2011年1月号
特集
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第4部 主要プレーヤーの次の一手日本通運・空運事業──リスクを負ってスペース確保植松榮 航空事業部担当取締役 常務執行役員
JANUARY 2011 30
日本通運・空運事業
──リスクを負ってスペース確保
事業モデルを大きく見直した。
国内輸送事業をキャリア型か ら利用運送型に転換する一方で、グローバルロジスティクスを事 業の中心に明確に位置付けた。
2012年度までに国際関連事業売 上高を約1700億円上積みして、グループ売上高に占める比率を 33 %まで拡大する。
将来は50 %まで引き上げる方針だ。
──二〇一〇年度からの中期計画で、日通は経営の 軸足をグローバルロジスティクスに移すことを明確に 打ち出しました。
「荷主がこれだけ海外に出ると表明している以上、 我々が海外に出るのも当然です。
今や日本国内だけ で完結する物流を探すほうが難しい」 ──具体的に、日通はどう変わるのでしょうか。
「我々が“陸店”と呼んでいる国内部門、北海道か ら九州までの一〇ブロックの支店の営業マンたちに、 国内と国際を繋ぐ役割を果たしてもらう必要がありま す。
各地域で海外事業を検討している荷主に、我々 のグローバルソリューションをご提案する。
これまで 国内物流を担当していた営業マンを、そうしたこと のできる人材に育て上げ、“ワンストップ営業”を実 現します」 ──数値目標としては、グループ売上高に占める国 際関連事業の比率を、〇九年度の二七%から一二年 度には三三%まで拡大する計画です。
「国際関連事業の売上高を三年間で約一七〇〇億 円上積みする必要があります。
ルーティンワークの強 化だけでは達成は難しい。
それと並行して海外のM& Aも視野に入れています」 ──日通は今年度、日本を含め世界四極の地域統括 のうち「アジア・オセアニア地域」を「東アジア」と 「南アジア・オセアニア」の二つに分割しました。
そ の意味は? 「東アジアに属する中国、韓国、台湾を香港で統括 し、インドを含めたASEANを南アジアとしてシン ガポールで統括するかたちにして、それぞれに役員 を置くことで意思決定のスピードを上げました」 ──同じアジアでも東と南では事業モデルも違ってき ますか。
「どの国でも当社の海外事業は、フォワーディング からスタートします。
自動車やエレクトロニクス業界 の荷主が現地に進出することで、その輸出作業を担 うところから始まる。
次に相手国側の通関、要望が あれば保管や保税倉庫の運営まで請け負う。
そして 最終段階では現地で一般倉庫や国内配送を手がける というステップで、どこも同じです」 「ただし、国によって進捗度は違います。
中国では 既に一九の現地法人を置いて五〇〇〇人前後の従業 員を抱え、自分で国内配送まで手がけている。
その 管理レベルも今や日本と変わりません。
例えば華南日 通では自動車メーカー向けに一日四〇〇台近い車両を 使ってミルクラン輸送を行っていますが、そのオンタ イム納品率は年間平均で九九・八%に達しています。
GPSや携帯電話、車載カメラなどの設備を導入し、 徹底した見える化も実現しています。
お客様には日 本以上の管理レベルだとの評価をいただいています。
他も東アジアは香港、韓国、台湾ですから既に出来 上がっている」 「一方、南アジアは、例えばインドでは現地の物流 会社を買収し、それをインド日通として機能させて います。
経営トップもインド人で、日本人を派遣して も副社長まで。
なぜそうしたかと言えば、カースト 制度に影響される現地の労務管理、州ごとに異なる 規制など、インド特有の問題をクリアするには現地ス タッフでないと難しいという判断からです」 「南アジアでも既に、シンガポール、タイ、マレー シアといった国は出来上がっていますが、インドを始 めとしてベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー などは、まだ必死になって当社のDNAを流し込も うとしている段階です。
東アジアの状況とは大きく 違います」 植松榮 航空事業部担当取締役 常務執行役員 第4部 主要プレーヤーの次の一手 特 集 国際物流企業への通知表「荷主満足度調査」 31 JANUARY 2011 ──人件費の割安な新興国における国内物流は黒字 化が難しいとされています。
「現地化を進めることが大原則になりますが、それ に加えて、その国でどのレベルまで自分たちで手を 出すかは、産業という切り口からも判断しています。
全ての国で国内物流まで漫然と手がけるのではなく、 エレクトロニクス、自動車、環境関連といった産業ご とにターゲットを定め、その分野で必要とされるので あれば国内にも深く踏み込んでいく。
そのうえで現 地では収益性を考慮しながら可能な範囲で事業領域 を広げていく」 アジア市場に勝機あり ──先進国における事業展開と比較すると、アジア 地域のビジネスは何が特徴になりますか。
「例えば欧州には、シェンカーやキューネ+ナーゲル、 パナルピナといった、歴史も規模も兼ね備えたフォワ ーダーが我々の進出する前から存在していました。
米 国も同じです。
後発の我々が現地の大企業を荷主に しようとしても、そう簡単に牙城は崩せない。
しか し、アジアには今のところ市場を牛耳れるような大 手がいません。
当社のような日系物流会社が出てい っても勝負ができるエリアだと考えています」 ──欧米のインテグレーターもアジアシフトを強めて います。
「インテグレーターの商品力は強力です。
スモール パッケージのドア・ツー・ドアではかなわない。
しか し彼等には荷主に合わせてサービスを提供する柔軟性 がありません。
カスタマイズしたサービスや取り扱い の難しい荷物、またスモールパッケージよりも大きな 荷物となると、我々に仕事が回ってくる。
インテグ レーターのようなキャリアはインフラに合わない荷物 や、自分の飛行機がキャパオーバーしてしまうと打つ 手がありません。
従って我々としては、ハンドリング のノウハウに加え、安定したスペースの供給と競争力 のあるレートを、インテグレーターへの対抗手段とし ていきます。
フォワーダーである我々は、あらゆる航 空会社の飛行機をいくらでも利用することができる」 ──しかし、需給が逼迫してくれば貨物スペースの確 保は難しくなります。
実際、日本航空が貨物専用機 事業から撤退した影響は小さくないはずです。
「当社の場合、日本発のスペースが七%前後減るこ とになります。
しかし、事前に分かっていたことです から手は打てました。
他のキャリアにシフトするのと 並行して﹃ブロック・スペース・アグリーメント︵B SA︶﹄と呼ばれる長期契約をキャリアと結んでスペ ースを確保しました」 ──BSAの料金は必ずしも安くないと聞きます。
「安くはならなくても、シカゴ向けやフランクフル ト向けなど、需給がタイトな路線は安定供給という 観点からスペースを確保しています。
しかし、それ だけでは赤字になってしまうので、一方で従来は付 き合いのなかった小規模なキャリアとの取引も始めま した。
こちらは価格重視です」 ──日通自体が飛行機を所有してインテグレーター化 するという選択肢は? 「従来のフォワーダーという業態から一歩踏み込ま なければならない環境になっているのは事実です。
し かし、以前にシミュレーションしたことがあるのです が、エアラインビジネスは一定の規模がないと利益が 出ない。
路線の維持に大変な手間がかかることに加 え、パイロットという専門職の管理には、特殊なノウ ハウも必要です。
自分で飛行機を運航しようとは思 いません」 日本通運の経営目標=国際関連事業の売上高比率50%目指す 将来目標 20,000 15,000 10,000 5,000 0 ※2009年度実績の国際関連事業売上高は同社資料より本誌が推定 約4240億円 (27%) 約1兆1460億円 (73%) 約1兆5700億円 約1兆8000億円 1兆2060億円 (67%) 50% 50% 2009年度実績2012年度目標 5940億円 (33%) +約1700億円 +約600億円 国際関連事業 国内事業 欧州 拠点数 65 倉庫面積 34 万6857 ? 日通の海外拠点と倉庫面積 南アジア・オセアニア 拠点数 100 倉庫面積 30 万8524 ? 東アジア 拠点数 125 倉庫面積 42 万5124 ? 米州 拠点数 93 倉庫面積 42 万1433 ?
国内輸送事業をキャリア型か ら利用運送型に転換する一方で、グローバルロジスティクスを事 業の中心に明確に位置付けた。
2012年度までに国際関連事業売 上高を約1700億円上積みして、グループ売上高に占める比率を 33 %まで拡大する。
将来は50 %まで引き上げる方針だ。
──二〇一〇年度からの中期計画で、日通は経営の 軸足をグローバルロジスティクスに移すことを明確に 打ち出しました。
「荷主がこれだけ海外に出ると表明している以上、 我々が海外に出るのも当然です。
今や日本国内だけ で完結する物流を探すほうが難しい」 ──具体的に、日通はどう変わるのでしょうか。
「我々が“陸店”と呼んでいる国内部門、北海道か ら九州までの一〇ブロックの支店の営業マンたちに、 国内と国際を繋ぐ役割を果たしてもらう必要がありま す。
各地域で海外事業を検討している荷主に、我々 のグローバルソリューションをご提案する。
これまで 国内物流を担当していた営業マンを、そうしたこと のできる人材に育て上げ、“ワンストップ営業”を実 現します」 ──数値目標としては、グループ売上高に占める国 際関連事業の比率を、〇九年度の二七%から一二年 度には三三%まで拡大する計画です。
「国際関連事業の売上高を三年間で約一七〇〇億 円上積みする必要があります。
ルーティンワークの強 化だけでは達成は難しい。
それと並行して海外のM& Aも視野に入れています」 ──日通は今年度、日本を含め世界四極の地域統括 のうち「アジア・オセアニア地域」を「東アジア」と 「南アジア・オセアニア」の二つに分割しました。
そ の意味は? 「東アジアに属する中国、韓国、台湾を香港で統括 し、インドを含めたASEANを南アジアとしてシン ガポールで統括するかたちにして、それぞれに役員 を置くことで意思決定のスピードを上げました」 ──同じアジアでも東と南では事業モデルも違ってき ますか。
「どの国でも当社の海外事業は、フォワーディング からスタートします。
自動車やエレクトロニクス業界 の荷主が現地に進出することで、その輸出作業を担 うところから始まる。
次に相手国側の通関、要望が あれば保管や保税倉庫の運営まで請け負う。
そして 最終段階では現地で一般倉庫や国内配送を手がける というステップで、どこも同じです」 「ただし、国によって進捗度は違います。
中国では 既に一九の現地法人を置いて五〇〇〇人前後の従業 員を抱え、自分で国内配送まで手がけている。
その 管理レベルも今や日本と変わりません。
例えば華南日 通では自動車メーカー向けに一日四〇〇台近い車両を 使ってミルクラン輸送を行っていますが、そのオンタ イム納品率は年間平均で九九・八%に達しています。
GPSや携帯電話、車載カメラなどの設備を導入し、 徹底した見える化も実現しています。
お客様には日 本以上の管理レベルだとの評価をいただいています。
他も東アジアは香港、韓国、台湾ですから既に出来 上がっている」 「一方、南アジアは、例えばインドでは現地の物流 会社を買収し、それをインド日通として機能させて います。
経営トップもインド人で、日本人を派遣して も副社長まで。
なぜそうしたかと言えば、カースト 制度に影響される現地の労務管理、州ごとに異なる 規制など、インド特有の問題をクリアするには現地ス タッフでないと難しいという判断からです」 「南アジアでも既に、シンガポール、タイ、マレー シアといった国は出来上がっていますが、インドを始 めとしてベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー などは、まだ必死になって当社のDNAを流し込も うとしている段階です。
東アジアの状況とは大きく 違います」 植松榮 航空事業部担当取締役 常務執行役員 第4部 主要プレーヤーの次の一手 特 集 国際物流企業への通知表「荷主満足度調査」 31 JANUARY 2011 ──人件費の割安な新興国における国内物流は黒字 化が難しいとされています。
「現地化を進めることが大原則になりますが、それ に加えて、その国でどのレベルまで自分たちで手を 出すかは、産業という切り口からも判断しています。
全ての国で国内物流まで漫然と手がけるのではなく、 エレクトロニクス、自動車、環境関連といった産業ご とにターゲットを定め、その分野で必要とされるので あれば国内にも深く踏み込んでいく。
そのうえで現 地では収益性を考慮しながら可能な範囲で事業領域 を広げていく」 アジア市場に勝機あり ──先進国における事業展開と比較すると、アジア 地域のビジネスは何が特徴になりますか。
「例えば欧州には、シェンカーやキューネ+ナーゲル、 パナルピナといった、歴史も規模も兼ね備えたフォワ ーダーが我々の進出する前から存在していました。
米 国も同じです。
後発の我々が現地の大企業を荷主に しようとしても、そう簡単に牙城は崩せない。
しか し、アジアには今のところ市場を牛耳れるような大 手がいません。
当社のような日系物流会社が出てい っても勝負ができるエリアだと考えています」 ──欧米のインテグレーターもアジアシフトを強めて います。
「インテグレーターの商品力は強力です。
スモール パッケージのドア・ツー・ドアではかなわない。
しか し彼等には荷主に合わせてサービスを提供する柔軟性 がありません。
カスタマイズしたサービスや取り扱い の難しい荷物、またスモールパッケージよりも大きな 荷物となると、我々に仕事が回ってくる。
インテグ レーターのようなキャリアはインフラに合わない荷物 や、自分の飛行機がキャパオーバーしてしまうと打つ 手がありません。
従って我々としては、ハンドリング のノウハウに加え、安定したスペースの供給と競争力 のあるレートを、インテグレーターへの対抗手段とし ていきます。
フォワーダーである我々は、あらゆる航 空会社の飛行機をいくらでも利用することができる」 ──しかし、需給が逼迫してくれば貨物スペースの確 保は難しくなります。
実際、日本航空が貨物専用機 事業から撤退した影響は小さくないはずです。
「当社の場合、日本発のスペースが七%前後減るこ とになります。
しかし、事前に分かっていたことです から手は打てました。
他のキャリアにシフトするのと 並行して﹃ブロック・スペース・アグリーメント︵B SA︶﹄と呼ばれる長期契約をキャリアと結んでスペ ースを確保しました」 ──BSAの料金は必ずしも安くないと聞きます。
「安くはならなくても、シカゴ向けやフランクフル ト向けなど、需給がタイトな路線は安定供給という 観点からスペースを確保しています。
しかし、それ だけでは赤字になってしまうので、一方で従来は付 き合いのなかった小規模なキャリアとの取引も始めま した。
こちらは価格重視です」 ──日通自体が飛行機を所有してインテグレーター化 するという選択肢は? 「従来のフォワーダーという業態から一歩踏み込ま なければならない環境になっているのは事実です。
し かし、以前にシミュレーションしたことがあるのです が、エアラインビジネスは一定の規模がないと利益が 出ない。
路線の維持に大変な手間がかかることに加 え、パイロットという専門職の管理には、特殊なノウ ハウも必要です。
自分で飛行機を運航しようとは思 いません」 日本通運の経営目標=国際関連事業の売上高比率50%目指す 将来目標 20,000 15,000 10,000 5,000 0 ※2009年度実績の国際関連事業売上高は同社資料より本誌が推定 約4240億円 (27%) 約1兆1460億円 (73%) 約1兆5700億円 約1兆8000億円 1兆2060億円 (67%) 50% 50% 2009年度実績2012年度目標 5940億円 (33%) +約1700億円 +約600億円 国際関連事業 国内事業 欧州 拠点数 65 倉庫面積 34 万6857 ? 日通の海外拠点と倉庫面積 南アジア・オセアニア 拠点数 100 倉庫面積 30 万8524 ? 東アジア 拠点数 125 倉庫面積 42 万5124 ? 米州 拠点数 93 倉庫面積 42 万1433 ?
