2010年10月号
特集

Interview 「物流管理機能は外部化できない」ソニーサプライチェーンソリューション 江連淑人 社長(ソニーVP生産本部物流部門長を兼務)

OCTOBER 2010  24 「物流管理機能は外部化できない」  昨年10月、ソニーは約10年ぶりに本社物流部門を復活させ た。
同社は2000年に国際物流まで含めた物流管理機能をすべ て物流子会社に移管している。
グループ全体の最適化に向け て、その組織体制を再び改めた。
物流子会社の位置付けも大 きく変わることになる。
業務移管でガバナンスが失われた ──昨年一〇月にソニーは本社物流部門を新たに設 置して、その部門長に江連さんが就任されたわけです が、これは屋上屋を重ねたことになりませんか。
も ともとソニーは物流子会社のソニーサプライチェーン ソリューション(SSCS)に企画機能まで含めた物 流管理機能を移管していたわけですから。
 「そもそも子会社に物流管理機能を全て委ねていて 本当に良いのかという疑問が今回の機構改革の始ま りでした。
物流業務を受託されている側が、発注側 をコントロールするのはやはり難しいところがある。
機能子会社としてそれなりに敬意を払われてはいて も、受託する側とされる側という関係ではSSCS の言うことはなかなか聞いてもらえない」 ──過去を振り返るとソニーは二〇〇〇年にSSCS の前身となったソニーロジスティックスに国際物流ま で含めたすべての物流管理業務を移管しています。
 「その時に本社にあった『ロジスティクスセンター』 を子会社に出したわけですが、そのかたちでも当時 は物流のガバナンス機能が担保されると考えられて いた。
実際当初はそれで問題なかったのでしょうが、 組織的にはやはり間違いだった。
ソニー全体として の物流のガバナンスが失われてしまいました」  「SSCSはソニーグループの物流を一〇〇%受託 できているわけではありません。
徐々にカバレッジを 拡大して八割強まで来ましたが、まだかなりの“抜 け”がある。
たとえばソニー・コンピュータエンタテ インメント(SCE)の物流は受託できていない。
ゲームビジネスを欠いた状態では、SSCSがソニー 全体の物流を見ているとはとても言えません」  「昨年四月に副社長直轄の『生産・物流・調達・C Sプラットフォーム生産本部』が立ち上がり、その半 年後に同本部に『物流部門』が設置されたことで初 めてSCEまで含めたソニー全体の物流を統括する体 制に移行することができた。
もともとソニーは組織 の縦割りが強い。
“サイロを壊せ”というのが、現在 のハワード・ストリンガーCEOの指示であり、物流 が事業部に対してモノを言えるようにするには本社 部門が必要だったということです」 ──しかし、SSCSは世間一般の物流子会社と比 べて業務領域が広い。
ソニーの物流の一〇〇%とは 言えないまでも、海外や部品調達なども含めてすべ てカバーしています。
残りの二割弱の物流を加えて も、それほど大きな効果は期待できないのでは。
 「それなりのインパクトはあります。
簡単に説明す ると、現状ではゲームとそれ以外の商品が別に倉庫 を構えている。
物量の比率として見れば一五:八五 だとしてもコストで見ればゲームの比率はもっと高く なる。
これを統合することでコストは大きく下がって くる。
単純なボリュームディスカウントも軽視はでき ません。
統一された方針に基づいてコストを削減し ていくことも子会社の立場では難しい。
現在は割高 な航空貨物輸送を減らすことに取り組んでいますが、 海上輸送に変えるとリードタイムが長くなるので当然 ながらビジネスユニットの了解が必要です。
またビジ ネスユニットが勝手に船会社を選定することもできな くしました。
本社組織であればそうした強制力も発 揮しやすい」 ──SCEとの統合は既に進んでいるのですか。
 「今年春に実施した入札はSCEも含めたソニー全 体で行いました。
また、これは以前から計画されて いたことですが、従来は『ワールド・スペアパーツ・ センター』と呼ばれる組織が担当していた補修用部 ソニーサプライチェーンソリューション 江連淑人 社長 (ソニーVP生産本部物流部門長を兼務) 25  OCTOBER 2010 品の物流も、SCEも含めてすべてSSCSに移管 されることになりました」 ──今年六月から江連さんは本社物流部門長とSS CSの社長を兼務することになりましたが、SSC Sにソニーの物流を完全に集約することがその役割と いうことになりますか。
 「SSCSのトップとしては、それを進めていきま すが、物流部門長としてはSSCSよりもベターな 選択肢があるならSSCSには任せられない。
そこ は割り切って全体のコストを下げて品質を上げるとい う当たり前のことをやるしかありません」 物流子会社の売却はあり得ない ──それでもSSCSの売上高は今後増えていくこ とになるのでは。
 「国内物流に関しては増える要因はあまりありませ ん。
船便に関しては既に日本から出荷される物量が、 ソニー全体の物量の一割を切っています。
日本で生 産しているのは付加価値の高い製品が多いため、エ アはもう少しありますが、それにしても量は知れて いる。
また海外もオペレーションはアウトソーシング する方向で進めています。
例えばこれまでヨーロッパ はオランダに中央倉庫を置いてSSCSが数百人もの 作業員を投じて運営していましたが、これをアウト ソーシングに切り替える。
現在入札を進めています」  「SSCS自身が3PL化して外部の仕事を獲って くるということも現在は期待されていません。
それ ではSSCSは何をするのかと言えば、ソリューショ ンの開発とそしてオペレーションのマネジメントです。
これは生産を委託する場合も同じですが、アウトソー シングするにしても丸投げというわけにはいかない」 ──SSCSは現在七〇〇人弱の従業員を抱えてい ます。
3PLの管理だけなら、重過ぎる組織では。
 「どこまでのレベルでアウトソーシングするかによっ て、それは違ってきます。
『LLP(リード・ロジス ティクス・プロバイダー)』に近いかたちで包括的に 委託してしまうのであれば、本社物流部門だけでも できないことはないのかも知れない。
本社物流部門 の人員を多少増強すれば可能でしょう。
しかし当社 はそれを志向していません。
生産委託の場合でも実 際には我々が相手先に入り込んで相当な手間をかけ ている。
そこまで手間をかけないと我々が必要とす るオペレーションは担保できない。
欧米のメーカーで も、例えばヒューレット・パッカードなども物流子会 社こそ持っていないものの実際には相当な人数を物 流管理に投入していると聞いています」 ──SSCSをオペレーションから切り離すのであれ ば、本体に吸収することも一つの選択肢になるはず です。
 「SSCSは一〇〇%子会社ですから、そう言われ ることの意味は分かります。
しかし、例えば中国な どでは物流会社としての法人格を持っていることが メリットになる場合も少なくない。
またSSCSは 物流だけでなく資材やパーツの調達機能も担っていま す。
その機能は本体には馴染まない。
今のところ吸 収は現実的ではありません」 ──逆にSSCSを外部に売却することは選択肢に はなりませんか。
 「そうした提案を外部から受けることもありますが、 答えはノーです。
買う方はソニーの物流が付いてくる ことを期待してそう言ってくるのでしょうが、そう はならない。
メーカーとして我々には物流管理機能 が必要です。
SSCSをマネジメントに特化させる以 上、外に売れるものなどないんです」 ソニーの物流管理組織の変遷 1988 年 2000 年 2003 年 2009 年 2010 年 100%子会社のソニー倉庫の名称を、ソニーロジスティックス に変更。
海外物流事業に乗り出す。
ソニー本社の「ロジスティクスセンター」が担っていた国際物流 管理機能、および航空フォワーディングのソニーエアカーゴを 物流子会社のソニーロジスティックスに集約。
ソニーロジスティックスと部品調達子会社のソニートレーディン グインターナショナルを統合してソニーサプライチェーンソ リューション(SSCS)を設立。
ストリンガー改革の一貫でソニー本社に「生産・物流・調達・ CSプラットフォーム生産本部」を設立し、その傘下に物流部 門を設置。
江連淑人VP が部門長に就任。
江連物流部門長がSSCS社長を兼務。
SSCSは今後、マネ ジメント機能に特化させる方針。
特集さよなら物流子会社

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから