2011年1月号
特集

第4部 主要プレーヤーの次の一手全日本空輸──沖縄をハブにアジア翌日配送網殿元清司 取締役執行役員貨物本部長

JANUARY 2011  38 全日本空輸──沖縄をハブにアジア翌日配送網  沖縄・那覇空港を中継基地とするハブ・アンド・スポー ク型の航空貨物輸送網を構築した。
OCSの買収で荷主と のパイプと集配機能も確保した。
自社貨物専用機と旅客 機の貨物スペースを駆使して、アジア全域を翌日配送圏 に収め、欧米の国際インテグレーターに対抗する。
アジアの在庫を沖縄に集約 ──沖縄の那覇空港を起点にアジアの八都市(成田、 羽田、関西、上海、香港、ソウル、台北、バンコク) を自社フレーター(貨物専用機)で結ぶハブ・アン ド・スポーク型のネットワークを二〇〇九年一〇月に スタートさせました。
現状は?  「今のところ順調に来ています。
搭載率は現状で七 割強。
八割を目標にしています。
これまで当社の貨 物事業は大きな赤字を垂れ流している状況でしたが、 一一年度には収支均衡を見込んでいます。
日本の航 空貨物の取扱量はリーマンショックの影響で一時は半 分程度まで落ち込みました。
現在もまだ完全には回 復できていませんが、その間に当社は貨物事業を大 幅に強化しましたので、一〇年度の取扱量は前年度 比で三〇、四〇%増えています。
今年度は当社の貨 物事業の売上高が初めて日本一になる見込みです」 ──〇六年に当時の山元峯生前社長(故人)は貨物 事業の売上規模を一五年までに約七倍の七〇〇〇億 円にするという目標を掲げました。
 「その後、大きく事業環境が変わりましたので、一 五年に七〇〇〇億円という数値目標は修正するしか ありません。
自社フレーターも当初は中型機一〇機、 大型機四機の投入を計画していましたが、大型機の 導入は今のところ見送っています。
それでも貨物事 業を当社の柱の一つにする方針は変わっていません」 ──ANAがアジアのインテグレーターとして名乗り を上げた理由を改めて説明してください。
 「日本からアジア、アジアから日本という物流に頼っ ているだけでは我々の事業は縮んでいってしまいま す。
しかし長期的に見れば航空貨物輸送が今後も伸 び続けることは間違いない。
なかでもアジア圏、そ れもドア・ツー・ドアの一貫輸送の伸び率が高い。
た だし北米市場や欧州市場を見るとインテグレーターが 四割程度のシェアを握り、徐々にシェアを拡大させて いる。
アジア市場におけるインテグレーターのシェア はまだ一割程度だけれども、荷主が一貫輸送や動態 情報を求めているのは変わらない」  「アジアで欧米のインテグレーターに対抗できるプ レーヤーは限られています。
二機や三機のフレーター で、そうしたニーズに応えようとすれば大赤字になっ てしまう。
安定的なオペレーションには一定の規模が 必要です。
その点で当社は旅客機を二〇〇機所有し、 そのうち五〇機を国際線に投入し、中国・アジア地 区では日本航空さんと比べても遜色ない路線ネット ワークを張っている。
残りの一五〇機は国内に投入 し、日本の各都市を毛細血管のように結んでいる。
その貨物スペースと、自前のフレーターを組み合わせ れば、今後の大きな成長が期待できるアジア市場で 当社の強みを発揮できるという判断です」 ──ネットワークをハブ・アンド・スポークにする狙 いは? リードタイムだけなら目的地に直接運んだほ うが速い。
 「我々のターゲットは大量輸送ではありません。
我々 が提供するのは、ロットは小さいけれども、圧倒的 なスピード感を持った物流です。
我々は日本の地方都 市であっても夕方に集荷したものを夜のうちに沖縄 に運んで、方面別に積み替え、翌日の午前中にはア ジアの各都市に届けることができる」  「このネットワークを使って、日本の安全で美味し い果物や魚介類などの生鮮品を、アジアの各都市に 届けて高く売る。
あるいは日本の地方都市に工場を 置いたまま、そこで生産したコアパーツをアジア各地 の組み立て工場にタイムリーに届ける。
余分な在庫 殿元清司 取締役執行役員貨物本部長 第4部 主要プレーヤーの次の一手 特 集 国際物流企業への通知表「荷主満足度調査」 39  JANUARY 2011 を持たず、商機も逃さないで済む。
さらには日本以 外のアジアの都市間も翌日配送で結ぶ。
今のところ 沖縄ハブを経由する荷物のうち約二五%が、日本以 外のアジアから他のアジアの都市に運ぶ荷物です。
そ うやってアジア圏を国内配送の感覚でカバーすること で、新たな貨物需要を創造していきたい」 ──速い分だけ運賃も高いのでは?  「インテグレーターが競争相手ですから、それに合 わせて料金も設定しています。
当社だけ高くはでき ません」 ──在庫を沖縄に集約することで、従来は国別に置 いていた在庫拠点を汎アジア規模で集約することも 可能になりそうですね。
 「まだ小規模ですが、沖縄に拠点を置くことで、そ れまでの複雑な輸送モデルを解消した事例も出てきて います。
結婚式のDVDやアルバムを作成する会社 なのですが、従来は沖縄でDVD、上海でアルバム を作って別々に顧客に届けていた。
それを改め、上 海からアルバムをいったん沖縄に輸送してDVDと同 梱して届けるかたちに変えた。
その結果、顧客は荷 受けが一度で済むようになり、輸送費も削減できた。
またあるアパレルメーカーは生産自体を沖縄に移そう としています。
それを我々が日本を含めアジアの主要 都市に翌日配送する」 スピード配送で地方荷主を支援 ──荷主とのインターフェースはグループのOCS (旧・海外新聞普及)が担っているのですか。
 「エクスプレス︵国際宅配便︶の営業はOCSが中 心になります。
ANA自身でも荷主企業の相談窓口 として一〇年八月に、東京販売部にソリューション 営業課を設置しました。
また日本の各地方都市を巡 回してセミナーを開き、我々のサービスの優位性をア ピールしています。
これまで地方都市では羽田まで トラックで運んで、そこから飛行機で運ぶという流 れが一般的でしたが、我々のベリー便を使って地方空 港から出荷することでリードタイムを半日から一日、 短縮できる」 ──沖縄ハブはまだスタートしたばかりなので、当面 は様子見という荷主も多いのでは。
拠点を沖縄に移 したのに、ANAが事業を止めてしまったらどうに もならない。
 「我々が事業を継続していくことが、荷主が沖縄進 出を検討する際の大きな判断材料の一つになること は理解しています。
それだけに我々も腹を据えてい る。
ネットワークも現在は国内三地点海外五地点で すが、今後さらに機材を投入し、就航地点を増やし ていきます。
沖縄県も我々と一緒になって荷主の誘 致や利便性向上、コストダウンに取り組んでくれてい る。
そうやって我々が確固とした基盤を作り、沖縄 がハブとしての魅力を増していくことで、我々以外 の海外のエアラインも沖縄に就航するようになる。
彼 等と我々がお互いのスペースを上手く活用するといっ たことも可能になる。
その結果、荷主のメリットも 大きくなるという好循環を生み出していきます」 ──キャリアがインテグレーター化することで、フォ ワーダーとの関係も変わってくるのでは。
 「我々はコモンキャリアであって、我々の貨物事業は 現在も九九%がフォワーダー相手です。
フォワーダー さんとの関係はこれまで通り大切していきます。
そ れに加えて我々は国際宅配便という、これまでフォ ワーダーさんが手がけていなかったサービスを新たに 開発したわけですから、それも一般貨物と並んでフォ ワーダーさんに利用を呼びかけています」 午前中 配達 07 時 到着 04 時 出発 01 時 到着 23 時 出発 19 時 集荷 那覇空港 夜7 時までに集荷した荷物を翌日午前中に届ける 成田 羽田 関西 上海 台北 香港 バンコク ソウル 成田 羽田 関西 上海 台北 香港 バンコク ソウル 全日空の貨物事業を巡る動き 2005 年8 月日本貨物航空(NCA)の持ち株27.5% を日本 郵船に売却 2006 年2 月日本郵政公社との合弁でANA&JPエクスプレ スを設立 同5月2015年に貨物事業売上高を現状の約7倍の 7000 億円に拡大する方針を打ち出す 2007 年7 月安倍内閣の「アジアゲートウェイ構想」を受け、 那覇空港を貨物ハブとする「沖縄ハブ構想」を 発表 2008 年4 月日本通運、近鉄エクスプレスとの合弁でオール エクスプレス(ALLEX)を設立。
国際宅配便 事業に進出。
同9月リーマンショック 2009 年3 月海外新聞普及(OCS)を子会社化 同8月OCS がALLEXを吸収合併 同10月沖縄貨物ハブ事業スタート 2010 年7 月運航子会社のエアージャパンとANA&JPエク スプレスを統合

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