2010年12月号
特集

第4部 国内物流に踏み込む日系3PL

DECEMBER 2010  24 日本通運 ──全てのニーズに応える  今年六月、日本通運の中国現地法人、日通国際 物流(中国)(以下、日通中国)は、民生輪船グ ループの民生物流と戦略提携を結んだ。
 民生輪船グループは長江水運に強みを持つ大手民 間物流会社だ。
二四〇隻以上の貨物船を擁してお り、そのうち上海〜重慶、成都を結ぶコンテナ船六 〇隻、自動車専用船十一隻を運用するなど、武漢 以西の長江水運においては最大級の規模を誇って いる。
また、重慶を起点として中国内陸部三〇〇 都市に向けた輸送ネットワークも構築しており、内 陸市場の実状にも精通している。
 今回の提携により、日通は内陸部に進出してい る既存の自動車やIT関連の荷主、あるいはこれ から内陸部に進出しようという荷主に対して、長 江を利用した水運サービスの提供が可能になった。
加えて、陸送を含む内陸部輸送全般のサービス強化 に向け、大きな足がかりを掴んだことになる。
 日通グループは現在、中国において三二都市、二 〇法人、一〇〇拠点を展開している。
人員は五〇 〇〇人を数え、自社車両は二五〇台、パートナー輸 送企業の台数を含めれば一〇〇〇台を優に越える。
この陣容を武器に、国際・国内一貫物流を展開し ている。
インフラと実績の両面において、日系物 流企業の中では頭一つ抜けた存在といえる。
 それでも荷物の配送先が二〇〇都市を超えるた め、どうしても自社グループだけではカバーできな い地域も出てくる。
特に内陸部はニーズの新たな勃 興地ということもあり、華北や華東、華南の大都 市圏に比べると手薄な状態にある。
民生輪船グルー プとの提携は、そ の穴を埋める第一 歩だ。
 日通中国の森 哲夫董事社長は 「この二〜三年の 間に『内陸部に売 りたい、運びたい』という荷主からの要望が急激 に増えている。
我々は従来から内陸部にも拠点を 展開してきたが、現状ではまだまだ足りない。
し かし、短期間で広い中国を全て網羅するネットワー クを自社グループだけで築くというのは現実的では ない。
目の前のニーズに応えるためには、今回のよ うな有力パートナーとの戦略提携やM&A、資本参 加などが鍵になるだろう」と語る。
 日通グループの内需物流掘り起こしへの取り組み は、内陸部へのテコ入れだけに留まらない。
今年 三月から中国向け通販ビジネス支援のためのワンス トップサービス「NEX@チャイナDMF」を開始 している。
ターゲットは中国マーケットで拡販した い、あるいは新規に参入したい日本の荷主だ。
 具体的には中国最大のEC企業、タオバオが展 開するサイト「淘宝商城」への出店、商品販売、 物流を包括的に支援する。
現地での宅配事業者の 手配や輸出入通関、在庫管理、ECサイトの構築、 コールセンター運営のほか、中国に現地法人が無い 荷主に対しては代理商社の紹介まで手掛ける。
そ れぞれの荷主の中国展開に合わせたプラットフォー ムの組み替えや、中国製商品、日本以外の国から 調達した商品の中国国内向け通信販売への投入に も対応する。
 森董事社長は「中国で物流ビジネスを展開して 国内物流に踏み込む日系3PL  旨味のある国際輸送を獲得するために、利益の薄い国内物 流をカバーする。
そんな日系物流会社の中国事業が大きく変化 している。
日系荷主が中国の内販に本腰を入れるのに歩調を合 わせ、国内物流事業を新たな収益源と位置付ける戦略の転換 が進んでいる。
しかし利益を確保するのは容易ではない。
(石鍋圭、梶原幸絵) 森哲夫董事社長 第4部 特 集 アジア内需の物流 25  DECEMBER 2010 いて感じるが、モノの届け先が段々と変化してきて いる。
以前はメーカーの工場などへ運ぶことが圧倒 的に多かったが、段々と小売り店に届ける機会が増 えてきた。
それがさらに進み、最近では一般消費 者、つまり『 to C』向けの配送が伸びている。
そ こを支援することができれば、我々のビジネスチャ ンスにも繋がる」と新サービスの狙いを説明する。
 日系荷主の場合、現状ではまだネット通販より も直販やブランド戦略を優先させているところが多 い。
それでも「大きな流れは必ずやってくる。
来 るべきフェーズに備えて、今からサービスを確立し ておかなければならない。
ニーズが顕在化してか らスタートしていたのでは遅きに失してしまう」と 森董事社長。
 内販に向けた打ち手を次々に繰り出す一方で、経 営効率化への動きも見せている。
中国は消費大国 として急成長する一方、人件費や燃料費、土地代 をはじめとするコスト要因が高まりつつある。
森社 長は「情報技術を用いた機械化を図り、コストを 吸収する取り組みが必要になる。
我々は既にミルク ランを最適化するソフトや、デジタコ、ドライブレ コーダーなどの導入を進めているが、今後は事務職 などを含む経営の全領域に取り組みの幅を広げな ければならない」と認識している。
山九 ──一般消費財に力点  山九の中国現地法人は現在十三社。
なかでも稼 ぎ頭は、華東地区の中核会社である上海経貿山九 儲運(以下、上海山九)で今期の売り上げは過去 最高の四億五〇〇〇万元にのぼる見込みだ。
山九 の中国ビジネス全体の約三分の一を占めることにな る。
利益も売上と 同様、過去最高額 を記録することが ほぼ確実となって いる。
 「フォワーディ ング」「運送」「倉 庫」「構内物流」の四つのセグメントのうち、上海 山九の好業績を牽引しているのが国内物流を中心 とする「運送」部門だ。
二〇〇五年には三八〇〇 万元に過ぎなかった同部門の売上高は、今期見込 みで一億一〇〇万元にまで拡大している。
リーマン ショックの影響を通期で受けた〇九年でさえ、運送 部門だけは僅かながらも成長を果たしている。
現 在の自社輸送比率は三〇%で、外注が七〇%。
ド ライバーは八〇人で、トラック台数は五〇台となっ ている。
 上海山九の桑田文雄董事総経理は運送部門の好 調の要因を「従来の強みである自動車関連や化学 関連の輸送が堅調だったことに加え、一般消費財 の取り込みも順調に進んだ。
中国マーケットの拡大 が追い風になっている」と説明する。
 運送部門の貨物のうち、四〇%を占めるのが自 動車関連だ。
日系大手ベンダーなどを主要荷主に、 各拠点でのミルクランやJIT対応サービスなど高 度な物流サービスを展開している。
また、化学関連 では輸送に構内作業や機工・メンテナンスを組み合 わせ、化学品企業に包括的なロジスティクス・サー ビスを提供している。
 運送部門の中にあって特に成長著しいのが、そ の他の一般消費財だ。
上海山九の力点は、目下こ の分野に集中していると言ってよい。
全体として 桑田文雄董事総経理 上海市最低賃金額推移 最低賃金(元/月) 上昇率(前回比) 1200 1000 800 600 400 200 0 2005 年2006 年2007 年2008 年2009 年2010 年 150 100 50 0 最低賃金上昇率(前回比) 690 750 840 960 960 1120 109% 109% 112% 114% 100% 117% 2005 年 5 月〜 6 月〜 7 月〜 2006 年 3 月〜 5 月〜 2007 年 11 月〜 2008 年 6 月〜 12 月〜 2009 年 1 月〜 4 月〜 6 月〜 7 月〜 8 月〜 9 月〜 11 月〜 2010 年 4 月〜 0 1 2 3 4 5 6 7 中国の燃料価格推移 平均単価(元/リットル) (価格改定時期) 3.67 3.80 4.03 4.16 4.62 5.12 6.03 5.54 4.67 4.88 5.24 5.71 5.54 5.79 6.50 6.77 DECEMBER 2010  26 の業績が落ち込んだ〇九年はコストダウンを軸に据 えた縮小均衡策が採られたが、今年は一転、積極 的に新規荷主の獲得を推進してきた。
来年はこの 方針をさらに加速させる。
ターゲットは中国人の 旺盛な消費意欲を背景に業績を伸ばしている企業。
その物流を受託することで、自社の成長に拍車を かけていくという。
 上海山九にとって、一般消費財分野における象 徴的な荷主といえるのがヤマハだ。
電子ピアノをは じめとする楽器や音響機器の製造・販売をするヤ マハは今、中国マーケットでの攻勢を強め、業容を 拡大している。
中国の一人っ子政策の影響で、親 が子供の教育に注ぎ込む金額が増大していること などから、品質の高いヤマハの楽器が富裕層を中心 に売れている。
上海山九はヤマハの商品を浦東物 流センターに集約し、そこから中国全土の販売代理 店などに輸送している。
 桑田董事総経理は「上海を中心とする華東地区 には、二〇〇〜三〇〇ほどの日系メーカーが進出 している。
そのうちの八〇社、少なく見ても三〇 社程度には当社の輸送サービスが有効だと判断して いる。
来年はそういった企業を徹底的に回り、国 内物流へのニーズを掘り起こし、ビジネスにつなげ ていきたい」と意気込む。
いわば“第二のヤマハ” を開拓することが今後のミッションだ。
新規荷主が 増えれば増えるほど、既存の荷主の効率化にもつ ながる。
近い将来に輸送部門の売り上げを今の倍 にまで伸ばしたい考えだ。
近鉄エクスプレス ──拡大路線から採算性重視へ  近鉄エクスプレス(KWE)の中国国内物流事 業が黒字体質に生まれ変わり、成長軌道に乗ろう としている。
「四年ほど前から推進してきた業務改 革プロジェクトが実を結び、事業の採算性が大きく 向上した結果だ」とKWEの中国法人、北京近鉄 運通運輸の稲村寿通董事長は説明する。
 KWEの中国事業の歴史は古い。
一九六九年に香 港、八五年に北京に駐在員事務所を構えて以降、中 国全土で大規模な インフラ投資を展 開してきた。
現在 では四四都市に一 〇九拠点、五七の 倉庫を構えるまで になっている。
 もちろんこ れは主力のフォ ワーディング事 業に対応するた めの設備であっ たが、一方で 将来の有望な消 費地への先行 投資という意味 合いもあった。
が、時期尚早に 過ぎた。
KWEの主要荷主であるエレクトロニクス やPC関連の日系企業の多くは、当時はまだ中国 を生産拠点としてしか考えておらず、現地に売り 込もうという意識は希薄だった。
 KWEは営業の対象を中国国内メーカーにまで 広げるほかなかった。
当然のように地場の運送会 社との過当競争を強いられる。
それでも規模を拡 大する道を選んだ。
稲村董事長は「地場運送会社 と我々との運賃には一・五倍ほどの開きがあった。
無理を承知でそこを取りにいくのだから、利益が 出るはずもなかった」と当時を振り返る。
 その言葉通り、事業規模こそ狙い通り年々拡大 していったが利益を確保するには遠く及ばず、国 内物流事業は赤字体質に陥った。
それでも事業を 継続できたのは、その損失を補って余りあるほど フォワーディング事業と保税物流事業が、輸出入貨 物量の拡大を追い風にして順調に業績を伸ばして いたからだ。
 しかしフォワーディング事業の成長スピードの鈍 化によって、国内物流事業の非効率性が俎上に乗せ られるようになっていった〇八年のリーマンショッ 稲村寿通董事長 運送部門は前年比20%前後の 成長を遂げている 更なる飛躍のため、今後は 新たな拠点展開も視野に 自社輸送のほか、現在ではパートナーへの委託も 進めている 特 集 アジア内需の物流 27  DECEMBER 2010 クがそれに追い打ちをかけた。
拡大路線から採算 性重視へのシフトチェンジが国内物流事業の急務と なった。
 既に四年前の〇六年から業務改革プロジェクトは スタートしている。
外部のコンサルタントを起用し て問題の抽出から始めた。
まず着手したのが適正 な人員体制の構築だ。
配車業務の精度向上や外部 の人材を活用することで、これまでに合計五〇〇 人のスタッフを削減した。
現在の人員は一四〇〇人 あまりとなっている。
 次に不採算業務は請け負わないという方針を明 確にした。
稲村董事長は「我々の物流品質を認め てくれる企業にサービスを提供していく。
やはり日 系物流企業である以上、コスト競争で勝利するのは 不可能だ。
決して荷主企業を選んでいるわけでは ないが、結果として日系や欧米企業が主体になっ ている」と説明する。
 いま特に力を入れているのが、配送協力会社と の連携強化 だ。
従来は帰 り荷が無くて も自社車両で 運ぶケースが 多かったが、 その体制を見 直している。
KWEの各拠 点にその地域 で集荷力のあ る有力配送会 社に事務所を 開設してもら い、彼らに配送を依頼する。
KWEが取り扱う荷 物量は減ることになるが、効率的な輸送を志向し ている。
 まだ改革の途上だが、すでに効果は現れている。
〇八年に収支が均衡すると、翌〇九年には黒字を 達成。
今年は人件費高騰の影響を受けて利益額自 体は減るが、なんとか黒字は維持できる見込みだ。
「我々の業務改革プロジェクトと同じタイミングで中 国内需が急速に高まったことが幸いした。
依然と して人件費や燃油費といったコストアップ要因があ るものの、国内物流事業には成長の余力が多く残 されている」(稲村董事長) NYKロジスティクス ──自動車?一本足?から脱却  日本郵船グループの中国現地法人、日郵物流(中 国)(NYKロジスティクス・チャイナ 以下、NL C)の売上高が急速に伸びている。
NLCの藤井 章宏董事・総経理は「一〇年前の設立時の売り上 げ高は一億円ほどだったが、今期は二〇〇億円以 上を見込んでいる。
懸案だった利益率も改善しつ つある」という。
二期ぶりの黒字化も現実味を帯 びてきた。
 同社の主力は自動車の完成車輸送事業で、これ が売上高の半分の一〇〇億円を占めている。
中国 は昨年、自動車の販 売台数が一三〇〇 万台を突破。
アメリ カを抜いて世界一 位に躍り出ている。
今年はさらに増え て一七〇〇万台に 達する見込みだ。
 この追い風を受け て、NLCの主要荷 主である各自動車 メーカーも総じて中 国での業績を伸ばし ている。
当然、NL Cへの物流ニーズも 膨らむ一方だ。
この 需要に応えるため、 今年に入ってカート レーラー一〇〇台を新たに増設。
合計一〇〇〇台 体制で対応している。
 完成車輸送事業のほかに、NVOCC(海上 フォワーディング)、バイヤーズ・コンソリデーショ ン(買付け物流)、中国国内物流(完成車以外)の 三事業を展開している。
売上高はほぼ均等に三分 の一ずつとなっている。
なかでも今後の成長のエン ジンと位置付け力を注いでいるのが、最も内需勃 興の恩恵を受ける国内物流事業だ。
 藤井董事・総経理は「国内物流事業を伸ばすた め、三つのキーワードを掲げている。
『新ルート』 『新モード』『新コモディティ』だ。
この三つを開拓 していくことが現在の最重要ミッション」と語る。
 新ルートとは従来の沿海地域を網羅する“縦”の ルートではなく、内陸部に伸びていく“横”のルー トを押さえることを意味する。
消費意欲の台頭が 目覚ましい内陸部の二級、三級都市に向けて安定 的な輸送経路を開拓していく必要があるという判 断だ。
 新モードとはトラック中心の陸送から、鉄道輸送 や長江を利用した河川輸送の割合を増加させるこ 藤井章宏董事・総経理 07年には浦東新区に4万3600平米の 国内物流専用倉庫を開放した 今後は荷主のIT化へのニーズにも応えていく DECEMBER 2010  28 とを指す。
荷主の物流に対するニーズは多様化して いる。
コストやリードタイムを含め、あらゆるモー ドを組み合わせたサービスを提供していくことが今 後の競争力強化に繋がっていくという。
 最後の新コモディティとは、NLCのメーンであ る自動車関連以外の荷主や荷物を表している。
N LCがこれまで手掛けてこなかった新たな分野の 荷主を積極的に開拓し、物流を受託しようという のだ。
藤井董事・総経理は、この新コモディティが 特に重要だと強調する。
 「自動車は今後も我々のメーン事業であることに 変わりないが、そこに偏重しすぎるのは事業ポー トフォリオという観点からも好ましくない。
例えば の話だが、電気自動車が一般に普及すればエンジン は不要になる。
それだけで自動車を構成する部品 の数は激減する。
当然、我々のビジネスにも影響を 及ぼすだろう。
そういったリスクを回避するために も、非自動車分野への取り組みは欠かせない」  NLCが本腰を入れて非自動車への取り組みを 開始したのは〇八年からだが、すでにアパレルやコ スメ、建材といった分野での取り込みが進んでい る。
今後、新たに立ち上げを予定している案件も 多いという。
NLCにとって経験のない分野ばか りだが「最も高度な物流技術を求められ、最も厳 しくコスト管理される自動車物流のノウハウを横展 開すれば対応することは充分可能」(藤井董事・総 経理)と判断している。
伊藤忠商事 ──内販物流で先手を打ち続ける  「我々は既に中国国内での面展開において他社に 対してリードしていると思っている。
顧客が内陸部 へ販売を拡大するのに先行して物流網の整備を進 めてきた。
現在、全国各地に置く地域拠点での保 管・配送業務が増加しており、“面”のネットワー クの利用がどんどん進んでいる状況だ」。
伊藤忠商 事物流部門の熊谷俊洋物流ソリューション部長は胸 を張る。
 伊藤忠商事物流部門は日系最大級の中国ネット ワークを持つ。
一〇〇%出資の伊藤忠物流(中国) (以下、ILC)を中核として、主にフォワーディ ングを行う伊藤忠ロジスティクスの現地法人も含め 一〇社を置いて 事業を展開して いる。
拠点はチ ベット自治区を 除く全省の八二 拠点に広がり、総 倉庫面積は五五 万平方メートル以上、従業員数は約三七〇〇人に 達している。
 グループの売上規模は一三〇億円〜一四〇億円。
この数年は年率二〇%成長が続いている。
昨年は 世界同時不況の影響でフォワーディングの売り上げ が落ち込んだが、内販向けの物流事業は順調に伸 びているという。
 同社の内販物流の転機は〇四年。
康師傅(カン シーフ)ブランドで知られる頂新グループの物流子 会社、頂通(開曼島)控股(以下、頂通)に資本 参加した。
頂通の株式の五〇%を取得し、中国国 内のネットワークを一気に拡大した。
 カンシーフは即席麺で圧倒的な認知度を誇り、飲 料でもトップクラスのシェアを持つ。
このため頂通 は中国全土の小売店への物流網を持っていた。
伊 藤忠商事はそのネットワークに自社のノウハウを組 み合わせ、頂通を3PL化した。
 頂通は地域統括会社五社を置き、計六〇拠点を 展開している。
上海などの基幹拠点と全国各地の 地域拠点を幹線輸送で結び、地域拠点では頂新グ ループの貨物をベースカーゴとして外部メーカーや 卸の貨物の共同配送を行う。
主に生活消費財を取 り扱い、量販店、百貨店、専門店の店舗などに全 国で一日当たり六〇万ケースを配送する。
 こうした末端までのネットワークの一元管理が大 きな強みになっている。
中国で全国ネットワークを 持つ物流会社は数少ない。
通常は末端にいけばい くほど委託が繰り返され、荷主にとっては物流が 見えず、コントロールが利きにくくなる。
これに対 して、頂通は傭車を利用していても地域の配送拠 点は自社で運営している。
配車・運行管理、納品 確認、書類管理などの管理業務は握っている。
熊谷俊洋 物流ソリューション部長 NLC の使用車両 コンテナタイプ(25t) カーテンタイプ(10t) ボックス車(5t/8t/10t) ウイング車(10t/12t/15t/18t) 特 集 アジア内需の物流 29  DECEMBER 2010  小売り別・店舗別の納品ルールにも対応してい る。
特に外資系の大手小売業の要求水準は高い。
また、ショッピングモールなどに入居する専門店で は、店舗によって要望が異なることも珍しくない。
 現在、頂新グループ向けの売上比率は四割程度 になっている。
以前は同グループ向けが多くを占め ていたが、それだけ外部荷主が増えている。
これ らの物量を背景とした共同配送によってコストが下 がり、同時にサービスレベルも上がるという好循環 が生まれている。
 今後はこうしたB to Bのネットワークを生かして B to Cの物流業務の開拓も検討する。
各地域の宅 配業者と提携することも考えているという。
通常 のテレビ・インターネット通販だけでなく、小売店 からその先の消費者までを視野に入れて、B to B と連携したB to B to C物流モデルとして小口配送 のネットワークを他社に先行して構築する考えだ。
 ただし、内販物流で収益を確保するのは容易で はない。
人件費は上昇が続き、特に沿岸部での労 働力不足も深刻化している。
倉庫コストも上昇し ている。
藤村俊樹物流ソリューション部部長代行は 「今後はマテハンを導入するなど、システム化・機 械化をさらに進める必要が出てくるだろう。
数年 先を考えると、早めに手を打たなければ間に合わ ない」と指摘する。
 既に情報システ ムの再構築を行っ ている。
これまで 通信環境が整って いなかったことか ら、頂通は地域独 立型の情報システ ムを使用していた。
これをネットワーク型に変更し、 さらに〇八年秋からはマンハッタン・アソシエイツ のWMSを導入している。
中核会社のILCでも 同システムを導入しており、今後はグループ全体の 標準システムとして展開する方針だ。
NECロジスティクス ──中国で外販五割目指す  NECロジスティクスの中国現地法人、日電国 際貨運(上海)の市村安次董事総経理は「中国内 需が急速に伸びているのは確かだが、弊社は現在、 国内物流に力を注ぐ環境下にはない」と語る。
従 来からの強みであるフォワーディングや保税倉庫の 運営、物流園区内のオペレーションに特化し、NE Cグループに貢献する方針だという。
 グループへの貢献と並行して外販にも力を注ぐ。
現在の中国での外販比率は三割ほどだが、将来的 には五割にまで引き上げたい考えだ。
その方法論 も国内物流への注力ではなく、既存の輸出入関連 事業を核とした営業が主体になる。
同社のこうし た方針は、親会社であるNECの中国事業と切り 離して考えることはできない。
 NECが中国に進出したのは一九七二年。
日中 国交正常化に伴い、当時の田中角栄首相が訪中す る姿を生中継するための「移動式衛星ステーショ ン」を受注したことに端を発する。
以降、八〇年 代後半までは輸出主体の事業を展開していた。
 九〇年代にはいると半導体や交換機の生産工場 を次々に設立。
中国で製造した商品を日本や欧米 に向けて出荷・販売し、ビジネスの規模を大きく拡 大した。
同時に、システムインテグレーションの領 域にまでドメインを広げていった。
 二〇〇〇年代 に入ると、今度 は中国市場向け の商売に力を注ぎ 始めた。
携帯電 話やノートパソコ ンを中心とした製 品を中国の消費者に売り、確固たる市場シェアを握 る。
この戦略を実現するため、多額の経営資源を 中国事業に投下し、大々的なマーケティングを展開 した。
 ところが携帯電話、ノートパソコンともに思い描 いたような結果を得ることはできず、二〇〇〇年 代半ばには両事業とも事実上の撤退を余儀なくさ れている。
現在のNECの中国ビジネスの軸足は、 物流ニーズの少ないクラウドサービスに完全にシフ トしている。
 日電国際貨運が設立されたのは〇五年。
ちょう どNECが携帯電話やノートパソコン事業を凍結し たタイミングとリンクする。
設立当初から中国国内 物流を期待されていたわけではなく、国際関連分 野での貢献が使命づけられていた。
 とはいえ、勃興する中国内需に関わるビジネス が視野に入っていないわけではない。
今年十二月、 遼寧省にオープンする予定の日系家電量販店にNE Cが商品を納めることが決まっているが、その物 流の元請けは日電国際貨運が担う。
また、新興の 中国国内メーカーの物流もコスト次第では取りに行 く。
「中国国内物流で急速に商売を広げるのは厳し いと思うが、もともと我々は家電製品を運ぶのは 得意。
チャンスがあればどんどんやりたい」と市村 董事総経理は抱負を語る。
藤村俊樹物流 ソリューション部部長代行 市村安次董事総経理

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