2010年8月号
特集
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《食品編》Interview 「24時間稼働がコスト構造を変えた」ニチレイロジグループ本社 山室達雄 取締役常務執行役員
AUGUST 2010 22
「24時間稼働がコスト構造を変えた」
保管型の冷蔵倉庫事業と、川下のスルー型センターの運営
は、同じ食品物流でも業務内容が水と油ほど違う。
ニチレイ ロジは、その違いを乗り越えることで低温物流事業のコスト 構造を大きく転換した。
そこで得たノウハウを現在は海外にも 展開している。
(聞き手:大矢昌浩・石鍋 圭) スタートは赤字続き ──ニチレイロジは二〇〇九年度に売上高でキユー ソー流通システムを抜いて食品物流最大手に立ちまし た。
〇四年にニチレイが低温物流事業を会社分割す る以前とは、物流市場におけるプレゼンスがずいぶん 変わってきた。
従来はニチレイの物流子会社のように 見られていました。
「勘違いされることが多いのですが、当社はもとも と冷蔵倉庫会社としてスタートした会社です。
物流 子会社ではないので外販とか内販とかという区別も ない。
グループ会社の仕事はしていますが、完全に ワン・オブ・ゼムです。
ただし、当社は永らく保管 事業をメーンとしてきました。
それに対して現在は 小売りのセンター運営事業が伸びている。
社内では 『TC事業』と呼んでいます。
印象が変わったとすれ ば、そこでしょう」 ──TC事業はいつから始めたのですか? 「開始したのは、もう二五年も前になります。
当 時は日立物流さんと同じで『システム物流』と呼び、 小売りの物流をサポートする新規事業として立ち上 げました。
コンビニをはじめチェーンストアがものす ごい勢いで台頭し始めた頃でした。
それを見て、こ れは川下からの流通再編が始まるぞ、と考えたんで す。
モノの流し方がメーカー主導から小売り主導に 変わる。
そこにビジネスチャンスがあると判断したわ けです」 「もっとも当社の内部事情もありました。
冷蔵倉庫 事業は基本的に朝の八時半から夕方五時までの仕事 です。
今でこそ二四時間稼働の冷蔵倉庫も増えてき ましたが、当時は夜間はまったく稼働していなかっ た。
これはもったいない。
夜間にできる仕事を組み 立てれば、設備コストをゼロで倉庫を回せると考えた んです。
昼は冷蔵倉庫を通常通り回し、夜中に小売 り向けの商品の納品を受けて、仕分けをし、朝の開 店前までに店舗に運ぼうと」 「しかし、実際には甘くはなかった。
スタートから 一〇年くらいは苦労が絶えませんでした。
TC事業 の最初の顧客はボランタリーチェーンでした。
一店舗 あたりの発注量がひたすら細かい。
“豆腐一丁、チク ワ一本”の世界です。
しかも当時はたいした情報シ ステムもありませんから、電話で前日に発注を受け て、それを一つ一つ集計して、豆腐屋や納豆屋にF AXで注文書を流していた。
そして品物を当社の倉 庫に総量納品させて、それを店舗別に仕分けて開店 前までに届ける。
店ごとの荷量が全くまとまらない ので、効率は悪い。
収支の合うはずがない。
赤字続 きでした」 ──撤退も考えた? 「確かに社内にも、どうしてそんなに儲からないこ とを一生懸命やるんだと不思議がる声はありました。
冷蔵倉庫だけやっていれば左団扇なのにと。
しかし 我々には小売りが流通を主導するようになるという 確信がありました。
当時イギリスに視察にいった当社 の幹部が、チェーンストア向けの事業を手広く運営し ていたクリスチャン・サルベッセン(注)という3P Lを見学し、日本の物流市場もやがてああなると興 奮気味に報告していたことを覚えています」 「今は苦しくても、いずれは儲かるというスタンス で商売を続けました。
もともと冷蔵倉庫屋というの は粘り強いんです。
冷蔵設備に大きな金額を投資し て、減価償却を経て、利益が出てくるまでには長い 時間がかかる。
だからすぐに利益が出なくても耐え ることには慣れている」 ニチレイロジグループ本社 山室達雄 取締役常務執行役員 《食品編》Interview 23 AUGUST 2010 ──TC事業が軌道に乗ったキッカケは? 「関西スーパーさんとの取引がターニングポイントで した。
それまで関西スーパーさんはご自身で自前のセ ンターを運営していたのですが、我々が日配品を中 心に全店の物流を集約して届けるかたちに切り替え ました。
物量があるので、冷蔵倉庫を夜間だけ使う という体制ではなく西宮に専用センターを開設しまし た。
やがて取り扱う品目も増えてきて、西宮のセン ターも手狭になってきたので、もっと大規模な総合 専用センターを尼崎に開設しました」 「そういった動きと並行して、イトーヨーカ堂さん のセンターも受託できることになりました。
ヨーカ堂 さんは物流の統合だけでなく、バックヤード、プロセ スセンターも併設したいというお考えでした。
その要 望に対応したセンターを船橋に開設しました。
そうし た実績が呼び水となって、九〇年代に一括物流が急 拡大した波に乗ることができたんです」 日本のノウハウを海外の冷蔵会社に移植 ──今や川下のセンター運営事業には、多くのプレー ヤーが参入しています。
競争が激化し、三温度帯管 理も珍しくなくなっている。
「当社が散々苦労したように冷蔵倉庫事業からTC 事業に参入しても恐らくは上手くいかない。
川上の 保管型とは事業モデルが違い過ぎます。
それに対し て、今は低温運送を主体としてきた会社が保管設備 を持ってセンター運営に乗り出している。
彼らは川下 の仕事には慣れている」 「しかし当社には彼等にはない強みがあります。
当 社は食品物流の川下でも川上でも仕事をしている。
そ のために設備を二四時間回すことができる。
小売り の物流センターの納品は朝一便が七時くらいの出発で 実稼働は四時間程度です。
その前後に当社は別の仕 事を付けることができる。
事業規模と事業領域の広 さが活かせます」 ──事業領域という点では、冷蔵保管に強いニチレイ ロジが、運送を主体とするチルド系の物流会社を買収 すれば大きな相乗効果を期待できるはずです。
「もちろん我々も買収については従来から検討はし ています。
しかし、具体的な買収相手が今のところ 見当たらない」 ──ヨーロッパでは各地の低温物流会社を買収してい ます。
その狙いは? 「これまでにオランダ、ドイツ、ポーランド、それに 今度はフランスの会社を買収しますが、そのアプロー チは他の日本の物流会社とだいぶ違います。
通常は 日本の大手荷主が海外進出するのに合わせて、物流 会社もそれに付いていくというかたちですが、欧州 の当社の荷主はほとんどが現地企業です」 「日本の荷主に付いていくのではなく、現地の低温 物流会社を買収して、そこに当社のノウハウを移植 する。
物流品質に関して恐らく日本は世界一厳しい。
リードタイム、賞味期限、仕分け作業、少しでも箱 が汚れていたらダメとか、他の国では考えられない レベルの品質が求められる。
そのノウハウを現地に移 管することで品質が格段に上がる。
その結果、現地 の有力荷主を獲得できるようになる。
そうしたやり 方で、買収後に会社の業績を伸ばすんです」 ──インドや中国については? 「インドもオペレーションは安定してきましたが、マ ネジメントが成熟するには、まだ時間がかかると見て います。
それと比較すると中国はかなり成熟してき た。
中国の低温物流市場は、拡大ペースがこれから 一気に加速していくと見ています」 【食品編】 特 集 業績推移 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 06 年度 224 07 年度08 年度09 年度 (単位:億円) 432 21 178 454 279 409 419 12 290 442 420 302 462 224 16 20 165 452 321 1341 1387 1423 1390 物流ネットワーク (TC 事業以外) その他 売上高 海外事業 地域保管 TC事業 ニチレイロジグループ本社 前身はニチレイの低温物流事業。
2005年4月、ニ チレイグループが持ち株会社制に移行したのを機に 発足。
冷蔵設備を用いた「地域保管」、川下のセンター 運営や配送などの「物流ネットワーク」が柱。
国内 DC(在庫型センター)80拠点・保管能力約132万 トン。
海外DC11拠点・保管能力約48万トン。
国内、 海外を合わせた冷蔵設備の拠点数、設備能力は国内 首位、世界でも6位の規模を誇る。
このほかに、小 売りの一括物流を行うTC(スルー型センター)が国 内に23拠点ある(2010年4月現在)。
注)クリスチャン・サルベッセン(Christian Salvesen)。
英・ノーザンプトンに本拠を置く3PL。
イギリス、 フランス、ドイツ、スペインなど欧州全域に展開。
2007年12月、フランスの運送会社ノルベール・ダ ントルサングル(Norbert Dentressangle)によっ て買収された。
会社概要
ニチレイ ロジは、その違いを乗り越えることで低温物流事業のコスト 構造を大きく転換した。
そこで得たノウハウを現在は海外にも 展開している。
(聞き手:大矢昌浩・石鍋 圭) スタートは赤字続き ──ニチレイロジは二〇〇九年度に売上高でキユー ソー流通システムを抜いて食品物流最大手に立ちまし た。
〇四年にニチレイが低温物流事業を会社分割す る以前とは、物流市場におけるプレゼンスがずいぶん 変わってきた。
従来はニチレイの物流子会社のように 見られていました。
「勘違いされることが多いのですが、当社はもとも と冷蔵倉庫会社としてスタートした会社です。
物流 子会社ではないので外販とか内販とかという区別も ない。
グループ会社の仕事はしていますが、完全に ワン・オブ・ゼムです。
ただし、当社は永らく保管 事業をメーンとしてきました。
それに対して現在は 小売りのセンター運営事業が伸びている。
社内では 『TC事業』と呼んでいます。
印象が変わったとすれ ば、そこでしょう」 ──TC事業はいつから始めたのですか? 「開始したのは、もう二五年も前になります。
当 時は日立物流さんと同じで『システム物流』と呼び、 小売りの物流をサポートする新規事業として立ち上 げました。
コンビニをはじめチェーンストアがものす ごい勢いで台頭し始めた頃でした。
それを見て、こ れは川下からの流通再編が始まるぞ、と考えたんで す。
モノの流し方がメーカー主導から小売り主導に 変わる。
そこにビジネスチャンスがあると判断したわ けです」 「もっとも当社の内部事情もありました。
冷蔵倉庫 事業は基本的に朝の八時半から夕方五時までの仕事 です。
今でこそ二四時間稼働の冷蔵倉庫も増えてき ましたが、当時は夜間はまったく稼働していなかっ た。
これはもったいない。
夜間にできる仕事を組み 立てれば、設備コストをゼロで倉庫を回せると考えた んです。
昼は冷蔵倉庫を通常通り回し、夜中に小売 り向けの商品の納品を受けて、仕分けをし、朝の開 店前までに店舗に運ぼうと」 「しかし、実際には甘くはなかった。
スタートから 一〇年くらいは苦労が絶えませんでした。
TC事業 の最初の顧客はボランタリーチェーンでした。
一店舗 あたりの発注量がひたすら細かい。
“豆腐一丁、チク ワ一本”の世界です。
しかも当時はたいした情報シ ステムもありませんから、電話で前日に発注を受け て、それを一つ一つ集計して、豆腐屋や納豆屋にF AXで注文書を流していた。
そして品物を当社の倉 庫に総量納品させて、それを店舗別に仕分けて開店 前までに届ける。
店ごとの荷量が全くまとまらない ので、効率は悪い。
収支の合うはずがない。
赤字続 きでした」 ──撤退も考えた? 「確かに社内にも、どうしてそんなに儲からないこ とを一生懸命やるんだと不思議がる声はありました。
冷蔵倉庫だけやっていれば左団扇なのにと。
しかし 我々には小売りが流通を主導するようになるという 確信がありました。
当時イギリスに視察にいった当社 の幹部が、チェーンストア向けの事業を手広く運営し ていたクリスチャン・サルベッセン(注)という3P Lを見学し、日本の物流市場もやがてああなると興 奮気味に報告していたことを覚えています」 「今は苦しくても、いずれは儲かるというスタンス で商売を続けました。
もともと冷蔵倉庫屋というの は粘り強いんです。
冷蔵設備に大きな金額を投資し て、減価償却を経て、利益が出てくるまでには長い 時間がかかる。
だからすぐに利益が出なくても耐え ることには慣れている」 ニチレイロジグループ本社 山室達雄 取締役常務執行役員 《食品編》Interview 23 AUGUST 2010 ──TC事業が軌道に乗ったキッカケは? 「関西スーパーさんとの取引がターニングポイントで した。
それまで関西スーパーさんはご自身で自前のセ ンターを運営していたのですが、我々が日配品を中 心に全店の物流を集約して届けるかたちに切り替え ました。
物量があるので、冷蔵倉庫を夜間だけ使う という体制ではなく西宮に専用センターを開設しまし た。
やがて取り扱う品目も増えてきて、西宮のセン ターも手狭になってきたので、もっと大規模な総合 専用センターを尼崎に開設しました」 「そういった動きと並行して、イトーヨーカ堂さん のセンターも受託できることになりました。
ヨーカ堂 さんは物流の統合だけでなく、バックヤード、プロセ スセンターも併設したいというお考えでした。
その要 望に対応したセンターを船橋に開設しました。
そうし た実績が呼び水となって、九〇年代に一括物流が急 拡大した波に乗ることができたんです」 日本のノウハウを海外の冷蔵会社に移植 ──今や川下のセンター運営事業には、多くのプレー ヤーが参入しています。
競争が激化し、三温度帯管 理も珍しくなくなっている。
「当社が散々苦労したように冷蔵倉庫事業からTC 事業に参入しても恐らくは上手くいかない。
川上の 保管型とは事業モデルが違い過ぎます。
それに対し て、今は低温運送を主体としてきた会社が保管設備 を持ってセンター運営に乗り出している。
彼らは川下 の仕事には慣れている」 「しかし当社には彼等にはない強みがあります。
当 社は食品物流の川下でも川上でも仕事をしている。
そ のために設備を二四時間回すことができる。
小売り の物流センターの納品は朝一便が七時くらいの出発で 実稼働は四時間程度です。
その前後に当社は別の仕 事を付けることができる。
事業規模と事業領域の広 さが活かせます」 ──事業領域という点では、冷蔵保管に強いニチレイ ロジが、運送を主体とするチルド系の物流会社を買収 すれば大きな相乗効果を期待できるはずです。
「もちろん我々も買収については従来から検討はし ています。
しかし、具体的な買収相手が今のところ 見当たらない」 ──ヨーロッパでは各地の低温物流会社を買収してい ます。
その狙いは? 「これまでにオランダ、ドイツ、ポーランド、それに 今度はフランスの会社を買収しますが、そのアプロー チは他の日本の物流会社とだいぶ違います。
通常は 日本の大手荷主が海外進出するのに合わせて、物流 会社もそれに付いていくというかたちですが、欧州 の当社の荷主はほとんどが現地企業です」 「日本の荷主に付いていくのではなく、現地の低温 物流会社を買収して、そこに当社のノウハウを移植 する。
物流品質に関して恐らく日本は世界一厳しい。
リードタイム、賞味期限、仕分け作業、少しでも箱 が汚れていたらダメとか、他の国では考えられない レベルの品質が求められる。
そのノウハウを現地に移 管することで品質が格段に上がる。
その結果、現地 の有力荷主を獲得できるようになる。
そうしたやり 方で、買収後に会社の業績を伸ばすんです」 ──インドや中国については? 「インドもオペレーションは安定してきましたが、マ ネジメントが成熟するには、まだ時間がかかると見て います。
それと比較すると中国はかなり成熟してき た。
中国の低温物流市場は、拡大ペースがこれから 一気に加速していくと見ています」 【食品編】 特 集 業績推移 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 06 年度 224 07 年度08 年度09 年度 (単位:億円) 432 21 178 454 279 409 419 12 290 442 420 302 462 224 16 20 165 452 321 1341 1387 1423 1390 物流ネットワーク (TC 事業以外) その他 売上高 海外事業 地域保管 TC事業 ニチレイロジグループ本社 前身はニチレイの低温物流事業。
2005年4月、ニ チレイグループが持ち株会社制に移行したのを機に 発足。
冷蔵設備を用いた「地域保管」、川下のセンター 運営や配送などの「物流ネットワーク」が柱。
国内 DC(在庫型センター)80拠点・保管能力約132万 トン。
海外DC11拠点・保管能力約48万トン。
国内、 海外を合わせた冷蔵設備の拠点数、設備能力は国内 首位、世界でも6位の規模を誇る。
このほかに、小 売りの一括物流を行うTC(スルー型センター)が国 内に23拠点ある(2010年4月現在)。
注)クリスチャン・サルベッセン(Christian Salvesen)。
英・ノーザンプトンに本拠を置く3PL。
イギリス、 フランス、ドイツ、スペインなど欧州全域に展開。
2007年12月、フランスの運送会社ノルベール・ダ ントルサングル(Norbert Dentressangle)によっ て買収された。
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