2010年11月号
現場改善
現場改善
第94回 事業部制廃止に踏み切った部品メーカー
61 NOVEMBER 2010
たこつぼ型組織の弊害
我々日本ロジファクトリー(NLF)が十二
年ほど前にコンサルティングを実施した機械部
品メーカーのD社から連絡が入った。
改めて 相談したいことがあるという。
電話の相手は 当時の窓口だったS常務。
今では社長に昇進 している。
S社長と現在会長を務める前社長の二人三 脚によって、D社の年商は、十二年前の約八 〇億円から約三〇〇億円へと大きく拡大して いた。
その間、営業利益率も五%を維持して きた。
しかし、このところ経営の足元が揺ら ぎ始めているという。
利益率とシェアが低下 しつつある。
D社の販売ルートは、工作機械メーカー、自 動車メーカー、精密機器メーカーなどへの直販 が全体の約七五%を占める。
残り約二五%は 大手代理店経由の取引である。
現在の取り扱 いアイテム数は約三万五〇〇〇。
うち約七割 を国内で生産し、残り三割を中国やタイ、ベ トナムなどのアジア諸国から輸入している。
高い技術力を必要とする部品は国内で自社 生産し、コスト重視の部品は海外から調達す るというパターンは、同分野の定石といえる。
ただし近年は価格競争の激化によって海外調 達比率が年々上昇する傾向にある。
国内の競 合のほか、韓国や欧米勢の追い上げも激しく、 D社としても改めてコストダウンに取り組む必 要があった。
久しぶりにD社を訪ねることになった。
我々 の面談相手はS社長ひとり。
他の経営幹部は 誰も同席しなかった。
珍しいことだ。
「ウチには物流の専門家がいないので改革推 進に向けて手伝って欲しい」とS社長。
物流 を切り口にして、調達、生産、営業、システ ムまで、組織全体を見直すことで効率化を図 ろうという考えであった。
しかし外部のコン サルタントを招くことは、まだ社内に話してい ない様子であった。
我々はまずD社の現状を把握するため、主 要な物流拠点を視察に回ることにした。
それ と並行してS社長に必要なデータと資料を用 意してもらった。
そこから我々が導き出した 分析結果は、事業部制の形骸化であった。
D社は組織を製品群や販売チャネルに合わ せて四つの事業部に分けていた。
周知の通り 事業部制においては、本社権限を各事業部門 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 物流改善を目的として現状を分析した結果、事業部制という 組織体制自体に問題のあることが分かった。
事業部制のメリッ トを活かすことができていないだけでなく、部門最適から物流 の非効率を招いていた。
経営トップが決断を下し、事業部制の 廃止を含む大がかりな経営改革を断行した。
事業部制廃止に踏み切った部品メーカー 第94 回 NOVEMBER 2010 62 に委譲し、損益の責任も持たせることで、各 事業部がそれぞれ独立した会社と同様に活動 する。
これによって柔軟で素早い意志決定が 可能になり、本社組織の肥大化を防ぐ効果が あるとされている。
しかし、事業部制を機能させるには高いヒ ューマンスキルと、事業部の活動をサポートし チェックする組織横断型の管理機能が必要に なる。
そのため一定の規模と成熟度を持った 会社でないと、事業部制のメリットを活かす ことは難しい。
筆者はこれまでのコンサルティング経験か ら、年商五〇〇億円というラインが一つの目 安になると考えている。
それ以下の規模で事 業部制を導入している会社には、物流費の高 い会社が多いと感じている。
D社はこの基準をクリアしていなかった。
本 社に管理本部は置いていたが、各事業部の活 動を調整し相乗効果を上げることはできてい なかった。
事業部間の人事交流や異動なども まったくない状態であった。
D社が事業部制を採るようになったのは、過 去のM&Aがきっかけだった。
売上拡大のた めに買収した会社をそのまま事業部として組 織に加えたものの、その後の人事やシステムの 統合には全く手がつけられていなかった。
そ の結果、物流面では以下ような問題が顕在化 していた。
■販売管理システムが事業部ごとに異なる。
■事業部ごとの物流費が明確になっていない。
■A事業部を除き、他の三つの事業部には物 流管理の専門組織がない。
(実は一五年前ま でD社は物流子会社を持っていた。
しかし 外販能力を持たず、親会社の仕事に一〇〇 %依存した状態で、コスト高であったこと から清算していた) ■各事業部でバラバラに協力物流会社と取引 している。
マテハン類や備品も各拠点で勝 手に購入している。
ボリュームを活かしたコ ストダウンが図れていない。
まずは各担当役員と現状認識を共有し、改 革を実施することへの合意を得る必要があっ た。
D社はカリスマ性を備えた経営者による 強いトップダウンで運営されてきた会社だ。
そ れだけに役員たちは上を向いて仕事をする傾 向があり、隣の部門には全く関心がないとい っても過言ではなかった。
そのため役員会で 調整を図るのではなく、トップ自身が個別に 担当役員と話し合い、説得する形で意識の統 一を図った。
製・販・物の合同連絡会議を設置 我々のアドバイスを元に、S社長は一年後を メドに事業部を廃止することを決断した。
従 来の販売チャネル別・製品別のタテ割りの事業 部制をフルラインのエリア制に改組し、組織を スリム化することでコストの抑制を図る。
これ はD社にとって過去に経験したことのない大 改革であった。
物流管理面では、まず組織改革に取り組ん だ。
A事業部の既存の物流管理組織を本社部 門に格上げし、その業務内容、管理対象範囲 を明確にしたうえで、必要なスキルを備えた スタッフを人選した。
さらに製造・販売・物流の各担当者で構成 する「合同連絡会議」の設置を当面の目標に 据えた。
従来、D社では製造計画、販売計画、 在庫計画を各事業部が立てていた。
その結果 として、作り過ぎによる在庫過剰が発生する 一方で、慢性的に欠品しているアイテムが存 在していた。
過去に改善活動に取り組んだこ ともあったが、納品率は九六%にとどまって いた。
これにメスを入れるには、在庫情報、新規 顧客情報、既存顧客からの内定受注情報を全 社的に共有して、在庫がだぶついているアイ テムの販売強化、および欠品が目立つアイテ ムについては、その理由の明確化などを進め る必要があった。
社員たちが組織横断型のマネジメントに慣れ るための前哨戦としても合同連絡会議の設置 は大きなポイントであった。
全社共通の課題で ある「在庫」と「需要予測」をテーマに全体 会議を運用することで、他部門のことには興 味を持たないという悪弊を払拭しようという 狙いもあった。
同会議において、現状の在庫回転率一七・ 五回を業界平均の二二・〇回まで向上し、ま た納品率を九六・〇%から九九・九%に改善 することを、プロジェクトの最終目標として定 めた。
63 NOVEMBER 2010 これを受けて統合業務では、人事考課、給 与体系の見直し、そして受注システムの集約 を実施した。
D社の納品リードタイムは事業部によって最 大一カ月強もの差があった。
また受注形式も販 売チャネルごとに、「?EOS」、「?WEB」、 「?電話」、「?ファックス」、「?営業マンによ る受注」の比率が大きく異なっていた。
大手 メーカーとの取引はEOSやWEBがほとん どだが、中小企業や代理店経由の受注はどう してもアナログ受注の比率が高くなる。
これらをすぐに一本化するのは現実的では ないと判断し、従来の事業部別の四種類の受 注システムを二つに集約し、当面は二つのシス テムを並行して運用するかたちをとった。
これと並行して物流拠点の再編と物流コン ペに取り組んだ。
コンペは候補企業の選定の 段階から紛糾した。
各事業部の意向がそれぞ れ異なっていた。
どこも自分たちが従来から 取引していた協力会社を使いたがった。
そこで我々NLFが、D社における物流の ?あるべき姿?を提示することにした。
輸配送、 保管、センター運営、海外インフラなどの各項 目において、必要とする物流サービスを明確 にして、そこから物流パートナーに求められる 条件を抽出した。
結局コンペの運営は、A事業部の物流管理 組織を格上げした物流管理部門が実行部隊と なり、最終的な選定はトップに一任するかた ちで進められることになった。
結果的には従 来から三つの事業部と取引していた倉庫系の S社をパートナーに選んだ。
競争力のあるコス トに加え、D社の業務に熟知していることな どが理由だった。
なお事業部の廃止に伴い、古参の担当役員 二名に対して退任を勧告する必要があった。
売 上規模の最も少ないD事業部の幹部社員もリ ストラの対象とせざるを得なかった。
トップ と各対象者が膝をつき合わせて話し合った末、 彼等を関連会社の顧問というかたちで、低報 酬ながら再雇用することで決着をつけた。
事業部制は機能しているか これらの実施項目は今回のプロジェクトで実 施したうちのごく一部に過ぎない。
それだけ D社の改革は広範囲にわたるものであり、な かには難航したテーマも少なくなかった。
当初 は一年をメドとしていた事業部制廃止の時期 は結局三カ月オーバーすることになった。
それ でもS社長の強いリーダーシップによって計画 は実行に移されたのであった。
一連の改革によって、D社の組織は簡素化 された。
人事面も大きく刷新された。
その結 果、従来は各事業部が囲い込んでブラックボッ クス化していた、クレーム処理やイレギュラー 対応、執行管理のやり方などが解明されたの であった。
物流コストは、対売上高支払い物流費比率 が従来の二・二%から一・八五%に抑制され た。
金額にして一億二〇〇〇万円のコストダ ウンである。
事業部制とエリア制、組織の集中と分散に は、絶対的な正解はない。
実際の経営において、 組織体制とは環境の変化に応じて振り子のよう に変化するものであろう。
しかし、最近の傾向 としては、D社のように事業部制が機能不全を 起こしているケースが増えているように感じて いる。
とりわけ組織が成熟していない、事業部単位 の売上規模が小さい、組織横断的な管理機能が 不在もしくは不十分だといった問題を感じてい る場合には、物流改善というレベルだけでなく、 会社全体の組織体制から、そのあり方について 検討を加える必要があるだろう。
あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89 年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp
改めて 相談したいことがあるという。
電話の相手は 当時の窓口だったS常務。
今では社長に昇進 している。
S社長と現在会長を務める前社長の二人三 脚によって、D社の年商は、十二年前の約八 〇億円から約三〇〇億円へと大きく拡大して いた。
その間、営業利益率も五%を維持して きた。
しかし、このところ経営の足元が揺ら ぎ始めているという。
利益率とシェアが低下 しつつある。
D社の販売ルートは、工作機械メーカー、自 動車メーカー、精密機器メーカーなどへの直販 が全体の約七五%を占める。
残り約二五%は 大手代理店経由の取引である。
現在の取り扱 いアイテム数は約三万五〇〇〇。
うち約七割 を国内で生産し、残り三割を中国やタイ、ベ トナムなどのアジア諸国から輸入している。
高い技術力を必要とする部品は国内で自社 生産し、コスト重視の部品は海外から調達す るというパターンは、同分野の定石といえる。
ただし近年は価格競争の激化によって海外調 達比率が年々上昇する傾向にある。
国内の競 合のほか、韓国や欧米勢の追い上げも激しく、 D社としても改めてコストダウンに取り組む必 要があった。
久しぶりにD社を訪ねることになった。
我々 の面談相手はS社長ひとり。
他の経営幹部は 誰も同席しなかった。
珍しいことだ。
「ウチには物流の専門家がいないので改革推 進に向けて手伝って欲しい」とS社長。
物流 を切り口にして、調達、生産、営業、システ ムまで、組織全体を見直すことで効率化を図 ろうという考えであった。
しかし外部のコン サルタントを招くことは、まだ社内に話してい ない様子であった。
我々はまずD社の現状を把握するため、主 要な物流拠点を視察に回ることにした。
それ と並行してS社長に必要なデータと資料を用 意してもらった。
そこから我々が導き出した 分析結果は、事業部制の形骸化であった。
D社は組織を製品群や販売チャネルに合わ せて四つの事業部に分けていた。
周知の通り 事業部制においては、本社権限を各事業部門 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 物流改善を目的として現状を分析した結果、事業部制という 組織体制自体に問題のあることが分かった。
事業部制のメリッ トを活かすことができていないだけでなく、部門最適から物流 の非効率を招いていた。
経営トップが決断を下し、事業部制の 廃止を含む大がかりな経営改革を断行した。
事業部制廃止に踏み切った部品メーカー 第94 回 NOVEMBER 2010 62 に委譲し、損益の責任も持たせることで、各 事業部がそれぞれ独立した会社と同様に活動 する。
これによって柔軟で素早い意志決定が 可能になり、本社組織の肥大化を防ぐ効果が あるとされている。
しかし、事業部制を機能させるには高いヒ ューマンスキルと、事業部の活動をサポートし チェックする組織横断型の管理機能が必要に なる。
そのため一定の規模と成熟度を持った 会社でないと、事業部制のメリットを活かす ことは難しい。
筆者はこれまでのコンサルティング経験か ら、年商五〇〇億円というラインが一つの目 安になると考えている。
それ以下の規模で事 業部制を導入している会社には、物流費の高 い会社が多いと感じている。
D社はこの基準をクリアしていなかった。
本 社に管理本部は置いていたが、各事業部の活 動を調整し相乗効果を上げることはできてい なかった。
事業部間の人事交流や異動なども まったくない状態であった。
D社が事業部制を採るようになったのは、過 去のM&Aがきっかけだった。
売上拡大のた めに買収した会社をそのまま事業部として組 織に加えたものの、その後の人事やシステムの 統合には全く手がつけられていなかった。
そ の結果、物流面では以下ような問題が顕在化 していた。
■販売管理システムが事業部ごとに異なる。
■事業部ごとの物流費が明確になっていない。
■A事業部を除き、他の三つの事業部には物 流管理の専門組織がない。
(実は一五年前ま でD社は物流子会社を持っていた。
しかし 外販能力を持たず、親会社の仕事に一〇〇 %依存した状態で、コスト高であったこと から清算していた) ■各事業部でバラバラに協力物流会社と取引 している。
マテハン類や備品も各拠点で勝 手に購入している。
ボリュームを活かしたコ ストダウンが図れていない。
まずは各担当役員と現状認識を共有し、改 革を実施することへの合意を得る必要があっ た。
D社はカリスマ性を備えた経営者による 強いトップダウンで運営されてきた会社だ。
そ れだけに役員たちは上を向いて仕事をする傾 向があり、隣の部門には全く関心がないとい っても過言ではなかった。
そのため役員会で 調整を図るのではなく、トップ自身が個別に 担当役員と話し合い、説得する形で意識の統 一を図った。
製・販・物の合同連絡会議を設置 我々のアドバイスを元に、S社長は一年後を メドに事業部を廃止することを決断した。
従 来の販売チャネル別・製品別のタテ割りの事業 部制をフルラインのエリア制に改組し、組織を スリム化することでコストの抑制を図る。
これ はD社にとって過去に経験したことのない大 改革であった。
物流管理面では、まず組織改革に取り組ん だ。
A事業部の既存の物流管理組織を本社部 門に格上げし、その業務内容、管理対象範囲 を明確にしたうえで、必要なスキルを備えた スタッフを人選した。
さらに製造・販売・物流の各担当者で構成 する「合同連絡会議」の設置を当面の目標に 据えた。
従来、D社では製造計画、販売計画、 在庫計画を各事業部が立てていた。
その結果 として、作り過ぎによる在庫過剰が発生する 一方で、慢性的に欠品しているアイテムが存 在していた。
過去に改善活動に取り組んだこ ともあったが、納品率は九六%にとどまって いた。
これにメスを入れるには、在庫情報、新規 顧客情報、既存顧客からの内定受注情報を全 社的に共有して、在庫がだぶついているアイ テムの販売強化、および欠品が目立つアイテ ムについては、その理由の明確化などを進め る必要があった。
社員たちが組織横断型のマネジメントに慣れ るための前哨戦としても合同連絡会議の設置 は大きなポイントであった。
全社共通の課題で ある「在庫」と「需要予測」をテーマに全体 会議を運用することで、他部門のことには興 味を持たないという悪弊を払拭しようという 狙いもあった。
同会議において、現状の在庫回転率一七・ 五回を業界平均の二二・〇回まで向上し、ま た納品率を九六・〇%から九九・九%に改善 することを、プロジェクトの最終目標として定 めた。
63 NOVEMBER 2010 これを受けて統合業務では、人事考課、給 与体系の見直し、そして受注システムの集約 を実施した。
D社の納品リードタイムは事業部によって最 大一カ月強もの差があった。
また受注形式も販 売チャネルごとに、「?EOS」、「?WEB」、 「?電話」、「?ファックス」、「?営業マンによ る受注」の比率が大きく異なっていた。
大手 メーカーとの取引はEOSやWEBがほとん どだが、中小企業や代理店経由の受注はどう してもアナログ受注の比率が高くなる。
これらをすぐに一本化するのは現実的では ないと判断し、従来の事業部別の四種類の受 注システムを二つに集約し、当面は二つのシス テムを並行して運用するかたちをとった。
これと並行して物流拠点の再編と物流コン ペに取り組んだ。
コンペは候補企業の選定の 段階から紛糾した。
各事業部の意向がそれぞ れ異なっていた。
どこも自分たちが従来から 取引していた協力会社を使いたがった。
そこで我々NLFが、D社における物流の ?あるべき姿?を提示することにした。
輸配送、 保管、センター運営、海外インフラなどの各項 目において、必要とする物流サービスを明確 にして、そこから物流パートナーに求められる 条件を抽出した。
結局コンペの運営は、A事業部の物流管理 組織を格上げした物流管理部門が実行部隊と なり、最終的な選定はトップに一任するかた ちで進められることになった。
結果的には従 来から三つの事業部と取引していた倉庫系の S社をパートナーに選んだ。
競争力のあるコス トに加え、D社の業務に熟知していることな どが理由だった。
なお事業部の廃止に伴い、古参の担当役員 二名に対して退任を勧告する必要があった。
売 上規模の最も少ないD事業部の幹部社員もリ ストラの対象とせざるを得なかった。
トップ と各対象者が膝をつき合わせて話し合った末、 彼等を関連会社の顧問というかたちで、低報 酬ながら再雇用することで決着をつけた。
事業部制は機能しているか これらの実施項目は今回のプロジェクトで実 施したうちのごく一部に過ぎない。
それだけ D社の改革は広範囲にわたるものであり、な かには難航したテーマも少なくなかった。
当初 は一年をメドとしていた事業部制廃止の時期 は結局三カ月オーバーすることになった。
それ でもS社長の強いリーダーシップによって計画 は実行に移されたのであった。
一連の改革によって、D社の組織は簡素化 された。
人事面も大きく刷新された。
その結 果、従来は各事業部が囲い込んでブラックボッ クス化していた、クレーム処理やイレギュラー 対応、執行管理のやり方などが解明されたの であった。
物流コストは、対売上高支払い物流費比率 が従来の二・二%から一・八五%に抑制され た。
金額にして一億二〇〇〇万円のコストダ ウンである。
事業部制とエリア制、組織の集中と分散に は、絶対的な正解はない。
実際の経営において、 組織体制とは環境の変化に応じて振り子のよう に変化するものであろう。
しかし、最近の傾向 としては、D社のように事業部制が機能不全を 起こしているケースが増えているように感じて いる。
とりわけ組織が成熟していない、事業部単位 の売上規模が小さい、組織横断的な管理機能が 不在もしくは不十分だといった問題を感じてい る場合には、物流改善というレベルだけでなく、 会社全体の組織体制から、そのあり方について 検討を加える必要があるだろう。
あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89 年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp
