステム構 築や業務設計を顧客ごとに行い、文字通り顧 客別の専用サービスを提供してきた。
今後は 品質やサービスの基準を明確にしたうえで業 務をできるだけ標準化し、基本的な業務につ いてはパッケージ化を進めてカスタマイズだけ で対応できるようにする。
さらに、配送効率と品質向上をともに実現 できる三温度帯フレキシブル車両の活用を積 極的にアピールし、新規の顧客開拓を進める。
三温度帯フレキシブル車両が、同社の中期計 画における重要な戦略ツールとなっている。
現在、キユーソー会が運行する車両「キユ ーソー便」のうち、四トンクラスの冷凍車は およそ一二〇〇台ある。
同社は今後三年間で このうち五〇〇台をフレキシブル車両に切り 変えていく考えだ。
またコンビニ配送などで需要の多い二〜三 トン車でも同様の車両開発に取り組む。
この クラスの車両は昨年から導入が始まったポス ト新中期規制(自動車排出ガス規制)適用へ の移行期にあるため、各メーカーの適合車種 が出揃うのを待ってから開発に着手する予定 だ。
三木室長は「これまでになかった車両で 付加価値を生む新しい食品物流に挑戦してい きたい」と意気込んでいる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) だが近年の同社をとりまく環境はこれまで になく厳しいものとなっている。
加工食品市 場の縮小による競争激化に加え、大都市と地 方との格差の拡大や輸入貨物の増加などが同 社の成長を脅かす要因となっている。
これまで同社は顧客の拠点政策にあわせて 営業拠点を新設しながら事業を拡大してきた。
だが工場閉鎖などによって地方の貨物量は減 少傾向にある。
地方によっては庫腹が過剰気 味のところも出てきた。
その一方、顧客の荷主企業は大都市圏に在 庫を集約する傾向を強めている。
しかし、キ ユーソー流通システムには大都市圏に大型拠 点がほとんどない。
中規模クラスの拠点を全 国に六〇カ所配置した既存のインフラが物流 の実態に合わなくなってきた。
そこで同社は二〇一二年十一月期をメドと する中期経営計画で、拠点ネットワークの再 編を戦略の一つに打ち出している。
まず大都 市圏に大型拠点を新設する。
その際には三温 度帯への対応が可能な拠点も検討する。
一方、貨物量の減っている地方では、在 庫型拠点に代わり荷捌き機能を重視したTC (通過型拠点)を増強して、在庫レス化や小 口化に対応した輸送システムを強化する。
これに伴って「運送機能の再構築」を行う。
具体的にはブロックごとあるいは地域ごとに 分散している配車機能を統合して輸配送を効 率化する。
また共同配送の貨物量が少ない地 域では、三温度帯車両を活用して車両台数を 業務支援室の三木隆室長
一方で店舗配送な どを効率化するために温度帯の異なる商品を 一台の車両に積み合わせて運ぶ工夫も必要だ。
こうしたニーズに適う二温度帯または三温度 帯管理車両がこれまでにいろいろ開発されて いる。
最も普及しているタイプは、荷台の中央に 間仕切りを設けて荷室を二つに分け、前部と 後部にエバポレーター(冷凍機)を装着して 各部屋をそれぞれフローズン帯とチルド帯の設 定温度で管理できるようにした二室式二温度 帯管理車両だ。
食品物流大手のキユーソー流通システムも 従来、このタイプの車両を利用してきた。
店 舗などへフローズン・チルド・ドライの三つ の温度帯の商品を納品する場合は、冷凍品と チルド品を二温度帯管理車(冷凍車)に混載 し、常温品を一般車に積んで二台で配送する 形が一般的だった。
だが近年は景気悪化などの影響により、と くに地方で輸送数量が減り、配送効率が悪化 している。
その対策として同社は主力の四ト ンクラスの配送車を対象に、一台で常温品も いっしょに積載できる三温度帯管理車両の独 自開発に踏み切った。
既存の車両にはいくつか欠点があった。
一 般に三温度帯車両と呼ばれるものには、従来 の二温度帯車両に常温品を積むスペースを設 けただけのものが多い。
間仕切りで荷室を前 部・中央・後部の三つの部屋に分けて、エバ ポレーターの装備された前部と後部の部屋に は従来通り冷凍品とチルド品を積み、間仕切 りで区切った中央の部分に常温品を積む。
この方法では真ん中の常温帯の室温を厳密 にコントロールすることができない。
常温帯 といっても実際には、外気温などに左右され る?成り行き?の温度帯となっていた。
車両の構造上の理由から荷物を出し入れす る際に温度管理面で問題が生じる。
通常、冷 凍車の荷室には前寄り側面と後部の二カ所に ドアがあり、前の冷凍室へは側面のドアから、 後のチルド室へは後部のドアから出入りする ようになっている。
だが真ん中の部屋にはド アがないため、荷物を出し入れするには冷凍 室またはチルド室を通り、間仕切りを開けて 進入しなければならない。
作業性が悪いうえ、 間仕切りを開放するたびに冷気が隣の部屋に 流れ出し、室温に影響する。
さらにもう一つ問題がある。
これも構造上 の理由で、間仕切りを設ける位置がドアの位 置によって制約を受けるため、三つの部屋の スペースが固定されてしまう。
低温品は必ず 車両の前部か後部に積まなければならないう えに、温度帯ごとに積むスペースも制限され る。
荷量の変動に柔軟に対応できず、かえっ て配送効率が悪化する恐れもある。
側面にドアを二つ付けて三室への出入りを 冷凍品から加温品まで3つの温度帯の商品を同時 に運べて、しかも物量に応じて荷室のスペース自 在に変更できる“フレキシブル車両”を車体メーカー らと共同開発した。
さまざまなパターンの混載輸送 が可能になる。
3年間に500台を導入、共同配送の 効率化やコンビニ配送など成長分野の開拓に活かす。
定温物流 キユーソー流通システム 独自開発の3温度帯配送車を本格導入 荷室レイアウト・温度設定を自在に変更 45 JULY 2010 分けるという方法もないわけではない。
だが ドアの数を増やすと、それだけ積載できる貨 物の量が減るというデメリットを覚悟しなけ ればならない。
そこで既存の車両に頼らず、自分たちの手 で全く新しいタイプの三温度帯配送車を開発 することにした。
業務内容に応じて荷室を自 由にレイアウトして温度帯を設定できて、し かも荷量に応じ各部屋のスペースを自在に変 更できる「フレキシブル車両」をめざした。
キユーソー流通システムの業務支援室を中 心に関連事業部が技術面のアドバイザーとな り、〇八年十二月に車体メーカーおよび部品 メーカーとの三社による共同開発をスタート した。
荷室のレイアウトと温度帯の設定が自由に できるということは、三つに区分した荷室の どの部屋をどの温度帯に設定しても完全にコ ントロールできる状態を意味する。
これを実 現するために、エバポレーターを前部に一つ、 後部に二つ並べ、合わせて三つ設置する方法 を考えた。
図Aのように間仕切りを、車両を上から見 たときにTの字になるようにして荷室を三つ に区分すれば、各部屋に一台のエバポレータ ーでそれぞれの設定温度を管理することがで きる。
しかもこの形なら、部屋ごとに専用のドア を設けられる。
前部の部屋へは前寄り側面の ドアから入り、後部の二室へは後ろの観音開 きのドアを片方ずつ開閉して出入りする。
積 み降ろし作業を部屋ごとに完全に分けて行う ことができるので、それだけ品温保持の精度 が高くなる。
米飯類や惣菜の配送を想定して、前部の部 屋には加温機も付けられる設計にした。
一般 に米飯類の管理温度帯は常温だが、外気温が 低いと米が硬くなるため、コンビニエンススト アなどでは荷室を二五度に加温して配送する ケースが多い。
こうしたニーズにも対応でき るように考えた。
着脱可能な間仕切りを開発 荷量の変動に応じて部屋のスペースを自在 に変更できるという、もうひとつの課題につ いては、容易に着脱が可能な間仕切りを開発 することでクリアした。
機密性の高さととも にレイアウト変更の際の操作性が開発のポイ ントだった。
三つの部屋の設定温度を厳密に保持するに は、間仕切りによって隣り合わせになる部屋 が相互に温度の影響を受けないように高い機 密性を持たせることが品質面で第一の要件と なる。
加温の設定温度はプラス二五度で、フロー ズン帯のマイナス二〇度とは大きな温度差が ある。
間仕切りの両面にそれだけの温度差が あっても反りなどが生じないよう十分な強度 が必要だ。
その一方、簡単な操作で間仕切り を移動できる設計にすることも重要な要素だ。
間仕切りの素材選びと接合方法に最も腐心し た。
試行錯誤の末、天井や床にレールや溝を付 けるのではなく、パネルの接合方法に独自の 技術を用い、固定装置を使ってパネルを固定 することで強度を補強するやり方にした。
六枚のパネルを組み合わせて荷室内を区分 する。
レイアウトを変更する時は、パネルを 一枚ずつ荷室の床面に対して垂直および水平 方向に移動する。
パネルの重量は一枚あたり 二〇キロあるが、襖をはずすときの要領でド ライバー一人でもスムーズに着脱できる。
昨年一〇月に四トンクラスの試作車が完成 し、テスト運用を開始した。
温度管理の品質 図A プラス25 度からマイナス20 度まで荷量に応じて温度帯別スペースを変更 業界初、縦横着脱自在の間仕切りを装備した車両用荷箱を開発 フレキシブル配送車で物流品質の向上と運送機能の再構築 切替え可能 温度帯 加温 常温 チルド 冷凍 常温 チルド 冷凍 常温 チルド 冷凍 ? ? ? ? ? ? JULY 2010 46 や操作性は期待通りでこれまでに全国で二〇 台を導入している。
車体にF(frozen)、 C(chilled)、D(dry)の三つ の温度帯に加温をプラスすることを示す「F CD3+1」のロゴマークをつけアピールして いる。
フレキシブル車両の開発・導入によって輸 送のバリエーションは一気に広がった。
図1 のように三室に仕切って三温度帯を輸送する またこれまでは食品メーカーも小売業も、 低温品と常温品の物流拠点は別々に設けるの が一般的だった。
関連事業部の奥津利明部長 は「三温度帯車両が普及すれば、一カ所に設 ける形に変わっていく可能性もある」と分析 する。
フレキシブル車両の開発は、キユーソー流 通システムが今年度から?新たな食品物流の 創造?をスローガンにスタートした新中期経 営計画を象徴する施策の一つだ。
同社は食品メーカーのキユーピーの物流子 会社でありながら積極的に外部顧客を開拓し て自立を進めている。
キユーピーグループ以 外の売り上げ構成比は〇九年度実績で八五% という極めて高い数字になっている。
全国六〇カ所に低温または常温の物流拠点 を配置し、自社では車両を保有せず協力運送 会社で組織する「キユーソー会」の輸配送網 を活用して、全国で共同物流やコンビニ・外 食チェーン・食品スーパー向けの一括物流を 指す「専用物流」を展開し、食品物流分野で トップを走ってきた。
形が基本で、冷凍・チルド・常温・加温の中 からどの温度帯でも選べる。
ただし加温機を 前部に設置する設計のため、加温品だけは必 ず前部に積む。
荷量が変われば図2のように間仕切りの位 置を変えてレイアウトを変更する。
図3や図 4のように二室に分けて二温度帯車両として 使用することも可能だ。
間仕切りをはずして 側面に寄せれば単温度車にもなる。
一台でさまざまな用途に対応できるため、 コンビニの店舗へ三温度帯で配送した帰りに、 食品メーカーの工場へ集荷に行き、冷凍品だ けを積んで物流センターへ輸送するといった 配車も可能になる。
また納品先から通い箱などを回収する場合 には、冷凍品の荷室の一角を図6のように 間仕切りで隔離して積むこともできる。
夏場 などに気温の高い場所で保管されていた通い 箱をうっかり冷凍品などといっしょに運ぶと、 荷室の温度が上がってしまう。
間仕切りで隔 離することでそうした事態を回避できる。
拠点ネットワークを再編 開発を主導した業務支援室の三木隆室長は 「今までの車両よりきめ細かな温度管理ができ る。
三温度帯輸送の品質が一気に高まる。
メ ーカーや卸から三温度帯配送への要望は多い。
広く認知されれば二室式の二温度車に代わる 新しいスタンダードになるかもしれない」と 期待する。
関連事業部の奥津利明部長 フレキシブル帯配送車(貨物室レイアウト) 図1 3温度3室 基本形エバポレーター 常温 冷凍 チルド 図2 3温度3室(荷量に応じて室内変更) 常温 加温 チルド 図3 2温度帯配送(従来型) 常温チルド 図4 2温度帯配送(アレンジ) 冷凍 チルド 図5 3温度帯配送(アレンジ) 常温 常温 冷凍 チルド 図6 2温度帯配送(アレンジ) 冷凍 47 JULY 2010 集約する。
さらに配車計画を最適化するためにシミュ レーションシステムを進化させる。
車載端末 で配送データを収集・蓄積し、これらのデー タをもとにシミュレーションシステムで曜日や 天候などによる道路状況の違いを分析し最適 な配車計画を作成する。
車載端末には検品システムを搭載し、配送 のたびにドライバーが荷物と伝票のバーコード をチェックして誤配を防止できるようにする。
また配送情報を活用して問い合わせへの対応 を迅速化する。
〇九年十二月からスタートした三カ年計画 の前半で、こうしたネットワークの再編や情 報システムの高度化による輸送の効率化や品 質向上を図り、そのうえで後半からは成長分 野へのシフトを進める。
二〜三トン車でも新型車開発 同社が今後ターゲットとする成長分野は輸 入貨物と専用物流だ。
これまで同社は輸入貨 物へのアプローチで、遅れを取ってきた。
今 後、グループの通関会社などと連携して取り 扱いを増やす。
コンビニや外食チェーン向けの専用物流も 強化する。
従来は物流センターのシステム構 築や業務設計を顧客ごとに行い、文字通り顧 客別の専用サービスを提供してきた。
今後は 品質やサービスの基準を明確にしたうえで業 務をできるだけ標準化し、基本的な業務につ いてはパッケージ化を進めてカスタマイズだけ で対応できるようにする。
さらに、配送効率と品質向上をともに実現 できる三温度帯フレキシブル車両の活用を積 極的にアピールし、新規の顧客開拓を進める。
三温度帯フレキシブル車両が、同社の中期計 画における重要な戦略ツールとなっている。
現在、キユーソー会が運行する車両「キユ ーソー便」のうち、四トンクラスの冷凍車は およそ一二〇〇台ある。
同社は今後三年間で このうち五〇〇台をフレキシブル車両に切り 変えていく考えだ。
またコンビニ配送などで需要の多い二〜三 トン車でも同様の車両開発に取り組む。
この クラスの車両は昨年から導入が始まったポス ト新中期規制(自動車排出ガス規制)適用へ の移行期にあるため、各メーカーの適合車種 が出揃うのを待ってから開発に着手する予定 だ。
三木室長は「これまでになかった車両で 付加価値を生む新しい食品物流に挑戦してい きたい」と意気込んでいる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) だが近年の同社をとりまく環境はこれまで になく厳しいものとなっている。
加工食品市 場の縮小による競争激化に加え、大都市と地 方との格差の拡大や輸入貨物の増加などが同 社の成長を脅かす要因となっている。
これまで同社は顧客の拠点政策にあわせて 営業拠点を新設しながら事業を拡大してきた。
だが工場閉鎖などによって地方の貨物量は減 少傾向にある。
地方によっては庫腹が過剰気 味のところも出てきた。
その一方、顧客の荷主企業は大都市圏に在 庫を集約する傾向を強めている。
しかし、キ ユーソー流通システムには大都市圏に大型拠 点がほとんどない。
中規模クラスの拠点を全 国に六〇カ所配置した既存のインフラが物流 の実態に合わなくなってきた。
そこで同社は二〇一二年十一月期をメドと する中期経営計画で、拠点ネットワークの再 編を戦略の一つに打ち出している。
まず大都 市圏に大型拠点を新設する。
その際には三温 度帯への対応が可能な拠点も検討する。
一方、貨物量の減っている地方では、在 庫型拠点に代わり荷捌き機能を重視したTC (通過型拠点)を増強して、在庫レス化や小 口化に対応した輸送システムを強化する。
これに伴って「運送機能の再構築」を行う。
具体的にはブロックごとあるいは地域ごとに 分散している配車機能を統合して輸配送を効 率化する。
また共同配送の貨物量が少ない地 域では、三温度帯車両を活用して車両台数を 業務支援室の三木隆室長
