2010年12月号
特集

第8部 中国市場における3PL活用法

DECEMBER 2010  40 中国における物流アウトソーシング  近年中国政府はロジスティクスを戦略的産業の 一つとして位置づけ、マルチモーダル輸送網の構築、 港の改良、大規模な倉庫や配送センターの建設など、 インフラ整備に多額の投資を行っている。
 また中国がアジアにおける主要な物流ハブの一 つとして成長するにつれ、外国企業がロジスティ クス・サービスを提供することへの規制が緩和され、 中国のロジスティクス産業は“フリーマーケット状 態”へと向かいつつある。
 中国でビジネスを展開している企業がロジスティ クスをアウトソーシングする機会が増えてきており、 ロジスティクス・サービスを提供している企業は、 国営・民間・外資を問わずマーケットシェア争い にしのぎを削っている。
中国の3PL市場規模は 一九九九年の五五八億ドルから、一〇年には二倍 以上の一二〇八億ドルになると予測されている。
 しかし、中国における3PLは急速に発展して いるとはいえ比較的新しい産業であり、荷主とプ ロバイダーにはともに学ぶべきことが山積している。
物流業界はいまだ揺籃期にあり、先進諸国のそれ とは大きく様相を異にする。
先進国の3PLとも っとも違うのはおそらく、費用対効果の改善とい う利点をアピールするのが難しいことであろう。
 中国のGDPに占める物流費の割合は、多くの 先進諸国の二倍以上にもなる。
輸送とITのイン フラの未整備、地域の産業保護規制と官僚主義、 有能なロジスティクス・マネジャーの不足、ロジス ティクス・コンセプトの認識不足。
これらはすべ て中国の3PL業界の発展を阻む障害であり、他 の先進国にはあまりないものだ。
高い費用対効果 が実現できないことは、中国に有力なサービス・ プロバイダーが育たない原因ともなっている。
 それでも中国の物流業界の競争が激しさを増し、 3PLの多くはクライアントへの提案内容を見直 さざるをえなくなっている。
近い将来には荷主が 高い費用対効果と長期的成功を得るのに、アウト ソーシングがもっとも効果的なビジネス戦略の一つ となるだろう。
 だが中国におけるロジスティクス・アウトソーシ ングの調査はこれまで、どのようなサービスが外 注されるか、あるいはその理由や利点について問 うだけのものがほとんどであった。
そのため、3 PLがどのようにして業務改善をしていくつもり なのかは判然としてしない。
過渡的段階にある市 場のなかで発展してきたという理由から、中国の 物流アウトソーシングの特徴についてはあまり知ら れていない。
 一般に総合ロジスティクス・サービスとは、荷主 と3PLによるコラボレーティブなサプライチェー ン運営のことであり、そこでは3PLと荷主がパ フォーマンスを向上させるべくITや関連資源を 駆使する。
ITが中国の3PL企業の業績や競争 力の向上に貢献していることはいくつかの実証的 研究が明らかにしているところでもある。
しかし、 コラボレーションとパフォーマンスを改善するのに、 内部および外部の人的資源をいかに活用している かについてはこれまでのところほとんど知られて いない。
 意外なことに、中国の物流業界における人的資 源活用の影響についての調査はあまり行われてい ないのである。
オペレーションマネジメントが個々 の人間関係をきわめて重視する一方、研究者たち 中国市場における3PL活用法  中国市場における3PL とのリレーションシップは“Guanxi =コネ”がモノを言う。
中国に特有のこの商慣習をどう位置 付け、利用するかがロジスティクスのパフォーマンスを大き く左右する。
Haozhe Chen( East Carolina University) Yu Tian( Sun Yat-Sen University, China) Alexander E. Ellinger( The University of Alabama) Patricia J.Daugherty( The University of Oklahoma) ※以下はJournal of Business Logistics, Vol.31, No.2, 2010に掲載された最新 論文「Managing logistics outsourcing relationships : An empirical investi gation in China」を著者の許可を得て 抄訳したものである。
第8部 特 集 アジア内需の物流 41  DECEMBER 2010 は中国独特の商習慣における“Guanxi=関係=コ ネ”を一貫して強調する。
3PL業界では関係性 の質が運営とコストのパフォーマンスを表しており、 3PLと荷主の関係性がよくないと余計なコスト や手間がかかるということを、これまでの研究は 明らかにしている。
 次にわれわれの研究の理論的基礎と、中国の物 流アウトソーシングにおける両者の関係性に関する 仮説を提示する。
理論と仮説  RBV( Resource Based View=内部資源論) 理論に基づいて図1に示した概念モデルは、荷主 と3PLのコラボレーションの前提となる人的資 源の枠組みを示しており、荷主のロジスティクス・ パフォーマンスの改善はそれらがあって初めて達成 されることを表している。
 RBV理論によれば、企業は独自の内部資源を もとに競争をする。
その資源は有形と無形両方あり、 独自に開発する場合と、あるいは市場から調達す る場合がある。
戦略的資源は希少・独自・代替不 可能・貴重といった特徴を持ち、企業のケイパビ リティや競争力の強化に貢献する。
価値を生み出 すが競合他社はあまり持ち合わせない資源やケイ パビリティを駆使すれば、少なくとも一時的な競 争力は手に入る。
それが他社にとって真似ること が難しく代わりの資源も容易に手に入らない場合 には、その競争力は長く保たれる。
 バリューチェーン関連の資源は数多いが、競争 力にもっとも寄与するという点で人的資源こそが 戦略的に重要であると研究者たちは主張する。
そ して研究者たちはロジスティクス・アウトソーシン グという文脈での人的資源のタイプを?経営陣の 支援、?3PLのカスタマーサービス力、?“コネ” の三つに分け、それぞれが荷主と3PLのコラボ レーションとロジスティクス・パフォーマンスに及 ぼす影響を調査している。
経営陣の支援  経営陣にサプライチェーン・オペレーションの持 つ本当の価値とそれが競争力の維持にどれだけ貢 献しているかということについての認識がないケ ースがあまりに多く、そのためロジスティクスには 重きが置かれない傾向が見られる。
 経営陣の支援がサプライチェーンの運営にどう影 響するかということに関しては既に多くの研究が ある。
経営陣の支援が品質改善に決定的な影響を 与えるとする研究もあるし、 あるいは効率的なロジステ ィクス情報システムの構築 に欠かかせないとするもの もある。
しかし残念なが ら西側先進諸国において さえロジスティクスはいま だ経営レベルの重要案件と は見なされておらず、し たがってロジスティクスの アウトソーシング・プロジ ェクトに経営陣が直接関与 するケースは多くない。
 なお、ここでいう経営 陣の支援とは、ロジステ ィクス・アウトソーシング への経営陣の理解、関与、 参加、リーダーシップの発揮を意味する。
支援が あると無いとでは大きな違いが生じる。
経営陣に ロジスティクスの理解者がいる企業は多大なメリッ ト、つまり利益の増大、高い競争力、ロジスティ クスの卓越性などを得ることができる。
 社内外のコラボレーションは強力なリーダーシッ プのもとでのみ機能する。
同様に、サプライチェ ーンにおけるコラボレーションを実現するには経営 陣の関与が不可欠である。
経営陣がロジスティクス・ アウトソーシングに積極的に関与すれば、3PL とのコラボレーションが戦略的・運営的にいかに 重要かということが自ずと理解されることだろう。
そうなれば物流部門は3PLとのコラボレーション に関する権限をもっと与えられ、必要であれば関 係性をより徹底的なレベルにまで引き上げること ができるようになる。
 RBV理論に基づき、ここでわれわれは次の仮 説を提案する。
仮説?  ロジスティクス・アウトソーシングに対する荷主 経営陣の支援は、荷主と3PL間のコラボレーシ ョンに大きな影響を与える。
3PLのカスタマーサービス力  RBV理論でもっとも重要な原則はおそらく、 資源の相違は製品やサービスの性質の違いに由来 するということである。
RBVに関する論文はこ れまで企業の内部資源に関するものが中心であっ たが、いま研究者たちはさまざまなネットワーク を通じて利用できる外部資源の重要性にも着目し 始めている。
外部とのネットワークにしっかり組 図1 概念モデル 荷主側経営陣の 支援 3PL の カスタマーサービス力 荷主─3PL の コラボレーション 荷主のロジスティクス・ パフォーマンス コネ DECEMBER 2010  42 み込まれることは、ケイパビリティの開発とパフォ ーマンス向上に大きく寄与する。
したがって内部 資源としての経営陣の支援を検討することに加え、 荷主と3PLのコラボレーションを強化する外部の 人的資源として、われわれは希少・独自・代替不 可能・貴重な3PLのカスタマーサービス力を挙げ ることにしたい。
 企業間のやり取りが生じる最前線に位置するた め、荷主との窓口となる3PL側の担当者の役割 は重要だ。
しかも昨今のロジスティクス・アウトソ ーシングには、主要顧客ごとにカスタマイズされた 複雑なサプライチェーン・プロセスや最新技術がつ きものである。
そのため3PLの担当者が各荷主 の運営上の課題や要求に精通していることや、荷 主側の担当者と良好な関係を保つことが、差異化 のための重要な資源となる。
 ここでは3PLのカスタマーサービス力を、窓口 となる担当者の経験・知識・態度・コミュニケー ション能力と定義することにしよう。
知識と経験 が豊富な3PL担当者とつき合う中で荷主が3P Lを大事なパートナーと見なすようになるのだと すれば、担当者の専門知識と行動こそが荷主側の コラボレーションへの意欲をかき立てる。
つまり 顧客業務への十分な理解に加え、積極姿勢と高い コミュニケーション能力があることで、荷主側の信 用と信頼を勝ち取ることができるのである。
最近 の調査によれば、中国において荷主は特に3PL のカスタマーサービス力に不満を感じている。
 ここで第二の仮説を提唱しよう。
仮説?  3PLのカスタマーサービス力は荷主と3PL間 のコラボレーションに大きな影響を与える。
?コネ?  中国に進出したり、あるいは中国企業をサプラ イチェーンのパートナーとしている外国企業にとり、 “コネ”の重要性を理解するのはとても重要なこと である。
他のビジネス分野の研究者からは高い関 心を集めているが、SCMとロジスティクスの分 野での実証的研究はまだあまりない。
 ?コネ”とは便益を交換し合う私的な人間関係 のことをいい、関係する個々人のあいだの互恵的 な享受と義務が基本原理である。
ロシアの?blat?、 ハイチの? pratik?、韓国の? chaebol?など、他 の国にも同じような概念が見られるが、“コネ”は いろいろな点で中国文化独自のものである。
たと えばそれを支えるメカニズムや人びとの認識、そ してもっと重要なのはビジネスの場で“コネ”ネ ットワークが日常的に機能することなどである。
 “コネ”はネットワークの一形式として、企業に とり重要な社会資本の一つと考えることもできる。
たとえば企業活動を遂行するために担当者は自分 の個人的人間関係のネットワークを駆使し、それ により企業は他の方法では必ずしも得ることがで きない資源や必要な保護へのアクセスを確保でき るのである。
 本質的に“コネ”は、情実・信用・相互依存性 によって特徴づけられる個人的人間関係の一形式 であり、長期にわたる約束や暗黙の互恵的慣例を 含意する。
社会構造の複雑さといった独特のメカ ニズムに根ざした資源は真似をすることが難しい。
複雑にからみ合った“コネ”ネットワークがある ことで荷主と3PL双方の理不尽な行為が抑制さ れ、サプライチェーンの運営を改善するための企 業同士のコラボレーションが促進されるという面も あるのだ。
仮説?  荷主と3PLの社員同士の?コネ?は両者のコ ラボレーションに大きな影響を与える。
荷主と3PLのコラボレーション  RBV理論の説くところによると、企業は自社 のパフォーマンス向上に寄与する独自のケイパビリ ティが得られるようにアセットと資源を活用する。
最近では3PLとのコラボレーションは荷主企業の ケイパビリティの一種であり、3PLと意思決定 や責任を共有できることが企業の力量であると見 なされるようになっている。
 荷主と3PLの関係性において、荷主は3PL が自分たちのニーズに合うよう設計されたサービス を提供してくれるものと期待する。
3PLは荷主 が持っていないであろう資源とアセットを提供する。
3PLとのコラボレーションによって荷主はプロセ スや業務の統合を進め、資源を効果的に活用でき るようになる。
さらには柔軟性、反応性、学習能 力といった重要な能力の開発も促進される。
ロジ スティクス機能のアウトソーシングをありきたりの サービスとしか考えていない企業にくらべ、3P Lと密接なコラボレーションを行っている企業は市 場と顧客のニーズと変化に対応する能力が高いと いう傾向が見られる。
それゆえ荷主と3PLのコ ラボレーションは企業のパフォーマンス、とりわけ ロジスティクス・パフォーマンスを向上させる際だ ったケイパビリティを表すものといえるのである。
特 集 アジア内需の物流 43  DECEMBER 2010 仮説? 荷主と3PLのコラボレーションは荷主のロジステ ィクス・パフォーマンスに大きな影響を与える。
 次にわれわれの行ったアンケート調査を見てみ よう。
アンケート調査  中国のメーカーの中からランダムに五〇〇社を抽 出し、各社のロジスティクス・マネジャーに質問票 を送った。
そのうち一二四社から有効回答を得た。
質問内容は自社のロジスティクス・アウトソーシン グについての評価、特に主なロジスティクスサービ ス・プロバイダーとの関係と、その関係性によっ て改善されたロジスティクス・パフォーマンスにつ いてである。
質問に対しては「1(まったく同意 できない)」から「7(非常に同意できる)」の中 から当てはまるものを選んでもらった。
 図2に質問内容と各項目に対する回答の平均値、 標準偏差を示す。
 ロジスティクス・アウトソーシングに対する経営 陣の積極的なリーダーシップについてはかなり高い 数値が出ており、三つの質問に対する平均値は五・ 〇五〜五・二七である。
 カスタマーサービス力については3PL担当者の 取り組み姿勢、知識・経験、コミュニケーション 能力について尋ねた。
平均値は四・九六〜五・二 四と、カスタマーサービス力についても高い評価結 果となった。
 “コネ”に関しては確立したスケールが存在しな いため、今回は経営層、ロジスティクス・マネジャー、 現場従業員の各クラスでの個人的人間関係につい て質問をすること にした。
七段階の スケールに対し、回 答者たちは比較的 低い値を選んでい る。
荷主と3 P L の経営層同士が一 番低く三・〇〇、 現場の従業員が三・ 九三となっている。
 荷主と3 P Lの コラボレーションに ついての質問は市 場開拓、新しい取 り組み、自社情報 の開示の三点であ る。
結果からする と( 平均値が四・ 六四〜四・八〇)、 中国における3 P Lと荷主のコラボレ ーションはいまだ低 いレベルに止まって いるといえるだろ う。
 ロジスティクス・ パフォーマンスに関 しては、3 P Lと の協力関係による コスト、リードタイ ム、配送日時の確 実性、ロジスティク 経営陣の支援 それぞれの文章にどの程度同意できるか1 〜 7の数字を選んで下さい。
1.ロジスティクス・アウトソーシングについて、経営陣は戦略の策定に積極的に関与している。
2.ロジスティクス・アウトソーシングについて評価をするため、経営陣は目標と基準を設けている。
3.ロジスティクス・アウトソーシングについて、経営陣は明確なビジョンを持っている。
3PLのカスタマーサービス力 それぞれの文章にどの程度同意できるか1 〜 7の数字を選んで下さい。
1.3PL 側担当者はわれわれの状況を理解するよう努力している。
2.3PL 側担当者は知識・経験を十分に持っている。
3.3PL 側担当者は高いコミュニケーション能力を持っている。
コネ あなたの会社と3PLプロバイダーのあいだの個人的人間関係について、それぞれの文章にどの程度同意できるか1 〜 7の数字を選んで下さい。
1. 経営陣同士が個人的に親しい関係にある。
2.ロジスティクス・マネージャークラス同士が個人的に親しい関係にある。
3. 現場の社員同士が個人的に親しい関係にある。
ユーザーと3PLのコラボレーション それぞれの文章にどの程度同意できるか1 〜 7の数字を選んで下さい。
1.われわれは3PLプロバイダーと協力して市場開拓している。
2.われわれは3PLプロバイダーと協力して新たな取り組みを行っている。
3.われわれは3PLプロバイダーとお互いに自社情報を共有し合っている。
ロジスティクス・パフォーマンス それぞれの文章にどの程度同意できるか1 〜 7の数字を選んで下さい。
1.トータルのロジスティクス・コストを削減した。
2.リードタイムを削減した。
3.デリバリーの確実性が高まった。
4.ロジスティクスのマネジメント能力全般が向上した。
5.14 1.38 5.27 1.43 5.05 1.60 5.24 1.27 4.96 1.47 5.20 1.30 3.00 1.78 3.05 1.72 3.93 1.79 4.77 1.32 4.80 1.48 4.64 1.54 5.24 1.19 5.23 1.10 5.27 1.15 5.10 1.18 回答選択肢(1 〜 7) 1 まったく同意できない 2 同意できない 3 どちらかといえば同意できない 4 どちらともいえない 5 どちらかといえば同意できる 6 同意できる 7 非常に同意できる 図 2 調査結果 平均 標準偏差 DECEMBER 2010  44 スのマネジメント能力全般の改善について質問した。
結果は平均値が五・一〇〜五・二七となった。
まとめと考察  ラングレーその他によるレポート「12th Annual State of Logistics Outsourcing(2007)」は、荷 主企業のロジスティクス担当役員が3PLとのコラ ボレーションを推進したいがそのやり方に苦慮し ていることを報告している。
その中でラングレー らは「3PL業界にとって最大の課題は、荷主と ロジスティクスサービス・プロバイダーのあいだに 密接な協力関係を築き上げ発展させることである」 との提言を行っている。
 3PLに対する荷主の満足度が先進諸国にくら べて比較的低い傾向があり、サービスの対価がか なり高くつく中国や他の新興市場については、荷 主と3PLのコラボレーションを改善させる方法を 見きわめることには特に意義がある。
なぜならそ れは、サービスの選択肢が少なくて品質やサプラ イチェーンの統合のレベルも低いといった、中国の 今の3PL市場が抱える重要な課題の解決策の一 つだからである。
 他の多くの戦略的意思決定と同じく、コラボレ ーションの戦略的意思決定も、利用しうる資源の 内容によって左右される。
内部および外部の人的 資源の影響について、われわれは中国企業と3P Lのコラボレーションを促進する三つの要素、経営 陣の支援、3PLのカスタマーサービス力、そして ?コネ”について述べてきた。
3PLにおける人 的資源のマネジメントについてはこれまであまり 研究されて来なかったため、われわれのこの研究 は他の国のロジスティクス・アウトソーシングにも 大きな示唆を与えるものと期待している。
 高度なコラボレーションが実現しているのは、経 営陣がロジスティクス・アウトソーシングについて 明確なビジョンを持ち、戦略策定に積極的に関与し、 アウトソーシングを評価する基準と目標を設定して いるケースである。
この因果関係は一見恣意的に 思えるかもしれないが、中国では経営層のマネジ メント能力不足のため、メーカーその他の企業が 世界展開をする際に外部のサービス・プロバイダー の専門的能力に頼らざるを得ないことが多いとい う事実からすれば、あながち臆断であるとはいえ ないだろう。
 ロジスティクス・アウトソーシングにおいて経営 陣が果たす決定的役割は他の市場でも同様である。
米国においてさえ、ロジスティクス・パートナーシ ップが不首尾に終わる主な原因の一つとして、経 営陣の積極的関与の欠如があると指摘されている。
 ロジスティクス・アウトソーシングに関する最新 の研究が着目しているのは、経営陣の積極的関与 とリーダーシップの発揮である。
外部プロバイダー との関係構築や、いま現在ある関係の管理統制、 さらにはそうした関係性を全体的に強化しサポー トしていくには、経営陣の支援が必須だというこ とを調査結果は示している。
外部との関係を構築 して活用するには、社内の“力”を味方につけな ければならないということだ。
 外部資源として3PLのカスタマーサービス力を 活用することも同じように重要である。
外部の力 を借りる、つまりアウトソーシングの動機は、荷主 企業が自分たちのケイパビリティを向上させる経験、 知識、優れたやり方等々を会得したいというのが 普通である。
高度なサービスと効率的なオペレーシ ョンを実現するため、3PLの担当者は顧客の要 望と実際の業務に関する専門知識を駆使する。
   3PLのカスタマーサービス力を活用することで、 荷主側はコストも時間もかかる試行錯誤というア プローチを回避できる。
3PLが高度なカスタマ ーサービス力を示すことができれば、荷主側には 3PLとコラボレーションをすることのインセンテ ィブが増える。
外部の人的資源、すなわち3PL のカスタマーサービス力を効率的にマネジメントす ることは、荷主にとり追加的なアセットもしくは 資源と見なすことができる。
 三番目の人的資源である?コネ”は、経営陣の 支援(内部)と3PLのカスタマーサービス力(外 部)を結びつけるものである。
?コネ”、というこ とばには中国特有の含意があるとはいえ、その基 本的な意味合い──個人的人間関係──は多くの 文化に共通する。
荷主と3PL双方の経営陣・ロ ジスティクス・マネジャー・現場作業員などのあ いだに?コネ”や良好な個人的人間関係があると、 通常は開示されない情報を共有し合ったり、ある いは協働しながら市場開拓や新たな試みを行うな どの密接な協力関係にまで発展することが容易に なる。
 従来の研究ではロジスティクス・アウトソーシン グにおける個人レベルの人間関係の影響について 論じられることはほとんどなかったが、われわれ の研究は個人的人間関係(?コネ”)がwin─wi nの関係を作り出すためのお互いの努力によい影 響を与えることを示している。
つまり?コネ”と はコラボレーションを促す文化なのである。
 RBV理論によれば企業とは数多くの資源の集 積である。
われわれはこの考えをロジスティクス・ 特 集 アジア内需の物流 45  DECEMBER 2010 アウトソーシングの文脈に適用した。
しかしなが らわれわれは企業が活用しうるバリューチェーン関 連の無数の資源をことごとく検討するのではなく、 特定の人的資源に着目したのである。
すなわち経 営陣の支援、3PLのカスタマーサービス力、そし て?コネ”である。
 これらの資源はRBV理論が主張する戦略的資 源の基準を満たしており、コラボレーションとの あいだに見られる強い関連性は、これらの三つの 資源が荷主と3PLとのコラボレーションにおいて、 とりわけ希少・独自・代替不可能・貴重という意 味合いをもつことを示唆している。
さらに、特定 の組織的資源に着目するよりも、相補的な資源同 士がいかに関係し合い、適応し、作用するかを広 く検討することの方がより重要であると研究者た ちは主張している。
したがって、三つの人的資源 を相補的な資源の集積として集合的に活用するこ とが、荷主と3PLのコラボレーションをいっそう 強化することにつながるのである。
 われわれが指摘したコラボレーションと荷主のロ ジスティクス・パフォーマンスのあいだの深い関係 性は、アウトソーシング・パートナーとのコラボレ ーションにおける人的資源の重要性をあらためて 浮き彫りにしている。
コラボレーションとロジステ ィクス・パフォーマンスのあいだには深い関係性が あるというこれまでの実証的な研究の知見と同様、 われわれの調査でも3PLとハイレベルのコラボレ ーションを行っていると回答した荷主は、ロジス ティクス・コストとリードタイムの削減、デリバリ ー品質と全体的なロジスティクス・マネジメント能 力の向上を実現している。
 中国を拠点とする3PLの急速な発展にもかか わらず、中国のロジスティクス産業についての研 究はまだ少ない。
具体的にいえば、中国における ベストプラクティス・アウトソーシングの研究が求 められている。
コストとサービス内容に制約があ るため、コラボレーティブなサプライチェーン・ビ ジネスモデルがとりわけ大事な中国において、わ れわれはこのギャップを埋めるべく、サプライチェ ーン・マネジメントの普遍的な課題──コラボレー ションの改善──を検討した。
われわれのこの研 究が、サプライチェーン・コラボレーションを改善 する方法を模索している専門家や研究者の一助と なれば幸いである。
今後の研究課題  当論文は3PL研究の一つとしての価値があり 企業経営に対する重要な示唆を含むとはいえ、適 切な解釈と今後の研究課題を明確化しておくため には、われわれの研究が持つ限界を指摘しておか ねばならない。
研究に利用したデータはすべて中 国をベースとする荷主から得たものである。
中国 の文化と経済環境の特異性を鑑みると、研究結果 を他の文脈にも当てはめて一般化するにあたって は慎重な検討を要する。
提案および検証をした関 連性については他の国々でも妥当するとわれわれ は考えているが、さらなる実証的確認作業があっ てしかるべきであろう。
他の国々における人的資 源の役割について今後の研究が待たれる。
“コネ” は中国に特有のものであるが、他の国々について も個人的人間関係がサプライチェーン・マネジメン トにどのような影響を与えているかを調査するの は意義のあることであろう。
 第二に、集められたのが自己申告データだった ため、回答者自身のバイアスがかかっている可能 性が捨てきれないということである。
サプライチ ェーン・マネジメントについて実証的調査を実施 する際には、適切な情報提供者を選ぶことが原則 である。
しかし今後さらに客観的な基準を得るた めには、他の情報源から情報を集めることも必要 となるだろう。
たとえば、人的資源のマネジメン トに対する見方を比較検討するため3PLと荷主 の双方からデータを集めたり、あるいは企業のパ フォーマンスを適切に評価するために会社の業績 や補足的な財務データを収集することなどである。
 同様に?コネ”、あるいはより広い意味での個 人的人間関係を学問的に取り扱うにはさらなる研 究が必要である。
なぜなら会社同士のコラボレー ションとは、最終的には個々の人間が行うものだ からである。
これには測定基準というものが存在 しないため、この研究では三つのレベル(経営層、 ロジスティクス・マネジャー、現場従業員)での ?コネ”の実態を調査するという単純なアプローチ が採られた。
しかし?コネ”はあまりにも深く中 国文化に根ざしているため、これだけではそのニ ュアンスや複雑さを完全にはとらえきれないだろ う。
したがってそれを支えるメカニズムを解明し、 個人的人間関係の別の側面や範囲を特定すること が今後の研究にもとめられる。
 最後に、われわれの研究結果をRBV理論に応 用して荷主と3PLのコラボレーションについての 概念モデルを更新するとしても、この現象をもっ とうまく説明できる別の理論もあるだろう。
新た な理論が現れてロジスティクス・アウトソーシング に関するより深い知識と業務改善に資することを 期待している。

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