2010年7月号
物流指標を読む
物流指標を読む
第19回 31ftコンテナ輸送がモーダルシフトをけん引鉄道貨物協会「大型コンテナの活用と利用促進に関する調査研究と提案」
物流指標を読む
JULY 2010 76
31ftコンテナ輸送がモーダルシフトをけん引
第19 回
●31ftコンテナの発送個数が96年度比で3倍以上に
●12ftコンテナに比べてコスト安などのメリットも
さとう のぶひろ 1964年 ●さらなる普及には取扱可能駅の拡大等の取組が必須
生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部研究 主査。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
大型トラックと遜色のない利便性 鉄道コンテナ輸送にようやく元気が戻ってきた。
景気低迷の影響などにより停滞していたJRコン テナの輸送量は、本年一月に、〇八年九月以来一 六カ月ぶりに増加に転じたあと、五カ月連続のプ ラスで推移している。
輸送量の水準自体は、二年 前と比較すると未だ一割以上低いものの、今後も 生産水準等が前年同期比ベースで徐々に増加して いくのは確実であることから、当面は堅調な推移 が見込まれる。
こうした需要面の持ち直しに加えて、最近また モーダルシフトの推進が各業界で声高に叫ばれるよ うになってきていることも追い風だ。
例えば日経 新聞は五月一九日の朝刊において、「ビール各社 鉄道輸送シフト加速」という記事で、「ビールメー カー大手が輸送を主力のトラックから鉄道に切り替 えるモーダルシフトを強化する」と伝えている。
景 気の低迷時には往々にして、輸送モードの選択も コスト偏重になりがちであるが、多少なりとも景 気が回復しつつあるなかで、CSRの遂行のため、 あるいは企業イメージの向上などを狙って、環境 問題への対応等を考慮する企業が増えているので あろう。
とは言っても、実際にはいきなりトラックから 鉄道コンテナに輸送モードを切り替えるのは難し い。
たとえば、運賃・料金等のコスト、集荷の締 め切り時間、リードタイムや定時性、輸送品質な ど様々な点が気になる向きも多かろう。
そのような時、全国通運連盟が実施している「鉄 道コンテナ輸送お試しキャンペーン」が非常に便利 である。
このキャンペーンは、鉄道コンテナ輸送の 利用を検討している荷主企業に、実際に鉄道コン テナ輸送を利用してもらい、その良さを実感して もらうことを目的に、九二年度から実施されてお り、昨年度で一八年目を数えた。
対象貨物は、? 新規荷主獲得のための試験輸送、?既存荷主の輸 送品質改善に向けた試験輸送、既存荷主の新規区 間の試験輸送であり、トータルの運賃・料金(タ リフベース)の八割を全国通運連盟が補助する。
お試し輸送の利用件数は年々増加しており、昨 年度は二四二件(前年度比九七件増)、三七七個 (同一四六個増)の実績となっている。
そのうち 八割以上が新規の利用であり、底辺の拡大が窺え、 このキャンペーンがモーダルシフトの推進に大きく 貢献しているものと推測される。
また、最近の傾向として、三一 ft コンテナを中 心とした大型コンテナの利用が増加している。
昨 年度は個数ベースで全体の二割前後を占めていた とのことである。
三一 ft コンテナは、一般には馴 染みが薄いかもしれないが、近年モーダルシフトの 推進手段として期待されている。
そこで、本稿で は、鉄道貨物協会「大型コンテナの活用と利用促 進に関する調査研究と提案」を参考に、三一 ft コ ンテナの利用の現状、利用拡大のための課題等に ついて紹介してみたい。
三一 ft コンテナは、積載重量が約一〇〜十三ト ン、積載容積が通常タイプで約四七㎥、背高タイ プで約五一㎥であり、車両総重量二五トンの大型 トラックとほぼ同量の貨物を積載できる。
そのため、 大型トラックで輸送している貨物を、入出荷システ ムやロットなどを変更することなく鉄道へシフトす 鉄道貨物協会「大型コンテナの活用と利用促進に関する調査研究と提案」 77 JULY 2010 一 ft コンテナの方がかなり割安であるという。
さ らに、十二 ft コンテナの場合、荷崩れや荷ズレな どの荷物事故をいかに防止するかが大きな課題と なっているが、荷物事故の一因として、フォーク リフト作業におけるチルト(傾ける動作)が挙げ られる。
三一 ft コンテナの場合、駅での積み降ろ し作業にはトップリフターが用いられるため、荷物 事故が発生する可能性が非常に低いのだ。
このように、出荷ロットが一〇トン程度にまと まっており、かつ緊急出荷等の機動性が求められ ない貨物であれば、大型トラックとほぼ同等の運 賃・料金で、かつ高い輸送品質を保持できる。
輸 送モードの転換は比較的容易であろう。
JR貨物や利用運送事業者によるPR活動も手 伝って、三一 ft コンテナの利用は近年拡大してい る。
〇八年度実績(注:三〇 ft コンテナを含む) では、実入りの発送個数が一九・三万個であり、 九六年度(五・七万個)と比べて三倍以上に増加 している。
なお、この十二年間で、鉄道コンテナ (注:JRコンテナと私有コンテナの合計)の実入 りの発送個数はほぼ横ばいであることから、三一 ft コンテナの伸び率がいかに大きいかがお分かり いただけよう。
普及にはいくつかの課題も ただし、引き続き三一 ft コンテナの利用拡大を 図っていくためには、克服すべき課題がいくつか ある。
以下に主なものを列挙してみよう。
?コンテナの個数が少ない 〇九年度(年度初め)における三一 ft コンテナ の個数は二三三一個(注:三〇 ft コンテナを含む) であり、鉄道コンテナ(注:JRコンテナと私有 コンテナの合計)個数全体の二・八%にすぎない。
そのため、ニーズがあっても対応できない場合が ある。
?私有コンテナである 三一 ft コンテナは、主に利用運送事業者が保有 している私有コンテナである。
そのため、保有者 が製造・保有コストを負担しなければならず、保 有者にとって重荷となっている。
また、JR貨物 の汎用コンテナのように、ワンウェイの利用が難し く、返り荷が無い場合は、原則として荷主企業が 返回送コストを負担しなければならず、そのため 利用に二の足を踏む向きも少なくない。
?取扱可能駅が限定 三一 ft コンテナの取扱が可能な駅(注:ここでは 便宜的にトップリフターを設置している駅を指す) は、〇九年十二月現在、五九駅あるが、東北本線、 東海道線、山陽本線上の拠点駅が多く、地方から 取扱駅の拡充を求める声も聞かれる。
こうした課題があるものの、JR貨物は徐々に ではあるが取扱駅を増やすとともに、背高コンテナ 対応のため低床貨車の増備を進めているほか、利 用運送事業者などと提携してラウンド輸送の実現 に向けた取組みを行っている。
トップリフターの設置や駅の改良、コンテナの製 造などには多大な投資が必要となる。
三一 ft コン テナに対するニーズが盛り上がりつつある一方、厳 しい経済情勢が続いているなかで、JR貨物や利 用運送事業者に過大な負担を負わせることは酷で ある。
何らかの公的支援策は考えられないものだ ろうか。
ることができるというのが?売り?である。
トータルの運賃・料金(実勢、片道)について は、鉄道距離や集配距離によってマチマチである が、大型トラックとほぼ同等の水準に設定されて いるケースが多いようだ(かなり戦略的な設定に なっている可能性もあるが‥‥)。
列車の運行ダイ ヤが設定されているので、機動性ではトラックに 及ばないものの、定時の集配が可能であり、長距 離輸送においては、リードタイムの面でもトラック と遜色ないサービスを提供できる。
また、鉄道の十二 ft コンテナと比較するとメリッ トがいくつかある。
まず、トータルの運賃・料金 が安い。
三一 ft コンテナは、十二 ft コンテナ二〜三 個分の貨物を積載できる。
そこで、十二 ft コンテ ナ二・五個分の運賃・料金と比較してみると、三 鉄道コンテナ発送個数の推移 3.500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 (千個) 250 200 150 100 50 0 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 JR 積 JR 空 私有計積 私有31ft 積 私有31ft 空 私有計空 注)30ft コンテナを含む 私有計のうち31ft
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部研究 主査。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
大型トラックと遜色のない利便性 鉄道コンテナ輸送にようやく元気が戻ってきた。
景気低迷の影響などにより停滞していたJRコン テナの輸送量は、本年一月に、〇八年九月以来一 六カ月ぶりに増加に転じたあと、五カ月連続のプ ラスで推移している。
輸送量の水準自体は、二年 前と比較すると未だ一割以上低いものの、今後も 生産水準等が前年同期比ベースで徐々に増加して いくのは確実であることから、当面は堅調な推移 が見込まれる。
こうした需要面の持ち直しに加えて、最近また モーダルシフトの推進が各業界で声高に叫ばれるよ うになってきていることも追い風だ。
例えば日経 新聞は五月一九日の朝刊において、「ビール各社 鉄道輸送シフト加速」という記事で、「ビールメー カー大手が輸送を主力のトラックから鉄道に切り替 えるモーダルシフトを強化する」と伝えている。
景 気の低迷時には往々にして、輸送モードの選択も コスト偏重になりがちであるが、多少なりとも景 気が回復しつつあるなかで、CSRの遂行のため、 あるいは企業イメージの向上などを狙って、環境 問題への対応等を考慮する企業が増えているので あろう。
とは言っても、実際にはいきなりトラックから 鉄道コンテナに輸送モードを切り替えるのは難し い。
たとえば、運賃・料金等のコスト、集荷の締 め切り時間、リードタイムや定時性、輸送品質な ど様々な点が気になる向きも多かろう。
そのような時、全国通運連盟が実施している「鉄 道コンテナ輸送お試しキャンペーン」が非常に便利 である。
このキャンペーンは、鉄道コンテナ輸送の 利用を検討している荷主企業に、実際に鉄道コン テナ輸送を利用してもらい、その良さを実感して もらうことを目的に、九二年度から実施されてお り、昨年度で一八年目を数えた。
対象貨物は、? 新規荷主獲得のための試験輸送、?既存荷主の輸 送品質改善に向けた試験輸送、既存荷主の新規区 間の試験輸送であり、トータルの運賃・料金(タ リフベース)の八割を全国通運連盟が補助する。
お試し輸送の利用件数は年々増加しており、昨 年度は二四二件(前年度比九七件増)、三七七個 (同一四六個増)の実績となっている。
そのうち 八割以上が新規の利用であり、底辺の拡大が窺え、 このキャンペーンがモーダルシフトの推進に大きく 貢献しているものと推測される。
また、最近の傾向として、三一 ft コンテナを中 心とした大型コンテナの利用が増加している。
昨 年度は個数ベースで全体の二割前後を占めていた とのことである。
三一 ft コンテナは、一般には馴 染みが薄いかもしれないが、近年モーダルシフトの 推進手段として期待されている。
そこで、本稿で は、鉄道貨物協会「大型コンテナの活用と利用促 進に関する調査研究と提案」を参考に、三一 ft コ ンテナの利用の現状、利用拡大のための課題等に ついて紹介してみたい。
三一 ft コンテナは、積載重量が約一〇〜十三ト ン、積載容積が通常タイプで約四七㎥、背高タイ プで約五一㎥であり、車両総重量二五トンの大型 トラックとほぼ同量の貨物を積載できる。
そのため、 大型トラックで輸送している貨物を、入出荷システ ムやロットなどを変更することなく鉄道へシフトす 鉄道貨物協会「大型コンテナの活用と利用促進に関する調査研究と提案」 77 JULY 2010 一 ft コンテナの方がかなり割安であるという。
さ らに、十二 ft コンテナの場合、荷崩れや荷ズレな どの荷物事故をいかに防止するかが大きな課題と なっているが、荷物事故の一因として、フォーク リフト作業におけるチルト(傾ける動作)が挙げ られる。
三一 ft コンテナの場合、駅での積み降ろ し作業にはトップリフターが用いられるため、荷物 事故が発生する可能性が非常に低いのだ。
このように、出荷ロットが一〇トン程度にまと まっており、かつ緊急出荷等の機動性が求められ ない貨物であれば、大型トラックとほぼ同等の運 賃・料金で、かつ高い輸送品質を保持できる。
輸 送モードの転換は比較的容易であろう。
JR貨物や利用運送事業者によるPR活動も手 伝って、三一 ft コンテナの利用は近年拡大してい る。
〇八年度実績(注:三〇 ft コンテナを含む) では、実入りの発送個数が一九・三万個であり、 九六年度(五・七万個)と比べて三倍以上に増加 している。
なお、この十二年間で、鉄道コンテナ (注:JRコンテナと私有コンテナの合計)の実入 りの発送個数はほぼ横ばいであることから、三一 ft コンテナの伸び率がいかに大きいかがお分かり いただけよう。
普及にはいくつかの課題も ただし、引き続き三一 ft コンテナの利用拡大を 図っていくためには、克服すべき課題がいくつか ある。
以下に主なものを列挙してみよう。
?コンテナの個数が少ない 〇九年度(年度初め)における三一 ft コンテナ の個数は二三三一個(注:三〇 ft コンテナを含む) であり、鉄道コンテナ(注:JRコンテナと私有 コンテナの合計)個数全体の二・八%にすぎない。
そのため、ニーズがあっても対応できない場合が ある。
?私有コンテナである 三一 ft コンテナは、主に利用運送事業者が保有 している私有コンテナである。
そのため、保有者 が製造・保有コストを負担しなければならず、保 有者にとって重荷となっている。
また、JR貨物 の汎用コンテナのように、ワンウェイの利用が難し く、返り荷が無い場合は、原則として荷主企業が 返回送コストを負担しなければならず、そのため 利用に二の足を踏む向きも少なくない。
?取扱可能駅が限定 三一 ft コンテナの取扱が可能な駅(注:ここでは 便宜的にトップリフターを設置している駅を指す) は、〇九年十二月現在、五九駅あるが、東北本線、 東海道線、山陽本線上の拠点駅が多く、地方から 取扱駅の拡充を求める声も聞かれる。
こうした課題があるものの、JR貨物は徐々に ではあるが取扱駅を増やすとともに、背高コンテナ 対応のため低床貨車の増備を進めているほか、利 用運送事業者などと提携してラウンド輸送の実現 に向けた取組みを行っている。
トップリフターの設置や駅の改良、コンテナの製 造などには多大な投資が必要となる。
三一 ft コン テナに対するニーズが盛り上がりつつある一方、厳 しい経済情勢が続いているなかで、JR貨物や利 用運送事業者に過大な負担を負わせることは酷で ある。
何らかの公的支援策は考えられないものだ ろうか。
ることができるというのが?売り?である。
トータルの運賃・料金(実勢、片道)について は、鉄道距離や集配距離によってマチマチである が、大型トラックとほぼ同等の水準に設定されて いるケースが多いようだ(かなり戦略的な設定に なっている可能性もあるが‥‥)。
列車の運行ダイ ヤが設定されているので、機動性ではトラックに 及ばないものの、定時の集配が可能であり、長距 離輸送においては、リードタイムの面でもトラック と遜色ないサービスを提供できる。
また、鉄道の十二 ft コンテナと比較するとメリッ トがいくつかある。
まず、トータルの運賃・料金 が安い。
三一 ft コンテナは、十二 ft コンテナ二〜三 個分の貨物を積載できる。
そこで、十二 ft コンテ ナ二・五個分の運賃・料金と比較してみると、三 鉄道コンテナ発送個数の推移 3.500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 (千個) 250 200 150 100 50 0 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 JR 積 JR 空 私有計積 私有31ft 積 私有31ft 空 私有計空 注)30ft コンテナを含む 私有計のうち31ft
