2010年12月号
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「中国依存では世界企業と戦えない」ディマンドワークス 斉藤孝浩 代表

DECEMBER 2010  4 に出店している一〇代から二〇代の 女性向けのブランドなどはファストフ ァッションです。
ただし、彼等はファ ストファッションのオペレーションし かやらない。
一方でユニクロのような SPAは少品種大量生産のオペレーシ ョンしかしない」 ──今のままでは日本のアパレルが欧 米の大手SPAに対抗していくのは 難しい気がします。
 「日本のSPAもファストファッシ ョンへの対応が必要なのは明らかで す。
これまでのファッション流通を振 り返ると、一九六〇年代には百貨店 が、豊富な品揃えという革新を起こ した。
これを第一次流通革新だとす ると、第二次流通革新では低価格化 が進んだ。
その前期は七〇年代から 八〇年代にかけてで、ダイエーやイト ーヨーカ堂、ジャスコなどの総合スー パーが担い手になった。
これが九〇 年代前半の後期になると専門量販店 に担い手がシフトしていった」  「さらに二〇〇〇年代に入って以降 はSPAの時代になる。
ユニクロのよ うな専門量販店がアパレルメーカーを 通さず、独自企画の商品を製造販売 するようになった。
反対にこれまで は百貨店や量販店に卸販売していた アパレルメーカーが直営店を持つよう になり、やはりSPA化した」 ユニクロモデルは旧世代 ──SCMの観点から見たときにファ ストファッションにはどのような特徴 があるのでしょうか。
 「ファストファッションは、食品業界 でいう『ファストフード』のアパレル 版で、『うまい、安い、早い』が特徴 です。
オシャレで手頃な価格の衣服を マーケットの需要に合わせてスピーデ ィに提供する。
同じアパレル製品でも デザイナーブランドのハイエンド品は、 商品が企画されて実際に店頭に並ぶ までのリードタイムに一年半以上かか っています。
それに対してファストフ ァッションは企画から三〇日後から四 五日後には商品が店頭に並ぶ」 ──ユニクロもその一つですか。
 「ファストファッションには色々な定 義があって、なかにはユニクロも含め てしまう人もいるのですが、私に言 わせれば違います。
ユニクロに『うま い、安い』は当てはまりますが、『早 い』はない。
ユニクロの場合は、一ア イテム当たり四〇万枚と言われていま すが、量をまとめることで中国の工 場に対して安定的な品質とコストダウ ンを要求し、それを日本の消費者に 還元するというモデルです。
アメリカ の『GAP』も基本的に同じで、ベ ーシックな商品をアジアや中南米で少 品種大量生産してアメリカで売る」  「スペインの『ZARA』やスウェ ーデンの『H&M』はそうではあり ません。
彼等はハリウッドのセレブを はじめ街のファッションリーダーたち が何をどう組み合わせて着ているの かをチェックして、それをすぐに商品 化する。
そのためにZARAの場合 は地元スペインを中心にして目の届く 範囲で生産し、それを世界七二カ国 に航空便でバラまいて販売している。
その一方でリードタイムを気にしなく ていいベーシックな衣料は中国やアジ アで大量生産する」  「『H&M』も中国で作っている。
ただし、日本のようにすべて中国で 作るのではなくて、シルク製品や刺繍 のあるような手のかかる凝ったものを 選んで中国で作っている。
そうでは ない肌着などのベーシックなものは現 在はバングラデシュがメーンです。
そ れなりの質感を求められるトレンド品 となると、ヨーロッパなら良い素材が 手に入るトルコが産地になる」 ──商品特性に合わせて複数のサプラ イチェーンを並行して運用している。
 「その通りです。
日本のアパレルは そこが弱い。
日本にもファストファッ ションはあります。
渋谷の『109』 ディマンドワークス 斉藤孝浩 代表 「中国依存では世界企業と戦えない」  トレンドをいち早く採り入れた低価格商品を需要に合わせてスピ ーディに市場に供給する「ファストファッション」と呼ばれる業態 がアパレル業界を席巻している。
スウェーデンのH&Mやスペインの ZARAが代表格だ。
そのSCMは日本のSPAとは全く異なって いる。
                 (聞き手・大矢昌浩) 5  DECEMBER 2010  「これは日本だけでなく、アメリ カのGAPや香港の『GIORDA NO』、イギリスの『NEXT』など、 世界でほぼ同時多発的に起こった現 象でした。
しかし、彼等はいわばS PAの第一世代であって、現在のS PAは第二世代に移っている。
それ がH&MやZARAなどです。
高品 質・低価格が当たり前になって、そ のうえでファッション性が求められる ようになっている」 ──サプライチェーンのスピードアップ には、在庫の高度なコントロールが必 してマッチしていない商品については、 新しいサプライチェーンを組む。
二つ 以上のサプライチェーンをミックスし て運用する必要があります」 ──そのサプライチェーンは当然なが ら国をまたぐ。
 「アパレル業界では今や国産品が全 流通量の五%程度まで下がっていま すから当然そうなります。
それも従 来のような中国一辺倒ではなく、商 品特性に合わせて原産地を選び、さ らに自分たちで各国の現地に入り込 んでOEM先をコントロールする必要 がある。
海外のOEM生産の管理を 商社や代理店に頼っていては、いず れ相手にしてもらえなくなってしま います。
競争力のある縫製工場には 世界中のアパレルから注文が舞い込ん でいます。
現地の事情も知らずに無 理な注文ばかり押しつけてくる日本 からの注文は敬遠される傾向が出て きています」 要になりますね。
 「実際、H&MやZARAは在庫コ ントロールに長けている。
ユニクロや GAPは大量に作って売れ残れば価 格を下げて売ってしまうというやり 方です。
しかし、その結果、古い在 庫が店頭を埋めることになって、フ ァッション性はダウンしてしまう。
そ のためZARAやH&Mは需要に見 合った量しか作らず、店頭には必要 最低限の在庫しか置かない。
在庫が 足りなくなったら、必要な分だけす ぐに作って航空便で飛ばす。
そして 納品頻度を高めることで店頭の新鮮 さを保っている」 アパレル品を一日三回納品 ──そのオペレーションは3PLが担 っているのでしょうか。
 「自分でやる場合が多いようです。
アパレルの物流は月曜日に前の週の 販売実績をチェックして週末までに納 品するのが普通なのですが、ファスト ファッションの場合は同じ週の前半の 売れ行きを見ながら週末の店頭在庫 量をコントロールしています」  「なかでもH&Mは、その日の各店 舗の時間帯別売り上げを見ながら店 頭在庫をコントロールしている。
その ために中央倉庫とは別に店舗を複数 展開している商業地の近くに、その エリアの一日分の在庫だけを保管す る前線基地を置いている。
そこから 各店舗の売れ行きに合わせて一日三 回デリバリーしているんです。
その管 理には高度な判断と柔軟性が求めら れるため、アウトソーシングは難しい」 ──日本のアパレル産業が彼等をキャ ッチアップするにはどこから手を付け たら良いでしょうか。
 「まずは自分たちの提供している商 品を分解する。
そして現状のオペレ ーションにマッチしている商品と、マ ッチしていない商品を整理する。
そ さいとう・たかひろ 1965年、東京生まれ。
88年、 明治大学商学部卒。
総合商社 アパレル部、カジュアルアパレル チェーン取締役営業本部長、同 取締役経営企画室長等を経て、 2004年にディマンドワークス設 立。
ファッション系流通小売企 業を中心に、期限付き業務請 負契約のプロワーカーとして複 数のプロジェクトに参画中。
グローバルファッションSPA各社の特徴 SPAの第1世代 vs 第2世代 ディマンドワークス資料より 業態名主要マーケットと主な原産国調達方法生産量品揃えの強み A B C 日本 アメリカ 世界 27カ国 世界 72カ国 アメリカ OEM(Original Equipment Manufacturer) 協力工場に生産委託して製造 デザイン、仕様設計はブランド側が行う ODM(Original Design Manufacturer) デザイン、サンプリングまで行う委託業者の デザイン、仕様を採用する 中国 アジア、中南米 アジア、東欧 20カ国 スペイン地中海 沿岸地域、中国 アジア、メキシコ アメリカ OEM △ △ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ △ OEM OEM ODM 自社+ OEM 少品種 大量 少品種 大量 多品種 中量 多品種 少量 多品種 少量 A…コレクショントレンド 欧米コレクションのトレンドファッショ ン B…ファッションベーシック 流行に左右されないベーシック商品 C…マーケットトレンド 消費者、市場から生まれるファッショ ン商品 第1世代 SPA ベーシック 商品 高機能商品 ファッション トレンド商品 多品種多頻度 ハイスピード 生産 単品大量 計画生産 最速 2〜3週間 3〜6カ月 第2世代 SPA 世代商品群手法 商品企画 から店頭まで の納期 実現したもの ヴォリューム プライス 品質向上 機能付加 ● ● ● ヴォリューム プライス デザイン性 ファッション 性向上 ● ●● 品質・機能付加 ベーシックカジュアルSPA デザイン・スピードアップ ファストファッションSPA

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