2010年11月号
SOLE
SOLE
米ダラスの米SOLE年次総会報告一〇年後のロジスティシャンを考える
SOLE 日本支部フォーラムの報告
The International Society of Logistics
NOVEMBER 2010 72
SOLEの年次総会「SOLE
2 0 1 0コンファレンス」が八月
一七日から一九日にかけ、テキサス
州ダラスにて開催された。
今回は、 「グローバル・ロジスティクス・サス テナビリティ」をメーン・テーマと して、米国防総省(Department of Defense :DoD)を筆頭に、産・ 官・学の要人が出席した。
日本支部 からも会員を派遣して情報を収集す るとともに、プレゼンテーションを実 施し情報発信を行ってきた。
(SOLE日本支部幹事、日本ロジ スティクス研究所 上村聖) イントロダクション 今年のキーワード「サステナビリティ」 今年のメーン・テーマは、「グロー バル・ロジスティクス・サステナビリ ティ」である。
その重要性について は疑う余地がないものの、掴みどこ ろのないテーマである。
しかし、主 要セッションのテーマ(図)や、以 下に取り上げたその他のセッション のテーマを眺めて見ると、何となく 枠組みが定まってくる。
● 世界の舵取りとしてのロジス ティクス(The Logistics of Global Stewardship) ●デザイニングとサステナビリティ (Designing and Sustainability) ●全体として値ごろ感のあるデザイ ン(Design for Total Affordability) ●リスクマネジメントによる保持能力 (Sustaining Capability through Risk Management) ● 情報共有と情報保護でのトレー ドオフ (Tradeoffs in Information S h a r i n g a n d I n f o r m a t i o n Protection) ●二〇二〇年のロジスティシャンを 定義して育てること(Defining and Growing the 2020 Logistician) ●将来の新しい構造(New Structures for the Future) 総会概況 産官学の二百数十人が出席 年次総会は毎年八月にアメリカで 開催されている。
今年は昨年に引き 続いてダラスでの開催となった。
ダラスはケネディ大統領が暗殺さ れた都市として知られているが、気 候についてご存知の方は少ないだろ う。
今年の日本は大変な猛暑だった ので、アメリカに行けば少しは過ご しやすい気候になることを期待して いたのだが、連日摂氏四〇度を超え る酷暑が待ち受けているとは、想像 もしていなかった。
結果として会議 の開催中、ほとんど会場となってい たホテルの中で過ごすことになった。
会場はダラス郊外にあるオムニ・ マンダレイ(Omni Mandalay)ホテ ルである。
ダラスはアメリカのほぼ 中心部にあり、アメリカン航空のハ ブでもあるため、アクセスの良さも あってか来年もここで開催されるこ とが決まっている。
今年の参加者は金融危機の影響 もあるのだろうか、例年より少ない 二百数十人程度で、顔なじみも多く、 家庭的な雰囲気に包まれての会議だっ た。
少し寂しかったのは、例年と違っ てアジア各国からの参加者がほとん ど見られなかったことである。
たま たま参加したセッションが別だった だけかもしれないが、東京支部のメ 今回の会議で一番印象に残ったのは、ロバート・D・ マテルナ教授の「2020 年のロジスティシャンに求められ る8つの資質」である。
●リーダー ●ビジネスを知り尽くしているビジネスパーソン ●自分の専門分野のチャンピオン ●問題を解決出来る人 ●リスクを取れる人 ●組織の良き代弁者となれる人 ●リレーションシップ・マネジャー ●メンター(指導者、助言者) さらに、法律とファイナンスの知識が必要とのことで あったが、2010 年のロジスティシャンである読者の皆 様はいくつクリアしただろうか?もちろん、私も10 年後に 向けて頑張ろうと決意を新たにした一人である。
2020年のロジスティシャンに求められる 8つの資質 今回のトピックス 米ダラスの米SOLE年次総会報告 一〇年後のロジスティシャンを考える 73 NOVEMBER 2010 Eで勤務した後、フォードを経て再 びGM入りし、ディーゼルエンジンの 開発から燃料電池の担当となった。
チャールズ氏によると、GMはエ コに向けた新しい代替エネルギーに 関するソリューションを目指し、安 全性を重視しながら燃料電池の開発 に取り組んでいる。
同様の取り組み はアメリカのほか日本、欧州、中国、 インドも進めており、現在では水素 エネルギーが焦点となってきている という。
同氏は近年は欧米や日本だけでな く、中国やインドでも急激にエネル ギーの消費量が増えている一方、欧 米と日本はエコを追求し始めている と指摘した上で、二〇五〇年の時点 では、全自動車のうち八〇%が電気 自動車を含めクリーンエネルギーを利 用したエコ自動車になるとの予想を 述べた。
また、現在GMが開発中の水素自 動車は、レアメタルが大量に必要な ためバッテリーの価格が高いが、三 分で急速にチャージが可能であると いう。
電気自動車は充電時間が八時 間も必要で、現段階では長距離用に は向いていない。
ただ、携帯電話の 進化の例でも明らかなように、近い 将来小型化・高性能化が必ず実現す るとしていた。
水素の燃料電池車については、G 内容としては、「3PL企業の存 続のためには、顧客に提案営業ので きる優秀な人材が不可欠であり、い かに人材育成を行うかが重要である。
座学中心の公開セミナーの問題点を 示し、個別企業にカスタマイズした 実践的なプログラムを紹介し、その 有効性について、アンケート等の結 果を交えて明らかにした」というも のである。
今回の会議の実行委員長ジョン・ J・エルブ(John J. Erb)氏も心配 だったのか(?)、発表を聞きに来 てくださり、良いプレゼンテーション だったとのコメントを直接頂いたの をはじめ、多くの参加者より日本の 情報発信に関するお礼の言葉を頂い た。
準備は非常に骨が折れるが、今 後も是非双方向でのコミュニケーショ ンを続けていきたいものである。
第一日基調講演 「Sustainability Issues Facing the Global Logistics Community(グロー バルなロジスティクス・コミュニティ が直面するサステナビリティ問題)」 前半は、ゼネラルモーターズ(GM) の燃料電池担当役員、チャールズ・ フリーズ(Charles Freese) 氏によ るGMの取り組み事例報告である。
チャールズ氏は二〇年にわたってG 興味に合わせて聴くことになる。
ペー パーセッションでの発表は、主とし て講演者の興味に基づく研究、紹介 であるから内容は多彩である。
本稿では、三日間の基調講演とそ の他のプログラムの中からいくつか を選んで要点をご紹介する。
日本からの情報発信 3PLの人材育成テーマに 従来は情報収集のための参加で あったが、〇八年度に日本支部から 三本のプレゼンテーションを行ったの に続き、今回はサステナビリティの観 点から、「日本の3PL企業の人材 育成」について筆者が情報発信を行っ てきた。
ンバー以外ではスポンサー企業の駐 在員の日本人と中国人の各一人とし か、顔を合わせなかった。
参加者の ほとんどは米国内からであり、所属 は産、官、学と幅広いが、やはりD oDからの参加者の存在感が大きい。
三日間の会議は、各日ともに基調 講演と全体会議、パネルディスカッ ション、ペーパーセッションなどで構 成される。
午前中には基調講演と全 体会議に続き、一つ目のパネルディ スカッションが行われた。
午後は二 つ目のパネルディスカッションで始ま り、その後のペーパーセッションは同 時並行で実施される四トラックに分 かれ、各々三〜四つの発表から構成 されるトラックのいずれかを自分の 基調講演 1日目 図1 主要セッションのテーマ 全体会議 グローバルなロジ スティクス・コミュ ニティが直面する サステナビリティ 調達改革の時代 における製品サ ポートのあり方 2日目 宇宙のサステナビ リティ:ミッション・ ポッシブル ロジスティクス企 業のサステナビリ ティ 3日目 ロジスティクスの透 明性と責任説明 官民のパートナー シップ プレゼンテーションを行う筆者 NOVEMBER 2010 74 き明かしたいと考えた。
例えばビッ クバンが起こった時期は、ハッブル が打ち上げられる前の通説とは一ケ タ違うことが解明されている。
これ により、世界中の教科書の内容が変 わり、子供たちに宇宙の神秘を解き 明かすことができた」とハッブルの 意義を説明した上で、「NASAの スペースシャトルプログラムが終了す るため、これからの修理は簡単では ない。
今後は国際宇宙ステーション からロボットによる修理を行う。
ロ ボットのアームにより、電池の切れ た宇宙ゴミの回収も行うなど、アメ リカの宇宙開発の流れはまだまだ続 いていく」と締め括った。
第三日基調講演 「Transparency and Accountability in Logistics(ロジスティクスの透明 性と説明責任)」 米国土安全保障省(Department of Homeland Security :DHS)の リチャード・L・スキナー(Richard L. Skinner)氏による、ハリケーン・ カトリーナ以降の最近の取り組みに 関する講演である。
DHSの本来の仕事は大災害発生 時の事後処理、被害者の安全確保、 フィジカル&メンタルのケアである。
しかし、カトリーナの例にもあった 中心とした発表を行った。
ハッブル望遠鏡は宇宙の謎の解明、 国防、子供に夢を与える、など複数 の目的で打ち上げられた。
セポリー ナ氏によると、現在、アメリカでは 四〇〇基近い衛星が打ち上げられて 地球の上空を回っており、そのうち 国のものは一〇〇基以上ある。
ハッ ブルは打ち上げて終わりではなく、 定期的にメンテナンスが行われてお り、累計のメンテナンス費用は打ち 上げ費用を上回るほどであるという。
宇宙のロジスティクスでは、メン テナンスが非常に重要である。
今回 の会議はサステナビリティがテーマ でもあるので、セポリーナ氏はメン テナンスの重要性を強調していた。
ハッブル望遠鏡については、初回の 一九九三年以降、四、五年おきにス ペースシャトルによってメンテナンス を行ってきた。
宇宙空間を超高速で 移動しているハッブルをシャトル自ら も移動しながら捕らえるという、難 易度の高い作業である。
その際、メンテナンスだけではな く、様々な新しい技術を取り入れた リニューアルも行われる。
技術開発 も日進月歩で進んでおり、ようやく ハッブルに搭載した際には、既に古 くなっているような状態であるという。
セポリーナ氏は「アメリカはハッブ ルによって、宇宙の未知の部分を解 例えば、武器の溶接部分には鉛が 使用されているが、廃棄されると最 も危ないことが分かってきているに もかかわらず、対応が追いついてい ない。
クニフ氏は「(難易度が高いの は承知の上だが)官民問わず、サプ ライチェーンの中で有害物質を使用 しない取り組みは最優先で行われる べきである」と訴えた。
第二日基調講演 「Sustainability in Space: Mission Possible(宇宙のサステナビリティ: ミッション・ポッシブル)」 N A S Aのフランク・J・セポ リーナ(Frank J. Cepollina) 氏が 「ハッブル望遠鏡」を題材に、映像を Mは現在世界中で八〇人のテストド ライバーを投入し、一二〇台の試運 転を行っている。
テスト車種は小型 車からトラックまで揃えており、テ スト走行では通常の自動車と同じよ うに事故が起きる場合もあるが、特 に大きな問題は発生していないとい う。
ドイツでは約一二〇億円を掛け、 テストのための補給( 給油所) を 四〇〜五〇カ所整備した。
チャールズ氏は結論として、「水素 の燃料電池車は商業ベースに乗りつ つあり、世界各地にインフラが整い つつあるが、安定した政府の政策が カギである」と述べ、講演を終えた。
後半では、ケミカル・アンド・マ テリアル・リスクマネジメント社取締 役のシャノン・E・クニフ(Shannon E. Cunniff)氏による、リスクマネジ メントに関する問題提起があった。
現在、EU向けの製品には、EU の「RoHS(ローズ:特定有害物質 の使用規制)」、「REACH(リーチ: 化学物質の使用規制)」規制への対 応が求められている。
しかしクニフ 氏によると、実態としては、軍の使 用する様々な液体、化学物質のうち、 きちんと検証されているのは二〇% 程度に過ぎない。
さらに、使用時点 の有害性に加え、将来の環境に与え るネガティブな状況は調査中である という。
大会実行委員長のジョン・J・エルブ氏(写真右端) 75 NOVEMBER 2010 通り、連邦政府、州政府、郡政府、 市など官同士の連携の道筋がついて いなかったため大混乱してしまった という。
そこで、次に災害が起こっ た際にいかに連携していくかという 仕組みを作っており、救援物資、車 両の采配などロジスティシャンの活躍 の場が多いとのことである。
また、スキナー氏は、政府と民間 業者との契約に関する透明性の確保 についても説明した。
「契約に関す る透明性は重要で、税金が正しく使 用されているという確証にも繋がる」 という。
例えば米政府は最近、契約情報を 提供する二つのウェブサイトを開設 した。
それらのサイトでは十三万社 との契約を検索でき、自分の住む地 域の道路についての契約情報まで閲 覧することが可能となっている。
請 負業者の信頼度チェックも重要との 考えで、不具合のあった業者の情報 も共有できるようにしている。
同氏 は「不況からのリカバリーには透明 性と情報公開、情報の信頼度が特に 要求されるのではないか」と主張した。
パネルディスカッションより 「二〇二〇年のロジスティシャン (The 2020 Logistician)」 産官学のパネリストがそれぞれの 立場から推測していたので、とても 興味深い内容であった。
各パネリス トの意見を紹介する。
■フロリダ州陸軍州兵部隊(Army National Guard) のポール・B・ チョンシー(Paul B. Chauncey)氏 ・新しいコミュニケーションツールが 取り入れられて、情報収集の範囲 が広がっていく ・世界中のロジスティシャンが個人的 な見解によってさまざまな決定が できる ・今後、サステナビリティやグリーン な環境を支援できるようになるだ ろう ■DHSのジョセフ・L・スプルー ル(Joseph L.Spruill)氏 ・自治体間のあちこちでストーブパイ プを繋ぐのではなく、パイプを横 で繋ぐことができる。
つまり、横 の連携が可能になる。
・システムエンジニアの仕事に近づく ・裏方ではなく、表舞台でSEと肩 を並べるような活躍が期待される ■大学教授のキャサリン・A・エル ダー(Catherine A.Elder)氏 ・ウエストバージニア州では、ロジス ティクスを専攻する学生の昨年の 卒業生のうち、就職できなかった 者の割合は四〇%に上った ・ロジスティシャンにはアカデミック な教育を施し、資格を与えるべき だ ■大学教授のロバート・D・マテル ナ(Robert D.Materna)氏 ・自分にとってのメンターは(「ロジ スティクス・エンジニアリング&マ ネジメント」等の著作で知られる) B・S・ブランチャード先生 ・次世代のロジスティクスに向けて、 会場の皆さんがメンターとなる気 概を持つことが重要 ・二〇二〇年のロジスティシャンに求 められる八つの資質(「今回のトピッ クス」参照) ■モデレーターのジェームス・H・ バーナード(James H. Barnard)氏 ・六〇年代はスペース、七〇年代は デザインエンジニアリング、八〇年 代はシステムエンジニアリング、そ の後はデザイン、コントロール、モ ニタリングが流行した。
今後は二つ 以上の分野のオーバーラップが求め られるだろう(ロジスティクスとS E、ロジスティクスとSCMなど) ・全てのエレメントを理解して、筋 道を作っていける人。
パズルと一 緒で、一つでも部品が欠ければ完 成できない ・今年のBPの事故(メキシコ湾原油 流出事故)はロジスティクスの失敗 であり、その後の復旧対応もまた ロジの仕事である。
このような事 故が発生すればロジスティシャンが 責められることになる。
ユニーク で戦略的なロジスティシャンの立場 を守るためには、自分達の働きが 評価され、収入を得られるように、 機会あるごとにロジスティシャンは こういうものだというのを周りに 見せ続けることが大切ではないか。
例えば、地元のバーベキュー大会を 完璧に運営するなどである(笑) 次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは11月17日(水)防 衛省防衛研究所の東義孝氏による講演 「米国国防省調達ガイドブックの概要」 を予定している。
このフォーラムは年 間計画に基づいて運営しているが、単 月のみの参加も可能。
1回の参加費は 6,000円。
ご希望の方は事務局(solej- offi ce@cpost.plala.or.jp)までお問 い合わせください。
※SOLE(The International Society of Logistics)は一九六〇年代に設立されたロ ジスティクス団体。
米国に本部を置き、会 員は五一カ国・三〇〇〇〜三五〇〇人に 及ぶ。
日本支部では毎月「フォーラム」を 開催し、講演、研究発表、現場見学など を通じてロジスティクス・マネジメントに 関する活発な意見交換、議論を行っている。
今回は、 「グローバル・ロジスティクス・サス テナビリティ」をメーン・テーマと して、米国防総省(Department of Defense :DoD)を筆頭に、産・ 官・学の要人が出席した。
日本支部 からも会員を派遣して情報を収集す るとともに、プレゼンテーションを実 施し情報発信を行ってきた。
(SOLE日本支部幹事、日本ロジ スティクス研究所 上村聖) イントロダクション 今年のキーワード「サステナビリティ」 今年のメーン・テーマは、「グロー バル・ロジスティクス・サステナビリ ティ」である。
その重要性について は疑う余地がないものの、掴みどこ ろのないテーマである。
しかし、主 要セッションのテーマ(図)や、以 下に取り上げたその他のセッション のテーマを眺めて見ると、何となく 枠組みが定まってくる。
● 世界の舵取りとしてのロジス ティクス(The Logistics of Global Stewardship) ●デザイニングとサステナビリティ (Designing and Sustainability) ●全体として値ごろ感のあるデザイ ン(Design for Total Affordability) ●リスクマネジメントによる保持能力 (Sustaining Capability through Risk Management) ● 情報共有と情報保護でのトレー ドオフ (Tradeoffs in Information S h a r i n g a n d I n f o r m a t i o n Protection) ●二〇二〇年のロジスティシャンを 定義して育てること(Defining and Growing the 2020 Logistician) ●将来の新しい構造(New Structures for the Future) 総会概況 産官学の二百数十人が出席 年次総会は毎年八月にアメリカで 開催されている。
今年は昨年に引き 続いてダラスでの開催となった。
ダラスはケネディ大統領が暗殺さ れた都市として知られているが、気 候についてご存知の方は少ないだろ う。
今年の日本は大変な猛暑だった ので、アメリカに行けば少しは過ご しやすい気候になることを期待して いたのだが、連日摂氏四〇度を超え る酷暑が待ち受けているとは、想像 もしていなかった。
結果として会議 の開催中、ほとんど会場となってい たホテルの中で過ごすことになった。
会場はダラス郊外にあるオムニ・ マンダレイ(Omni Mandalay)ホテ ルである。
ダラスはアメリカのほぼ 中心部にあり、アメリカン航空のハ ブでもあるため、アクセスの良さも あってか来年もここで開催されるこ とが決まっている。
今年の参加者は金融危機の影響 もあるのだろうか、例年より少ない 二百数十人程度で、顔なじみも多く、 家庭的な雰囲気に包まれての会議だっ た。
少し寂しかったのは、例年と違っ てアジア各国からの参加者がほとん ど見られなかったことである。
たま たま参加したセッションが別だった だけかもしれないが、東京支部のメ 今回の会議で一番印象に残ったのは、ロバート・D・ マテルナ教授の「2020 年のロジスティシャンに求められ る8つの資質」である。
●リーダー ●ビジネスを知り尽くしているビジネスパーソン ●自分の専門分野のチャンピオン ●問題を解決出来る人 ●リスクを取れる人 ●組織の良き代弁者となれる人 ●リレーションシップ・マネジャー ●メンター(指導者、助言者) さらに、法律とファイナンスの知識が必要とのことで あったが、2010 年のロジスティシャンである読者の皆 様はいくつクリアしただろうか?もちろん、私も10 年後に 向けて頑張ろうと決意を新たにした一人である。
2020年のロジスティシャンに求められる 8つの資質 今回のトピックス 米ダラスの米SOLE年次総会報告 一〇年後のロジスティシャンを考える 73 NOVEMBER 2010 Eで勤務した後、フォードを経て再 びGM入りし、ディーゼルエンジンの 開発から燃料電池の担当となった。
チャールズ氏によると、GMはエ コに向けた新しい代替エネルギーに 関するソリューションを目指し、安 全性を重視しながら燃料電池の開発 に取り組んでいる。
同様の取り組み はアメリカのほか日本、欧州、中国、 インドも進めており、現在では水素 エネルギーが焦点となってきている という。
同氏は近年は欧米や日本だけでな く、中国やインドでも急激にエネル ギーの消費量が増えている一方、欧 米と日本はエコを追求し始めている と指摘した上で、二〇五〇年の時点 では、全自動車のうち八〇%が電気 自動車を含めクリーンエネルギーを利 用したエコ自動車になるとの予想を 述べた。
また、現在GMが開発中の水素自 動車は、レアメタルが大量に必要な ためバッテリーの価格が高いが、三 分で急速にチャージが可能であると いう。
電気自動車は充電時間が八時 間も必要で、現段階では長距離用に は向いていない。
ただ、携帯電話の 進化の例でも明らかなように、近い 将来小型化・高性能化が必ず実現す るとしていた。
水素の燃料電池車については、G 内容としては、「3PL企業の存 続のためには、顧客に提案営業ので きる優秀な人材が不可欠であり、い かに人材育成を行うかが重要である。
座学中心の公開セミナーの問題点を 示し、個別企業にカスタマイズした 実践的なプログラムを紹介し、その 有効性について、アンケート等の結 果を交えて明らかにした」というも のである。
今回の会議の実行委員長ジョン・ J・エルブ(John J. Erb)氏も心配 だったのか(?)、発表を聞きに来 てくださり、良いプレゼンテーション だったとのコメントを直接頂いたの をはじめ、多くの参加者より日本の 情報発信に関するお礼の言葉を頂い た。
準備は非常に骨が折れるが、今 後も是非双方向でのコミュニケーショ ンを続けていきたいものである。
第一日基調講演 「Sustainability Issues Facing the Global Logistics Community(グロー バルなロジスティクス・コミュニティ が直面するサステナビリティ問題)」 前半は、ゼネラルモーターズ(GM) の燃料電池担当役員、チャールズ・ フリーズ(Charles Freese) 氏によ るGMの取り組み事例報告である。
チャールズ氏は二〇年にわたってG 興味に合わせて聴くことになる。
ペー パーセッションでの発表は、主とし て講演者の興味に基づく研究、紹介 であるから内容は多彩である。
本稿では、三日間の基調講演とそ の他のプログラムの中からいくつか を選んで要点をご紹介する。
日本からの情報発信 3PLの人材育成テーマに 従来は情報収集のための参加で あったが、〇八年度に日本支部から 三本のプレゼンテーションを行ったの に続き、今回はサステナビリティの観 点から、「日本の3PL企業の人材 育成」について筆者が情報発信を行っ てきた。
ンバー以外ではスポンサー企業の駐 在員の日本人と中国人の各一人とし か、顔を合わせなかった。
参加者の ほとんどは米国内からであり、所属 は産、官、学と幅広いが、やはりD oDからの参加者の存在感が大きい。
三日間の会議は、各日ともに基調 講演と全体会議、パネルディスカッ ション、ペーパーセッションなどで構 成される。
午前中には基調講演と全 体会議に続き、一つ目のパネルディ スカッションが行われた。
午後は二 つ目のパネルディスカッションで始ま り、その後のペーパーセッションは同 時並行で実施される四トラックに分 かれ、各々三〜四つの発表から構成 されるトラックのいずれかを自分の 基調講演 1日目 図1 主要セッションのテーマ 全体会議 グローバルなロジ スティクス・コミュ ニティが直面する サステナビリティ 調達改革の時代 における製品サ ポートのあり方 2日目 宇宙のサステナビ リティ:ミッション・ ポッシブル ロジスティクス企 業のサステナビリ ティ 3日目 ロジスティクスの透 明性と責任説明 官民のパートナー シップ プレゼンテーションを行う筆者 NOVEMBER 2010 74 き明かしたいと考えた。
例えばビッ クバンが起こった時期は、ハッブル が打ち上げられる前の通説とは一ケ タ違うことが解明されている。
これ により、世界中の教科書の内容が変 わり、子供たちに宇宙の神秘を解き 明かすことができた」とハッブルの 意義を説明した上で、「NASAの スペースシャトルプログラムが終了す るため、これからの修理は簡単では ない。
今後は国際宇宙ステーション からロボットによる修理を行う。
ロ ボットのアームにより、電池の切れ た宇宙ゴミの回収も行うなど、アメ リカの宇宙開発の流れはまだまだ続 いていく」と締め括った。
第三日基調講演 「Transparency and Accountability in Logistics(ロジスティクスの透明 性と説明責任)」 米国土安全保障省(Department of Homeland Security :DHS)の リチャード・L・スキナー(Richard L. Skinner)氏による、ハリケーン・ カトリーナ以降の最近の取り組みに 関する講演である。
DHSの本来の仕事は大災害発生 時の事後処理、被害者の安全確保、 フィジカル&メンタルのケアである。
しかし、カトリーナの例にもあった 中心とした発表を行った。
ハッブル望遠鏡は宇宙の謎の解明、 国防、子供に夢を与える、など複数 の目的で打ち上げられた。
セポリー ナ氏によると、現在、アメリカでは 四〇〇基近い衛星が打ち上げられて 地球の上空を回っており、そのうち 国のものは一〇〇基以上ある。
ハッ ブルは打ち上げて終わりではなく、 定期的にメンテナンスが行われてお り、累計のメンテナンス費用は打ち 上げ費用を上回るほどであるという。
宇宙のロジスティクスでは、メン テナンスが非常に重要である。
今回 の会議はサステナビリティがテーマ でもあるので、セポリーナ氏はメン テナンスの重要性を強調していた。
ハッブル望遠鏡については、初回の 一九九三年以降、四、五年おきにス ペースシャトルによってメンテナンス を行ってきた。
宇宙空間を超高速で 移動しているハッブルをシャトル自ら も移動しながら捕らえるという、難 易度の高い作業である。
その際、メンテナンスだけではな く、様々な新しい技術を取り入れた リニューアルも行われる。
技術開発 も日進月歩で進んでおり、ようやく ハッブルに搭載した際には、既に古 くなっているような状態であるという。
セポリーナ氏は「アメリカはハッブ ルによって、宇宙の未知の部分を解 例えば、武器の溶接部分には鉛が 使用されているが、廃棄されると最 も危ないことが分かってきているに もかかわらず、対応が追いついてい ない。
クニフ氏は「(難易度が高いの は承知の上だが)官民問わず、サプ ライチェーンの中で有害物質を使用 しない取り組みは最優先で行われる べきである」と訴えた。
第二日基調講演 「Sustainability in Space: Mission Possible(宇宙のサステナビリティ: ミッション・ポッシブル)」 N A S Aのフランク・J・セポ リーナ(Frank J. Cepollina) 氏が 「ハッブル望遠鏡」を題材に、映像を Mは現在世界中で八〇人のテストド ライバーを投入し、一二〇台の試運 転を行っている。
テスト車種は小型 車からトラックまで揃えており、テ スト走行では通常の自動車と同じよ うに事故が起きる場合もあるが、特 に大きな問題は発生していないとい う。
ドイツでは約一二〇億円を掛け、 テストのための補給( 給油所) を 四〇〜五〇カ所整備した。
チャールズ氏は結論として、「水素 の燃料電池車は商業ベースに乗りつ つあり、世界各地にインフラが整い つつあるが、安定した政府の政策が カギである」と述べ、講演を終えた。
後半では、ケミカル・アンド・マ テリアル・リスクマネジメント社取締 役のシャノン・E・クニフ(Shannon E. Cunniff)氏による、リスクマネジ メントに関する問題提起があった。
現在、EU向けの製品には、EU の「RoHS(ローズ:特定有害物質 の使用規制)」、「REACH(リーチ: 化学物質の使用規制)」規制への対 応が求められている。
しかしクニフ 氏によると、実態としては、軍の使 用する様々な液体、化学物質のうち、 きちんと検証されているのは二〇% 程度に過ぎない。
さらに、使用時点 の有害性に加え、将来の環境に与え るネガティブな状況は調査中である という。
大会実行委員長のジョン・J・エルブ氏(写真右端) 75 NOVEMBER 2010 通り、連邦政府、州政府、郡政府、 市など官同士の連携の道筋がついて いなかったため大混乱してしまった という。
そこで、次に災害が起こっ た際にいかに連携していくかという 仕組みを作っており、救援物資、車 両の采配などロジスティシャンの活躍 の場が多いとのことである。
また、スキナー氏は、政府と民間 業者との契約に関する透明性の確保 についても説明した。
「契約に関す る透明性は重要で、税金が正しく使 用されているという確証にも繋がる」 という。
例えば米政府は最近、契約情報を 提供する二つのウェブサイトを開設 した。
それらのサイトでは十三万社 との契約を検索でき、自分の住む地 域の道路についての契約情報まで閲 覧することが可能となっている。
請 負業者の信頼度チェックも重要との 考えで、不具合のあった業者の情報 も共有できるようにしている。
同氏 は「不況からのリカバリーには透明 性と情報公開、情報の信頼度が特に 要求されるのではないか」と主張した。
パネルディスカッションより 「二〇二〇年のロジスティシャン (The 2020 Logistician)」 産官学のパネリストがそれぞれの 立場から推測していたので、とても 興味深い内容であった。
各パネリス トの意見を紹介する。
■フロリダ州陸軍州兵部隊(Army National Guard) のポール・B・ チョンシー(Paul B. Chauncey)氏 ・新しいコミュニケーションツールが 取り入れられて、情報収集の範囲 が広がっていく ・世界中のロジスティシャンが個人的 な見解によってさまざまな決定が できる ・今後、サステナビリティやグリーン な環境を支援できるようになるだ ろう ■DHSのジョセフ・L・スプルー ル(Joseph L.Spruill)氏 ・自治体間のあちこちでストーブパイ プを繋ぐのではなく、パイプを横 で繋ぐことができる。
つまり、横 の連携が可能になる。
・システムエンジニアの仕事に近づく ・裏方ではなく、表舞台でSEと肩 を並べるような活躍が期待される ■大学教授のキャサリン・A・エル ダー(Catherine A.Elder)氏 ・ウエストバージニア州では、ロジス ティクスを専攻する学生の昨年の 卒業生のうち、就職できなかった 者の割合は四〇%に上った ・ロジスティシャンにはアカデミック な教育を施し、資格を与えるべき だ ■大学教授のロバート・D・マテル ナ(Robert D.Materna)氏 ・自分にとってのメンターは(「ロジ スティクス・エンジニアリング&マ ネジメント」等の著作で知られる) B・S・ブランチャード先生 ・次世代のロジスティクスに向けて、 会場の皆さんがメンターとなる気 概を持つことが重要 ・二〇二〇年のロジスティシャンに求 められる八つの資質(「今回のトピッ クス」参照) ■モデレーターのジェームス・H・ バーナード(James H. Barnard)氏 ・六〇年代はスペース、七〇年代は デザインエンジニアリング、八〇年 代はシステムエンジニアリング、そ の後はデザイン、コントロール、モ ニタリングが流行した。
今後は二つ 以上の分野のオーバーラップが求め られるだろう(ロジスティクスとS E、ロジスティクスとSCMなど) ・全てのエレメントを理解して、筋 道を作っていける人。
パズルと一 緒で、一つでも部品が欠ければ完 成できない ・今年のBPの事故(メキシコ湾原油 流出事故)はロジスティクスの失敗 であり、その後の復旧対応もまた ロジの仕事である。
このような事 故が発生すればロジスティシャンが 責められることになる。
ユニーク で戦略的なロジスティシャンの立場 を守るためには、自分達の働きが 評価され、収入を得られるように、 機会あるごとにロジスティシャンは こういうものだというのを周りに 見せ続けることが大切ではないか。
例えば、地元のバーベキュー大会を 完璧に運営するなどである(笑) 次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは11月17日(水)防 衛省防衛研究所の東義孝氏による講演 「米国国防省調達ガイドブックの概要」 を予定している。
このフォーラムは年 間計画に基づいて運営しているが、単 月のみの参加も可能。
1回の参加費は 6,000円。
ご希望の方は事務局(solej- offi ce@cpost.plala.or.jp)までお問 い合わせください。
※SOLE(The International Society of Logistics)は一九六〇年代に設立されたロ ジスティクス団体。
米国に本部を置き、会 員は五一カ国・三〇〇〇〜三五〇〇人に 及ぶ。
日本支部では毎月「フォーラム」を 開催し、講演、研究発表、現場見学など を通じてロジスティクス・マネジメントに 関する活発な意見交換、議論を行っている。
