2010年8月号
特集

《医薬品編》第3部 医薬品物流市場の勢力図を読む

AUGUST 2010  30 メーカーから卸へ荷主が転換  スズケンは昨年九月、医薬品輸送大手の中央運輸 を株式交換によって完全子会社化した。
中央運輸は 終戦直後の一九四七年に東京日本橋で個人が開業。
医薬品メーカーからの要請と後押しを受けて、専門輸 送会社として首都圏にネットワークを敷き、九六年に 株式の店頭公開(現ジャスダック上場)を果たした。
 しかし、九〇年代末に始まった医薬品卸の再編で、 同社は市場環境の急激な変化に直面する。
全国化し、 フルライン化したメガ卸が大型物流センターの整備を 進めたことで、医薬品のサプライチェーンにおける物 流の役割分担とフローが大きく変わった。
卸の大型セ ンターへの納品は大ロットの単純輸送。
それまで中央 運輸がメーンとしてきた、メーカーの工場や物流拠点 から出荷した荷物を、全国に分散する営業所や特約 店に納品するという輸送需要がなくなった。
 サプライチェーンの再編に対応して中央運輸は〇四 年八月に、北海道の旭運輸、四国の四国運輸、九州 の博運社との共同出資で、P・J・Dネットワークを 設立している。
各地の医薬品専門輸送会社と手を組 んで全国ネットワークの構築に動いた。
 四社はいずれも各地元の医薬品輸送では圧倒的な シェアを握っている。
しかし、事業規模はそう大きく はない。
同分野最大手とされる中央運輸でも〇九年 九月期の売上高は七〇億円あまり。
スズケンによる完 全子会社化で上場廃止となった時点の株式時価総額 は二六億円四一〇〇万円に過ぎなかった。
巨大化し た卸との財務基盤の差は決定的だ。
 メーカー物流で育った中央運輸の、スズケンへの傘 下入りは、医薬品業界における物流の主導権がメー カーから卸にシフトしたことを象徴する出来事だった。
 日本通運で医薬品物流を担当する大畠吉雄営業第 二部ヘルスケア担当部長は、「医薬品は商品が小さい ため、もともと輸送需要の規模は限られている。
当 社も関東の一都三県に医薬品の保冷配送網を敷いて いるが、売り上げは知れている。
それでいて小型ト ラック一台分の商品価格が時には数億円に上ることも ある。
リスクが大きく保険料もかさむ。
品質管理上、 他の荷物との混載もできない。
決して旨味の大きな仕 事ではない」という。
 医薬品物流において日通は既に三〇年近くの実績 を持つ。
腎臓病の透析を自宅で行う腹膜透析の輸液 を、日本全国の患者宅に配達するという仕事がその 始まりだった。
腹膜透析は成人で一回につき二〜三 リットルの輸液を使う。
それが一日に四回。
つまり一 日約一〇キログラムの輸液が必要で、一カ月ごとの配 送だと一軒当たりの物量は約三〇〇キロにもなる。
 輸液の濃度や一パックの量は患者ごとに違う。
配送 ミスは絶対に許されない。
納品場所指定やセッティン グ、使用済み資材等の回収、さらには患者の個人情 報への配慮も必要だ。
そのため日通では配送ドライ バーを登録制にして、約三〇〇人の正社員を投入し 教育を徹底している。
 この仕事は荷主が外資系大手のバクスターで、現在 も継続している。
しかし、日通が医薬品物流事業を 他メーカーにも広げようと本格的に乗り出したのは九 五年のこと。
その時点で既に医薬品メーカーの物流は、 三菱倉庫が覇権を握っていた。
 さらに〇五年にはスズケンが、医薬品メーカーなど 一八社との共同出資で、医薬品専門3PLとしてコラ ボクリエイトを設立。
売上高は既に五〇億円規模に達 している。
そして日立物流もコラボクリエイトと同程 度の売り上げがあると目される。
医薬品メーカー向け 医薬品物流市場の勢力図を読む  医薬品メーカー向け物流市場は既に、三菱倉庫、日 立物流、コラボネクストの3社によって牛耳られている。
医薬部外品・化粧品は日用雑貨品との統合が進んでい る。
それに対して医療機器物流はいまだ混戦模様だ。
日本通運が同分野をリードするが、他の物流会社も虎 視眈々とチャンスを狙っている。
     (大矢昌浩) 《医薬品編》第3部 31  AUGUST 2010 に関しては、この三社で既に勝負あった感がある。
 しかし、医薬品物流市場は、?医療用医薬品・大 衆薬のほかに、?医薬部外品・化粧品、?医療機器 の、三つのカテゴリーに大きく分かれている。
そのう ち医薬部外品・化粧品の物流は、日用雑貨品との統 合が進んでいる。
それに対して医療機器の物流市場 は、いまだ多くのプレーヤーががしのぎを削る激戦区 となっている。
 日通の大畠担当部長は、「医薬品物流では、当社は 医療機器を当面のメーンターゲットに据えている。
こ の分野で当社は圧倒的なシェアを持っている」と自負 する。
実際、日通は医薬品物流で現在約七〇社の荷 主を抱え、年間二〇〇億円規模の売り上げを誇って おり、その大部分が医療機器メーカー向けだ。
 医療機器専用のWMSを九六年に開発し、大手外 資系メーカーを最初の荷主に獲得。
当時はまだ高価 だった無線ハンディ端末を駆使した庫内オペレーショ ンと、国内航空輸送をベースとする輸送ネットワーク を構築した。
この案件が?ショールーム?となって他 の医療機器メーカーを次々に取り込んでいった。
 医療機器は製品の種類によって、取引形態や物流 フローが大きく異なる。
荷主の個別ニーズに合わせた きめ細かな対応が必要で、医薬品と比べて標準化や 共同化が難しい。
それでも同じ商品分野のライバル同 士であれば、物流の要件も似通っている。
運営ノウハ ウやWMSのモジュールを横展開できる。
実際、コン タクトレンズ業界では、大手メーカーが軒並み日通を パートナーに起用している。
 「庫内オペレーションと航空貨物輸送のネットワー クを組み合わせた仕組み作りが当社の強み。
同じス キームで今後はアジア市場を開拓していく。
外資系は もちろん、日系メーカーの海外展開を支援したい」と 大畠担当部長は意欲を燃やしている。
医療機器物流はいまだ混戦模様  しかし、ライバルの物流会社も手をこまぬいてはい ない。
SGホールディングス傘下の佐川グローバルロ ジスティクス(SGL)は今春から、外科手術に使う 整形インプラントを対象とした総合物流サービスを開 始した。
 日本では、インプラント製品に合わせた専用術具を メーカーが病院に貸し出すという商慣習が根付いてい る。
手術後に術具を回収し、洗浄・滅菌を施して再 利用する。
術具は高価でメーカーの所有する在庫数に は限りがある。
洗浄・納品・回収という循環を高回 転させる必要がある。
 従来はそれをメーカーもしくは販売会社が社内で処 理していた。
そのために洗浄まで含めたロジスティク スコストがメーカー売上高の一四%程度に上っていた。
それに対してSGLは洗浄・保管施設を用意し、回 収から洗浄、在庫管理、ピッキング、輸配送までを一 括して代行している。
 サービス開始に当たってSGLは医療機器用の洗浄 機最大手、サクラグローバルホールディング傘下でR FID技術を持つメディトラック、そして医療機器に 二次元バーコードを刻印する技術を持つエムネクスト と提携し、専門技術とノウハウを確保している。
 SGLの山岡誠吾営業本部営業開発部部長兼経営 企画部経営企画担当部長は「洗浄周りのサービスをワ ンストップで当社が請け負うことで、まずは院内物流 への足がかりを作る。
さらに近い将来、院内物流で は標準化されたRFIDや二次元バーコードの使用が 義務化される。
その技術を先取りしておくことで事 業を拡大する」と青写真を描いている。
日本通運の大畠吉雄 営業第二部ヘルスケ ア担当部長 SGLの山岡誠吾営業本部 営業開発部部長兼経営企 画部経営企画担当部長 SGLが導入したRFID。
これを 武器に院内物流に切り込む医薬品3PLの課題は何か 専門能力 施設・設備 認証・免許 コスト 技術力 経験を持つ幹部 ビジビリティ セキュリティ 配送スピード その他 (%)0 10 20 30 40 50 60 70 資料:「ヘルスケア&ライフサイエンス・サプライチェーンレポート2010」 アイ・フォア・トランスポートより 3PL 医薬品メーカー 医療機器メーカー 【医薬品編】 特 集

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから