2010年8月号
特集

《食品編》第3部 流通全体最適に目覚めた小売り

AUGUST 2010  18 意味の無いことはしない  小売りが食品卸やメーカーなどのベンダーに求める 物流サービスレベルは上昇の一途を辿っている。
当日 納品はもはや当たり前。
極端なケースでは三時間納品 まで登場している。
納品頻度に関しても、コンビニ等 では三六五日・一日三便体制がデフォルト化している。
 日付管理では食品の製造日から賞味期限までを三 分割し、店頭に並ぶまでの納入期限を過ぎたものは 出荷しないとする?三分の一ルール?が広がっている。
納入された商品の日付が、昨日と今日で逆転してし まえば、その商品はベンダーや物流会社の買い取りだ。
納品ミス率は今や?一〇万分の一?クラス。
基準を守 れないベンダーには、ペナルティや取引中止といった 罰が課せられる。
 日本では物流費込みでの取引が広く商慣行として 根付いている。
どれほど過酷なサービスを要求しても、 それが調達価格に直接反映されることはない。
小売 りの?ゴネ得?がまかり通っている。
 しかし、関東で約一〇〇店舗をドミナント展開する 食品スーパー、サミットの物流・グロサリー業務部の 小黒文昭氏は「商品を発注から五時間で持ってきて もらう必要性が、現実にどれだけあるのか」と、エ スカレートする一方の納品条件に疑問を呈する。
実際、 同社の発注から店舗までの納品リードタイムは、ドラ イの商品で概ね二四時間、チルドの商品で二〇時間か ら三〇時間程度だ。
 小黒氏は「例えばテレビショッピングなどの影響で 瞬間的に売れる商品であればすぐに持ってきてくれる と助かるが、そういったケースは例外的。
日常的に三 時間、あるいは五時間で持ってきて貰う必要性はな い。
現在のリードタイムで十分だ」という。
 欠品率や納品ミス率に関しても、厳密に数字を測定 してはいない。
むしろ、そうした管理に余計なコスト や労力がかかったり、ベンダー側との関係が悪化する 弊害の方が大きいと判断している。
 もちろん欠品が発生すれば分かるので、その頻度 があまりに多いようであれば担当者同士で話し合う。
概ねそれで解決してしまう。
サミットでは以前からこ のような体制だが、これまで欠品が重大な課題とし て俎上に載ったことは無いという。
 店舗レイアウトに合わせて棚別や分類別に納品する 必要も感じていない。
店舗に納品された商品は、一 度台車に移してから売り場に持っていく。
そのときに、 店側のパート社員が分類別に仕分ける。
センターで厳 密に仕分けるよりも、店内や商品に精通した店側が 作業した方が、時間もコストも低く抑えることができ るという。
 「あくまで物流は店舗の後方支援。
商品が必要な時 に必要な数だけ届けばそれで良い。
そのために効果の ある取り組みならいくらでもするが、意味のないこ とはする必要がない」と小黒氏は判断している。
 関東を中心に一〇一店舗の食品スーパーを展開する エコス。
同社の林亨物流センター担当マネジャーもま た「サプライチェーン全体で見た場合、どこかに極端 なしわ寄せがいってしまう構造では、いずれ自分達 にもそれがはね返ってくる。
小売り、卸、メーカー、 物流会社、それぞれがメリットを享受できる仕組みが、 あるべき姿だ」という。
 同社の物流センター運営には、他の小売りチェー ンには見られない特徴がある。
通常、多くの小売り チェーンは、自社専用の一括納品センターを開設し、 その運営を3PLや物流会社、卸などにアウトソーシ ングする。
流通全体最適に目覚めた小売り  センターフィーは言い値、納品リードタイムは発 注後3時間以内、ミス率は10万分の1、製造年月日 から賞味期限の3分の1を超えている商品は受け付 けない──小売りの要求はとどまることを知らない。
合理性を欠いた物流サービスがサプライチェーンの 最適化を蝕んでいる。
        (石鍋 圭) 《食品編》第3部 19  AUGUST 2010  それに対し、エコスの物流センターは他社の商品も 取り扱う汎用型がメーンとなっている。
現在、エコス は茨城、山梨、所沢、袖ヶ浦の四カ所に物流センター を構えている。
そのうち、エコスグループの店舗だけ をカバーしているのは茨城センターのみ。
あとの三セ ンターでは、ライバルとなる他の小売りチェーンに対 しても物流機能を提供している。
 庫内作業や輸配送といった実務は物流企業にアウ トソーシングしているが、配送網やそれに伴う庫内作 業の設計は、エコス自らが主導する体制を取っている。
地場中小や中堅どころの小売りチェーンを中心に参加 を呼びかけ、荷物を受託し、業務委託料を得ている。
まさに3PLの立場だ。
 エコスもセンターフィーを徴収しているが、極力ベ ンダーに負担がかからない設計になるよう配慮してい るという。
現場の運営は委託業者に丸投げし、ベン ダーから入るセンターフィーの中抜きだけが目的化し ている一括物流が多い中で、異例といえる。
小売り同士で物流共同化  同社のセンター運営事業の狙いは共同化だ。
所沢 センターを例に見てみよう。
同センターではエコス三 三店舗分の物流をカバーすると同時に、「さえき」や 「たからや」といった地域密着型のスーパー二社、計 二二店舗分の物流拠点としても機能している。
 エコスを含めた三社の荷物をトラックに積み合わせ、 センターの周辺にある各社の店舗をミルクランで回る。
物量は三社分あるので、トラックは高い積載率で走る ことができる。
納品と同時に、段ボールや空き缶、発 泡スチロールといった資材の回収も行うので、トラッ クが空の状態で走ることはない。
 共同化の領域は、店舗納品や静脈物流だけに留ま らない。
調達物流においても共同化が図られている。
メーカーの工場や卸のセンター、野菜・肉の産地など を回る。
三社分の納品・回収・調達を組み合わせた ミルクランを行うことで、より効率的なルートを組む ことが可能になる。
ベンダー側にも、トラックを用立 てる手間が省けるというメリットがある。
 このミルクランに、センター間の横持ち輸送を掛け 合わせる取り組みも始まっている。
例えば、所沢セン ターから山梨センターまで商品を横持ちし、荷下ろし したあと、今度は山梨センター周辺の店舗や工場、卸 のセンターなどを回る。
 山梨センターでは、所沢とはまた別のチェーンスト アにも物流機能を提供しているが、どの企業の店舗で も取引先でも問題はない。
最適なルートを組み、徹底 してトラックを効率的に回すことを目指している。
参 加する小売りチェーンが増えれば増えるほど、コスト メリットは大きくなっていく。
 庫内作業においては、地道な改善を積み重ねてい る。
所沢センターでは大型マテハン機器を廃棄し、ハ ンディターミナル主体の運用に変更した。
作業者の動 き方や庫内レイアウトを細かく設定し、作業を平準化 した。
さらに、クレートの標準化やICタグの導入な どを積極的に進めることによって、全体の物流コスト は大きく抑えられたという。
 林マネジャーは「他社の荷物を積極的に受託するこ とによって、一社での取り組みよりも大きな効率化、 コスト削減を実現できる可能性が生まれる。
物流で大 きく儲けることが目的ではないので、参加する小売 りに対しても、通常の3PLに委託するよりも低い価 格提案をしている。
ベンダーにも厳しい条件を突き付 けなくて済む。
互いにWin─Winの関係を築くこ とができている」と自負している。
サミットの物流・グロサ リー業務部の小黒文昭氏 エコスの所沢センター(下)で は、エコスを含む小売り3社の 共同物流が行われている サミットでは発注から店舗までのリードタイ ムは20 〜30時間程度に設定されている エコスの林亨物流セン ター担当マネジャー 【食品編】 特 集

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから